スタメンはこちら。
【前半】
揺さぶりはOKだが・・・
今のアーセナルの状況を考えるとこのタイミングでリーズと対戦するというのはとてもありがたくない。それが試合前の率直な感想である。理由は今のアーセナルが直面する問題を解決しづらい相手だと思ったから。
まず今のアーセナルの問題点の1つはアタッキングサードまでボールを運べる機会が少ないこと、そしてそこから先のプレーの質が落ちていることである。前線のプレーの質が落ちていることは個人のコンディションも含めていくつか原因があると思うのだが、ビルドアップで前進する機会が少ないことはより構造的な問題に起因する可能性が高い。
リーズは相手のビルドアップを阻害するのが上手いチームである。しかもベースはマンマーク。となるとまずアルテタお得意の配置で解決するやり方は機能しにくい。マンマークでついていくというのは可変潰しには効く。まぁビエルサは可変潰しのためにやっているわけではないだろうけど。
というわけでこの日は個々の根性でビルドアップをなんとかしなければいけない日だった。まず2CBにはガッツリマークをハメてこないため、ここから運ばないといけない。ここはマガリャンイスの頑張りどころ。最終ラインではティアニーの奮闘も目立つ。対面のラフィーニャは少々マークが甘かったため、ティアニーが剥がして前に運ぶことでリーズは次の手を打たないといけなかった。
アーセナルのWGはこの日は横への動きが多め。内に絞って受けつつ、ピッチを横に移動するドリブルを入れこむことによってリーズの選手にどこまでついてくるか?という揺さぶりをかける。ウィリアンはこういう使い方をしてアタッキングサードにつなぐ役割をやってもらうのが一番いいと思う。
気掛かりなのは2列目が前を向いてプレーを始めた時の周りの動き。周りの選手が「ここからホルダーがどう動くんだろう?」と見守っているような空気感なことが多かった。特にウィロックがボールを持つときはこうなることが多く、14分のシーンでは3枚引き付けながら気づいたらパスコースのない袋小路に迷い込んでいるようなことも。ウィロックはオンザボールでも、オフザボールでの周りのフォローでも機能しない場面が目立つ。この試合では十分な働きを見せたとはいいがたかった。
ある程度のところまでは進めるが、2列目より前のところは単発で手探りに。リーズ相手に揺さぶりをかけてはいたものの、スイスイ前進できたとはいいがたかったアーセナルであった。
【前半】-(2)
バイタルはリーズのもの
非保持でのアーセナルの課題は撤退ローラインになるあまり、攻撃に転じるときに敵陣までの距離が遠いところである。それでも守れるならいいやんけ!というのは確かにそうかもしれないが、前節のアストンビラにはそれを完全に破られてしまったので、何とも言えないところではある。
アーセナルにとって悩ましいのは、リーズが苦手とするチームの特徴。リーズが彼らのリズムに引き込めないのは相手が撤退してきて自分たちがボールを持たされる試合に直面した時である。まさしく、それはこれまでのアーセナル。
ただ、この試合ではおそらく4バックに移行してなるべくラインを高くしたいという目的がアルテタの中にはあったはず。前線も高い位置において、ウィロックはフィリップスを監視。ジャカとセバージョスがインサイドハーフにくっついていく。ジャカとセバージョスのところでアーセナルが引っかけることに成功し、アーセナルがカウンターを迎える機会もあった。しかし、リーズは安易に長いボールを蹴らずにつないで相手を外すことに長けているチーム。前線が降りて、それを後方の選手が追い越したり並ぶ動きを見せることによりプレスを回避する。
こうなるとアーセナルは一気にリーズに前進を許すことに。ジャカとセバージョスは機動力勝負できるタイプではないので、広い範囲を投げられるこの日のやり方にはハッキリ言って向いていないコンビだと思う。したがって、撤退へ移行するまでに時間がかかってしまいDFラインが裸でさらされてしまうことも。
さらに、撤退守備に移行した後もアーセナルは中盤が最終ラインに吸収される機会が非常に多く、バイタルを空けるようになる。ラフィーニャがミドルを打ったシーンなどは典型例。プレス回避⇒サイドからライン下げ⇒マイナスの折り返し⇒バイタルからのミドルという流れが徐々にお決まりになるように。
この日のエランド・ロードはややピッチがぬかるんでいる感じがしたので、踏ん張りがきかずにリーズのミドルシュートがバンバン上に抜けていったのはアーセナルにとっては不幸中の幸いだった。単純なクロスはホールディング、マガリャンイスの2枚で跳ね返すことが難しい相手ではなかったので一安心ではあった。29分のセバージョスのように怪しい間のコースを埋め損ねた場合は危ないシーンもあるが、それさえ避けられれば明確に崩された!とされるシーンはそれほど多くはなかった。リーズからすると空いたバイタルからもう一手崩しをする必要があった日のように思う。
アーセナルは自陣での守備の基準がよくわからなかった。CHが最終ラインにヘルプに入る判断基準もわからないし、撤退した時のウィロックはフィリップスをほぼ放置しているので、サイドへの展開をバンバン許していた。かといって代わりに何をしている?といわれると答えるのが難しい感じになっていたので、自陣撤退後の守備のタスクの整理はまだなのかもしれない。ちょっと自分には意図を読み取れなかった。リーズの攻撃のもうひと味の足りなさとアーセナルの守備における違和感は切り分けが必要な気もしている。
試合は0-0。スコアレスで前半を折り返す。
【後半】
10人の分の割り切り
まぁ、後半に書くことなんてあんまりないですよ。ブライトン戦のゲンドゥージしかり、クリスタル・パレス戦のジャカしかり、この試合の後の話題が現地の記者を含めてペペ一色になることは火を見るより明らかなので、この試合がどういう試合だったかを自分なりに残しておきたい!というのがこのレビューを書いているモチベーションだったりする。
そんなこんなでペペが退場したのが50分くらいだったかな。それまでの後半のアーセナルはウィリアンが退いた分、より後方から動かしていくのが大事!ということでレノを使ったビルドアップを前半より意識する立ち上がりになった。しかし、特段フィードで輝かしいものがあるというわけではないレノをビルドアップに組み込むということは、数の論理以上のものではないわけで、数的不利になってしまった場合にその形がなくなるのは当然である。
アーセナルは撤退型の4-4-1にシフト。10人の方が攻撃が流れたのは、より攻撃を完結する方向にプレー選択が向いたことが1つ。ボールを持ったSBが前に運ぶしかない状況になったのはケガの功名。ベジェリンとティアニーにもう少し運べる状況を前半から作ってあげたかったと思うくらい、10人になった後の彼らの運びは効いていた。
あとは単純にアーセナルのアタッカーの方がスピードで優位に立てていたこと。ペペの退場後、リーズはより人数をかけて攻め込んでいたので、後方ではスペースが広がった形が常態化していた。パスコースは多数作れているわけではなかったのにも関わらず何とか出来たのはスペースにおけるスピード勝負で勝てていたことが大きい。特に途中交代のサカはこの点で効いていた。受けるの上手いですよね彼は。
とはいえ撤退守備する時間が増えまくってしまったアーセナル。リーズもロドリゴをインサイドハーフに投入し、PAに飛び込む人員を確保する。大外からラインを下げてマイナスで隙を作るやり方は後半も継続。アーセナルは抉られて折り返されても良いぜ!ってくらいの勢いで撤退時は2列目がPAに常駐していた。人員を確保していたアーセナルに対して唯一、ホールディングが競り損ねた決定機を決められなかったバンフォード。リーズとしてはこの決定機を逃したのは痛恨であった。
試合は0-0。10人のアーセナルをリーズは崩しきれず、両チームとも未勝利継続となってしまった。
あとがき
■重馬場の状態であと一歩踏み込めず
数的優位を得たものの、攻め落とせなかったリーズ。ボール運びはさすがのメカニズムで、アーセナルの中盤を好き放題に振り回してバイタルを空けるところまではできていたけども、残念ながらあと一歩届かず。ロングレンジのロドリゴと最後のバンフォードの決定機以外はゴールが近くて遠い感じもした。この辺りはプレビューで書いた「撤退されてテンポを落とされるとつらい」というところとリンクした気もする。
ミドルシュートがことごとく上に浮いてしまったことを考えると、この日の雨に救われたのはアーセナルの方か。重馬場で相手が撤退している状態では崩しきるのはハードだったかもしれない。
個人で見るとラフィーニャはもう少し時間がかかりそうな予感。アーセナル的にはここでコスタを使われたほうが嫌だった気がするけども。
■変わるところ、変わらないところ
4バックに意味を見出すのだとしたら、やはり前に出ていくプレッシングのところなのだろうなと感じた試合であった。トーマスを取ってきた理由というのはよくわかるし、彼の欠場はフィットしきっているわけではない現時点でもすでに厳しいということは分かった。
スカッドのやりくりは依然難しい。ペペは出場停止がある上に、アルテタによる内々での追加制裁がある可能性もある。サカとマガリャンイスを除けば、現状では他の若手選手は得た出場機会をリーグでは活かせている状態ではない。この試合の結果は内容を考えれば上々かもしれないし、前線は配置変更でよかった部分もある。ただ、ウィリアンがケガでペペが出場停止になれば、それが次の試合の上積みになったとはなかなか言いにくい状況だというのも確かである。
撤退守備においては4バックも5バックも意識としては変わらない。深い位置まで取られる前提の守備基準だったし、撤退させられてしまえばPAの密度は同じ。引かされてしまうのであれば、普段からよく議論に上がる4バックか?5バックか?みたいな話は少なくともあんまり意味がないのだろうなと。どうせ保持においては4バックにシフトするわけだし。4バックを頑張るならばプレスを外された後にPA手前で踏ん張る段階を作りたいところ。でも、Aマッチ明けで退場者も出たこの試合でそんなことも求めることもあんまり意味のないことなのかもしれないけど。
試合結果
2020.11.22
プレミアリーグ
第9節
リーズ 0-0 アーセナル
エランド・ロード
【得点者】
主審:アンソニー・テイラー