ブライトン、24-25シーズンの歩み。
第1節 エバートン戦(A)
若き指揮官はロケットスタートを決める
功労者であるデ・ゼルビに別れを告げ、31歳のヒュルツェラーと新しいチャレンジに臨むこととなったブライトン。年下の指揮官のチームの記事を書くのはあまりない経験である。
戦い方がわかりやすいダイチのエバートンは今季のブライトンのスタイルを観察するのにうってつけであった。ロングボールベースのエバートンに対しては、ライン間を圧縮しながら潰すように対抗。そのため、DFラインは非常に高い傾向になる。
よって、エバートンの狙い目はロングボールのターゲットのCFの背後。キャルバート=ルーウィンを追い越すように出て行くドゥクレが非常に目立つ立ち上がりとなった。オフサイドにかかることもありながら、時折押し返すことに成功するエバートン。お馴染みのファーに待ち構えるCBを生かしたセットプレーからネットを揺らすが、オフサイドで惜しくもこれは認められなかった。
時間の経過と共に保持が増えるブライトン。ビルドアップは左右に大きく広がる形がベース。SBが長いパスのレシーバーになるのだが、SBからのボールの出しところとして、WGの三笘orミンテ、IH役のペドロorミルナーがそれぞれ内外でレーンを分けながらボールを引き出す。
これまでであればWGは大外固定だが、今季のブライトンは異なるようだ。低い位置まで下がって引き取りつつ、内側にドリブルで運ぶなど、大外との仕上げ役とは少し異なるタスクを背負う形になっている。守備でも逆サイドにボールがあるときにSHまでスライドに行くなど、今季のブライトンのWGはハードワークを課されている。
序盤はスティールを中心にバックスからSBへの長いレンジのパスが安定せず、自陣でのパスミスが多かったブライトンだが、徐々にサイドからの攻勢が安定。特に右サイドのミンテのスピードを生かしたアタックが光る。WG→WGとなった三笘の先制点はこの日のブライトンの狙いが活きたゴールだった。
後半、エバートンはハイプレスの成功からPKを得るが、OFRで取り消し。めっちゃチャンスだったのに笛を吹かれた結果、取り消されてチャンスごとなくなりました!というのはエバートンにとってはかなり不憫なものであった。
逆にブライトンはゲイェの持ち上がりのミスをひっくり返す形で追加点をゲット。ウェルベックがさらにエバートンを突き放すゴールを叩きこむ。
このゴールで意気消沈したエバートン。長いボールの対応で三笘に入れ替わられてしまったヤングが一発退場に追い込まれると試合はさらにブライトンペースに。途中交代のアディングラが仕上げの3点目を決める完勝劇を締めくくる。
欲を言えば終了間際のアヤリのゴールも認めてもらえば満点だっただろうが、これはわずかにオフサイド。とはいえ、ブライトンはまずは好発進。ヒュルツェラーのプレミア初陣は大勝による首位スタートとなった。
ひとこと
序盤は危なっかしかったブライトンだったが、エバートンがもたもたしている間にリズムをつかんだ。
試合結果
2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
エバートン 0-3 ブライトン
グディソン・パーク
【得点者】
BHA:25′ 三笘薫, 56′ ウェルベック, 87′ アディングラ
主審:サイモン・フーパー
第2節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)
左サイドからお膳立てした2得点でブライトンが開幕連勝を飾る
第2節の幕開けを飾るのは開幕戦で勝利したチーム同士の一戦。ブライトンとユナイテッドのゲームである。
アンカー役のウィーファーは欠場したが、ギルモアが中央に入ってもブライトンの仕組みは第1節と全く同じ。サイドに広くビルドアップを行いながら、WGとIHが出口になることで対応する。第1節と少し味変をした部分があるとすれば、右サイドに流れるなどジョアン・ペドロの行動範囲が広がったこと。左右均質なイメージを受けたが、この試合は右サイドに偏重する意識はあったかもしれない。
それでも立ち上がりはユナイテッドの方がほんのりペースを握った感もあった。高い位置からのプレスから立ち上がりに不安定なブライトンのビルドアップに漬け込むことができていたし、逆にユナイテッドの保持ではハイプレスを左右に動かしながら外し、大きくスライドするブライトンのSHを外して前進する。
トランジッション局面で光っていたのはメイヌー。プレスバックでの自陣でのカバーとプレス耐性の両面で格別のプレーを見せていた。その分、前線の出来はやや計算外。特に右の大外のディアロの出来はブレーキになってしまった感。カットインドリブルのキレがなく、パスの判断も悪い。ロストした後のファウルも含めて典型的な波に乗れないストライカーだった。
その前線の切れ味でゴールを決めたのがブライトン。右サイドに流れたペドロのクロスが逆サイドまで届くと、三笘→ウェルベックのラインから先制点をゲット。アシストのクロスの軌道とインサイドの動き直しの両面で素晴らしいゴールだった。
ブライトンはゴールをきっかけにヒンシェルウッドが内側に絞るなど左サイドの旋回をビルドアップに加えることでユナイテッドのプレス隊を翻弄。前半終了間際には立ち上がりにあったプレスの手ごたえをユナイテッドは感じることができず。時間の経過とともにペースはブライトンに流れていった前半となった。
後半、左サイドからの崩しからスタートするなどブライトンのフィーリングは引き続き良好。ミルナーの抜け出し、ウェルベックとペドロの連携からのラインブレイクなどから前進し、ボックス内ではマグワイアの対応の甘さもあり決定機を迎えることができていた。
しかし、ユナイテッドもカウンターで応戦。ザークツィーを交代で投入した効果は前節同様すぐに出た感じはしなかったが、中盤からの加速で同点に追いつく。メイヌーとマズラヴィのコンビネーションからディアロのラインブレイクに成功。この日は対面の相手とのフィーリングが良くなかったディアロだが、ヒンシェルウッドが全力で戻って対応しなければいけなかった分、このシーンでは切り返しが刺さった。
このゴール以降もブライトンのバックスを晒すことでユナイテッドはゴールに迫る。ファン・ヘッケはかなり根性での対応を強いられる展開に。ユナイテッドはディアロを軸としての右サイドの崩しからガルナチョがネットを揺らすがザークツィーがアクロバティックなオフサイドでゴールを無効化してしまう。
終盤の展開はフラット。保持からブライトンも再び押し返して得点の匂いをさせるように。勝負を決めたのはセットプレーの流れからの左サイドのアディングラを起点とした崩し。ユナイテッドの守備陣がボールに全集中した分、ファーで余ったジョアン・ペドロがガラ空きになり、土壇場の決勝点を手にする。
開幕戦白星対決を制したのはブライトン。連勝で勢いにのり、次節はエミレーツに乗り込むことになる。
ひとこと
ブライトン、普通に90分間ずっとユナイテッドと互角以上に渡り合っている。ややWGのタスク過多は気になるけども、型を固めながら結果も出せているのはいいことに違いない。
試合結果
2024.8.24
プレミアリーグ 第2節
ブライトン 2-1 マンチェスター・ユナイテッド
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:32‘ ウェルベック, 90+5′ ジョアン・ペドロ
Man Utd:60′ ディアロ
主審:クレイグ・ポーソン
第3節 アーセナル戦(A)
退場が両軍の景色を変える
レビューはこちら。
共に3連勝を狙う両軍がエミレーツで激突。ボールを持つスタートとなったのはアーセナル。すでに今季のトレードマークとなりつつあるティンバーのインサイドへの絞りから打開策をうかがう。
ブライトンは中央をきっちり閉じることと、3人目のプレス隊として出て行くボールサイドのSHに対してCHがスライドすることの両立が求められる守備。一番使われるとまずいところをケアしつつ、ボール周辺にプレスをかけたい!という算段だろう。
アーセナルは外循環のポゼッションから安全地帯を探すことにトライする。外回りでも問題なかったのはサカとヒンシェルウッドのマッチアップ。特にエンド側から抜くことで三笘のダブルチームを無効化する形からの突破はかなりブライトンのボックス内の守備に動揺を与えていた。
もう1つ、リスクヘッジされたダメージの与え方はロングボール。前線に張るサカ、ハヴァーツに向けたキックをライスなどの中盤の押し上げで回収することで一気に攻め込む算段である。
先制点はこちらの形から。サカのロングボールに対して甘い対応となったダンクをフォローする形でファン・ヘッケが近寄ったタイミングで裏のハヴァーツにラストパス。1on1を難なく沈めたハヴァーツがブライトン戦でまたしてもゴールを決める。
守備でもアーセナルは盤石。バックスと挟み込む形でトーマスがボールを順調に回収。中に絞るヒンシェルウッドからの楔を防いでいた。外に流れるジョアン・ペドロはやや捕まえづらそうにしていたが、こちらも堅いバックスの守備で防ぐことに成功している。
試合の景色が変わったのは後半早々のライスの退場だろう。これによりブライトンが押し込むシーンが爆増する。アーセナルの得点の可能性を下げることはできていたが、ブライトンの得点の可能性が上がっていたかは微妙なところ。ブライトンの同点ゴールはミンテの抜け出しによってアーセナルのCB2人を釣ったところに入り込んだジョアン・ペドロが押し込むというもの。
これくらいスペース的に空きがないと今のブライトンの動的な攻撃は生きないように思う。カラフィオーリを投入して5バックに移行したアーセナルをボックス内から動かすことにブライトンはかなり苦戦。左サイドでは三笘とエストゥピニャンという懐かしコンビが結成されるが、きっかけを作ることができずアーセナルに跳ね返され続ける。
アーセナルもまたカウンターからチャンスを作るが、押し下げられた状態からのロングスプリントではなかなかシュートを決めるのは難しい。ハヴァーツの決定機は勝利をもたらす勝ち越し弾にはならなかった。
ひとこと
退場が両チームの景色を変えたけども、ブライトンが人が減ったことによってやりやすくなったかは微妙なところである。
試合結果
2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
アーセナル 1-1 ブライトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:38‘ ハヴァーツ
BHA:58’ ジョアン・ペドロ
主審:クリス・カヴァナー
第4節 イプスウィッチ戦(H)
またもブロック守備を崩しきれず
前節は10人のアーセナルを崩しきれなかったブライトン。ホームに戻っての一戦では昇格組相手に勝ち点3を積みたいところだろう。
ブライトンは中盤にアヤリとバレバ、2トップの一角にラターが入るなどキャスト変更を敢行。しかしながら、やりたい内容は大体いつもと同じという感じではあったので同じ方向性を異なるキャストで行う方向性なのだろう。
イプスウィッチは高い位置からのプレスで対抗。マンツーで枚数を合わせてというわけではないけども、前から奪いにくる意識は高く見えた。だが、クリーンにボールを奪いきれずに苦戦。ファウルが嵩んでしまい、攻撃に打って出ることができない。
GKを絡めたプレス回避でブライトンのビルドアップは安定。押し込んでからWGを軸とした崩しを狙っていく。だが、前節のアーセナル戦と同じく押し込んだ相手に対しての攻撃構築はもう一歩という感じであった。
自陣に押し下げられたイプスウィッチは自陣深くからライン間を狙うような鋭い縦パスからチャンスメイク。スモディクスやハッチンソンなど2列目の選手にボールを当てて前進のきっかけを掴みにいく。ロングボールは競り負けてしまいそうなので後方からパスを出すホルダーが前に当てる余裕を持てるかがイプスウィッチのポイントになる。
両チームは徐々に自分たちの形からチャンスを迎えるように。ブライトンは中央はウェルベックとラターのコンビネーションからのチャンスメイクが光る。この点は前節になかった崩しの新たな手札といった感じだろう。ラターの抜け出しからの三笘の決定機はムリッチのファインセーブに阻まれる。おそらくはこの試合で一番ゴールに近づいた展開だろう。
一方のイプスウィッチもデラップの抜け出しがオフサイド。それぞれのチャンスメイクが機能している展開だが、ゴールネットを揺らすことはできなかった。
後半も同じくブライトンが保持から動かしていく展開。サイドと中央にバランスよく配球を行いながらボールを動かしていく。一方のイプスウィッチも右サイドの直線的な抜け出しからデラップがゴールに迫る。角度のついた状況ではあるが、この角度からゴールを決めた実績もあるだけに怖いところだろう。
60分過ぎからボールを持てるようになったイプスウィッチだが、その保持が機能する時間はわずか。再びブライトンが保持で主導権を握り返し、交代した前線のメンバーからゴールを狙っていく。
だが最後までネットを揺らすことはできず。試合はスコアレスドロー。ブライトンは前節と同じくブロックを崩しきれないまま試合を終えることとなった。
ひとこと
ファーガソンの87分のシュート。ちょっとらしさが見えた。あと一息。
試合結果
2024.9.15
プレミアリーグ 第4節
ブライトン 0-0 イプスウィッチ
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
主審:サム・バロット
第5節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)
無敗対決は決着つかず
10人のアーセナルに、イプスウィッチとブロックを組む相手に対してなかなか仕留めきれないブライトン。今節はインサイドにヒンシェルウッド、SBにエストゥピニャンという組み替えをしながら勝負する。
SBをエストゥピニャンに代えたことでSBのタスクは若干変わった感がある。内側に絞ってビルドアップに参加するというヒンシェルウッドがやっていたタスクは放棄し、大外を駆け上がって三笘の相棒になることを優先事項として取り組んでいた。カディオールをベンチに置いてエストゥピニャンを起用したということはこれも撤退守備を壊すためのプラン変更の一つなのだろう。
フォレストはきっちり構えてのカウンターにフォーカス。1つ目のクリーンなカウンターからバレバがハドソン=オドイを倒してブライトンがPKを献上する。
ボールを持つ側になっていたのがブライトンだったこともあり、このゴールから展開は変わらず。押し込む相手に対して策があるのか?というのがこの試合のポイントなわけだけども、先に挙げた左サイドの関係性以外にもラターが右に流れながらの組み立てなどブライトンの工夫は見えた。中でも緩急をつけながらアイナと勝負し続けた三笘は素晴らしい戦いっっだr。
だが、精度のところはもう一つ。相手を崩し切るところの切り札はなかなか見えてこないし、その間もフォレストの厳しいカウンターが飛んでくるというタフな状況である。
その状況に耐えたブライトンは先制ゴールをゲット。遅れて入ってきたヒンシェルウッドがクロスに合わせてゴール。隠れたパワーヘッダーであるヒンシェルウッドがゴールをもたらす。
このゴールで試合の流れはよりアップテンポに。緊張感のある展開で笑ったのはブライトン。トランジッション合戦となった前半の終盤に三笘がこじ開けてのファウル奪取から得たFKをウェルベックが仕留めて逆転する。
後半もこのゴール同様ブライトンの左サイドのユニットからチャンスを作っていく。三笘とウェルベックの関係性は非常に凶悪。フォレストを自陣に釘付けにして追い込んでいく。
反撃の糸口が見つからないフォレストだったが、徐々にサイドでのカウンターに違いを見せて巻き返すと、ムリージョからの縦パスから一気に加速。ポゼッション型チーム顔負けの抜け出しからチャンスを掴んでみせた。
勢いに乗りたいフォレストだが、ギブス=ホワイトが退場。10人の相手に対してブライトンは総攻撃に出ていく。そのしっぺ返しのようにフォレストのカウンターを受ける場面も。何回かチャンスはあったが、最後のソサのラストパスが一番惜しいと言えるだろう。
試合はそのまま終了。終盤まで見応えのある試合は引き分けに終わり、両チームの無敗は継続となった。
ひとこと
特にフォレストはかなりプランの引き出しの幅が多くていいですね。
試合結果
2024.9.22
プレミアリーグ 第5節
ブライトン 2-2 ノッティンガム・フォレスト
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:42′ ヒンシェルウッド, 45′ ウェルベック
NFO:13′(PK) ウッド, 70′ ソサ
主審:ロベルト・ジョーンズ
第6節 チェルシー戦(A)
鬼のように攻略パターンがハマったチェルシー
前節はウェストハムを寄せ付けない完勝を果たしたチェルシー。今節はここまで無敗のブライトン。本格的な復調を印象付けるにはまたとない対戦相手といえるだろう。
序盤はブライトンの微妙な布陣の調整がうまくいった感があった。アンカーのウィーファーをゲームメイク役にして、SBのカディオールをライン間に出たり入ったりする役割を与える。ライン間にもともといたラターも加えて、チェルシーに縦パスの受けどころを絞らせない。
三笘もこれまでの相手に比べれば大外レーンでの固定が多かった。左サイドでグストにつっかける役割を担うと、特に序盤は馬力のあるドリブルからチャンスを作る。先制点もカディオールが縦パスのレシーバーとなり、ライン間で加速のスイッチを入れてから。ブライトンが幸先よくゴールを挙げる。
しかしながら、試合トータルで見れば攻撃のシステムが刺さったのは圧倒的にチェルシーの方だった。今のチェルシーは降りる選手が反転をすると、そこから一気に縦に進撃することができるというここ数試合際立っている攻め筋がある。
この日、ブライトンが捕まえきれなかったのはエンソ。降りるアクションから前を向くと、パーマー、ジャクソン、マドゥエケを裏抜け役にブライトンのハイラインを破壊し続ける。左サイドからポストでエンソの助けをするサンチョも非常に厄介。カディオールが1on1で止めきれないというのも含めてブライトンにとっては面倒な存在であった。
チェルシーの得点パターンはほぼこの形。中盤で前を向くまでのパターンはいくつかあったが、フリーマンから裏抜けで加速という動きは一緒。この形であっという間に2点を奪う。
1つはPK、1つは流れの中からゴールを決めて勢いに乗るパーマー。さらに衝撃の直接FKで前半の内にハットトリックを達成。自陣でのパスミスからバレバに一点を返されるチェルシーだったが、お構いなしという火力でまたしても追加点。左サイドに顔を出したパーマーが乱れたブライトンのDFラインを攻略し、4点目を手にした。
2点のリードを手にしてもチェルシーはプレスの手を緩めず。ブライトンはこのプレスを回避して、右から左に展開し三笘までボールを入れることが出来ればひとまず押し込む形は作れそうな予感。後半の三笘は完全に大外固定だ。
しかし、チェルシーも引くことなくハイラインで応戦。バックスも敵陣に入る攻撃的な姿勢でボールを奪うと、そこから縦への進撃で決定機を作る。抜け出すアクションが効いている割には決定力が伴わなかったのは惜しまれる部分だが、それでもブライトンよりははるかに効率的なチャンスメイクだった。
終盤、さすがにチェルシーはラインを下げたが、低い位置から敵陣にスルーパスを打ち込むパーマーは最後まで脅威に。後半はスコアこそ許さなかったブライトンだがチェルシーの前向きな姿勢に苦しめられる90分だった。
ひとこと
チェルシーの攻略パターンが鬼のようにハマった試合。前節のウェストハムもそうだが、潰し切る覚悟がないわりに生半可なハイラインを強いてくるチームにはとてもプランがハマりやすい。
試合結果
2024.9.28
プレミアリーグ 第6節
チェルシー 4-2 ブライトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:19’ 28‘(PK) 31’ 40‘ パーマー
BHA:7’ ラター, 34’ バレバ
主審:ピーター・バンクス
第7節 トッテナム戦(H)
交代選手を活かしたスリリングな逆転劇
中断期間前の最後のリーグ戦。この試合を持って順位は確定する。ブライトンとトッテナムは勝てば6位に浮上する試合である。
ペースを掴んだのはトッテナム。ボールを持つことを許されたトッテナムのバックスから中盤の開いた選手んパスを出していく。特に捕まえづらかったのはクルゼフスキだろう。柔軟に動いてはターンができるスペースを確保し、攻撃を促進。愚直に相手の背中をとるアタッカーにラストパスを送り続けた。
チェルシー戦と同じく、ブライトンはかなりバタバタした印象。同じ形の繰り返しに対応することができず、背中を取られ放題。ボックス内での危険な対応は相当に多かった。
序盤は決定機ミスやオフサイドで許してもらったが、オフサイドで許してもらった直後についに失点。ジョンソンのゴールでトッテナムは前に出る。
ブライトンも中央でポイントを作って縦に速い攻撃をしたかったところだが、中盤でオープンな選手を作るのに苦労。左サイドからの三笘を軸としたキャリーで反撃に出ること以外は有効となる前進の手段が見つからなかった。
先制点を喫した直後は押し込む時間を作り、ウェルベックは決定機を迎えたが沈めることはできないブライトン。逆に、トッテナムは前半の終盤にマディソンが素晴らしいミドルを仕留めてリードをさらに広げてハーフタイムを迎えることとなった。
2点を追いかけるブライトンは高い位置からのチェイシングをスタートし、試合の流れを強引に持っていこうとする。後半の最初にチャンスを作ったトッテナムが前半の続きの物語を始める予感もしたが、先にスコアに手をかけたのはブライトン。右サイドのミンテがヴィカーリオの守るゴールを破り追撃弾のスイッチを入れる。
トッテナムのパスワークは前半と同じくスピーディーなものであったが、サイドの縦を破るルートにフォーカスされており、そこにはブライトンのDFが待ち構えるというケースが出てくるように。単一ルート故の単調さが見えた分、前半以上の有効打になったかは怪しいという流れ。バレバがあらゆるところに顔を出してホルダーにプレッシャーをかけることで試合のテンポアップを強制的に促していたのも単調さの要因といえるだろう。
そんなトッテナムを尻目にブライトンは同点ゴールをゲット。後半頭から入ったエストゥピニャンが大外からジョンソンを置いていく形でオーバーラップを仕掛けると、三笘→ラターと難しいボールをつなぎながらのゴールで試合を振り出しに戻す。
ここから逆転ゴールまではあっという間。ウェルベックのゴールで完全にアメックスは着火することに。
初手の組合では手ごたえがあったものの、控えメンバーが若手有望株中心のトッテナムは交代選手が機能したブライトン相手に徐々に後手をふむように。ひっくり返された後半にすべてを失ったトッテナムが手痛い逆転負けを喫した。
ひとこと
ブライトンの同点弾は難しいプレーの連続。相手と味方がどこにいるかを把握したうえで正確にゴールまでのルートをつないだ三笘とラターはどちらもすばらしかった。もちろん、ゲームチェンジャーとなったエストゥピニャンも見事であった。
試合結果
2024.10.6
プレミアリーグ 第7節
ブライトン 3-2 トッテナム
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:48’ ミンテ, 58‘ ラター, 66’ ウェルベック
TOT:23‘ ジョンソン, 37’ マディソン
主審:デビッド・クート
第8節 ニューカッスル戦(A)
ワンチャンスで仕事をしたストライカー
ボールを持つ機会が多かったのはニューカッスルの方か。リヴラメントを除いた3人のバックスをベースに3-2-5を形成。やや外循環ではあるが、押し込むことに成功する。キーになったのは左サイドのポジション交換。ゴードン、ジョエリントンがレーンを変えながら敵陣に入り込んでいく。
サイドから押し下げるニューカッスルはイサクに決定機がやってくるが珍しく空振り。先制のチャンスを逃してしまう。
ブライトンはアンカーを管理しつつ高い位置からプレスをかけていきたい流れだったが、この狙いはやや不発気味。押し下げられる機会が多い立ち上がり。フェルトマンはボックス内の不安定な対応であわやハンドを取られてしまうという感じだった。
保持でも左サイドへのロングボールを狙う形は効果的だったかは微妙なところ。外循環でもショートパスで確実に進むニューカッスルの方が手応えがある展開だった。
しかしながら、この日はイサクが押し込む中で数回訪れるチャンスを決め切ることができず。決定力に優れるイサクらしからぬパフォーマンスで試合を優位に進め損ねるニューカッスルであった。
そんなニューカッスルを尻目にブライトンはワンチャンスを活かす形で先制点をゲット。ウェルベックは見事な一発回答ではあったが、ホールやシェアなど数的同数を受け入れたニューカッスルのバックスのコントロールの拙さが非常に目立った失点場面となった。
失点したニューカッスルは人をバタバタと追いかけ回して試合を活性化する。押し込むフェーズにおいてもゴードンが角度のあるところからゴールを狙っていくがこれはフェルブルッヘンがセーブ。ゴールを許さない。
後半、マンツーでのハイプレスをスタートして勝負に出ていくニューカッスル。前半と同じく左サイドのポジションチェンジを使いながらゴールに向かっていく。ゴードンは大外からの仕掛けだけではなく、右サイドからのクロスに入り込むアクションも織り交ぜながら。
ブライトンは6バックになる場面もありつつ、サイドを固める守備から相手のプレスをひっくり返すことで敵陣に入り込んでいく。三笘が入ってくると徐々にブライトンは通常影響に。左右のWGを起点にした定点攻撃で少しずつ展開にフラットにしていく。
らしいポゼッションも少しずつ。外のポイントを作りつつ、インサイドは細かいパス交換からコンビネーションの打開で敵陣に迫っていく。
終盤戦は非常にオープン。どちらのチームにもチャンスはあったが、よりゴールに迫ったのはニューカッスル。だが、ラインを上げてコントロールしたブライトンがきっちりオフサイドを取ってこれをシャットアウト。見事に逃げ切りに成功した。
ひとこと
ストライカーのタイパがそのままスコアに現れたようにみえた。
試合結果
2024.10.19
プレミアリーグ 第8節
ニューカッスル 0-1 ブライトン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
BHA:35′ ウェルベック
主審:ピーター・バンクス
第9節 ウォルバーハンプトン戦(H)
明暗を分けたカウンター
ボールを持つのはブライトン。ウルブスはブライトンに対してボールを持たれることを許容。中央をきっちりと固め、縦方向にコンパクトな守備を敷くことでブライトンの攻撃をつなげるポイントを封鎖する。
ブライトンは外循環をしつつ、大外のWGからこじ開ける作業に着手。しかしながら、単調なクロスに終始してしまい、なかなか打開策を見出すことが出来ず再び試合は停滞する。
ウルブスの保持は左サイドから変化をつけていく。レミナのサイドフローからアイト=ヌーリが高い位置を取って相手のSHを押し下げることでブライトンの2CH脇に起点を作っていく。
ブライトンが人数をかけて押し込んでくる分、ウルブスはカウンターからチャンスを作りたいところ。しかしながら、3トップを軸にした前線のスピーディーなカウンターはいつもよりも割引。こちらも保持に回るとブライトン同様にジリジリとした展開が続くこととなる。
どちらも保持において解決策が見えない堅い展開。アヤリの前線への飛び出しなど、ブライトンの方がややアクセントをつけたかのように見えた。
堅い展開がわかりやすいミスによって動き出すというのはよくある話。この試合も例外ではなかった。ジョゼ・サのフィードミスからブライトンがカウンターを発動。ラター→ウェルベックであっさりとゴールを陥れる。慎重に慎重に運んでいたウルブスのゲームプランが一本のパスで台無しになった瞬間であった。
後半、ウルブスは4-4-2にシフトチェンジ。ただ、特に噛み合わせたところでプレスを強めに当てていくわけでもない。この変更はどちらかといえば攻撃で前により人をかけたいという方向性のものなのかもしれない。保持ではドイルがサリーをするが、変形のズレによって明確に前進のルートが開かれることもない。
保持で噛み合う相手に対してジリジリとした展開がつづく両チーム。後半の時間が経過すると、ライン間に入り込むアヤリやサラビアから少しずつ前進のきっかけをつかんでいく。
再び得点の匂いがする流れの中で次にスコアを動かしたのはブライトン。カウンターからファーガソンがゲット。久しぶりのゴールとなった若きエースの追加点でブライトンがつきはなす。
だが、直後にアイト=ヌーリがゴールを決めると再び展開はわからなくなった状態で追加タイムに。先に絶好機を迎えたブライトン。だが、極端な数的優位を前にウィーファーが痛恨のパスミス。このパスミスからのカウンターをクーニャが沈め、ウルブスは終盤に劇的な形で追いつくことに。
試合を決めるカウンターを失敗したところから地獄に突き落とされたブライトン。ファーガソンの久々のゴールを勝利に結びつけることはできなかった。
ひとこと
あまりにも切ない幕切れだった。カウンターの失敗もそうだけども、そのあとのブライトンの対応はちょっともっさりしていたなぁ。
試合結果
2024.10.26
プレミアリーグ 第9節
ブライトン 2-2 ウォルバーハンプトン
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:45′ ウェルベック, 85′ ファーガソン
WOL:88′ アイト=ヌーリ, 90+3′ クーニャ
主審:マイケル・オリバー
第10節 リバプール戦(A)
モデルチェンジしたブライトンを後半にとらえる
とにかくブライトンの変わり種っぷりが目につく前半だった。これまでは割と4-1-2-3をベースにした定型のところかボールを前に進めていたチームだが、この試合ではCHのサリーに加えて、CBの列上げなども含めてかなり複雑に移動しまくっていた。
CHがサリーし、リバプールのWGを前に引き出すことでブライトンはリバプールの陣形を4-2-4にする。中央はリバプールのプレスを自陣に引き寄せて、形を生かして奥行きを作り出すのがポイント。隙があればブライトンは縦関係のCHにパスを入れて真ん中に強気でパスを入れる。この辺りはほんのりデ・ゼルビ感を感じるところもあった。
中央にフォーカスしつつ、サイドはシンプルに活用。中央に目線を集めたところから対角パスでエストゥピニャンのところから一気に前進する。サラーの背後に忍ぶエストゥピニャンはビルドアップを免除されており、ここから一気に前にボールを進めることができる。アーセナルはリバプールのCHをサイドにスライドさせたギャップをトロサールに使わせたが、ブライトンはシンプルに中央にCHを釘付けにしてサイドの空いたスペースを使うイメージである。
アタッキングサードで勝負するのは三笘のところから。中央の縦パスが通っても、サイドからシンプルに進んだとしても出口になるのは三笘である。左サイドの三笘はカバーにやってくるコナテと対峙。体を当てられるとめんどくさいので、寄られる前に素早くリリースする選択肢を選んでいたのが印象的だった。
先制点もこの形から。左サイドの三笘からアウトサイドにかけたパスを逆サイドに展開。カディオールが右足を振り切って先制点を決める。
リバプールも中央の3センターの細かい関係性構築と左サイドのガクポのポストを使った前進からブライトンのゴールに迫る。だが、プレスに対して覚悟の決まったつなぎを見せたブライトンの方がチャンスメイクとしては上。優勢のままハーフタイムを迎える。
後半は一転してリバプールペース。交代で入ったゴメスがいきなり決定機を迎えると、そこからオープンなトランジッション合戦に突入。ややアバウト感が先行しているブライトンに対して、3トップの特性にフィットしているリバプールの方が効果的な攻撃を繰り出せるように。
押し込む機会が増えたリバプールはハイプレスからの圧力で前半は効いていたブライトンのポゼッションも封殺。一方的に攻撃を重ねていく。
すると左サイドからガクポが上げたクロス性のボールがゴールイン。同点に追いつく。反撃に出たいブライトンは攻勢に出るが、カウンターから逆にピンチに。晒されてしまったエストゥピニャンはサラー相手に何もすることができず、一気に逆転を許してしまう。
終盤は受けに回りながら試合をクローズしたリバプール。プレスに出ていく体力はもうなかったブライトンに対して、最後は遠藤が引き締めを図りリバプールは逃げ切り。逆転で首位を奪い返す勝利を手にした。
ひとこと
ブライトン、今季ここまでと別のチームみたいな前半のアプローチだった。
試合結果
2024.11.2
プレミアリーグ 第10節
リバプール 2-1 ブライトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:70′ ガクポ, 72′ サラー
BHA:14′ カディオール
主審:トニー・ハリントン