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「Catch up Premier League」~イプスウィッチ編~ 2024-25 season

イプスウィッチ、24-25シーズンの歩み。

目次

第1節 リバプール戦(H)

裏の駆け引きの精度で上回り就任初陣を制する

 一時代を築いたユルゲン・クロップに別れを告げ、新監督にアルネ・スロットを迎えたリバプール。その初陣は23年ぶりにプレミア復帰を果たしたイプスウィッチのホームスタジアムであるポートマン・ロードからのスタートだ。

 立ち上がり、リバプールはゆったりとした保持からスタート。アレクサンダー=アーノルドがインサイドに入り、アンカー役のグラフェンベルフをサポートするという昨季も見られた形であった。強いていえばマック=アリスターとグラフェンベルフが位置を入れ替えてプレーすることを普通に行っていたのがオリジナリティかもしれないが、これはアンカーの位置にグラフェンベルフが入ったというパーソナティによるものかもしれない。

 イプスウィッチはバーンズが列を下げ、トップ下のチャップリンがサイドを埋めるなど、序盤は自陣をきっちり埋めるモードかと思われた。しかしながら、以降は枚数を合わせて高い位置からのプレスに出ていくように。序盤のフィーリングは悪くなかったが、1枚目の警告が早々に出るなど後方の同数受けはやや無理が出てくる。徐々に裏に走るサラー、降りてくるジョッタ、陣地回復をするディアスといった面々にハイラインを突かれるようになる。

 イプスウィッチも前3枚が同数や数的優位でカウンターに打って出る場面もあったが、そこから1本有効打となるパスが繋がらず。ミスになってしまったり、コネることでスローダウンしてしまったりなど、シュートを打ち切ることができない場面が目立つ。

 むしろ、そうした状況に漬け込んだ感があるリバプール。定点保持よりもファストブレイクの方が効果的だった前半ではイプスウィッチの精度の低いカウンターは、自分たちの速いテンポでの攻撃の養分。前3枚の陣地回復力を生かした速攻とセットプレーをベースに前半はチャンスを作ったリバプールだった。

 迎えた後半、ゆったりとボールを持つリバプールに対して、カウンターベースで対抗するイプスウィッチ。そうした中で左サイドの突破からイプスウィッチはあわやPKというシーンを迎える。だが、これは左サイドを抜け出した際のデイビスのオフサイドで検証されることはなかった。

 この場面のようにハイライン破りにおけるオフサイドはこの試合の命運を分けたように思える。サイドから抜け出したと思っても、ラインを上げられてオフサイドに引っかかり続けたイプスウィッチと、ラインの駆け引きに関してはほぼノーミスで出し入れができたリバプールでハイラインの攻略の精度には差が出ていた。

 というわけでファストブレイクの精度で上回ったリバプールが先制。サラーのラインブレイクからジョッタがゴール。スロット政権での初ゴールを仕留める。さらにリバプールはまたしてもサラーの裏抜けから今度は自身がゴールを決めて追加点を奪いきる。

 ゴールを奪われるのであれば出て行きたいところではあるが、裏の駆け引きが完敗という事情もあり、イプスウィッチは出て行けば行くほど苦しむというジレンマに悩まされていた感があった。3失点目に至らなかったのはGKのウォルトンの奮闘によるものであり、いつ更なる失点を喫してもおかしくはなかった。

 スロットの初陣を制したリバプール。23年ぶりのプレミア帰還を果たしたイプスウィッチを下してリーグ戦好発進だ。

ひとこと

 本文で述べた通り、前線とバックスの駆け引き勝ち。

試合結果

2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
イプスウィッチ 0-2 リバプール
ポートマン・ロード
【得点者】
LIV:60‘ ジョッタ, 65’ サラー
主審:ティム・ロビンソン

第2節 マンチェスター・シティ戦(A)

いつもの「凪」で安定の逆転勝利

 開幕戦で勝利を決めたシティ。ホームに戻っての今季初戦は昇格組のイプスウィッチ。リバプールに続いて、シティと戦うという修羅の道でプレミアをスタートさせている。

 いつも通り、ルイスをアンカー脇に上げる形で3-2-5を組むシティ。ここから大外のフォローにアカンジとグバルディオルがそれぞれ出ていく形となっている。左の大外に関してはグバルディオルが突撃するパターンもしばしばであった。

 イプスウィッチは前節のリバプール戦ではマンツーマンハイプレスを敢行していたが、シティ相手に同じことをする気はない様子だった。ジョンソンが低い位置まで下がるアクションを見せるなど5バック気味に守る。しかしながら、大外をジョンソンとトゥアンゼベがかぶって守るシーンが多く、CBのウールフェンデンが迎撃にいくシーンもしばしばだった。一応決まりと言えば決まりにも見えるが、スライドが遅く間に合っていなかった。シティ相手にポケット対応が曖昧なのは致命傷である。

 イプスウィッチはハッチンソンのキープにスモディクスが合わせる形で奇襲を成功させるが、それ以降は一方的に殴られる展開に。サヴィーニョがあっさりPKを奪取して早々に振り出しに戻すと、ハイプレスからムリッチのミスを誘って追加点。さらにはハイライン破りからこれまたムリッチの安易な飛び出しを誘発し、あっという間に2点リードを確保。以降もセーフティに大外の優位をとりながら試合を進める。

 イプスウィッチは押し返すことができてWBの攻撃参加を促せれば可能性もないことはなかったが、なかなかその機会を掴むことはできず。先制点以降は苦しい展開が続く状態でハーフタイムを迎えることとなった。

 迎えた後半も展開は同じ。一方的にシティがボールを持ちながら相手を動かしていくスタート。イプスウィッチは後半頭はやや高い位置から捕まえにいく意識をしていたものの、最終的には3-2-5から大外を起点に押し下げるシティに屈して自陣に撤退する。

 一向に打開策が見つからないイプスウィッチに対して、シティは大外からハーフスペースに突撃を繰り返しながらボックス内に侵入していく。シティは後半終了間際にハーランドが4点目を確保。ハットトリックを達成し、多くの拍手を浴びながらひと足先に交代でピッチを退く。

 終了間際まで波風を立たせることなく淡々と白星を手にしたシティ。アウェイに続きホームでも勝ち点3を確保し、開幕連勝を決めた。

ひとこと

 後半は凪。いつものようにずっとシティペースで制圧していた試合だった。

試合結果

2024.8.24
プレミアリーグ 第2節
マンチェスター・シティ 4-1 イプスウィッチ
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:12′ 16′(PK) 88′ ハーランド, 14′ デ・ブライネ
IPS:7′ スモディクス
主審:サム・アリソン

第3節 フラム戦(H)

初勝利の光が見えた1ポイント

 開幕2試合はいずれも敗戦したイプスウィッチ。プレミアリーグの洗礼と言えばそうなのかもしれないが、シティとリバプールという日程に単に恵まれなかった感もある。そういう意味では本番はここからとも言えるだろう。

 結論から言えば、この試合のイプスウィッチは相当健闘した。フラムの攻撃を引っ掛けたら素早く縦に進んでいったし、スローダウンした際もSBのオーバーラップを使いながら広く攻め手を見せていく。押し込む中でセットプレーからゴールに迫るシーンも。レノのファインセーブがなければ、あっさりと立ち上がりに先制点を奪っていたことだろう。

 プレミアでも通用しそうな強度を見せたイプスウィッチは先制ゴールをゲット。カウンターから右サイドを抜け出したデラップがネットを揺らしてリードを奪う。

 フラムは前から積極的にプレスにくるイプスウィッチに対して、対角パスから対抗。右の大外に立つトラオレで勝負を仕掛けていく。10分くらいから少しずつゆったりとした保持が増えたフラム。だが、遅攻になったとしてもトラオレ以外の攻めるポイントがなかなか見えて来ずに苦戦。逆に言えばブロック守備と特攻プレスの両面でイプスウィッチはそれなりの手応えを感じていたとも言える。

 悪くない流れだったイプスウィッチだったが、フラムは前半のうちに試合を振り出しに戻すことに成功。左サイドから抜け出したロビンソンのクロスに合わせたのはトラオレ。

 後半は互いにゆったりとした保持からスタート。前半よりは保持の局面が増えたイプスウィッチだが、フィーリングは悪くない。フラムの方がやや旗色が悪い立ち上がりとなった。

 フラムはベルゲとルキッチを並べたところから少しずつリズムを上げていく。イプスウィッチもこれに組み合っていく。目立っていたのはオグベネ。保持では抜け出し、非保持では自陣まで下がっての5バックの形成と喰らいついていく。

 終盤はカウンターの応酬となった両軍。だが、守備側の貢献が光り、これ以上のゴールが生まれることはなかった。イプスウィッチは手応えのある内容とともに今季初めての勝ち点1を手にした。

ひとこと

 イプスウィッチ。この水準の内容ならば3ポイントもそう遠くないのではないか。

試合結果

2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
イプスウィッチ 1-1 フラム
ポートマン・ロード
【得点者】
IPS:15‘ デラップ
FUL:32’ トラオレ
主審:ルイス・スミス

第4節 ブライトン戦(A)

またもブロック守備を崩しきれず

 前節は10人のアーセナルを崩しきれなかったブライトン。ホームに戻っての一戦では昇格組相手に勝ち点3を積みたいところだろう。

 ブライトンは中盤にアヤリとバレバ、2トップの一角にラターが入るなどキャスト変更を敢行。しかしながら、やりたい内容は大体いつもと同じという感じではあったので同じ方向性を異なるキャストで行う方向性なのだろう。

 イプスウィッチは高い位置からのプレスで対抗。マンツーで枚数を合わせてというわけではないけども、前から奪いにくる意識は高く見えた。だが、クリーンにボールを奪いきれずに苦戦。ファウルが嵩んでしまい、攻撃に打って出ることができない。

 GKを絡めたプレス回避でブライトンのビルドアップは安定。押し込んでからWGを軸とした崩しを狙っていく。だが、前節のアーセナル戦と同じく押し込んだ相手に対しての攻撃構築はもう一歩という感じであった。

 自陣に押し下げられたイプスウィッチは自陣深くからライン間を狙うような鋭い縦パスからチャンスメイク。スモディクスやハッチンソンなど2列目の選手にボールを当てて前進のきっかけを掴みにいく。ロングボールは競り負けてしまいそうなので後方からパスを出すホルダーが前に当てる余裕を持てるかがイプスウィッチのポイントになる。

 両チームは徐々に自分たちの形からチャンスを迎えるように。ブライトンは中央はウェルベックとラターのコンビネーションからのチャンスメイクが光る。この点は前節になかった崩しの新たな手札といった感じだろう。ラターの抜け出しからの三笘の決定機はムリッチのファインセーブに阻まれる。おそらくはこの試合で一番ゴールに近づいた展開だろう。

 一方のイプスウィッチもデラップの抜け出しがオフサイド。それぞれのチャンスメイクが機能している展開だが、ゴールネットを揺らすことはできなかった。

 後半も同じくブライトンが保持から動かしていく展開。サイドと中央にバランスよく配球を行いながらボールを動かしていく。一方のイプスウィッチも右サイドの直線的な抜け出しからデラップがゴールに迫る。角度のついた状況ではあるが、この角度からゴールを決めた実績もあるだけに怖いところだろう。

 60分過ぎからボールを持てるようになったイプスウィッチだが、その保持が機能する時間はわずか。再びブライトンが保持で主導権を握り返し、交代した前線のメンバーからゴールを狙っていく。

 だが最後までネットを揺らすことはできず。試合はスコアレスドロー。ブライトンは前節と同じくブロックを崩しきれないまま試合を終えることとなった。

ひとこと

 ファーガソンの87分のシュート。ちょっとらしさが見えた。あと一息。

試合結果

2024.9.15
プレミアリーグ 第4節
ブライトン 0-0 イプスウィッチ
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
主審:サム・バロット

第5節 サウサンプトン戦(A)

昇格組対決で露わになる問題点

 今季初めての昇格組同士の直接対決。昇格後初めてのリーグ戦での勝利を賭けてサウサンプトンがホームでイプスウィッチを迎え撃つ一戦だ。

 縦に速いテンポを両チームとも志向する立ち上がり。テンポの早いプレーで相手を飲み込むことを互いに狙う序盤戦となった。イプスウィッチの2列目の足元をめがけて中央のインサイドに差し込むパスも悪くなかったが、先制したのはサウサンプトン。左サイドから斜めのパスを受けたディブリングはワンタッチでグリーブスを交わしてあっという間にGKとの1on1を作ることができた。

 イプスウィッチからするとかなり安い失点になってしまった。一発で奪いに行って交わされてしまったグリーブスと外の菅原を優先してインサイドのカバーリングをおろそかにしてしまったデイビスの両方に悔いが残る対応となった。

 このゴールをきっかけにイプスウィッチの同サイドに追い込むようなプレスも見切れるようになったサウサンプトン。ビルドアップに枚数をかけることで試合を落ち着かせにかかる。

 しかしながら、リードをしたことで一旦引くという判断が良くなかった。ボックスに枚数をかけた重心の低い守備は人が多い分、マークの責任の所在が曖昧になるという悪循環。枚数が揃っているにも関わらず、簡単にマークを外してしまうシーンが出てくるように。危ういクロス対応が進むことでイプスウィッチの攻撃のターンが続くことになる。

 まずいと思ったサウサンプトンはブレイクを入れた直後からハイプレスに移行。低い位置で受けるのはまずいと思ったのだろう。奪ったらゆったりと、そして奪うところまではエネルギーを出しながらという方向性で徐々に試合を握っていく。

 後半も早い展開が続く。早々に迎えたアーチャーの決定機は先制点同様にイプスウィッチの守備陣はきっちりと捕まえたと思ったところをすり抜けられたもの。イプスウィッチの守備陣はホルダーへの矢印を一気に出して、逆をあっさりとられてしまうことが多いのかもしれない。サウサンプトンとは毛色は異なるが、イプスウィッチにも問題があるということだろう。

 そんなイプスウィッチにもハーフスペースの裏抜けから決定機を迎えるなど、直線的な動きからチャンスメイク。サウサンプトンは交代選手を軸にポゼッションを安定させて、再びボールを動かすことで試合を落ち着かせにかかる。ラインブレイクからのチャンスも含めて主導権はサウサンプトンだった。

 しかし、終盤にもう一度ペースが巡ってきたイプスウィッチ。セットプレーを軸とした空中戦の猛攻は最後の最後でモーシーの一撃という形で結実。土壇場で同点ゴールを許したサウサンプトンは目前で今季初勝利を逃すこととなった。

ひとこと

 終盤は試合をコントロールできたと思ったサウサンプトンだったのだけども。

試合結果

2024.9.21
プレミアリーグ 第5節
サウサンプトン 1-1 イプスウィッチ
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:5′ ディブリング
IPS:90+5′ モーシー
主審:サム・アリソン

第6節 アストンビラ戦(H)

左の縦関係を武器にビラを追い詰める

 前節、昇格組との直接対決で辛くも勝ち点を拾うことに成功したイプスウィッチ。今節はCLのバイエルンとの大一番を控えるビラとのホームゲームだ。

 相手のポゼッションの完成度によってプレスの枚数を変えている感のある今季ここまでのイプスウィッチ。アストンビラに対しては「敬意を表する」と決めたのだろう。撤退しながらの守備でボックス内に枚数を過剰に揃えながらビラのポゼッションを阻害。3-2-5に変形するビラは押し込みつつ、ティーレマンスのミドルなどから様子を見る。

 保持時には3バックになるイプスウィッチはサイドの対応をずらすことで前進に成功。左サイドから押し下げると、そこからの一連の攻撃で先制。最後はクラークの抜け出しからの折り返しをデラップがきめる。

 ビラとしては後悔が残る対応だっただろう。ニアを締めきれなかったマルティネスもそうだが、オナナやコンサにはプレーを切るチャンスがあったのに、ボール処理の丁寧さに欠けて相手選手にパスをプレゼントしてしまうミスもあった。

 勢いに乗ったイプスウィッチはプレスから前進を狙う。だが、別にプレスを引っ掛けて先制したわけではないので、ビラのビルドアップは落ち着いて対応する。

 ティーレマンスやパウ・トーレスなどからブロックの中を覗きたいビラ。特にトーレスに対しては対面のハッチンソンが厳しくケア。それ故にできる中盤のズレは発生しており、特にハーフスペースへの対応は少し後手になりそうであった。

 しかしながら、ビラはそうしたちょっとのズレの予感を生かすことができず。それでもトップのワトキンスにボールを渡して陣地回復は可能。少ない手数でゴールに迫ることができた。

 イプスウィッチの守備陣はバタバタ。同点ゴールとなった対応はグリーブス個人のミスではあるが、プレスの列上げかリトリートの割り切りが効かなければエラーの確率はそれは高まるだろうなという感じであった。

 逆転弾であるワトキンスのゴールも同じ。ボックス内で2枚で挟んでいてDFが全く関われないのは痛かった。

 保持型らしい相手のズレというよりはゴリ押しからパワーでねじ伏せた感のあるビラ。逆転で前半をなんとか終えることができた。

 後半はビハインドのイプスウィッチが高いラインから仕掛けていくことでオープンな展開に。一見ビラにとってありがたい状況のように思えるが、この状況を活かしたのは仕掛けた側のイプスウィッチ。前半に効いていた左サイドに加えて、間延びしたライン間に差し込むことはできている。フリーの選手は作れているので、あとはパスの精度を突き詰められるか次第であった。

 アストンビラは先制点で綻びを見せた右のユニットの機能不全が気になるところ。コンサ、ベイリーがいなくなることが多く、オナナもなぜか意識は前に出ていくことで後ろがスカスカになることが頻発。ジエゴ・カルロスの負荷が爆増する展開だった。

 同点ゴールもまさにこの形から。ミスをした上にフラフラ前に残ったコンサのカバーを強いられたカルロスがデラップに軽くあしらわれて試合を振り出しに戻される。

 フィロジーンを下げての5バック気味の対症療法を施すアストンビラだが、効果は限定的。バークリーをはじめとする3枚替えでもう一度保持に舵を切ろうとするが、最後は再びイプスウィッチに押し込まれる展開に持ち込まれる。

 最後の最後はやらせなかったアストンビラ。薄氷の勝ち点1でなんとか手ぶらで帰ることは免れた。

ひとこと

 どちらが勝ちに近かったかと言えばイプスウィッチのように思える。

試合結果

2024.9.29
プレミアリーグ 第6節
イプスウィッチ 2-2 アストンビラ
ポートマン・ロード
【得点者】
IPS:8′ 72′ デラップ
AVL:15′ ロジャーズ, 32′ ワトキンス
主審:スチュアート・アットウェル

第7節 ウェストハム戦(A)

攻め手の数で上回ったウェストハムが初勝利を阻む

 前節のアストンビラ戦では手応えが十分だったイプスウィッチ。この手応えを胸に今節はロンドン・スタジアムに降臨。中断期間を迎える前になんとか勝利を手にしたいところだろう。

 しかしながら、先制点は1分でウェストハムに入る。右サイドからのファストブレイクに成功したボーウェンからアントニオのラインで一気に試合を動かす。

 先制点でもイプスウィッチのプランは同じ。なるべくハイプレス、ハイラインで押し込みながら敵陣でのプレータイムを増やしたいという格好であった。ウェストハムは少しボールを持つ時間を作りながらイプスウィッチのプレッシングをいなしに行く。ギド・ロドリゲスのサリーを活用し、最終ラインの枚数を変化させた時点でイプスウィッチのプレッシングは落ち着かせることができそうな感じであった。

 前進の形としても左サイドでポイントを作り、右サイドのボーウェンに届けて一気に相手を押し下げるという先制点に近いパターンも有効。さらにはよりシンプルに前のアントニオをポイントにするロングボールも使いながら、シンプルだが力強い形からボールを前に進めていく。

 イプスウィッチはスコア自体は6分で振り出しに戻すことができたが、劣勢の流れはなかなか変えることができない。低い位置まで下がって受けるシーンがどんどん増えていくと、列を動かして高い位置に出てくる動きをするウェストハムの選手を捕まえることができない。代表例となるのはソーチェクだ。

 イプスウィッチは左右に流れるデラップから反撃に出るが、一方的に押し込むフェーズはウェストハム。左右のサイドの奥を取りつつ、インサイドの列の上げ下げから勝負を仕掛けていく。モノトーンな展開が続く試合は前半終了間際に動く。左サイドから抜け出したエメルソンのクロスからクドゥスが押し込んでゴールを奪う。

 後半も勢いに乗るのはウェストハム。高い位置からのチェイシングをベースに出ていってイプスウィッチを苦しめる。ビハインドとなっているイプスウィッチも当然前から追いかけていくのでここはガチンコである。

 少ない手数での攻め手はやはりウェストハムが優位。ロングボールをベースに簡単に跳ね返していく。イプスウィッチはジョンソンの不用意なバックパスから処理を手間取ったところをボーウェンに押し込まれてしまい失点。さらに苦しい展開に。

 劣勢を跳ね返すことができないイプスウィッチに対してウェストハムはトドメ。右サイドの大外からのハーフスペースアタックで最後はパケタが押し込んだ。

 全体の押し上げが最後まで効かなかったイプスウィッチ。ウェストハムに完敗し、初勝利は中断明けまでお預けとなった。

ひとこと

 ウェストハム、久しぶりにシャープな姿を見せてくれた。

試合結果

2024.10.5
プレミアリーグ 第7節
ウェストハム 4-1 イプスウィッチ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:1’ アントニオ, 44‘ クドゥス, 49’ ボーウェン, 69‘ パケタ
IPS:6’ デラップ
主審:アンソニー・テイラー

第8節 エバートン戦(H)

柔軟なゲーム運びを見せたエバートンのCH

 立ち上がりからリズムを掴んだのはエバートン。ハイプレスに出ていくことでイプスウィッチのバックスを苦しめにいく。エバートンのハイプレスをひっくり返したいイプスウィッチだが、自陣でのパスワークでエラーが発生。キャルバート=ルーウィンのショートカウンターを喰らってしまう。

 全体的にパワーで押し潰されている感が強いイプスウィッチ。エバートンはサイドから深い位置を取ることでイプスウィッチの陣内に踏み込んでいく。

 先制点を決めたのはエンジアイ。見事なシュートであったが、イプスウィッチのボックス内でのボール処理の甘さが際立ってしまった印象だった。

 反撃に出たいイプスウィッチは密集に強引に1人で突っ込んだクラークがPKをゲット。だが、これはOFRでノーファウル判定に覆ってしまった。

 30分が過ぎたあたりから少しずつイプスウィッチが押し込む流れに。3-2-5の変形から敵陣に入り込んでいく。エバートンの守備はサイドを埋めることを優先。自陣に構えるエバートンはカウンターで一発でひっくり返すことを狙っていく。

 そのエバートンはセットプレーから追加点。CKで角度のないところからキーンがゴールを奪う。

 イプスウィッチは高い位置からのチェイシングを後半も継続。このプレスを回避するのに効いていたのはエバートンのCHコンビ。結構硬質なキャラクターのコンビかなと思ったが、保持もまぁまぁいける感じ。特にドゥクレは低い位置からのパスを散らしつつ、高い位置に顔を出しては攻撃参加。ボールを動かすことによってプレーを柔軟に変える姿が素晴らしかった。

 そんなこんなでエバートンはイプスウィッチの守備を背走させることに成功。後半も試合を優勢に進めていく。この点ではイプスウィッチはうまくエバートンを追い込むことができなかった。デラップは馬力はあるが、動きが直線的であまり刺さっていたように見えなかった。

 このようにイプスウィッチは延々とスイッチが入らない展開が続く。保持では効果的な前進ができないし、プレスのきっかけを掴むことができない。

 このままエバートンは逃げ切りに成功。力比べできっちり上を行ったエバートンがイプスウィッチを正面から押し潰して見せた。

ひとこと

 序盤から優勢だったエバートン。似たような強度勝負ではやはり一枚上手だった。

試合結果

2024.10.19
プレミアリーグ 第8節
イプスウィッチ 0-2 エバートン
ポートマン・ロード
【得点者】
EVE:17‘ エンジアイ, 40’ キーン
主審:マイケル・オリバー

第9節 ブレントフォード戦(A)

見切ったハイプレスと窮地を救ったエース

 ボールを動かすスタートとなったのはブレントフォード。らしくないくらいショートパスにこだわる形でイプスウィッチを動かしていく。

 イプスウィッチは左のSH役のスモディクスがノアゴールを監視しており、ハーストとチャップリンの後方のトップ下のような守備のタスクを担っていた。逆サイドのファタウはシンプルに右を埋めていたので、おそらくはこれはスモディクスに託された特命なのだろう。

 ブレントフォードの保持はこのイプスウィッチの2トップ+トップ下を同サイドに圧縮して逆サイドを取ることで前進を狙っていく。相手のプレス隊がいないところまでボールを運ぶことが出来ているブレントフォードを見ると、この3人がとにかくボールサイドによるというイプスウィッチの守備の方針はあまり刺さっていないように見えた。

 かといってイプスウィッチが引いて受けようとすると、今度はコリンズがドリブルでキャリーするなど手数は豊富。陣形もオーソドックスな4バック形態から3-2-5にシフトしつつ枚数調整をするなど、柔軟さも見せた。

 しかしながら先制したのはイプスウィッチ。直線的な攻撃でブレントフォードのポゼッションをひっくり返してカウンターを狙っていく。

 先制点を生み出したのは研ぎ澄まされたイプスウィッチのカウンターからだった。フィリップスからハーストへの縦への長いレンジのパスが入り、ゴールをゲットする。さらには追加点も非常に似た自陣からの縦パスでのゲインから。あっという間にリードを広げる。

 2点目のゴールで勢いに乗ったイプスウィッチは敵陣からのハイプレスを敢行。高い位置からボールを奪いに行く。だが、落ち着いたブレンドフォードはロングボールをベースに前半の内に同点に。ルイス-ポッター、ムベウモの2人がロングボールを背負って反転。あっという間に2点のリードを消し去って見せた。

 後半のイプスウィッチの守備のプランも同じ。同サイドに閉じ込めるアクションを前線から積極的に敢行する。いい形で奪いさえすればそれでもいいのだが、ブレントフォードはすでに前半からこのプレスは見切った感がある。

 ブレントフォードは前半と同じようにルイス-ポッターにボールを預けてあっという間にPKを獲得。これをムベウモが決めてついにリードを奪う。

 縦に突き進むスピードがあるため、イプスウィッチも全くダメとは言わない。だが、中盤のカユステが不安定なバックパスをしたり、押し込まれた時のボックス対応も不安。攻守両面でいい部分が出てこない。

 そしてついにクラークは退場。1試合でオウンゴール、PK献上、そして退場とあらゆるやらかしを積み上げた日となってしまった。

 それでも意地を見せたイプスウィッチはブレントフォードのラッシュを耐えながら反撃。クロスからいとも簡単にピノックのマークを外したデラップが同点ゴールを決める。以降は5-3-1としながらも前プレにも色気を出していくイプスウィッチに対して、ブレントフォードが押しこんでいく。

 こういう逆境の中で輝くのはブレントフォードのエース。ムベウモが右サイドから放ったファジーなクロスがそのままゴールを揺らして決勝点。バタバタした後半ATとなったが、ブレントフォードが最後はイプスウィッチをねじ伏せた。

ひとこと

 イプスウィッチのあのハイプレスの守り方、あんまり効きそうな相手いない気もするが継続するだろうか。

試合結果

2024.10.26
プレミアリーグ 第9節
ブレントフォード 4-3 イプスウィッチ
Gtechコミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:44′ ウィサ, 45+1′ クラーク(OG), 51′(PK) 90+6′ ムベウモ
IPS:28′ スモディクス, 31′ ハースト, 86′ デラップ
主審:ルイス・スミス

第10節 レスター戦(H)

立ちはだかるATのアイェウが眼前の勝利を盗む

 昇格組同士の一戦。いまだに勝利を得ることができていないイプスウィッチにとってはまたとないチャンスだろう。

 立ち上がりにボールを握ったのはレスター。中盤でフリーの選手を作るパスワークから奥をとるヴァーディを終点に攻撃を完結させにいく。

 しかし、徐々にイプスウィッチはポゼッションを回復。ハイプレスで支配力を高めようとしたレスターの前がかりの守備をひっくり返し、中盤の背後の縦パスから前進のきっかけを掴むと、敵陣でのプレータイムを増やしていく。ハッチンソンが軸となった右サイドからのミドルを中心にレスターベースは15-20分くらいを目処にひっくり返る。

 こうなるとレスターはカウンターからチャンスを探っていきたいところではあるが、なかなか押し返すきっかけを作ることはできず。こちらもハイプレスに出て行ったタイミングでハイプレスの強度を高めたイプスウィッチに苦しみ、ロングボールから起点を作ることができない。

 ただし、イプスウィッチももう一歩敵陣に入り込む強度を生み出すことができず。試合はスコアレスのままハーフタイムを迎えることとなった。

 後半、まずはレスターは前半の頭のように保持から展開を持ってこようとする。左右に動かしてイプスウィッチのプレスを回避し、背後を取るアクションからイプスウィッチのDFラインを押し下げる。少しずつペースを握ることで前半終盤の流れをひっくり返そうという意欲は垣間見えた。

 しかしながら、この状況をぶっ潰すことに成功したイプスウィッチ。右サイドからの進撃に成功すると、左サイドで待ち構えていたデイビスがスーパーボレー。戦慄の一撃で試合をリードする。

 得点直後もレスターにペースを渡さず、展開をキープしたイプスウィッチ。しかしながら、フィリップスが2回目の警告で退場。10人での戦いを強いられることに。

 これで一気にレスターは押し込む機会を得ることになる。10人のイプスウィッチはなんとか耐えたい展開が続くが、得意ではないラインを下げる展開を強いられる。

 バックスを下げてアタッカーを入れるというプランを構築するのは数的優位ならでは。大外に起点を作りつつ、ボックス内の枚数を増やすことで少しずつ圧力を高めていく。

 殊勲の同点ゴールはまたしても追加タイムのアイェウ。ヴァーディとのワンツーで滑らかにボックス内に入っていくと、技ありのゴールで試合を振り出しに戻す。

 またしても眼前で勝利を逃したイプスウィッチ。プレミア初勝利はお預けとなった。

ひとこと

 相手が10人だからこそ、打つことができた大胆なやり方が同点ゴールを生んだのはイプスウィッチにとっては切ない。

試合結果

2024.11.2
プレミアリーグ 第10節
イプスウィッチ 1-1 レスター
ポートマン・ロード
【得点者】
IPS:55’ デイビス
LEI:90+4‘ アイェウ
主審:ティム・ロビンソン

第11節 トッテナム戦(A)

第12節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)

第13節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)

第14節 クリスタル・パレス戦(H)

第15節 ボーンマス戦(H)

第16節 ウォルバーハンプトン戦(A)

第17節 ニューカッスル戦(H)

第18節 アーセナル戦(A)

第19節 チェルシー戦(H)

第20節 フラム戦(A)

第21節 ブライトン戦(H)

第22節 マンチェスター・シティ戦(H)

第23節 リバプール戦(A)

第24節 サウサンプトン戦(H)

第25節 アストンビラ戦(A)

第26節 トッテナム戦(H)

第27節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)

第28節 クリスタル・パレス戦(A)

第29節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)

第30節 ボーンマス戦(A)

第31節 ウォルバーハンプトン戦(H)

第32節 チェルシー戦(A)

第33節 アーセナル戦(H)

第34節 ニューカッスル戦(A)

第35節 エバートン戦(A)

第36節 ブレントフォード戦(H)

第37節 レスター戦(A)

第38節 ウェストハム戦(H)

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