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「絶え間ない尻たたき」~2020.11.3 J1 第26節 川崎フロンターレ×北海道コンサドーレ札幌 BBC風オカルトプレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第26節
2020.11.3
川崎フロンターレ(1位/22勝2分1敗/勝ち点68/得点70 失点20)
×
北海道コンサドーレ札幌(13位/7勝6分13敗/勝ち点27/得点33 失点49)
@等々力陸上競技場

戦績

近年の対戦成績

図1

直近10回の対戦で川崎の8勝(ルヴァンカップの決勝含む)、引き分けが2つ。

川崎ホームでの戦績

図2

直近10試合で川崎の9勝、引き分けが1つ。

Head-to-head

<Head-to-head①>
・川崎は札幌戦28戦で22勝。横浜FC(87.5%)に次いで勝率が高い(78.6%)相手。
・リーグ戦において、札幌が川崎に勝利したことはない。

 川崎にとって札幌はお得意様。J2時代も含めてリーグ戦においていまだに札幌は川崎に勝利したことがない。ちなみに指揮官のペドロビッチも同様に川崎は苦手。直近9試合で勝利がなく、そのうち8回は敗戦を喫している。

<Head-to-head②>
・しかし、昨年の等々力では1-1の引き分け。
・直近4試合の札幌戦において川崎はいずれも失点を喫している。

 特に等々力は鬼門だった。しかし、昨年は1-1の引き分け。札幌がクラブ史上初めて川崎ホームから勝ち点を持ち帰った。また直近4試合の札幌戦において川崎はクリーンシートがない。未だに黒星はないものの、ルヴァンカップ決勝のようにタフな試合も増えている。

<Head-to-head③>
・ミッドウィーク開催の試合は過去に5回。いずれも川崎が勝利。
・前半戦での対戦で生まれた計7得点のうち、5得点は交代選手によるものだった。

 ミッドウィークでの開催は過去に5回で川崎の全勝。等々力での開催はJ2時代の6-0、ジュニーニョのハットトリックによって大差で勝利した試合である。

 同じく大量に得点が入った前半の札幌ドームでの対戦では交代選手が躍動。小林悠が2得点、三笘薫が2得点、ジェイが1得点と7点中5点が交代選手によるものだった。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・中村憲剛は今季限りの現役引退を発表。
・長谷川竜也、大島僚太はベンチ外の状況が続いている。

【北海道コンサドーレ札幌】

・チャナティップと石川直樹が前節ベンチ復帰。ジェイが負傷で前節を欠場している。
・菅大輝は新型コロナウイルスの陽性反応で隔離中。

予想スタメン

画像3

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts①>
・勝てば1シーズンにおけるリーグ戦新記録の13連勝。
・直近10試合のリーグ戦は全て先制点を取って試合を進めている。

 多摩川クラシコにも勝利し、連勝記録は継続。勝ち続ければ常に新記録に挑戦の状態が継続している。ここで勝てば13連勝。記録をまた伸ばせることができるか。

 序盤戦は逆転勝ちのイメージも強かった川崎だが、直近の勝ち試合は先制点をベースに堅実に試合を運ぶことが多い。クリーンシートも直近8試合で5つもバックスの安定感も抜群。守備陣の踏ん張りで攻撃陣が奮起し、先制点をもぎ取るという展開が多い。

<川崎のMatch facts②>
・直近5試合においてハーフタイムの交代はなし。
・祝日に開催された直近5試合は4勝。

 逆転勝ちと同じく、ここに来てあまり見られないのはハーフタイムの交代。積極的な交代で流れを引き寄せる采配は、今季おなじみのやり方だったがここ数試合は封印。流れがそもそもいいから早い段階でのテコ入れは不要と考えているのか、試合の日程にやや余裕が出てプレータイムの細かい管理の優先度が下がったのか、それとも来季以降に通常のレギュレーションに戻る準備を始めているのか。いずれにせよ傾向はやや変わったように見える。

 祝日の試合開催は久しぶり。およそ1年5か月ぶりである。ミッドウィークの祝日開催がそもそもとても珍しい。直近5試合で4勝と川崎と祝日の相性は悪くないようだが。

<川崎のMatch facts③>
・中村憲剛がリーグ戦で挙げた直近9得点のうち8得点は等々力で決めたもの。
・三笘薫は今季ここまでシュート30本。10得点以上決めている選手の中で最も少ない。

 昨日、今季限りの現役引退を発表した中村憲剛。今季の残りの試合はチームにとってももちろん本人にとっても特別なことになる試合だ。自身初の誕生日での試合でバースデーゴールによる決勝弾で自らの歩みをまた一歩前に進めた中村憲剛。「等々力には神様がいる」とコメントしていたが、直近9得点のうち、8得点は等々力で決めている。神様がいる等々力でさらなる得点を決めることができるだろうか。

 前節、その中村憲剛にアシストを決めた三笘薫。今季はフィニッシャーとしても躍動している。すでに11得点。30本と非常に少ないシュート数で多くの得点を決めている。10得点以上の選手で次にシュート数が少ないのはエリキの44本。三笘の少なさは際立っている。ちなみにオルンガとエヴェラウドは100本超え。これはこれですごい。

【北海道コンサドーレ札幌】

<札幌のMatch facts①>
・直近リーグ戦5試合で3勝(D1,L1)
・直近3試合のリーグ戦でクリーンシート2つ。

 一時期はかなり長く未勝利の時期もあったが、直近は上り調子。直近5試合で3勝を挙げている。それ以前の19試合のリーグ戦と同じ勝利数である。また、前回対戦の時の課題であった守備でもクリーンシートという形で結果を出している。2つのクリーンシートもそれ以前の12試合と同じである。

<札幌のMatch facts②>
・アウェイでのリーグ戦は3連敗中。
・川崎のホームゲームにおいて、流れの中から得点を決めた日本人選手がいない。

 ただし、結果が出ているのはホームゲームがメイン。アウェイでは3連敗中となっている。すでに述べている通り、等々力は鬼門中の鬼門。特に日本人選手の得点が非常に少ないことが特長で、唯一の例外は昨季PKを決めた鈴木武蔵。流れの中からの日本人選手の得点はない。今季も外国籍選手を前線に多く抱えているスカッドだが、日本人選手で得点を決める選手は現れるのだろうか。

<札幌のMatch facts③>
・ドウグラス・オリベイラは直近2試合連続のリーグ戦得点中。
・金子拓郎が今季ゴールを決めた公式戦4試合はいずれも勝利を決めている。

 チームの調子と同じようにここ2試合で調子を上げているのはドウグラス・オリベイラ。決してコンスタントに計算ができるタイプではないものの、ハマった時のスケールの大きさは魅力。日本人選手の得点が少ない等々力で入団後初の3試合連続得点を決められるだろうか。

 そして、同じく好調なのが金子。逆足のクロスからファーに流すクロスで多くの札幌の決定機を演出している。ラッキーボーイ的な側面もあり、得点を挙げた試合は今季全勝。等々力でも風穴を開けても不思議ではないパフォーマンスを継続している。

展望

■後ろへの意識を利用せよ

 もともと、人に強く守備の基準を置くのが札幌のやり方。ただし、その強さの程度は試合によって変わる。川崎との前回対戦ではチャナティップをアンカー番にして、内側を締めることを優先したスタートになった。

 今回の札幌戦の予習のために横浜FC戦(H)とG大阪戦(A)を見たのだが、前者では比較的強気のマンマークで嵌めに言っているのに対して、後者は前からのプレスはほどほど。オリベイラとロペスだけ前に残してリトリートをすることが多かった。ホームかアウェイかということもおそらく1つの判断の要素としてあるのだろう。

 今回は等々力でのアウェイゲーム、しかもホームでも強引なプレスを行うことはしなかった(少なくとも立ち上がりは)札幌のスタンスを考えると、ボール保持に対して強烈なプレッシングやマンマークを行ってくることは考えにくい。

 したがって、大まかには前回対戦と似たような形になると見る。前線はアンカーをケアしつつ、中盤が内側を締める。中でつながせないことを優先し、外に追いこむ形でプレスをかけてくるのではないだろうか。同数を受けいれた前回対戦の終盤ではかなり川崎に好きにやらせてしまったことも考えると、等々力でいきなり強気な戦いを挑むのは考えにくいだろう。

 札幌の中盤は守備においてやや最終ラインに吸収される頻度が多い。積極的な攻撃参加で戻りが遅れることになる福森のカバーに入ることが多いからだろう。ここは戻りが遅れる前提で他の選手がカバーすることになっているように見える。そのため、意識が後ろに向きやすい。この対応はややスクランブル。押し下げられると最終ラインに吸収された中盤が空けたスペースを活用されやすいのが難点。G大阪戦の1失点目に飛び込んで来た井手口のような動きで川崎の選手には決定的な仕事を求めたい。

画像4

 ある程度人数をかけて固めてくるのならば、サイドを主体として相手が望まないラインの後退を強いて、まずはバイタルエリアでフリーの選手を作りたい。それができればミドルはもちろん、パスワークで相手を上回ることでフィニッシュまで持っていくことは今の川崎ならできるはずである。

■武器の持続力が札幌のテーマ

 札幌のボール保持はCHの2人が縦関係になる。1人が最終ラインに入り4バック化、1人が中盤に残る役割である。G大阪戦では中盤に入ることになったのは高嶺、最終ラインに入ることになったのは宮澤だった。

 セットされた攻撃はサイドからのクロスが主体となる。両WBを上げて5トップのような形にしたのは大外からのクロスという武器を活かすため。エリア内にはストライカータイプのFWが2人(ジェイ、オリベイラ、ロペスのいずれかであることが多い)が待ち構えて、両サイドからのクロスのターゲットになるシーンが多い。

 クロスの出し手はWBが担う。ただし、現在LWBの菅は欠場中。したがって、左はフリーダムに動く福森が起点になることが多い。福森がどこで受けるか?は彼自身に任されている感。したがって、大外から幅を取ってのクロスという4バックに効きそうな部分は右サイドが一手に引き受けている感が強い。

 右サイドからのクロスの出し手はWBで起用されるルーカスと内に切り込むようにして巻いたクロスを上げるシャドーの金子が担う。金子はカウンターからも完結される能力も高いので、先発起用をしても効くかもしれないが、90分間WBがガンガン仕掛けてというのは難しい上に、大外定点攻撃において右サイドの攻め手を失うと厳しい。なので、金子が途中から出てくる方がベターかなと思う。シャドーで駒井や荒野が先発になれば、縦方向への移動は多くなる。彼らの列移動についてどう対応するかも川崎にとってはポイントになる。

 ローテしながら負荷を下げたいのは内側のターゲットも同じ。途中でバテやすく90分起用の計算が立ちにくいドウグラス・オリベイラをフルタイムで引っ張るのは得策とはいいがたい。控え選手とプレータイムを分け合いながらプレーするのが理想であり、この役割においてぴったりのジェイの出場可否は大事なポイントになりそうだ。

 大外を取られてクロスを許すと、川崎としても最終ラインを下げざるを得ない。エリア内の競り合いはもちろん、下げたラインを活用した二次攻撃まで気を付ける必要がある。望まない後退によるギャップが生じるのを防ぎたいのは川崎もまた同じである。

■大人なチームのリアクションは?

 さて、中村憲剛の引退までのカウントダウンはこの試合からスタートである。思いを寄せるのはシーズンを終えてからにしようと思うが、彼の会見での言葉を聞いているとキャリアを40歳までと決めていたからこそ、ここまでのパフォーマンスを突き詰めることができていた部分はあるはず。仮にキャリアの終わりを決めていなかったとしたら同じようなパフォーマンスになっていたかはわからない。

 本人はその思いを公に口にすることができて、また心境や決意に新たな部分が生まれていることだろう。もちろん、それを聞いたチームメイトは言わずもがなである。

 状況だけ見れば首位攻防戦になったC大阪戦を制し、順位表だけ見れば少しチームは気が緩んでもおかしくない。でも、このチームは恵まれていると思う。C大阪戦以降も新記録の11連勝を賭けて名古屋に前半戦の借りを返したり、ルヴァンカップのリベンジとなる多摩川クラシコがあったりなどモチベーションに事欠くことはない。

 いわば目の前の一戦、一戦に意味づけを持たせてきたここまでだが、最後の特大のモチベーションは「このシーズンをどう締めくくるか?」そして「中村憲剛不在となる新シーズンにどうつなげるか」という少々腰を据えて取り組むべき中期的な目標になる。

 多摩川クラシコでもそうだったが、失点後の振舞いを見てもこのチームは大人になっている。目の前のことにがむしゃらに!というのがクラブカラーにあっているのはわかるが、今季の成熟したチームにはもう少し先を見た目標があっても悪くはないと思う。

 長老からの最後の尻叩きに大人なチームはどのように呼応するのか。残りの試合をどう過ごすのか。後続にどれだけ差をつけようとモチベーションに事欠かない状況が続く2020年シーズンはやはり川崎にとっては恵まれたシーズンになっていると思う。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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