エバートン、24-25シーズンの歩み。
第1節 ブライトン戦(H)
若き指揮官はロケットスタートを決める
功労者であるデ・ゼルビに別れを告げ、31歳のヒュルツェラーと新しいチャレンジに臨むこととなったブライトン。年下の指揮官のチームの記事を書くのはあまりない経験である。
戦い方がわかりやすいダイチのエバートンは今季のブライトンのスタイルを観察するのにうってつけであった。ロングボールベースのエバートンに対しては、ライン間を圧縮しながら潰すように対抗。そのため、DFラインは非常に高い傾向になる。
よって、エバートンの狙い目はロングボールのターゲットのCFの背後。キャルバート=ルーウィンを追い越すように出て行くドゥクレが非常に目立つ立ち上がりとなった。オフサイドにかかることもありながら、時折押し返すことに成功するエバートン。お馴染みのファーに待ち構えるCBを生かしたセットプレーからネットを揺らすが、オフサイドで惜しくもこれは認められなかった。
時間の経過と共に保持が増えるブライトン。ビルドアップは左右に大きく広がる形がベース。SBが長いパスのレシーバーになるのだが、SBからのボールの出しところとして、WGの三笘orミンテ、IH役のペドロorミルナーがそれぞれ内外でレーンを分けながらボールを引き出す。
これまでであればWGは大外固定だが、今季のブライトンは異なるようだ。低い位置まで下がって引き取りつつ、内側にドリブルで運ぶなど、大外との仕上げ役とは少し異なるタスクを背負う形になっている。守備でも逆サイドにボールがあるときにSHまでスライドに行くなど、今季のブライトンのWGはハードワークを課されている。
序盤はスティールを中心にバックスからSBへの長いレンジのパスが安定せず、自陣でのパスミスが多かったブライトンだが、徐々にサイドからの攻勢が安定。特に右サイドのミンテのスピードを生かしたアタックが光る。WG→WGとなった三笘の先制点はこの日のブライトンの狙いが活きたゴールだった。
後半、エバートンはハイプレスの成功からPKを得るが、OFRで取り消し。めっちゃチャンスだったのに笛を吹かれた結果、取り消されてチャンスごとなくなりました!というのはエバートンにとってはかなり不憫なものであった。
逆にブライトンはゲイェの持ち上がりのミスをひっくり返す形で追加点をゲット。ウェルベックがさらにエバートンを突き放すゴールを叩きこむ。
このゴールで意気消沈したエバートン。長いボールの対応で三笘に入れ替わられてしまったヤングが一発退場に追い込まれると試合はさらにブライトンペースに。途中交代のアディングラが仕上げの3点目を決める完勝劇を締めくくる。
欲を言えば終了間際のアヤリのゴールも認めてもらえば満点だっただろうが、これはわずかにオフサイド。とはいえ、ブライトンはまずは好発進。ヒュルツェラーのプレミア初陣は大勝による首位スタートとなった。
ひとこと
序盤は危なっかしかったブライトンだったが、エバートンがもたもたしている間にリズムをつかんだ。
試合結果
2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
エバートン 0-3 ブライトン
グディソン・パーク
【得点者】
BHA:25′ 三笘薫, 56′ ウェルベック, 87′ アディングラ
主審:サイモン・フーパー
第2節 トッテナム戦(A)
ド派手な4得点のゴールショーで今季初勝利
開幕節ではレスターに不覚を取ってしまい、3ポイントを手にすることができなかったトッテナム。エバートン戦では何とかして今季初白星を挙げたいところだろう。
立ち上がりからゆったりとボールを持つことになったのはトッテナム。相手のプレスがバックラインまで来ないことをいいことに、ゆったりとボールを持つスタート。内側をきっちり閉じられているため外循環にはなるが、オドベールのお披露目にはちょうどいい流れだったかもしれない。
基本的には対角にパスを飛ばしつつ、マディソンの裏抜けというアクセントも挟むトッテナム。大外からガンガン攻め込むルートを開拓したトッテナムは押し込む流れからセットプレーからチャンスを作っていく展開となる。序盤からピックフォードは大忙しである。
押し込むトッテナムは順当に先制点をゲット。ブロック全体が圧縮されていることを利用し、ビスマのミドルでブロックの外から打ち抜くことに成功する。
ハイラインを手早くひっくり返すことで反撃を狙いたいエバートン。しかしながら、かなり強気のライン設定のトッテナムをなかなかひっくり返すことができずに苦戦が続く。
粘りのセーブを見せていたピックフォードもコントロールミスからトッテナムにプレゼントゴールを献上。逆噴射でさらにリードを広げられてしまうことに。開幕戦であまりうまくいかなかったソンにとっては大きなゴールといえるだろう。
後半はトッテナムが押し込みながら解決策を思案していた前半に比べると、互いに攻めあうという非常にアップテンポな展開に。そうした中でもどちらかといえば優勢だったのはトッテナム。エバートンのバックラインを背走させる機会を作っており、よりクリティカルに敵陣に攻め込むことができていた。
エバートンの巻き返しは選手交代に伴い、中央にマクニールが移動したタイミングから。機動力のあるマクニールに対して、トッテナムの中盤は後手を踏んでしまい、ややエバートンに攻め筋を作ることを許してしまう。
しかしながら、スコアを動かしたのはまたしてもトッテナム。セットプレーからロメロが仕留め、完全に試合を終わらせる追加点を決める。
ゴールショーのトリを飾ったのはソン。カウンターから左サイドを打ち破ると、角度のないところからゴールを仕留めてこの日2点目。速攻からのソンらしい高い決定力で大量得点劇の最後を飾った。
終わってみれば4得点。ホーム開幕戦はド派手なゴールショーでトッテナムが今季初勝利を収めた。
ひとこと
ラインを下げさせられてしまって、ブロックの外から打ち抜かれてしまうとエバートンは苦しい。押し返す手段の薄さも苦しい。
試合結果
2024.8.24
プレミアリーグ 第2節
トッテナム 4-0 エバートン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:14’ ビスマ, 25‘ 77’ ソン, 71‘ ロメロ
主審:アンソニー・テイラー
第3節 ボーンマス戦(H)
スリリングな逆転劇でまたしてもエバートンは初勝利を逃す
ここまで連敗で最下位に沈むエバートン。ホームで何とか今節は今季初勝利を手にしたいところである。
そんな意気込みが前面に出る形で今節も激しい前プレからスタートしたエバートン。しかし、ボーンマスはハイプレスに落ち着いて対応。2CB+GK+アンカーのクックを使った広いポゼッションからエバートンのプレスを返り討ちにしていく。プレスの捕まえどころが見えないエバートンは徐々に撤退を余儀なくされるように。
しかしながら、ハイプレスが機能しなくてもエバートンが主導権を握れないわけではなかった。この日のボーンマスは4-4-2で構えるものの、ブロックの網目が粗く、ライン間に差し込んだ選手が簡単に前を向ける。
マクニール、ゲイェといった選手の列落ちに対してもフリーズしてしまったボーンマス。降りる中央の選手でギャップを作ると、内側への斜めのランからWGの裏抜けで攻撃を完結させに行く。裏を狙うパスの出し手としてイロエブナムは悪くはなかった。
一方のボーンマスもポゼッションからチャンスメイク。左右に落ちてゲームメイクするクックからボールを散らしつつ、こちらもライン間を除きながら攻略に挑んでいく。初手でエバートンのハイプレスが外されて以降は構える中盤に対して解決策を探る展開となったし、両軍それなりに道を敷くことができた前半だったといえるだろう。
だが、後半の立ち上がりの展開はエバートンに大きく傾く。セットプレーからキーンが早々にネットを揺らすと、その7分後には右サイドの縦関係から抜け出したコールマンがキャルバート=ルーウィンのゴールをアシストする。
2点のリードを得てもなおアグレッシブな姿勢を見せたエバートン。敵陣からボーンマスにプレッシャーをかけていく。苦しくなったボーンマスだが、アタッカーの投入で少しずつ反撃に。特に左のハーフスペースに入り込むシニステラから少しずつテンポを引き戻していく。
エバートンのプレスをひっくり返せるようになったボーンマスは左サイドからのクロスをセメンヨが仕留めて1点差に。この時点で時計の針は87分であった。
だが、このゴールが劇的な逆転勝利のきっかけだった。90分過ぎには後方から飛び出した状態でクックがゴールを仕留めて追いつくと、最後は勢いのままにシニステラがゴール。枚数が揃っておらず、いる人のカバーの意識が希薄なエバートンの守備ブロックを一気に叩きのめす。
2点のビハインドから一気に試合をひっくり返したボーンマス。10分で3点を仕留めるスリリングな逆転劇でグディソン・パークを静まり返らせた。
ひとこと
2点リードで枚数が揃っていないようなクロスの受け方を終盤にすること自体がダイチのエバートンらしくないし、ゲイェのサボりなど失点における個々人のディティールの雑さも今のエバートンの強みと反している感じがする
試合結果
2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
エバートン 2-3 ボーンマス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:50’ キーン, 57‘ キャルバート=ルーウィン
BOU:87’ セメンヨ, 90+2‘ クック, 90+6’ シニステラ
主審:スチュアート・アットウェル
第4節 アストンビラ戦(A)
悪夢が過ぎるエバートンを絶好調のスーパーサブが仕留める
開幕3戦で3連敗。中でも前節はあっという間に2点のリードを溶かしてしまうというパンチのある負け方をしてしまったエバートン。ビラ・パークという難所ではあるが、なんとか勝ち点をもぎ取っていきたいところである。
前節の反省をしたのかエバートンは前からプレスに出ていかないプラン。トップの守備位置は中盤スタートであり、ガッチリとブロックを組む。
引きながらも人についていく形がメインのエバートン。ビラはいつもよりも細かくレーンを変える斜めのランを頻発して少しずつズレを作る。例えば、序盤のハーフスペースに突撃したラムジーがボールを持ちながらサイドに流れて、ハーフスペースに遅れて突撃したティーレマンスがフリーでクロスを挙げたシーンなどは一例と言える。
このように保持からブロック攻略を取り組むビラは優勢。エバートンは時折見せるハイプレスも空振りが続き苦戦する。しかし、先制点はエバートン。その空振り続きのハイプレスでオナナを咎めることに成功すると、マクニールがタイミングを外す技ありのシュートでマルティネスが守るゴールマウスを撃ち抜く。
さらには、エバートンはセットプレーから追加点まで手にする。自慢の打点の高さを発揮したキャルバート=ルーウィンがセットプレーからネットを揺らし、リードを広げる。ここまでは前節と同じシナリオだ。
追いかけるビラは前半のうちに1点を返す。左サイドからのふわっとしたクロスをワトキンスが叩き込み追撃。ようやくエースが目覚めてゴールを決めた。
後半、アストンビラはバークリーが登場。前節も登場とともに左右に動かしながらポゼッションの礎を取り戻したバークリーは今節もビラに安定をもたらす。オナナは前半に痛めるシーンもあったため、完全にタクティカルな交代とは言えないが、少なくとも実際の効果としてポゼッションの傾向に変化はあった。
押し下げられるのを嫌がるエバートンはプレスを強めるが、ここはアストンビラが一枚上手。押し込みながらエバートンのブロック攻略を狙っていく。それであればということでエバートンはキャルバート=ルーウィンのカウンターで少ない手数で押し下げにいく。エバートンが縦に速い選択をした結果、少しずつ展開はアップテンポになっていく。
オープンな状況でスコアを動かしたのはアストンビラ。左サイドからのクロスに反応したハリソンが不運な形でゴールをアシスト。前節に続いてエバートンは2点のリードを溶かしてしまう。
このゴールでエバートンのイレブンは完全に意気消沈。自陣から出ることができない状態が続き、ひたすら耐える展開に。そのエバートンとは対極であるノリに乗っているデュランがこの試合のマッチウィナー。衝撃のミドルを叩き込み、これで途中出場の3試合でゴールを決めたこととなった。
落ち着いて逆転勝利を引き寄せたアストンビラとまたしても2点差からの逆転負けを喫したエバートン。ダイチにとっては代表ウィーク明けも苦しい状況が続くこととなってしまった。
ひとこと
ビラの2点目でエバートンの心が折れる音が聞こえてきたような試合だった。
試合結果
2024.9.15
プレミアリーグ 第4節
アストンビラ 3-2 エバートン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:36′ 58′ ワトキンス, 76′ デュラン
EVE:16′ マクニール, 27′ キャルバート=ルーウィン
主審:クレイグ・ポーソン
第5節 レスター戦(A)
沼生活は終わらない
ここまで未勝利が続いている両軍の一戦。勝った方が未勝利沼から抜け出すことができるし、負ければ相手を勢いづかせることに繋がってしまうという重要な試合だ。
序盤からボールを動かす立場になったのはホームのレスター。3-2-5もしくは2-3-5と後方の陣形を変えながら、エバートンの4-4-2のブロックに向かっていく。陣形自体はズレも作れているし、そこまで悪くはないのだけども、いかんせんショートパスの強さの加減がバグっており、受け手のコントロールが乱れることもしばしば。狙ったようにズレを使える展開ではなかったのが悔やまれる。
それでもインサイドにパスを差し込むことが出来れば、そこから左右にボールを動かすことが出来るレスター。真ん中のポイント作りが深さの伴った前進の可否に関わってくる。
一方のエバートンはシンプルにサイドの裏から反撃。インサイドに絞ったり、あるいは高い位置を取ったりなど、持ち場を離れることの多いレスターのSBの背後を主にマクニールが使うところから少ない手数で陣地回復。敵陣に入ってブロック守備を組まれたら左右のサイドから旋回で攻撃に打って出る。
先制したのはエバートン。左サイドの攻撃が有効打に斜めに入り込んだエンジアイを捕まえることが出来ず、レスターはヤングのスルーパスを通すことを許してしまう。このまま、エンジアイが先制ゴールをゲット。レスターはあっさり入れ替わられたジャスティンとあっさりインサイドを捨てたファエスの連携が致命傷となった。
30分以降は雨が強まり、試合はシンプルな手数で前進をすることが出来るエバートンペースに。レスターは失点前後から少しずつ苦しい展開に追い込まれていく。
後半もレスターはボールを動かしていくスタート。後半開始を遅らせた判断にも関わらず、雨は結構降っている様子だったが、前半よりは動かせているのを見るといくばくかはましだったのかもしれない。
レスターは左サイドからマヴィディディを軸に旋回を仕掛けていく立ち上がりに。この辺りは前半のエバートンのゴールをリスペクトしているかのような似ている崩し。エバートンもこれに対抗するようにサイドからボールを動かしながら、ズレを作りに行く。
後半の中盤は互角に組みあい、攻撃の機会は均等に与えられていたが、どちらもゴールにたどり着くことはできず。試合はゴールチャンスのない膠着した展開になる。
リードしているエバートンとしてはうってつけの展開ではあったが、終盤のセットプレーでレスターは追いつくことに成功する。何とか巻き返したいエバートンだが、前節以前と同じ追いつかれる展開に意気消沈気味。終盤のレスターも精度が足りず、押し込む状況で勝ち越しゴールを決めることはできなかった。
未勝利対決は勝者不在。両チームの沼生活はまだまだ続くこととなる。
ひとこと
エバートン、らしくない勝ち点の落とし方が続いており心配。毎試合リードは取れているのだけども
試合結果
2024.9.21
プレミアリーグ 第5節
レスター 1-1 エバートン
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:73′ マヴィディディ
EVE:12′ エンジアイ
主審:ダレン・イングランド
第6節 クリスタル・パレス戦(H)
4回目の正直で未勝利沼脱出
前節に続き未勝利対決に挑むエバートン。自チームと同じく不調にあえぐパレスを叩いて何とか上位浮上のきっかけを作りたい。
互いに相手のバックスにはボールを持たせてOKというスタンス。インサイドをきっちり閉めることで、保持側にクリティカルなパスを通されることをとにかく避けたいという姿勢だ。
どちらのチームも非保持のブロックは悪くなかったが、特に目立っていたのは鎌田とウォートンのパレスのCHコンビ。シャープなボール奪取でエバートンの攻撃を寸断する。
そんないい流れが響いたのかパレスはセットプレーから先制点をゲット。ウォートンのファーへのクロスの折り返しをグエイが沈めてスコアを先に動かす。
リードを許したエバートンだが、特にプレスの強度を極端に引き上げることなく淡々と攻略ルート探しに終始。中央が少し硬いので、トップ下のマクニールがサイドの裏に流れるなどオフザボールの動きに変化をつけていく。だが、このルートはグエイの先読みが効いており、パレスが優勢。セットプレーからのチャンスメイクや中央からのボール配球が安定したパレスは得点以降もエバートンに流れを渡さずに時計の針を進めていく。
ただし、エバートンも中央の守備は相変わらず堅い。互いに縦のパスを引っかけ続け、なかなかチャンスを作れない展開のまま、試合はハーフタイムに突入した印象だ。
後半も似たような渋い展開になりそうなところを早々に変えたのはエバートン。マクニールがミドルで仕留めたこのゴールで勢いに乗ると、さらにはハリソンからマクニールへのルートでエバートンは一気に逆転に成功する。
パレスはスコアをひっくり返されたことでバタバタ。試合のリズムを失ってしまい、エバートンに苦しめられる後半の立ち上がりとなった。
ようやく押し込めるようになったのは60分過ぎ。サイドに枚数をかけた攻撃からクロスを上げたり、対角のパスで薄いサイドを作ったりなど攻め筋の工夫は確かに見られた。
しかしながら、ここ数試合の逆転劇を教訓にするかのようなエバートンの落ち着いた水際対応を前になかなかゴールを脅かすことが出来ない。
最後までボールを動かしていくアプローチは捨てなかったパレスだが、終盤は逆にエバートンにボールを持たれなおして押し返される展開もしばしば。時計の針を順調に進めることに成功する。1点差を守り切り、ついに成立した塹壕戦からの逃げ切り勝利のパターン。4度目の正直に成功したエバートンが一足先に未勝利沼からの脱出に成功した。
ひとこと
この試合での落ち着きがあれば、少なくとももう3くらいは勝ち点を取れていそうなエバートン。マクニールの連続ゴールが流れをかえるきっかけになるか。
試合結果
2024.9.28
プレミアリーグ 第6節
エバートン 2-1 クリスタル・パレス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:47’ 54‘ マクニール
CRY:10‘ グエイ
主審:アンディ・マドレー
第7節 ニューカッスル戦(H)
因縁のPKはネットを揺らさず
前節、未勝利の沼から脱出したエバートン。今節は上位を伺うニューカッスルとの一戦である。
立ち上がりはどちらのチームもバックスに制限を強引にかけない立ち上がり。エバートンは4-4-2、ニューカッスルは4-5-1のブロックでライン間を狭めながら制限する。コンパクトな守備ブロックへの対策はまずは裏抜け。キャルバート=ルーウィンが裏に引っ張ることでまずはライン間を開けにいく。
ニューカッスルはよりライン間にパスを刺しにいくイメージだった。4-3-3から3-2-5への変形など人についてくる意識の強いエバートンの守備を利用し、動的な成分を入れてライン間への侵入を狙っていく。ニューカッスルの選手たちの背中をとるアクションへの忠実さはなかなかであった。
隙があれば当然縦に早く出ていくというのは両チームの共通項。ポゼッションだけでなく、縦に鋭い少人数での攻撃を特にエバートンは狙っていた。
一進一退の攻防続く中で先制のチャンスを得たのはエバートン。キャルバート=ルーウィンの粘りからのポストでクロスを上げにいくと、これをドゥクレが叩き込む。しかし、このゴールはオフサイドで無効に。直前のギマランシスのシュートはエンジアイがライン上でクリアを果たしてこっちらも水際で踏みとどまる。
それでも押し込むニューカッスルはセットプレーからPKを獲得。ターコウスキのご乱心から勝ち越しのチャンスを献上してしまうが、ゴードンのPKはトップ。以降はエバートンが少しずつ高い位置から追いかける展開を作り出すが、カウンターにまでは動けず。チャンスが少ない展開でハーフタイムを迎えた。
PKの失敗を早めにリカバリーしたいニューカッスル。後半は高い位置からのチェイシングからゴードンの右の裏への抜け出しを入れてのファークロスという明確な手段でゴールに向かう。前半はゴードンがトップに入っていたが、後半はバーンズが中央に常駐し、両サイドにゴードンがフリーで動くイメージであった。
エバートンはなんとかこのラッシュを乗り切ると、少しずつボールを持ちながら落ち着くことに成功。ロングカウンターでひっくり返すのではなく、ジリジリと押し下げることで反撃に出る意外な前進だった。左右に動かしながら自分たちの時間を作ることでニューカッスルに一方的な攻勢を許さない。
ニューカッスルはボールを持ちながらプレスを誘発することで敵陣にスペースを作り出す展開にシフト。保持でやれるチームのリスクを背負い敵陣をこじ開けにいく。
しかしながら、どちらのチームもゴールを奪うことができず。試合はスコアレスでの決着となった。
ひとこと
上位を伺うにはなんとか勝ち点3が惜しかったニューカッスルだった。ゴードンのPKがこの地で決まらないのは因縁を感じる。
試合結果
2024.10.5
プレミアリーグ 第7節
エバートン 0-0 ニューカッスル
グディソン・パーク
主審:クレイグ・ポーソン
第8節 イプスウィッチ戦(A)
柔軟なゲーム運びを見せたエバートンのCH
立ち上がりからリズムを掴んだのはエバートン。ハイプレスに出ていくことでイプスウィッチのバックスを苦しめにいく。エバートンのハイプレスをひっくり返したいイプスウィッチだが、自陣でのパスワークでエラーが発生。キャルバート=ルーウィンのショートカウンターを喰らってしまう。
全体的にパワーで押し潰されている感が強いイプスウィッチ。エバートンはサイドから深い位置を取ることでイプスウィッチの陣内に踏み込んでいく。
先制点を決めたのはエンジアイ。見事なシュートであったが、イプスウィッチのボックス内でのボール処理の甘さが際立ってしまった印象だった。
反撃に出たいイプスウィッチは密集に強引に1人で突っ込んだクラークがPKをゲット。だが、これはOFRでノーファウル判定に覆ってしまった。
30分が過ぎたあたりから少しずつイプスウィッチが押し込む流れに。3-2-5の変形から敵陣に入り込んでいく。エバートンの守備はサイドを埋めることを優先。自陣に構えるエバートンはカウンターで一発でひっくり返すことを狙っていく。
そのエバートンはセットプレーから追加点。CKで角度のないところからキーンがゴールを奪う。
イプスウィッチは高い位置からのチェイシングを後半も継続。このプレスを回避するのに効いていたのはエバートンのCHコンビ。結構硬質なキャラクターのコンビかなと思ったが、保持もまぁまぁいける感じ。特にドゥクレは低い位置からのパスを散らしつつ、高い位置に顔を出しては攻撃参加。ボールを動かすことによってプレーを柔軟に変える姿が素晴らしかった。
そんなこんなでエバートンはイプスウィッチの守備を背走させることに成功。後半も試合を優勢に進めていく。この点ではイプスウィッチはうまくエバートンを追い込むことができなかった。デラップは馬力はあるが、動きが直線的であまり刺さっていたように見えなかった。
このようにイプスウィッチは延々とスイッチが入らない展開が続く。保持では効果的な前進ができないし、プレスのきっかけを掴むことができない。
このままエバートンは逃げ切りに成功。力比べできっちり上を行ったエバートンがイプスウィッチを正面から押し潰して見せた。
ひとこと
序盤から優勢だったエバートン。似たような強度勝負ではやはり一枚上手だった。
試合結果
2024.10.19
プレミアリーグ 第8節
イプスウィッチ 0-2 エバートン
ポートマン・ロード
【得点者】
EVE:17‘ エンジアイ, 40’ キーン
主審:マイケル・オリバー
第9節 フラム戦(H)
ベトの男泣き同点ゴール
前節は好対照の結果だった両チーム。だが、今節は両軍ともにフラットにどちらのものでもない形でスタートをする。
均衡した展開の中、少しずつ保持の時間を増やしていくのはフラム。4-3-3に変形するいつもの形から中盤に守備のスタート地点を定めたエバートンに対して、ゆったりとボールを動かしていく。アクセントとなったのは左サイド。ロビンソンを前に押し出す形でイウォビやスミス・ロウが低い位置に落ちて、エバートンの守備の基準を動かしにいく。相手が動けば奥やライン間を取ることで前進していく。
エバートンはカウンターがベースとなるスタート。しかしながら、フラムのプレスバックが早く、キャルバート=ルーウィンの落としからボールを受けたサイドアタッカーがなかなか自分のペースで駆け引きをすることができない。
フラムに限らず、この試合の守備側はそこまで変なアクションをしないことで試合を引き締めていた。裏を返せば、それだけチャンスが少ない試合だったのだけども。20分前後は特に試合は固く、ハイプレスに出た分、フラムがエバートン陣内で生まれたミスに対して、チャンスがあったくらいだろう。
エバートンは30分を過ぎると前節のようなポゼッションから敵陣に入り込んでチャンスを作る。ゲイェのミドルシュートから生まれたゴールは素晴らしいものであったが、わずかなタイミングでこれはオフサイドに。
それでもエバートンはこうした緻密なパス交換からフリーマンを作る動きから、フラムは右サイドからのクロスに対して、ヒメネスを囮にファーにMFが走り込む動きからチャンスメイク。クロスやラストパスが合えばチャンスになるだろうというところまで持ってくることができたところでハーフタイムを迎える。
後半の頭は共に重たい展開。裏に蹴りだす安全策から両チームともにらみ合いがスタートする。時間の経過と共にボールを持つようになったのはフラム。押し込みながらエバートンに対して解決策を探りに行く。
刺さったのはまたしても左サイドのアーセナルコンビ。低い位置から素晴らしいドライブで相手を翻弄したスミス・ロウの助けを受けて、イウォビがゴールを決めて試合を動かす。
以降は追いかけなければいけないエバートンに対して、フラムがプレスをいなしながらひっくり返すことに注力。ネルソンが加わった2列目はオール・元アーセナル。3人のアタッカーが自在にエバートンのゴールに向かっていく。
少し風向きが変わったのはベトを加えて前線を2トップにしたところからだろう。強引な前線への供給が増えたことで、ほんのりエバートンは盛り返し始める。
すると、後半追加タイム。引いて5バックになるフラムに対してエバートンは大外のヤングに向けたクロスを折り返してベト。土壇場のゴールはチームを救う一撃。ベトがようやく救世主としての仕事を果たし、何とかフラムから勝ち点1を奪い取った。
ひとこと
イケイケの時間に追加点が欲しかったフラム。ベトの男泣きはぐっと来た。
試合結果
2024.10.26
プレミアリーグ 第9節
エバートン 1-1 フラム
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:90+4′ ベト
FUL:61′ イウォビ
主審:ジョン・ブルックス
第10節 サウサンプトン戦(A)
賭けに出た4-4-2が初勝利を切り拓く
最下位のサウサンプトン。ここまで僅か1ポイントという勝ち点的には非常に苦しい推移。1試合でも早くきっかけを掴みたいところだろう。
今日も元気にショートパスから相手を動かしていくサウサンプトン。エバートンは高い位置からプレスにくるが、ここに関してはまずは回避に成功。リスタートを狙ったラムズデールからのパスワークや、左右に大きく振ることでエバートンのプレスを振り切る。
その一方で敵陣に入り込んだところからの攻撃の手段があるわけではないサウサンプトン。それは押し下げられたエバートン側も全く同じ事情。カウンターに打って出るもサウサンプトンを出し抜くことができるような刺さる攻撃ができるわけではない。
と言うわけで基本的にはとても決定機が少ない展開に。どちらが攻撃している間でも非保持側が優位であり、相手のバックラインを動かすことはできなかった。
前半の終盤に少しチャンスが出たのはサウサンプトン。押し込んでチャンスを掴んだと言うよりはよりファストブレイクよりの展開で縦パスが刺さるようになったことが大きいように見えた。高い位置に出ていくダウンズが1列前で受けることで相手を背走させてのチャンスが出てくるように。それでもネットを揺らすことはできず、スコアレスでハーフタイムを迎える。
後半も展開は全く同じ。ボールを持つのはサウサンプトン。カウンターを狙うのはエバートン。だが試合が明確にチャンスが多い展開にはならず。ライン間にパスを差し込む機会を増やしたサウサンプトン、セットプレーも含めてゴールに迫る機会を作るエバートン。どちらもほんのり前半よりも攻撃は活性化する。
その状況を良しとしなかったのは今季ここまで勝てていないサウサンプトン。ディブリングを入れて4バックに移行するという勝負手で展開をさらにオープンよりに。左右のサイドからSB、SHのタンデムから攻勢に出る。もちろん、これは後方の迎撃性能とトレードオフ。交代で入ったベトはよりクリティカルなカウンターからチャンスを作るように。
この賭けに勝ったのはサウサンプトン。エバートンの決定機を逃す流れから、右サイドの奥をとる菅原の進撃で敵陣に侵入。ここからの折り返しでアームストロングが先制ゴールを決める。
終盤はベトがネットを揺らす場面があったが、これは僅かにオフサイド。なんとか追撃を振り切ったサウサンプトンが嬉しい嬉しい今季初勝利を手にした。
ひとこと
0-0で試合を動かすというフォーメーション変更が結果につながったのはチームとして自信になるのではないか。
試合結果
2024.11.2
プレミアリーグ 第10節
サウサンプトン 1-0 エバートン
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:85‘ アームストロング
主審:アンディ・マドレー
第11節 ウェストハム戦(A)
パワーで押し切れず決め手に欠くスコアレスドロー
序盤からロングキックの応酬となったこの試合。前線のターゲットに向けて割り切った長いボールを当てながらというシンプルな立ち上がりからスタートする。
少し時間が経つとボールを持つ側に回ったのはウェストハム。アンカーのギド・ロドリゲスのサリーから3バック化し、CBを外に押し出す。外に出たCBがワイドのDFとしてボールをキャリー。エバートンはこの3人目のDFに対して追いかける姿勢は見せず、構えてウェストハムのポゼッションを受ける。
エバートンはカウンターにフォーカス。ボールを奪ったところから縦への推進力を見せていく。エバートンは自陣での落ち着いた保持でも前進は可能。ブランスウェイトのキャリーから敵陣にパスを差し込んでいくことでチャンスを作っていく。
一度敵陣に押し込むとエバートンのターンは割と継続。クロスと跳ね返しに対するセカンド回収のデュエルで優位に立ったエバートンは波状攻撃でボックス内に勝負を仕掛けていくことができた。
押し込むとエバートンはカウンターを受ける側にもなる。だが、カウンター対応も安定したエバートン。秀逸なラインコントロールでオフサイドを取ることができて反撃の芽を摘む。
どちらがボールを持つ側になってもなかなかこじ開けることができない両軍。少しチャンスが薄かったウェストハムがアントニオからのチャンスメイクでボーウェンがチャンスを迎えたが、これを生かせなかったところでハーフタイムを迎える。
後半も展開は同じくチャンスが少ない展開。ジリジリとサイドから押し下げることができたのはエバートンの方。クロスから敵陣に入り込む形を作っていく。
やや劣勢のウェストハム。カウンターへの対応も先回りして潰されてしまい苦しい流れではあったが、ボーウェンのカウンターから少しずつリズムを掴むと、サマーフィルが綺麗な抜け出しから決定機。だが、これはポストに阻まれてしまう。
エバートンは根性で前進を見せていたキャルバート=ルーウィンからやや上り調子のベトに交代をするが、この交代は特に終盤の推進力にはならず。終盤にペースを掴んだのはウェストハムだった。
最後の最後の決定機だったイングスのチャンスはピックフォードのセーブによって阻止。ラストチャンスをウェストハムが逃してしまったことにより、試合はスコアレスドローに終わった。
ひとこと
両軍とも決め手にかける試合ではあったかなという感じだった。
試合結果
2024.11.9
プレミアリーグ 第11節
ウェストハム 0-0 エバートン
ロンドン・スタジアム
主審:スチュアート・アットウェル