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「Catch up Premier League」~Match week 15~ 2020.12.26-12.27

目次

①レスター【2位】×マンチェスター・ユナイテッド【3位】

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■詰めは甘いが、好調は証明

 過密日程の最中の上位対決だったが、共に果敢にプレッシングに行くスタイルで主導権を握りに来る見どころのある試合だったといえる。レスターは統率されたプレスでユナイテッドに自由を与えなかったし、ユナイテッドは圧力の高い中盤を軸にレスターに襲い掛かってくる。

 レスターはボール保持の能力が高いチームではあるが、外切りでGKまでプレスをかけてくる相手は少し苦手かもしれないとこの試合を見て思った。理由はシュマイケル⇒SBへのロブパスの精度が十分ではないから。ここが精度と速度を伴って届けることができれば、よりポゼッションが洗練されたものになるだろう。

 プレッシング合戦がやや落ち着いてくると、互いの守備組織のわずかなミスから得点が入る。レスターはジャスティンの内側に絞る判断がまずかった。同サイドに上手くユナイテッドを封じたつもりだったレスターだったが、この場面では許したくない逆サイドへの展開を許してしまった。

 逆にユナイテッドはマクトミネイの寄せが甘く、バーンズにミドルシュートを許してしまう。ユナイテッドに甘さがあったのは間違いないが、このミドルは見事。解説のテセも褒めていたように、逆足でデヘアを打ち抜くことは容易ではない。

 リーズ戦でボール保持での攻撃が好調だったユナイテッドはこの試合でもそのコンディションを維持している。その証明となったのが彼らの2点目である。カバーニがポストに下りる動き、そしてそれとセットで裏に抜けるブルーノ・フェルナンデス。撤退したレスターに対して、スムーズに2つのラインを超えたユナイテッドの攻撃はかつての撤退守備に手をこまねいているチームのそれではない。最後は逆に自陣のブロック守備に詰めの甘さが出て追いつかれたものの、確かな向上を見せた試合だったといっていいだろう。

試合結果
レスター 2-2 マンチェスター・ユナイテッド
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:31′ バーンズ,85′ トゥアンゼベ
Man Utd:23′ ラッシュフォード, 79′ ブルーノ・フェルナンデス
主審:マイク・ディーン

②アストンビラ【9位】×クリスタルパレス【13位】

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■遠ざかっていく『やりたいこと』

 ブロック守備⇒前線のスピードを活かしたカウンターで勝負したいクリスタル・パレス。今季はこのブロック守備の精度が日によってまちまちで、それによって成績にだいぶムラがある印象だ。

 しかしながら、この日はそのやりたいことをアストンビラにまんまやられてしまったクリスタル・パレス。ボールを持たされ、攻めさせられるもロングカウンターを食らう。アストンビラは先制点の場面でのロングカウンターは見事。ルイス、マッギンのダイレクトな展開でラインを超えると、流れたワトキンスのスペースに入り込んだトラオレがフィニッシュ。好調のトラオレがこの日も得点を決める。今季のアストンビラらしいお手本のようなゴールだった。

 お株を奪う戦い方で優位にたったアストンビラだったが、この日はやたら血気盛んだったミングスが退場してしまう。相手が手ごわいクリスタル・パレスのアタッカー陣ということもあるが、手癖の悪さは要改善事項といえそうだ。

 しかし、この退場によってクリスタル・パレスはさらにボールを持つ時間を増やすことに。展開としては逆にやりたい状況から遠ざかってしまうということになってしまう。数的優位を全く生かせない状況が続くパレス。さらにはこの日はアストンビラのカウンターに対して完全に後手に回る。特に3失点目は明らかな無気力感が否めなかった。

 やりたいことから遠ざかるパレスを尻目に、アストンビラが10人で試合を決めるカウンターを次々繰り出す。そんな数的不利側優勢のワンサイドゲームになってしまった。

試合結果
アストンビラ 3-0 クリスタル・パレス
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:5′ トラオレ, 66′ ハウセ, 76′ エル・ガジ
主審:アンソニー・テイラー

③フルハム【18位】×サウサンプトン【7位】

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■不在をカバーできたところ、できなかったところ

 前節は久々の先発だったミトロビッチに早々にボールを当ててしまうせいで全体的に淡白さが目立ったフルハム。今節はカヴァレイロが先発復帰ということでもとに戻った感じである。ビルドアップはまじめにショートパスで行うようになった。ショートパスは正義、ロングボールは悪とは思わないけど、ミトロビッチにお手軽ロングボールを当てるだけでなんとかなるほど甘くはないので、これを頑張るしかないと思う。

 この日はザンボ=アンギサが躍動。ボール保持に奪回にあらゆる場所に顔をだし、攻守にサウサンプトンを押し込むことに貢献。サイドチェンジを駆使しながら、サウサンプトンをサイドから押し込んでくる。開幕時に比べれば撤退時の守備も良くなったサウサンプトンだが、上がりがちで裏をとられやすい上に対人も軽さがあるSBは狙いどころ。フルハムは正確にサウサンプトンの弱点を突く立ち上がりとなった。

 一方で、この日は仕上げのルックマンが沈黙。ボールを受けてからの周りとの連携がイマイチ。周りを活かすプレーを会得することがもうひとランク上に行くための課題のように思う。そうこうしているうちにフルハムは徐々にガス欠気味に。自分たちの時間帯でないと点が取れないチームなので、この日は立ち上がりに点が取れなかったのが痛かった。

 一方のサウサンプトンはヴェスターゴーアが欠場。代役のステーフェンスも持ち上がりながら配球を意識していたのはとても好印象だった。しかしながら、前線のポスト&裏抜けという鉄板パターンがこの日は機能せず。いい時期に比べると、少し量も精度も落ちているように思う。どうしてもセットプレー頼みになってしまうサウサンプトン。それでも武器があるだけ立派ともいえる。しかし、この日は沈黙。ヴェスターゴーアはセットプレーのターゲット役でもあるので、平場で決め手に欠けるサウサンプトンには彼の欠場が追いうちになってしまった形だ。

試合結果
フルハム 0-0 サウサンプトン
クレイブン・コテージ
主審:ダレン・イングランド

④アーセナル【15位】×チェルシー【5位】

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■扉を叩き続けたからこそ

 大幅なローテーションで2列目にサカ、スミス=ロウ、マルティネッリを並べる大胆な策に出たアルテタ。これはアーセナルにとって大いにプラスに働いたといえるだろう。オフザボールにおける動き出しに特徴がある2列目の3人はキックオフから躍動。特に、後方のティアニーとの連携が見事だったマルティネッリは大外⇒斜め内側に入り込むフリーランが見事で、チェルシーの守備陣の混乱を招いた。

 中央における起点が増えたのもアーセナル良化のポイント。ボールを左右に散らせるジャカが相手のプレス隊の後方で受けると、だいぶ効くサイドチェンジが発動するように。その前方もポストで2列目を手助けするラカゼットと、ボールサイドのアシストを頑張るスミス=ロウのコンビは優秀だった。

 確かにゴールの形はスーパーで再現性がなかったり、あるいはセットプレーからのものもあった。しかしながら、これらのシーンはいずれもチェルシー守備陣を揺さぶったことで出てきた結果である。

    「シュートは勝利への扉を叩くノックのようなもの」というのは自分の大好きな倉敷保雄さんの言葉だが、この試合のアーセナルは久しぶりに勝利の扉にノックをすることが出来ていた。
 
 だからこそ少し恵まれたように感じる3得点にも彼らにとって大きな意味があると胸を張って言えるのだ。

試合結果
アーセナル 3-1 チェルシー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:35′ ラカゼット, 44′ ジャカ, 56′ サカ
CHE:85′ エイブラハム
主審:マイケル・オリバー

⑤マンチェスター・シティ【8位】×ニューカッスル【12位】

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■当たり前を当たり前にでモノトーン化

 この試合はほぼ90分間抑揚なく同じ展開だった。前半に少しニューカッスルが攻め込んだことを除けば、マンチェスター・シティは一方的にニューカッスルを責め立てる展開になる。

 押し込んでいるときのマンチェスター・シティの攻め手はほぼ同じもの。PAから少し手前にブロックを敷くニューカッスルのDFラインを背走させるようにハーフスペースの裏を大外から狙うというのがシティの狙いだった。得点シーンもそうだし、得点につながらないシーンにおいても同じような現象が再現性を持って見られた。特にスターリングが奥行きを出す役割を果たすことが多く、そこから静止して相手の隙をつく選択肢を探す光景がよく見られた。

 撤退守備が基本のニューカッスルに対して、細かくDFラインを動かすような前線の駆け引きができていたのはマンチェスター・シティにとってはいいことだろう。ややワンパターンすぎる嫌いはあったが、そもそもそれが出来ずに停滞していたことを考えれば、復調であるといえそうである。

 一方のニューカッスルはほぼチャンスはなし。シティは少ない機会でも仕留められるように相手の重心を崩してからシュートまでいったが、ニューカッスルはアバウトな上に攻撃機会が少なかった。したがって、この日のアプローチではなす術なしだろう。完敗といっていい内容だったように思う。

試合結果
マンチェスター・シティ 2-0 ニューカッスル
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:14′ ギュンドアン, 55′ トーレス
主審:アンドレ・マリナー

⑥シェフィールド・ユナイテッド【20位】×エバートン【4位】

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■頼みの綱がきっかけに

 両チームのサポーター以外のサッカーファンにめちゃめちゃ見ることを勧められるようなエキサイティングな試合にはならなかった。共に攻め手には苦しんでいたからである。

 どちらかといえば前進がうまくいっていたのはシェフィールド・ユナイテッドの方。しかしながら、それはエバートンの中盤のプレスに屈さずにボールをロストしなかったということであり、ボールを回しながら相手陣に迫るプレーを選択し続けることができたわけではない。

 10人でも前進にうまくいった直近の流れは継続しているものの、ゴール欠乏症という課題も継続。この試合も未勝利で年内未勝利にリーチがかかってしまう。

 一方のエバートンも緻密な前進がうまくいっているわけではない。一番効いていたのはキャルバート=ルーウィンへのアバウトなロングボール。ただ、シンプルにこれで前進できるのは強いと思う。決勝点もキャルバート=ルーウィンへのロングボールに合わせて、ブレイズがラインを下げたことがきっかけに。PA内でパスを2本つなぐほどの余裕をエバートンに与えてしまったのが致命的。苦しんだ両チームの試合は唯一存在した確固たる前進手段が決め手となった。

試合結果
シェフィールド・ユナイテッド 0-1 エバートン
ブラモール・レーン
【得点者】
EVE:80′ シグルズソン
主審:デビット・クーテ

⑦リーズ【14位】×バーンリー【16位】

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■アイデアの魅力と欠点

 いつもGoogleでスタメンを確認してから試合を見るのだが、この日のリーズの並びは3-3-3-1のようなもの。さすがにちょっとびっくりしたけど、確かに試合を見てみるとそのような陣形で試合を進めていた。

 コンセプトは間と大外に人を置いて4-4-2の泣き所にパスの出しどころを作るという所だろう。バーンリーの列に対して、段違いでリーズの選手が配置されているので、バーンリーとしては捕まえどころが定まらない。

 リーズはバーンリーの2トップの脇からCBが運び縦や裏にボールを出して攻める。段を複数作っている状態なので、バーンリーの最終ラインは前の2列目を捕まえるか、バンフォードの裏抜けについていくかの判断が難しい。1点目はまさにこのギャップをついたものであり、ポープのPKを誘った。

 しかしながら、4-3-3の時と比べるとリーズはボール回しがスムーズな分、少し動的な要素が減った気がする。少しゴールから遠い選手が中央に入り込む動きに乏しかったように思う。アイデアとしては結構面白かったけど、そこまでチャンスに結びつかなかったかなと。

 奪回の部分もややおろそかでスタートのポジションが亜種な分、相手を捕まえながら窒息させていく従来のやり方はあまりできず。その分、バーンリーは後半にボールを持てるようになる。エリア内に放り込めば割と何かある雰囲気だったので、何とか逃げ切れたといった印象。中央をメインに縦関係での人が多く、奇抜なアイデアだったが何とか勝ち点3に結び付けた。

試合結果
リーズ 1-0 バーンリー
エランド・ロード
【得点者】
LEE:5′ バーンリー
主審:ロベルト・ジョーンズ

⑧ウェストハム【10位】×ブライトン【17位】

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■共にチャンスメイクに苦しむ

 いつものようなチャンスメイクが鳴りを潜めつつあるブライトン。原因は奥行きも幅もうまく使えていないことだろう。このチームはチャンスメイクは量で勝負!なので、そこが機能しないとどうしても苦しくなってしまう。

 特に幅をどうとるか?という部分はWBの個人の質によるところが非常に大きい。ランプティの不在で、いい時のブライトンに見られた4バックのチーム相手に大外⇒大外の両側を使うことによってえぐるパターンは見られなくなる。仕掛ける部分はマーチへの依存度が高まっていく。それでもそこから先制点が取れたことは幸運。先制点はマーチのタメから同サイドのDFのオーバーラップを促してからのクロスによるものだった。

 対するウェストハムもやや重たかった試合であったことは間違いない。ハーフタイムに2枚を代えたことからもわかるように、ローテーションした攻撃陣は全体的に機能せず。何とかクロスを主体として同点には追い付くものの、ブライトンに対して効果的な攻撃を繰り出し続けることはできていなかった。

 共に2点ずつという内容よりも得点がとれたなという印象だった両チーム。勝ち点1ずつを分け合う内容は妥当だったように思う。

試合結果
ウェストハム 2-2 ブライトン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:60′ ジョンソン, 82′ ソウチェク
BRI:44′ モペイ, 70′ ダンク
主審:シモン・フーパー

⑨リバプール【1位】×ウェストブロム【19位】

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■指揮官が代わっても、難所で『1-1』達成

 ウェストブロムの予想フォーメーションは5-4-1。ビリッチ時代は4バックもたまにやりつつ、ボール保持で何とか攻撃を食らう時間を減らそう!というアプローチも取っていたので、まぁだいぶ守備的になったなと試合前には思ってみた。

 ところがふたを開けてみれば予想よりさらに後ろに重たい6-4-0のようなフォーメーションで守りだすのだから驚きである。6-4-0というのは攻めるほうからすると密度的にはかなりだるいが、ラインでいえばざっくり2本。裏を取っての駆け引きはむしろしやすいといえるだろう。最終ラインはプレッシャーを受けにくいし、ウェストブロムにはなるべく高い位置でボールを取りたい色気を完全に隠せてはいなかったように見える。

 したがって、その裏の駆け引きからリバプールが先制点を取った時はこの試合でウェストブロムが勝ち点を取ることは難しいことのように思えた。ウェストブロムはロングカウンターの質が高いわけではないので、なるべく高い位置からボールは奪いたい。その色気はビハインドになった時点で強まると思ったし、そうなれば展開としてはリバプールの独壇場かと思われた。
 
 しかしながら、ここからリバプールはつなぎの局面でのミスが出てくることに。特に悪い意味で目立ったのはカーティス・ジョーンズ。1つミスが出てからは若干ボールの狩りどころとして狙われていたかもしれない。トッテナム戦ではまばゆい光を放っていた若武者だったが、この試合では精彩をやや欠いてしまっていた。というわけでリバプールは90分間ウェストブロムを釘付けにすることができなかった。

 そしてそのしっぺ返しをセットプレーから食らうことに。アジャイの一発は前指揮官時代のシティ戦に続き難所でのウェストブロムのポイント確保を手繰り寄せる大きなゴールになった。

試合結果
リバプール 1-1 ウェストブロム
アンフィールド
【得点者】
LIV:12′ マネ
WBA:82′ アジャイ
主審:ケビン・フレンド

⑩ウォルバーハンプトン【11位】×トッテナム【6位】

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■レギロン⇒ベルフワインにみられるモウリーニョの苦悩

 開始早々の先制点はこの試合のその後の展開にどのような影響を与えたのだろうか。トッテナムとしてはある程度受けながらカウンターの目を模索しているように見えた。ウルブスはトッテナムの中盤を越して、ボールを運ぶことができず、なかなか好機を得られない序盤戦となる。

 この日のトッテナムはウルブス対策を敷いているように見えた。レギロンとデイビスの左サイドバックを2枚縦に並べ、前方のレギロンはトラオレをマンマーク。撤退したブロックを打開できるドリブルの保持をデートで消すという手段で非保持の局面を強固にする。

 前線の守備はケインが誘導し、エンドンベレは誘導されたボールサイドに顔をだす傾向があった。そのため誘導を外されてしまい、エンドンベレを外されるとトッテナムはCHが前に出ていく必要が出てくる。このようにCHが引き出されると後方のCHの周辺のスペースが空く。

 おそらく、ここを修正するためにレギロン⇒ベルフワインの交代を行ったモウリーニョ。中盤の守備の枚数を整えることでCHの行動範囲を限定した。ポジション的には攻撃に寄る交代っぽいけど、その実狙いは守備っぽいのが面白い。しかし、これによりトラオレのマンマーク作戦が解除。これにより撤退守備を打ち破るドリブルによりウルブスが起点を作れるようになる。

 結局押し込まれてセットプレーから追いつかれるトッテナム。結果論で言えば2点目を取りに行くべきだったのだろうが、彼らにとって2点目を取りに行くということがどういう交代をするのか?といわれると難しい。ケインとソンの連携を活かすながら、ロングカウンターを軸に相手を引き込むことは悪くないはず。一方で距離が長くなる分、アタッカーへの負荷は不可避であり、この日のようにソンのプレータイムが決まっている試合で異なる方法での点を取りに行く策というのは難しいところ。

 レギロン⇒ベルフワインの一手が2点目を取りに行く方向に上手く転がらないところがスパーズの悩ましさである。

試合結果
ウォルバーハンプトン 1-1 トッテナム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:86′ サイス
TOT:1′ エンドンベレ
主審:ポール・ティアニー

   おしまい。

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