繰り返されたWGの縦突破がブロックをかち割る
ここまで日本が重ねた連勝は3。ここでオーストラリアに勝てば両国の勝ち点差は8まで開くことになる。オーストラリアとすれば早くも逃げる日本を捕まえるためのラストチャンスと言えそうな状況である。
9月下旬にポポヴィッチが就任し、中国戦では3バックを披露したオーストラリア。この試合でも3バックを採用。4日前の試合から継続の意思を見せる。ご存知の通り、日本もこの予選では延々と3バックを繰り返していたのでプレッシングとしては非保持側に噛み合う格好となる。
プレスで噛み合わされた時の日本の対応はもはやお馴染みだろう。守田の列落ちである。谷口と並ぶように立つ守田によって、オーストラリアはプレスの基準点を失ったように。中盤に田中が残り、4-1-5のようになる日本に対して、オーストラリアのバックスはピン留め。オーストラリアの中盤の4枚から日本のバックスにプレスが行くようになると、オーストラリアのMF-DFのライン間が間延びするようになる。左サイドでは時折、上田の裏抜けと南野のライン間への顔出しが同時に行われることでオーストラリアの陣形を縦に引き伸ばすことに成功する。
敵陣に入る機会を安定して得られるようになった日本。ライン間にボールを差し込むとサイドの奥を取り、WGの久保と三笘から仕上げにかかっていく。
少し気になったのが両WGの選択肢が縦への進撃から速いグラウンダーの折り返しにほぼ固定されていたこと。日本のWGにボールが入るとオーストラリアはダブルチームにくる。確かにエンドラインから抜くアクションはダブルチームを無効化する有効なアクションではあるが、オーストラリアのDFはエンドライン側から抜かれることを知っていたかのようにクロス対応ができていた。ちょっとこちらから抜かれることを決め打つ形でも問題ないかなという感じが漂っていた。
日本は例えば、WGがダブルチームの間を狙うとか、あるいはマイナスにつけるとかそういう形で変化をつけたかった。だが、日本は大外のマイナスのペナ角付近に誰かがヘルプで立つ様子もなく、サイドへのヘルプよりもボックス内への突撃を優先していたようだった。これによりややWGの仕掛けが独力での解決が可能なタッチライン側からの突破に限られてしまい、アタッキングサードの単調さに繋がったように思う。
オフザボールの動きも時間の経過とともに減少。久保と堂安の狭いスペースが大好きなデュオは軽いタッチから相手を外せそうな可能性も見えたが、足元でボールを要求する動きが多い分、オーストラリアのボールの狩りどころにもなった。
ボールを奪ったオーストラリアはトランジッションから左の背後を狙う動きで勝負をかける。だが、ここは広いスペースをカバーする板倉が一枚上手。スピード勝負で打ち抜くことは叶わずシャットアウトされる。この試合の板倉はスーパーだった。
逆にオーストラリアの右サイドでは降りる動きを見せるマッグリーヘの縦パスを狙う形。ここへのチェックが間に合うかどうかがオーストラリアの攻撃成立の争点となった。序盤はやや後手を踏むこともあったが、日本のWGのプレスに連動した上田、守田、田中のプレスによりかなり早めに制限がかけられるようになってからは町田と谷口は十分に対抗ができていた。オーストラリアが久保と堂安をとりどころにしていたように、日本もまたマッグリー周辺への強引な縦パスをカウンターの機会に繋げていた。
押し込む機会は得ることができていた日本。だが、裏抜けとライン間を同時に狙うような相手の陣形を縦に引き伸ばすアクションが時間の経過とともに減ったこと、そしてWGからの仕掛けが一本調子だったこともあり、ゴールを奪えないままハーフタイムに突入することとなった。
迎えた後半も日本の保持がベースとなるスタート。守田もしくは田中が左サイドの位置にフローするなど、選手交代なしでマイナーチェンジが見られた。オーストラリアはCHを交代しつつ、フルスティッチを右に流すなどこちらも配置のマイナーチェンジが発生する。
日本はCHの左サイドのフローによって、前半にはいなかった三笘のサポート役を作るのが容易になった印象。前半にはあまり見られなかった左サイドの人数をかけた攻撃が見られるように。日本は自陣側にオーストラリアのプレス隊を誘引しつつ、人数をかけたサイド攻撃で攻略を狙っていく。WGの縦突破縛りは前半よりは薄くなったが、引き続き攻撃の主旋律を狙っているように見られた。
日本が攻撃の出口を探っている間にオーストラリアは先制ゴール奪取に成功。ロングボールから少しボールの所有権が曖昧なトランジッションが発生すると、デュークが収めたボールは右に展開。オーバーラップしたミラーのクロスから谷口がオウンゴール。少し下がりながらの対応にはなったが、周りに動きを制限するような選手がいなかったことを踏まえると、クリーンにプレーを切って欲しいところだろう。
以降もオーストラリアはデュークへのロングボールを連打。少し中盤に降りることでよりデュエルの勝率を高めていたのが印象的だった。
日本は伊東純也の登場により、右サイドでは縦突破の優先度が再びアップした感がある。だが、縦突破に落ち着いて対応するオーストラリアの守備には効果は薄く。逆にプレスが間延びすることでオーストラリアの前進を許してしまうように。
日本は再び選手交代で左サイドのユニットの再構築を図る。三笘と中村のタンデムで大外からソロで壊せる選手を重ねるプランで勝負をかける。勝負手となった中村はこの試合でWGが拘り続けた縦突破からオウンゴールを奪取。縦からのマイナスという何度も何度も繰り返された光景でついに同点ゴールを掴む。
さらに攻勢をかけたい日本だが、細かいパスでの連携がこの日は不十分。特に中村以外の交代選手は少しパスワークとプレスに入っていくことに苦戦したように見えた。トランジッションが増えることにより、終盤はオープンな展開に。そうした中で試合を決める決勝点を生むことはできないままタイムアップ。両軍は勝ち点1を分け合う結果となった。
ひとこと
結果的に繰り返しがブロックをかち割ることになったので難しいところではあるが、ちょっとWGの縦突破一辺倒だったことでオーストラリアが楽に対応できる時間が長くなってしまったように思う。前で仕事ができるタレントの多様性が埋もれてしまう単調な前半を過ごしてしまったのが個人的には勿体無いように思えた。
試合結果
2024.10.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第4節
日本 1-1 オーストラリア
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JPN:76′ バージェス(OG)
AUS:58′ 谷口彰悟(OG)
主審:アハマド・アルアリ