Fixture
明治安田 J1リーグ 第節
2024..
川崎フロンターレ(10位/11勝11分11敗/勝ち点44/得点55/失点47)
×
鹿島アントラーズ(5位/15勝9分9敗/勝ち点54/得点52/失点39)
@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦で川崎の11勝、鹿島の1勝、引き分けが3つ。
川崎ホームでの戦績
過去10戦で川崎の7勝、鹿島の1勝、引き分けが2つ。
Head-to-head
- 今季のカシマスタジアムでの勝利で鹿島は川崎戦の未勝利を15試合でストップ。
- 鹿島が川崎相手にシーズンダブルを達成すれば2000年以来24年ぶり。
- 等々力での鹿島戦は川崎が6連勝中。
- ホーム開催の川崎の鹿島戦の敗北は8敗だが、そのうち3敗が11月に喫したもの。
スカッド情報
- 大島僚太、高井幸大、ジェジエウは完全合流。離脱がリリースされている選手は全員フィットしたこととなる。
- 濃野公人は9/28のリーグ戦で右膝外側半月板損傷で離脱中。
- ギリェルメ・パレジは左膝前十字靭帯損傷で帰国して治療を行っている。
予想スタメン
Match facts
- 公式戦直近4試合勝ちがなく、ホームでも3試合未勝利。
- しかしながら、リーグ戦では直近3試合無敗。
- 2024年ここまではシーズンダブルを喰らったことはない。
- 11月の公式戦は直近7試合負けなし(W6,D1)
- 最後の敗戦は2021年のアウェイでの鳥栖戦。
- 脇坂泰斗は鹿島戦で5得点を決めておりJ1でもっとも多くの得点を決めている相手。
- リーグ戦で決めた3得点はすべて年間において後に当たる対戦で生まれている。後半の試合は4年連続で得点に関与。
- マルシーニョは先週のACLで今季3回目の退場。
- 2024年におけるキャリアでの唯一の退場は2017年のリーグ戦1回だけ。
- 直近7試合の公式戦で1勝のみ(D3,L3)
- 直近5試合の公式戦で3試合は無得点。
- 得点をできていない3試合は全てホームゲーム。
- アウェイでは公式戦9試合連続得点中。
- 前々節の新潟戦の勝利でアウェイでのリーグ戦連敗を5で止めた。
- 鈴木優磨がゴールを決めた直近4試合は全てアウェイで決めたもの。
- 中後監督は選手時代に等々力のリーグ戦で4戦して1勝。C大阪時代の2011年にアシストを決めた試合が唯一の勝利。
予習
第32節 湘南戦
第33節 新潟戦
第34節 福岡戦
展望
序列、プランが読みにくい鹿島
鹿島は正直にいうと直近の試合の中ではかなり書きにくい対戦相手だなという感じである。監督解任により、単純に試合のサンプル数が少ないというのが1つ。加えて、解任の文脈やタイミングも微妙にわかりにくい。
直近のリーグ戦の戦績を見れば確かに成績不振という解任事由は成り立たなくはないが、別にシーズン残り数試合で何か差し迫って勝ち点を稼がなければいけない状況に立たされているわけではない。中後監督という後任の人事も立ち位置が宙ぶらりん。すでに鬼木監督への来季就任オファーを検討しているという報道もあり、中長期的に何かを託されているかどうかは不透明だ。
その上で鹿島のリーグ戦は間隔が非常に空いている。これだけの期間があれば序列の変化もあり得るだろうし新しいプランの構築に関しても十分に手を打つことができる。横浜FMの過密日程が話題になっているが、鹿島はこの30日で3試合目の公式戦だ。
また、ポポヴィッチ最後の試合で披露された新潟戦で相手を圧倒して見せた3バックの立ち位置もよくわからない。中後監督は福岡戦の試合後コメントで3バックはあくまでオプションという位置付けのようだが。
わからないことだらけなのだが、中後監督が唯一指揮をとった福岡戦からできるだけのことを読み解きたい。この試合において変化が見られたのは前線の並びだろう。左サイドには鈴木、右サイドには藤井が入り、トップの中央には師岡が入る形。ポポヴィッチ時代は自分が見た試合では鈴木が中央で両ワイドは仲間と師岡という並びがメインストリームだっただけに一風変わった形になった。
鈴木と藤井の起用で目立ったのは両WGに幅を取る役割を持たせていたこと。ここ数年の鹿島はSHは絞って2トップのセカンドボールを拾うことが多かったのだが、福岡戦では藤井や鈴木が大外レーンに立つ機会が多かった。藤井は単純にキャラクターにあった起用法にも思えるし、濃野が負傷した右サイドで新しい攻め筋が欲しいということでテイストを変えたのはわからなくはない。
ただ、鈴木をサイドにわざわざ置いて幅を取らせた意味を図るのは難しいところ。こちらも中後監督の試合後コメントの『前線にしっかりとした起点を作りたいということ。あとはモビリティを活かしながら背後を取りにいきたいと考えて、そういう形にした。』という言葉を踏まえるのであれば、中央が堅い福岡相手にサイドで制空権を握りたかったということだろうか。(https://www.antlers.co.jp/games/53575)
川崎の中央のブロックは福岡ほどの堅さはないこと、福岡戦ではスコアレスドローという結果に終わったことなどを踏まえると、川崎戦では従来の並びに戻してきても不思議ではないかなと思う。裏に走りながらボールを引き出すアクションは鈴木がCFでも可能だし、CFが動きながらロングボールを引き出すことで空いた中央のスペースを絞ったSHが攻略するというイメージは川崎相手なら想像しやすい。
守備においては高い位置からのプレスはメリハリをつけながらという感じ。出ていく時は出ていくし、引いて受ける時は中盤でプレスをスタートする。
CB陣はボックス内で空中戦にフォーカスさせればめっぽう強いが、行動範囲が広くなるとクリアが雑になったり、入れ替わられる形で相手をフリーにしたりなど、粗が目立つ場面も少なくない。オープンでロングボールを好むこと、特に左サイドはSBの攻撃参加を好むことを踏まえると、CBがイレギュラーな対応を迫られるケースは普通に出てくる。
CHのカバーリングは特に柴崎がいるサイドにおいては献身的ではなく、知念がいなくなると特に潰しが効かなくなる印象。連携面でも構築は進んでいるとはいえず、湘南戦の2失点目のように動かされてしまうとあっさりとフィルターの機能を失ってしまう。
シンプルな力強さはあるが、叩く方向を工夫されてしまうと脆さが先立つ。今の鹿島の守備陣に対するイメージはそんな感じだ。
Jリーグで勝ち点を積むための
鹿島のビルドアップは2CB+2CHにトップ下の名古が降りてきて絡んでくる。だが、ショートパスで相手のギャップをついてくるというよりは長いボールを蹴るためにフリーの選手を作るというのが主体。なので、個人的には深追いする意義はないと思う。どうせ蹴られてしまうので。
ロングボールのターゲットはどの選手がどの位置に入るかにも依存するが、基本的には中央にもサイドにも蹴ってくる。川崎のDFラインはSB、CB問わずロングボールの対応には追われることになると見る。
一番厄介なのは先に述べたようにSHがインサイドに入ってセカンドを回収されるパターン。中盤がハイプレスに出ていく形をひっくり返されてしまい、川崎のSBが誰を見るかが宙に浮いてしまう下の図のような形が最悪である。
防ぐためには不用意にプレスにいかず、鹿島がロングボールを当てたい場所を先に封鎖すること。すなわち、後半戦でこのレビューで繰り返しているミドルブロックの構築である。
ライン間を封鎖し、全体をコンパクトに封鎖し外で浮いている選手に自由を与えれば、ある程度強引でも鹿島は放り込んでくるだろう。このパスを引っ掛けてカウンターに移行するのが川崎の理想。鹿島の守備が整っていない状態でカウンターに移行できれば先に述べた鹿島のCBの拙さやCHのカバーリングの少なさをあらわにすることができる。
無論、裏抜けしながらのロングボールや対角のSBで鹿島の前線に起点を作られてしまえば、川崎は鹿島のCBを放っておくことはできない。鹿島のCBの放置は川崎のバックスの迎撃の強度が前提にあるプランである。それが難しいようならば、中盤を受け渡しながらの前線のプレスというより連携がシビアなプランに移行する必要がある。
鹿島の非保持では福岡や湘南のような3バックでボールを動かしてくるチームに対して、遅れて出て行ってかわされるシーンが目立っている。川崎は町田戦で見せた三浦の動きのように後方に人を余らせてから高い位置を取り直すパスワークで鹿島のプレス隊(下図でいえば相馬の位置に入る鹿島のRSH)を引き出しながら前進したい。山本の列移動などもうまく活用できれば効く相手なように思う。空中戦が多くなるであろう非保持での適性は微妙ではあるが。
プレビューというものを毎試合書いているくせに身もふたもないのだが、川崎がやるべきなのは蔚山戦のようなコンパクトな非保持と町田戦のような相手の逆を取る保持であることは多分どの試合においても変わらないと思う。この2試合の水準をコンスタントに出すというよりは求める方向のベクトルとしてここを目指すということを明示できれば正直なところ出来は二の次という感じもしていたりする。特にリーグ戦では。
というか、ベクトルがきっちりしていれば勝ち点は勝手についてくると思う。今のJリーグで勝ち点を取るにはコンパクトで強度の高いミドルブロックとそれなりの保持であることは自明だろう。目指すのはここ。ここがタイトルを獲得することに必要なスキルセットだと思う。川崎の中盤とSBのスカッドで考えると、できれば保持は「それなり」よりも上が望ましい。
あとは状態次第ではあるし個人的な願いではあるが、少ない時間でも問題ないのでジェジエウの試運転をしておきたい。丸山とアイダルのパフォーマンスが低調な状況を踏まえると、ACLで勝ち点を重ねるにはもう1枚CBが欲しい。アジア水準で全線にパワーとスピードがある鹿島相手にどこまで通用するかを試せれば理想だ。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)