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「Catch up Premier League」~トッテナム編~ 2024-25 season

トッテナム、24-25シーズンの歩み。

目次

第1節 レスター戦(A)

帰還を果たしたヴァーディの一撃で昇格組唯一の勝ち点確保

 首位でチャンピオンシップを制し、プレミアへの1年復帰を果たすというミッションをコンプリートしたレスター。ポステコグルー政権2年目を迎えるトッテナムをホームに迎えて残留という新たなミッションに挑むシーズンが始まる。

 ボールを持つのはトッテナム。2-3-5の形からポゼッションし、4-4-2で構えるレスターを押し込んでいく。3センターは2CHに加えて左のIHにウドジェが入るのが基本線ではあるが、マディソンにスイッチすることも。この辺りは流動性を持たせる形になっていた。

 この左のIHがレスターの2トップの脇に立つことでトッテナムは攻撃の入り口を作れていた感があった。そういう意味ではむしろ、ここに入るのはウドジェよりもマディソンの方がしっくりくる。ここから同サイドを崩し切る、もしくは逆サイドに大きく展開することで攻撃のスイッチを入れていく。

 ミドルゾーンからアタッキングサードに侵入するフェーズはとても良く整っていたトッテナムだが、仕上げの部分が心許ない。左の抜け出しではソンの精度がイマイチ。外すアクションはできているのだが、左足での折り返しが単調だったり、ダイレクトプレーのパスが繋がらなかったりなど、物足りなさが先行する。

 マディソンのサイドチェンジを引き取った右サイドもクルゼフスキがいないこともあり、そこからボックス内に有効なクロスを入れることができなかった。そうした中で得たシュートのチャンスもことごとくハーマンセンの正面。チャンスを生かせない。

 レスターは自陣深くまで下げられてしまうので前進はとても苦しい。右に流れたブオナノッテが根性で時間を作りにいくが、とてもゴールに近づけるまで持っていけるシーンはなし。陣地回復すら困難という感じであった。

 しかしながら、トッテナムが攻めながらもリズムを崩す時間帯に突入したため、ここからどう転ぶかが非常に大事な25分過ぎ。スコアを動かしたのはトッテナム。お馴染みの2トップ脇を起点としたマディソンからボックスにクロス。ソランケで固定されたバックラインに遅れて突撃するという巧みさを見せたポロがトッテナムに今季初のゴールをもたらす。

 レスターはプレスを強め、少しずつ高い位置からボールを奪えるように。しかしながら、奪った後のプレーの精度がついてこず。シュートはリードのロングシュート1つのみで前半を終えることとなった。

 後半もボールを持つのはトッテナム。右サイドにマディソンが顔を出すなど、味を変えながら敵陣に迫っていく。押し込むことはできていた立ち上がりのトッテナムだがボックス内での急ぎすぎな選択が目立ち、レスターのシュートブロックにかかる場面もあった。

 レスターも前プレスから少しずつ店舗を掴めるように。すると、早々に成功体験をゲット。一本道での苦しいカウンターになることが多かったが、左サイドにエンディディとクリスチャンセンが粘りを見せてクロスを入れると、最後は逆サイドからのクロスにフリーのヴァーディがゴール。試合を振り出しに戻す。

 このゴールを機に前に出ていくレスター。エンディディが前プレに連動して圧力を高めると、トッテナムがこれに屈して自陣でのパスミスが増えるように。レスターはここから一気にチャンスを増やしゴールに迫っていくように。トッテナムはひっくり返せば敵陣に一気に侵入できるが、トッテナム一色という前半のムードとは明らかに違う展開になった。

 ベンタンクールの負傷、そして両チーム合わせて6枚の交代で試合は80分を前にリセット。ベリヴァルが左右に流れながらボールに触り、トッテナムにリズムをもたらしたかのように見えたが、下手なロストからの大ピンチでヴィカーリオのお説教を招くと、レスターもチャンスを作れるように。

 前半と異なり、終盤のもつれた展開でスコアを引き戻したレスターが引き分けをもぎ取ることに成功。昇格組の中で唯一開幕戦で勝ち点を取ることとなった。

ひとこと

 前半に複数リードを取れなかったトッテナム。時間が立つにつれて落ち着いて対応するレスターのバックスが印象的だった。

試合結果

2024.8.19
プレミアリーグ 第1節
レスター 1-1 トッテナム
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:57′ ヴァーディ
TOT:29‘ ポロ
主審:クリス・カバナフ

第2節 エバートン戦(H)

ド派手な4得点のゴールショーで今季初勝利

 開幕節ではレスターに不覚を取ってしまい、3ポイントを手にすることができなかったトッテナム。エバートン戦では何とかして今季初白星を挙げたいところだろう。

 立ち上がりからゆったりとボールを持つことになったのはトッテナム。相手のプレスがバックラインまで来ないことをいいことに、ゆったりとボールを持つスタート。内側をきっちり閉じられているため外循環にはなるが、オドベールのお披露目にはちょうどいい流れだったかもしれない。

 基本的には対角にパスを飛ばしつつ、マディソンの裏抜けというアクセントも挟むトッテナム。大外からガンガン攻め込むルートを開拓したトッテナムは押し込む流れからセットプレーからチャンスを作っていく展開となる。序盤からピックフォードは大忙しである。

 押し込むトッテナムは順当に先制点をゲット。ブロック全体が圧縮されていることを利用し、ビスマのミドルでブロックの外から打ち抜くことに成功する。

 ハイラインを手早くひっくり返すことで反撃を狙いたいエバートン。しかしながら、かなり強気のライン設定のトッテナムをなかなかひっくり返すことができずに苦戦が続く。

 粘りのセーブを見せていたピックフォードもコントロールミスからトッテナムにプレゼントゴールを献上。逆噴射でさらにリードを広げられてしまうことに。開幕戦であまりうまくいかなかったソンにとっては大きなゴールといえるだろう。

 後半はトッテナムが押し込みながら解決策を思案していた前半に比べると、互いに攻めあうという非常にアップテンポな展開に。そうした中でもどちらかといえば優勢だったのはトッテナム。エバートンのバックラインを背走させる機会を作っており、よりクリティカルに敵陣に攻め込むことができていた。

 エバートンの巻き返しは選手交代に伴い、中央にマクニールが移動したタイミングから。機動力のあるマクニールに対して、トッテナムの中盤は後手を踏んでしまい、ややエバートンに攻め筋を作ることを許してしまう。

 しかしながら、スコアを動かしたのはまたしてもトッテナム。セットプレーからロメロが仕留め、完全に試合を終わらせる追加点を決める。

 ゴールショーのトリを飾ったのはソン。カウンターから左サイドを打ち破ると、角度のないところからゴールを仕留めてこの日2点目。速攻からのソンらしい高い決定力で大量得点劇の最後を飾った。

 終わってみれば4得点。ホーム開幕戦はド派手なゴールショーでトッテナムが今季初勝利を収めた。

ひとこと

 ラインを下げさせられてしまって、ブロックの外から打ち抜かれてしまうとエバートンは苦しい。押し返す手段の薄さも苦しい。

試合結果

2024.8.24
プレミアリーグ 第2節
トッテナム 4-0 エバートン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:14’ ビスマ, 25‘ 77’ ソン, 71‘ ロメロ
主審:アンソニー・テイラー

第3節 ニューカッスル戦(A)

冴えわたるニューカッスルのトランジッションがスパーズを粉砕

 ホームでエバートンを下し、前節今季初勝利を手にしたトッテナム。難敵に対峙する今節はセント・ジェームズ・パークに乗り込んで、アウェイでの初勝利を狙うチャレンジに挑む。

 序盤からボールを持つのはトッテナム。サールとマディソンをIHとする4-3-3のような仕組みからニューカッスルの4-5ブロックを崩しにいく。ニューカッスルは非常に慎重な入りだったといえるだろう。リトリートに時間をかけることができると、ジョエリントンがきっちりと列を下げて左の大外に入る5-4-1を組んでくる。移動コストはかなりかかるが、スパーズが明らかにゆったり攻めている時は明確な変形を見せたといっていいだろう。ニューカッスルはリトリートとハイプレスを使い分けながら緩急をつけてトッテナムに対峙する。

 まずは保持でどう破るかを問われるスタートとなったトッテナム。CF起用となったクルゼフスキの縦に抜け出すアクションから奥行きを作りだしたり、大外のオドベールから突っついたりなど局所的な個人での勝負が先行するが、サイドを崩し切れない感はやや先行する形かサイドから押し下げてのミドルなど深さを全く使えていないことはなかったが、そのミドルが枠をとらえることはできなかった。

 トランジッションにフォーカスしたニューカッスル。やや一本調子のカウンターが中心になったが、ファン・デ・フェンのいないトッテナムのバックスに対してはこれでも効果は十分であった。

 ポゼッションのトッテナム、カウンターフォーカスのニューカッスル。先制したのはニューカッスル。素早いリスタートから左サイドの背後を取ると、パスを受けたバーンズが先制ゴールを仕留めて見せる。

 反撃に出たいトッテナムだが、後方からの縦パスはやや強引さが先行。前半の内にスコアを戻すことはできなかった。

 トッテナムは後半に4-2-3-1にシフト。ライン間を狙うソン、クルゼフスキ、ポロ、ウドジェでニューカッスルの中盤を揺さぶっていく。

 インサイドに入り込むポイントを作れるようになったトッテナムは少しずつ押し込めるように。バーンやクラフト、ギマランイスの体を張った対応が目立つ後半のスタート。押し込まれるところは苦しいニューカッスルであったが、イサクやゴードンが単騎の裏抜けでトッテナムの守備をひっくり返すところまでたどり着くなど手ごたえがある展開に。

 押し込むことに成功したトッテナムは同点に。左サイドでブロックの外からミドルを打ち込んだマディソンのシュートのこぼれからオウンゴールをゲットする。

 追いつかれたニューカッスル。ポープのセーブで勢いに乗ったトッテナムを止めると、この試合でこだわってきたラインブレイクから勝ち越し。ジョエリントンの足の長いパスで抜け出したマーフィーの折り返しをイサクが仕留めて再びリードを奪う。

 終盤は自陣での守備にファウル奪取に大車輪の活躍を見せるギマランイスを軸として、ニューカッスルがトッテナム相手に守り切ることに成功。見事に勝ち点3を手にした。

ひとこと

 トッテナムはまだ前線の基本形と攻めの方向性が決まっていない感があった。ファン・デ・フェンがいればもう少し違った感もあったが、トランジッションの強いニューカッスルに対する試行錯誤はより失敗に対してシビアな状況だったかもしれない。

試合結果

2024.9.1
プレミアリーグ 第3節
ニューカッスル 2-1 トッテナム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:37‘ バーンズ, 78’ イサク
TOT:56’ バーン(OG)
主審:ロベルト・ジョーンズ

第4節 アーセナル戦(H)

アルテタのできること探し

 レビューはこちら。

 負傷者にあふれながら強度勝負に傾きやすいノース・ロンドン・ダービーに臨むアーセナル。この試合は明確に4-4-2。トーマスとジョルジーニョという2CHは欠場のライスと異なり自陣で持ち場を離れないことを明確にするプランだった。

 そのためアーセナルの4-4-2はミドルブロックからローブロックに終始。トッテナムの保持を受けるプランとなった。トッテナムは2トップの脇に落ちるマディソンからトーマスに揺さぶりをかけると、同サイドではソンとソランケの連携からクロスに向かう。右サイドの攻略も含めてあと一歩のところまで手をかけることはできていたが、最後をマンツーマンで対応するアーセナルを外し切ることが出来ず、スコアを動かせない。

 アーセナルは保持においても少ない人数での解決を余儀なくされる展開。サカとマルティネッリの両翼はその期待に応えた。SBのホワイトとティンバーを相棒にトッテナムのサイドの守備を壊しにいく。

 押し込む手段を確保したアーセナルは高い位置からのプレスに出ていくように。序盤は4-4-2でのミドルブロックにフォーカスする展開となったが、だんだんと高い位置に出ていくなど普段着に回帰する形でアーセナルがいつも通りの姿を部分的に取り戻していく。

 トッテナムは後半の頭から再びポゼッションでアーセナルのブロック守備にチャレンジ。右サイドのクルゼフスキとジョルジーニョのマッチアップからアーセナルのブロックに穴を開けていくように。

 ただし、トッテナムの右サイドは仕上げの部分がやや単調。クルゼフスキはカットイン、ジョンソンは縦と選択肢が読みやすく、特にジョンソンの突破からの速いクロスは完全にガブリエウに見切られており、延々と跳ね返され続けることとなった。

 3トップを軸に少ない人数での反撃を狙うアーセナル。それぞれの粘りからCKを勝ち取るとガブリエウがCKから先制点をゲット。セットプレーから試合を動かしていく。

 先制点を得たことでアーセナルは前進の優先度を下げて、マルティネッリを大外のケアに回す。この移動によりインサイドに絞ったティンバーがジョルジーニョの背後のスペースを埋めることと、アーセナルの右サイド側からのクロスの対応に出ていけるようになった。

 スターリング、ジェズスの投入以降はアーセナルはややバタバタしたが、トッテナムのボックス攻略を最後まで跳ね返し続けることに成功。苦しいやりくりの中でノースロンドンダービーをものにした。

ひとこと

 キヴィオルを投入しての5バックではなく、ヌワネリを投入したアルテタにはとても驚かされた。

試合結果

2024.9.16
プレミアリーグ 第4節
トッテナム 0-1 アーセナル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
ARS:65′ ガブリエウ
主審:ジャレット・ジレット

第5節 ブレントフォード戦(H)

らしい電光石火とらしくないバタバタ

 前節はノース・ロンドン・ダービーで悔しい思いをしたトッテナム。心機一転迎えるのはホームのブレントフォード戦。苦戦がロンドン・ダービーで立ち直りを狙う。

 しかしながら、その狙いを挫いた立ち上がりのブレントフォード。左サイドのルイス-ポッターのクロスからマークを外したムベウモがゴールを叩き込み、わずか1分で先制。今季のブレントフォードを象徴するような電光石火の先制ゴールを決める。

 だが、これ以降のブレントフォードの試合運びはやや慌てていた感がある。裏を返せばトッテナムは落ち着いていたということ。自陣からのパス回しは丁寧に、ブレントフォードの前線の守備を外すためのパスワークを怠ることなくボールを動かすことが出来ていた。

 通常であれば押し込まれること状況にはブレントフォードは問題なく抵抗できるはず。だが、この日のブレントフォードは攻撃を止めた後がやたらとドタバタしていた。ボールを奪った後のパスワークでやたらリスキーな選択肢を取っては簡単にロストを繰り返す。それも決定的なレベルの。

 ファン・デン・ベルフの一度目のミスは許されたが、直後のピノックのミスは完全にとがめられてしまった。高い位置から捕まえることに成功したトッテナムがソランケのゴールから追いついて見せた。

 このゴールで完全に勢いはトッテナムに。ハイプレスで勝負し、ブレントフォードのバックスを背走させるようなチャンスメイクで追い込んでいく。自陣からでも切れ目に顔を出したマディソンのターンからチャンスメイクは安定。敵陣に押し込んだ後も、サイドからブロック守備をきっちり揺さぶることでチャンス作り。多彩な選手が走り込みでチャンスを作る形はノース・ロンドン・ダービーの単調な攻め筋の反省が見られるものだった。

 非保持に回ると多少攻め疲れが見えたトッテナムだが、ブレントフォードが安易なミスからガソリンを与えてくれれば一気に攻めることが出来るという状況。トッテナムはこの流れに乗って前半の内に勝ち越しゴールをゲット。この日のブレントフォードらしい反転しながらの雑な縦パスカットから、ジョンソンがゴールを決めて逆転に成功する。

 後半もトッテナムが一方的に押し込んでいく流れ。非保持に回ってもまだプレスに出て行く余力があるなど体力面でも優位な状況に。

ブレントフォードはカウンターまでの道筋を整えることが出来ずに苦戦。60分過ぎから少しずつ運べる状況を作ったブレントフォード。それだけにヴィカーリオのハンド疑惑には明確なダメージを与える裁定が下ってほしいところだったはずだし、そのヴィカーリオに阻まれたシャーデの決定機は仕留めておきたかった。

 押し込まれても敵陣にスペースがある状況であれば、ソンに預けたところからチャンスを絶え間なく作ることが出来るトッテナム。仕上げとなる3点目は素晴らしいカウンターからマディソン。パスに関わった選手はいずれも素晴らしい質のプレーだったが、ロストでのピンチをチャンスにひっくり返したビスマが個人的には殊勲である。

 ホームでの連敗を回避したトッテナム、浮上を目指してまずは1勝を手にした。

ひとこと

 ブレントフォードのらしくなさが際立った。コメントはちぇっくしていないけども、トーマス・フランクはめっちゃ怒っているのでは?

試合結果

2024.9.21
プレミアリーグ 第5節
トッテナム 3-1 ブレントフォード
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:8‘ ソランケ, 28′ ジョンソン, 85′ マディソン
BRE:1’ ムベウモ
主審:ジョン・ブルックス

第6節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)

あまりにも遅すぎる目覚め

 いわゆるビッグ6の中で突き抜けられない戦いが続く両チームの一戦。だが、この試合においてはくっきりと立ち上がりから両チームの明暗が分かれたと言っていいだろう。

 トッテナムの高い位置からのプレッシングを基調とするハイテンポなプレーにユナイテッドは完全において行かれてしまった感がある。3分のジョンソンのゴールシーンはファン・デ・フェンの持ち上がりを止めに行くのが遅れたウガルテとデ・リフトにも問題はあるし、守備がスライドできていないのに何故か逆サイドがフリーになるという不思議さもあるゴールだった。

 失点前のシーンではブルーノがキャリーを怠ったところからトランジッションが発生。運んで欲しいところを運ばずに、豪快なドリブルで敵陣に侵入されたという一連の流れも切ないものだった。

 失点したユナイテッドはカウンター勝負にフォーカス。縦に速い展開で巻き返しを狙う。だが、保持者にタメが効く人がおらず攻め上がりの時間は作れないし、スプリントしながらのプレーになるためパスの精度が落ちるという苦しい循環。かといって自陣でのポゼッションをすれば横パスからトッテナムのプレスの餌食になってしまう。

 トッテナムからすると、速いテンポを仕掛けられてもサイドの低い位置に流れるソランケとマディソンに預けることができるので、プレス回避は心配なし。さらには先制点以降も左サイドのハーフスペースをウガルテを軸に攻略することができていた。あとは決めるだけという決定機を逃してしまったのがトッテナムの前半の唯一の心残りだろう。

 ユナイテッドは自陣でのデ・リフトやダロトのパスミスでリズムをさらに悪くすると、40分過ぎにはブルーノが一発退場。さらにはメイヌーも負傷交代に見舞われることに。悪い状況は前半にさらに悪くなり、ハーフタイムを迎えることとなったユナイテッドだった。

 後半、ユナイテッドはカウンターをベースに10人での戦い方を提示する立ち上がり。しかしながら、トッテナムは早々にひっくり返すことに成功。右サイドへのロングボールを起点にしたラインブレイクで一気に押し下げると、右サイドからの折り返しをアクロバティックにクルゼフスキが仕留めて追加点をゲット。ユナイテッドは交代で入ったカゼミーロの対応がエラー。前半で入ってきたマウントの余計なイエローしかり、入ってきた選手が士気が下がるようなプレーをしてしまうと苦しい。

 2点目が決まったところでユナイテッドはようやく目を覚ました感がある。前線は高い位置からプレッシャーに行くなどアクティブさは11人以上と言ってもいいくらいだった。

 CKから押し下げる機会を作るとユナイテッドは一気に攻撃に打って出る。ゴールに押し込むことはできないが、前線でも少しずつチャンスを得て、数的不利を感じさせない時間を作る。

 だが、終了間際にトッテナムは追加点。押し込まれる陣形を跳ね返すように攻撃に打って出ると、3点目を奪取。試合を完全に決める。

 10人で2点差になりようやく目を覚ましたユナイテッド。それでもスコアを動かすことはできず、0-3での完敗を喫した。

ひとこと

 入りが全てだと思う。火事場になってからようやく覚悟が見えるのでは遅すぎる。

試合結果

2024.9.29
プレミアリーグ 第6節
マンチェスター・ユナイテッド 0-3 トッテナム
オールド・トラフォード
【得点者】
TOT:3′ ジョンソン, 47′ クルゼフスキ, 77′ ソランケ
主審:クリス・カヴァナー

第7節 ブライトン戦(A)

交代選手を活かしたスリリングな逆転劇

 中断期間前の最後のリーグ戦。この試合を持って順位は確定する。ブライトンとトッテナムは勝てば6位に浮上する試合である。

 ペースを掴んだのはトッテナム。ボールを持つことを許されたトッテナムのバックスから中盤の開いた選手んパスを出していく。特に捕まえづらかったのはクルゼフスキだろう。柔軟に動いてはターンができるスペースを確保し、攻撃を促進。愚直に相手の背中をとるアタッカーにラストパスを送り続けた。

 チェルシー戦と同じく、ブライトンはかなりバタバタした印象。同じ形の繰り返しに対応することができず、背中を取られ放題。ボックス内での危険な対応は相当に多かった。

 序盤は決定機ミスやオフサイドで許してもらったが、オフサイドで許してもらった直後についに失点。ジョンソンのゴールでトッテナムは前に出る。

 ブライトンも中央でポイントを作って縦に速い攻撃をしたかったところだが、中盤でオープンな選手を作るのに苦労。左サイドからの三笘を軸としたキャリーで反撃に出ること以外は有効となる前進の手段が見つからなかった。

 先制点を喫した直後は押し込む時間を作り、ウェルベックは決定機を迎えたが沈めることはできないブライトン。逆に、トッテナムは前半の終盤にマディソンが素晴らしいミドルを仕留めてリードをさらに広げてハーフタイムを迎えることとなった。

 2点を追いかけるブライトンは高い位置からのチェイシングをスタートし、試合の流れを強引に持っていこうとする。後半の最初にチャンスを作ったトッテナムが前半の続きの物語を始める予感もしたが、先にスコアに手をかけたのはブライトン。右サイドのミンテがヴィカーリオの守るゴールを破り追撃弾のスイッチを入れる。

 トッテナムのパスワークは前半と同じくスピーディーなものであったが、サイドの縦を破るルートにフォーカスされており、そこにはブライトンのDFが待ち構えるというケースが出てくるように。単一ルート故の単調さが見えた分、前半以上の有効打になったかは怪しいという流れ。バレバがあらゆるところに顔を出してホルダーにプレッシャーをかけることで試合のテンポアップを強制的に促していたのも単調さの要因といえるだろう。

 そんなトッテナムを尻目にブライトンは同点ゴールをゲット。後半頭から入ったエストゥピニャンが大外からジョンソンを置いていく形でオーバーラップを仕掛けると、三笘→ラターと難しいボールをつなぎながらのゴールで試合を振り出しに戻す。

 ここから逆転ゴールまではあっという間。ウェルベックのゴールで完全にアメックスは着火することに。

 初手の組合では手ごたえがあったものの、控えメンバーが若手有望株中心のトッテナムは交代選手が機能したブライトン相手に徐々に後手をふむように。ひっくり返された後半にすべてを失ったトッテナムが手痛い逆転負けを喫した。

ひとこと

 ブライトンの同点弾は難しいプレーの連続。相手と味方がどこにいるかを把握したうえで正確にゴールまでのルートをつないだ三笘とラターはどちらもすばらしかった。もちろん、ゲームチェンジャーとなったエストゥピニャンも見事であった。

試合結果

2024.10.6
プレミアリーグ 第7節
ブライトン 3-2 トッテナム
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:48’ ミンテ, 58‘ ラター, 66’ ウェルベック
TOT:23‘ ジョンソン, 37’ マディソン
主審:デビッド・クート

第8節 ウェストハム戦(H)

一点突破での逆転劇

 代表ウィーク明けの初戦はロンドン・ダービーでのスタート。トッテナムの本拠地に乗り込むのはイプスウィッチを豪快に倒したウェストハムだ。

 中盤でのボールを奪い合うデュエルでスタートしたこの試合。時間の経過とともにボールを持って押し込むようになったのはトッテナム。ウェストハムはバックスにプレスをかけずに中盤のパスコースを固めつつ、跳ね返しにフォーカスする。

 マディソンとクルゼフスキは当然ウェストハムにとっても懸案事項。ブロックの中ではマンツー、外に下がったら無理に追いかけないことを徹底してブロックと要人のケアを両立する。トッテナムはマディソン、クルゼフスキからの揺さぶりやソンのミドルなど、少しずつブロック外から削っていく作業にフォーカスする。

 ウェストハムはカウンターから反撃。右サイドのボーウェンの突破によりファン・デ・フェンをサイドに釣りだすと、ファーサイドで余ったクドゥスに決定機を得る。

 先制点もこの形。エメルソンのオーバーラップからトッテナムのDFラインを横にずらすと、トッテナムのバックスがバタバタ。その流れのままクドゥスがゴールを押し込んだ。

 このままブロックを組みながらカウンターというプランに徹していればウェストハムは勝利することが出来たかもしれない。実際に先制点以後もトッテナムは脆いサイド守備を見せていた。

 しかしながら、少しずつトッテナムはウェストハム陣内を侵攻する。高さで跳ね返すことはできていたが、水際という感覚があったのだろう。少しずつ前に出て行くように。オーバーラップなど攻め筋の構築も積極的だった。

 だが、それが裏目に出たのが同点ゴール。エメルソンがオーバーラップしているタイミングでボールを失い、あっさり背走させられる形となったウェストハム。得点も失点もエメルソンのオーバーラップがトリガーに。クルゼフスキのミドルはさすがであった。

 ロストとオーバーラップの掛け合わせで一気に苦しくなったウェストハム。試合はタイスコアでハーフタイムを迎える。

 後半はハイプレスで入ったウェストハムだったが、トッテナムはこれをひっくり返す形で反撃。守備に回った時には攻め込まれていたウドジェがオーバーラップで存在感を発揮し、勝ち越しゴールを奪う。

 さらにトッテナムはカウンターで追加点。ウェストハムの中盤でのロスト×SBの背後をつかれるという前半と全く同じ形でトッテナムに大きい1点を与えてしまう。

 前半からの悪癖が全く治らなかったウェストハムは以降も同じ形からピンチに。試合を決める4点目もあっという間に入ることとなった。

 クドゥスの退場というおまけまでつくなど踏んだり蹴ったりだったウェストハム。弱みを突き続けたトッテナムが会心の逆転勝ちを見せた。

ひとこと

 一点突破にフォーカスすれば強いトッテナムにウェストハムは穴を見せてしまった。

試合結果

2024.10.19
プレミアリーグ 第8節
トッテナム 4-1 ウェストハム
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:36‘ クルゼフスキ, 52’ ビスマ, 55’ アレオラ(OG),60‘ ソン
WHU:18‘ クドゥス
主審:アンディ・マドレー

第9節 クリスタル・パレス戦(A)

エースの復活でついに掴んだ初勝利

 ここまで未勝利と想定外の不振に喘ぐクリスタル・パレス。シーズン前の高い下馬評とは裏腹に降格圏に沈んでいる。エースのマテタのスタメン復帰をなんとか原動力にしたいところだろう。

 立ち上がりはそのマテタをめがけたロングボールでスタートするパレス。高い位置からチェイシングしたいトッテナムの狙いを外すように割り切った戦法で立ち向かっていく。

 ロングボールでボールを失った後は高い位置へのプッシュアップでトッテナム陣内に迫っていくところまでがセット。ただし、深追いはしすぎない。前線がステイするときは一気にラインを下げてブロックを組んでいく。

 トッテナムはブロックの外からポロやマディソンが大きな展開で動かしていくスタート。パレスのハイプレスに関しては横に振ることでいなせそうな立ち上がりだったが、ブロック攻略となると手応えがないという感じだろうか。

 風向きが変わってきたのは15分を過ぎたことから。パレスが押し込んでの即時奪回を機能させることでトッテナム陣内の時間が増えていく。トッテナムはパレスの攻撃を終わらせた後の1本目のパスが非常に雑。縦につけるパスをあっさりとパレスに渡してしまうことで相手の攻撃のターンを継続させてしまう。

 序盤はプレスを回避できていたが、自陣での動き直しの少なさからかポゼッションで脱出できる機会も激減。高い位置から中盤とバックスが捕まえて延々と攻撃を続ける姿は快進撃を続けている時期のグラスナーのチームの片鱗であった。

 延々と攻撃を続けることができたパレスは31分に先制点をゲット。ファーで構えていたマテタが先制ゴールをもたらす。

 後半はハイプレス合戦でスタート。高い位置からプレスに出ていく相手に対して、ひたすらバックラインの裏を取り合う攻撃を志向する。

 ジョンソンが裏をとったトッテナムが先制攻撃を仕掛けるが、より頻度が多かったのはパレスの方。切れ味抜群なのはエゼ。久しぶりの好パフォーマンスでパレスの攻撃を牽引する。

 トッテナムは前線の入れ替えからオフザボールを活性化。ジョンソンに加わるようにリシャルリソン、ヴェルナーが裏を取るアクションを見せにいく。

 だが、パレスの対応は安定。裏抜けに対しても安定したリアクションでピンチの芽を摘み取る。押し込んだ後のパターンとして積極的に活用していた左サイドからのクロスもヘンダーソンが問題なく処理をする。時折見せるカウンターでヴィカーリオに冷や汗をかかせることも忘れなかった。

 試合はこのまま終了。ついにパレスは未勝利沼を脱出。トッテナムを下し、悲願の今季初勝利を手にした。

ひとこと

 パレスが昨季の片鱗を取り戻した試合だった。

試合結果

2024.10.27
プレミアリーグ 第9節
クリスタル・パレス 1-0 トッテナム
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:31′ マテタ
主審:ダレン・ボンド

第10節 アストンビラ戦(H)

ブロック攻略に解決策を見出し停滞感を払拭

 前節はパレスに今季初勝利を献上。トッテナムは今季ここまでなかなか波に乗れないシーズンが続く。ホームとはいえ、今節は好調なアストンビラだ。

 トッテナムは高い位置から向かっていくスタート。だがこれはビラにとってはお手のもの。中盤でフリーマンを作り、プレスをひっくり返す形から前進する。時折発生するミスはあるが、全体的に陣形が間延び。オナナのような推進力のある前進を許すことに。

 保持に回っても引いて受けるアストンビラのブロックを前に苦戦。左サイドのソンを軸にブロックの外から突っついていく。だが、ハーフスペース裏のウドジェのランはオナナに潰されているし、マディソンとほぼ同じ立ち位置でボールを受けるサールのコレジャナイ感も気になるところであった。

 アストンビラは3-2-5をベースに相手のプレスをひっくり返すところから前進。加速したところから仕上げられずに苦戦するが、セットプレーから先制点を確保。ハーフタイム前にリードを奪う。

 後半も展開は同じ。トッテナムがほんのり保持が多く、敵陣での試行錯誤が続いていく。早々にその試行錯誤は得点に結実。ソンからのクロスはファーのジョンソンにピンポイントで届く素晴らしい精度のものだった。

 ソンはプレータイム管理の観点からか後半早々に交代。再び撤退守備に対してトッテナムは解答案を出さなければいけない。だが、この課題も無事に解決。トランジッションを急ぐアストンビラのパスを引っ掛けて、攻勢に出ると奥行きを使うパスワークから勝ち越しゴールを奪う。

 さらには直後に3点目。パウ・トーレスのカットからのショートカウンターで突き放すと、最後はマディソンのFKで4点目を決めた。

 後半にたたみかけたトッテナム。前節の停滞を払拭する逆転勝利を手にした。

ひとこと

 ブロック守備に対する停滞感にどう取り組むかの精度がスコアの差になった印象。

試合結果

2024.11.3
プレミアリーグ 第10節
トッテナム 4-1 アストンビラ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:49′ ジョンソン, 75′ 79′ ソランケ, 90+6′ マディソン
AVL:32′ ロジャーズ
主審:クレイグ・ポーソン

第11節 イプスウィッチ戦(H)

20チーム目の初勝利

 土曜日にウルブスがサウサンプトンに勝利したことにより、プレミアにおける未勝利チームはイプスウィッチただ1つに。トッテナムは直近ですでにクリスタル・パレスに初勝利を献上しており、イプスウィッチに対して同じプレゼントを贈るのは是が非でも避ける必要がある。

 序盤にボールを持つスタンスだったのはトッテナム。2トップの外を回しつつインサイドに差し込む隙を作れるかどうかを探るスタート。バックスにはボールを持たせてOKというスタンスのイプスウィッチのブロックをどう攻略するかを思案する。

 対するイプスウィッチはシンプルなロングボールを使った攻撃で対抗。プラン自体はシンプルだが、トッテナムのSB、特にポロの対人は怪しさがある。前進からチャンスを作ることはそう難しくはない立ち上がりとなった。

 押し込むトッテナムはなかなか攻め切ることが出来ず。前進が簡単なサイドにおいてはイプスウィッチのSHがトッテナムのSBをチェイシングしており、保持側の意向で対面の選手を動かすことが出来ていた。

 だが、このサイドの駆け引きに中央の選手がうまく絡むことが出来ない。相手を動かしたスペースを使うことが出来ないトッテナムはゴール前でブロックを固めるイプスウィッチを動かすことに苦戦する。

 そうした中で先制したのはイプスウィッチ。右サイドのクロスをアクロバティックに叩き込んでゴール。リードを奪う。トッテナムはデュエルに対して先送りにするような中途半端な対応をした結果、最終的にボックスの守備で甘さが出ることとなった。

 トッテナムはハイプレスの成功から反撃を狙うが、サイドからのソンのラストパスを引っかけてしまう。このカウンターからイプスウィッチは追加点。ハッチンソンの横断からロメロを中盤に釣りだすと、いっきにゴールを陥れて2点目を奪う。ベンタンクールの対応の遅れから芋づる式にトッテナムは守備の脆さが露呈した場面だった。

 反撃に出たいトッテナムはハイラインを抜け出すジョンソンのチャンスメイクからスタート。コントロールさえ安定すれば、決定機といえる場面だった。前半よりも手ごたえのある展開からセットプレーでソランケがネットを揺らすがこれはハンド。ゴールは認められず。

 本当の追撃弾が生まれたのもセットプレー。2失点目のところで簡単に通してしまったリカバリーをベンタンクールが行い、1点差に詰め寄る。

 だが、トッテナムは押しこむフェーズが不安定であり更なる攻勢をかけることが出来ず。後ろを固めるイプスウィッチにカウンターの反撃に遭うことも。結局試合はそのまま終了。イプスウィッチが今季最後の初勝利を飾ることとなった。

ひとこと

 トッテナムは押しこむチームとしての不十分感が顕著に表れた試合だった。

試合結果

2024.11.10
プレミアリーグ 第11節
トッテナム 1-2 イプスウィッチ
【得点者】
TOT:69′ ベンタンクール
IPS:31′ スモディクス, 43′ デラップ
主審:ダレン・イングランド

第12節 マンチェスター・シティ戦(A)

先制点で「いつものトッテナム戦」に

 グアルディオラ政権になって初めての公式戦4連敗を喫しているマンチェスター・シティ。これ以上の勝ち点逸は避けたいところ。そういう流れの中で迎えるのは相性的に苦手としているトッテナムである。

 試合はシティの保持からスタート。2-3-5気味でアンカーを務めるギュンドアンの両脇をルイスとベルナルドでシェアする。トッテナムのプレスに対して外循環でボールを回すシティはここからチャンスメイク。ハーフスペースの手前と裏の両方に3トップが飛び出し、あわやというシーンを作る。

 特に手前に引くアクションは効果があった。ドラグシンなどトッテナムのDFを手前に引き出すステップを踏むことで背後を破壊するミッションに成功しやすくなる。このように多様な形でチャンスを作るシティが完全に主導権を掌握。トッテナムはヴィカーリオのセーブなど、緊急対応でなんとかピンチに対処するしかなかった。

 だが、保持で少しずつ異変が。トッテナムは初手とも言っていい落ち着いたロングボールでクルゼフスキを起点とした前進を披露。この初手で先制点をゲット。遅れて入ってくるマディソンにぴたりと合わせてトッテナムが先制する。

 シティは先制点を許すと少しずつパスミスが増えるなど、シュートの手前のところでエラーが出てくるように。これはある意味「いつものトッテナム戦」と表現していい展開だろう。そのミスからトッテナムは追加点。ハイプレスに追い込んだところからグバルディオルのパスミスを誘い、マディソンが美しい追加点を決める。

 トッテナムは保持において降りてくるマディソン、列上げするSBがフリーになることで大きな展開から両翼のソンとクルゼフスキで勝負に出る。シティからすると4-4-2の2列目の互いの関係性が悪いうえに、運動量も少なく無理が効かない。シティ側もチャンスがないわけではないが、より思い切り攻撃に打って出ることができるトッテナム相手にやや押されたまま前半を終える。

 後半、追いかけるシティはサヴィーニョを右に配置。ルイスをギュンドアンとフラットに並べる形で3-2-5で固定気味に。トッテナムに対してハイプレスから勝負に出るが、手数をかけてきっちりと交わされるという流れからスタートすることに。

 保持に回れば押し込むことができるシティだったが、同時にカウンターを受けるリスクも内包する。それが顕在化したのがトッテナムの3点目のシーン。トランジッションから左へのドライブでシティの中盤を華麗に巻き取ったクルゼフスキがファーのソランケに絶妙なパス。トランジッションで対面を置き去りにしたポロが最後は仕留めて追加点。後半もトッテナムが先にスコアを動かす。

 以降もシティは押し込む場面を作ることができるが、最後の一山を綺麗に越えることができず。ハーフスペースアタックも前半よりは増えてはいたが、プレスバックを厭わないトッテナムの2列目によってボックスは封鎖。

 ブロックの外から相手を壊すデ・ブライネは効果が薄く、相手を引きつけられるグリーリッシュは4失点目の起点となるロストで逆噴射。ヴェルナーとジョンソンのスピードスターの連携でトッテナムはさらにリード。3点目がマディソンのケーキにイチゴを乗せるゴールならば、このゴールはその上にローソクを立てるトドメの一撃だ。

 シティはこれで5連敗。ホームでの無敗記録もストップ。代表ウィーク明けでも立て直すことができず、CLを経てアンフィールド遠征というハードな1週間に立ち向かうこととなる。

ひとこと

 さすがに4点差は下振れ感はあるが、中盤のスライドの精度と強度などの足りない部分は無視できないだろう。どの失点シーンも攻撃参加したトッテナムの選手をシティの中盤が逃してDFラインに預けている様子が目立つ。失点を重ねている必然性はそれなりにある。中期的にその点を払拭できそうな見通しがないのも不安材料だ。

試合結果

2024.11.23
プレミアリーグ 第12節
マンチェスター・シティ 0-4 トッテナム
エティハド・スタジアム
【得点者】
TOT:13′ 20′ マディソン, 52′ ポロ, 90+3′ ジョンソン
主審:ジョン・ブルックス

第13節 フラム戦(H)

悲喜交々のケアニー

 前節、マンチェスター・シティを撃破したトッテナム。ただ、今季は勝利と敗北が交互にやってきており、なかなか連勝で勢いに乗れていない。ホームでフラムに勝利し、前節の勢いをキープしたいところだろう。

 アンデルセンを欠いているもののフラムは自陣からボールを持とうという気概を感じるスタート。トッテナムは前線にスライドする形でハイプレス。バッシーのミスを誘ってソンが決定機を迎えたが、レノがセーブでピンチを食い止める。

 保持でも序盤からトッテナムは好調。大外のヴェルナーから一気に押し下げるアクションを行ったり、あるいは絞るポロが縦パスをレシーブすることで攻撃が加速したりなど、オフザボールの動きから相手を一気に押し下げる。

 フラムが少しラインを下げると、トッテナムは押し込んでのポゼッションを行っていく。こうなるとトッテナムはやや外循環のポゼッションに。フラムはきっちり構えてカウンターを打っていくが、ロングボールとトランジッションをトッテナムの急造DFラインがなんとか食い止めるという展開に。

 時間経過とともにフラムは反撃に。WGとSBの間が空いた守備を壊す形で前進する。押し込むポゼッションでは3センターの脇でスミス・ロウが受けることでボックス内に徐々に迫っていく。失点しそうな展開でフォースターのセーブが輝くシーンも。

 押し込む時間帯では有効打を打たれる一方で押し込む時間ではU字ポゼッションに終始するトッテナム。相手を動かせない中でヴェルナーの機動力の重要性が相対的に上がっていく展開だった。

 後半、トッテナムは再びボールを持つところからリズムを作っていくスタート。ハイプレスにも出ていくが、やはりWG周辺の守備の連動が甘く、フラムに簡単にボールを運ばれてしまう場面も。

 支配しきれない中で先制点をなんとかもぎ取ったトッテナム。ヴェルナーからのクロスをジョンソンが仕留めてゴール。フラムはロビンソンがオーバーラップからの戻りが遅れ、ジョンソンを捕まえられる位置にいたネルソンはケアを完全にサボっていた。

 しかし、フラムも反撃に。サイドから深さをとったイウォビの折り返しをケアニーがミドルで仕留めて追いつく。サイドからの押し込みがきいた同点ゴールのシーンだった。

 だが、そのケアニーは終盤に退場。逆転を狙いたいフラムだが、一気に退却を余儀なくされる。5-3-1を組むフラムに対して、トッテナムは押し込みながら得点の機会を伺っていくが、ロストからの大ピンチを迎える場面もあるなど苦戦。

 結局スコアはこれ以上は動かず、試合はドローでの痛み分けとなった。

ひとこと

 メンバーが入れ替わった影響もあるかもしれないが、ちょっとトッテナムは全体的にワタワタしていた感があった。

試合結果

2024.12.1
プレミアリーグ 第13節
トッテナム 1-1 フラム
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:54′ ジョンソン
FUL:67′ ケアニー
主審:ダレン・ボンド

第14節 ボーンマス戦(A)

中盤で落ち着きどころが見えてこないトッテナム

 縦に鋭い攻撃を繰り出させたらどんな相手に対しても食らいついていくことができる破壊力を持っているボーンマス。こちらも高速でサイクルを回すこと一本槍で勝負するトッテナムとの一戦は想像通り縦に速い展開の応酬からスタートすることに。

 試合は全く落ち着くことはなく、ドリブルやロングボールなどのつっかけ合い。クライファートのスピードで勢いを出すボーンマスに対して、早々にデイビスがカードが受けるなどトッテナムはやや受けに回った際に旗色が悪かった。古巣対決となるソランケが強さを見せることで根性で前進をする。

 拮抗する一戦の中でセットプレーで先制ゴールを決めたのはハイセン。CKでファーに回り込んでフリーになるとあっさりとゴールを決めて見せた。

 追いかけたいトッテナム。だが、押し込み切ってしまうとU字ポゼッションになり壊しどころがない。またボールの落ち着かせどころがなく、保持で全くテンポを作ることができない。中盤がなかなか動き直しをすることができず、縦のパスコースの予測が見えた状態でパスを出すので、簡単にボーンマスに捕まってしまう形になった。

 ということでむしろ攻撃に打って出ることができていたのはボーンマス。カウンターからチャンスを継続的に作ることができており、追加点に近い状況に立っていた。

 後半はややプレッシングがマイルドになったボーンマスだったが、手を緩めたわけではなくむしろトッテナムにアジャストした狙いの絞り方で受け手に強くプレッシャーをかけていく。トッテナムは中盤の司令塔不在が後半も響いてバタバタ。ボールの落ち着かせどころとして機能しそうなマディソンやクルゼフスキもなかなか有効活用できず。CKやペナ角からのクロスなど、瞬間的なキックスキルを活かすところからこじ開けにいく。

 選手交代からリズムを変えたいトッテナム。途中から入ったソンは早々にゴールを決めるが、これはオフサイドで認められず。

 押し込まれつつあったボーンマスは70分くらいから反撃。攻め上がりをきっかけにハイプレスに打って出ると、アダムスがボールを引っ掛けてエヴァニウソンがネットを揺らす。惜しくもオフサイドになったが、このシーンから再び攻めに打って出る。

 終盤はむしろ追いかけるトッテナムよりリードするボーンマスの方が優勢。ソンのオフサイド以降、交代選手も含めて流れを作れなかったトッテナム。敵地で苦しい連敗となった。

ひとこと

 人はそこそこ戻ってきていると思うトッテナムだけども、勝ち負け以前にらしいプレイができなかったのが気になるところ。

試合結果

2024.12.5
プレミアリーグ 第14節
ボーンマス 1-0 トッテナム
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:17′ ハイセン
主審:サイモン・フーパー

第15節 チェルシー戦(H)

構図がガラッと変わった後半は両軍に明暗

 上位勢が勝てないチェルシーにとってはライバルに差をつけるチャンス。対するトッテナムはシティ戦の快勝の後にブレーキを踏む格好になっており、まさしくこのロンドンダービーが正念場という様相である。

 試合はハイテンポでのスタート。トッテナムが3トップを基軸にチェルシーの3バックにプレスをかけることで速いサイクルを生み出す立ち上がりに。

 このテンポに対してチェルシーはアクシデントから失点。ククレジャのスリップからボールを奪われ、いきなりソランケが豪快なシュートを決めてみせた。

 このゴール以降もバタバタが止まらないチェルシー。3-2を基準とするビルドアップが完全にトッテナムに捕まり、ボールの出しどころがない状態に。サンチェスの苦し紛れのキックが相手にプレゼントされることもしばしばだった。

 そうした中でまたしてもククレジャのスリップからトッテナムはクルゼフスキが追加点をゲット。トッテナムはあっという間に2点のリードを奪う。

 順風満帆な流れに乗ったかと思われたトッテナムだが、15分にロメロに負傷交代のアクシデント。詳細な状況はわからないが、ドラグシンの準備の速さを見ると、ある程度無理をしての先発だったのかなと思わされる交代となった。

 さらにチェルシーは徐々にトッテナムのプレスを見切るように。3-2型に対して、徐々に前線からエンソやパーマーといった6人目を登場させることでトッテナムのプレスを空転させる。

 一気に前進を去れるとトッテナムの守備は戻りが間に合わない。クルゼフスキの戻りが間に合わないところに入り込んだサンチョが素晴らしいシュートで1点差に詰める。

 チェルシーはカイセドのキャリーなどアウトナンバーからボールを前に運ぶ機会を作れるように。パーマーは降りて6人目になる場合と、降りずに縦パスをレシーブして敵陣でプレーすることを優先するケースを見極めるのに長けており、速攻でトッテナムの脅威になった。

 しかし、トッテナム側も時折ミスが見られる上に淡白なカウンター対応を見せるチェルシーの守備を見ると、まったくプレスが無駄というわけではないのが難しいところ。トライを続けつつ、前半はリードを守って折り返す。

 迎えた後半、トッテナムは前半と打って変わってリトリートベース。チェルシーが一方的に押し込んでいくという少しテイストの違う試合となった。

 ボックス内での守備が増えるトッテナムには早い段階で致命的なミスが。間合いを完全に見誤ったビスマがファウルを犯してあっさりとPKを献上。61分に同点に追いつかれてしまう。

 さらに勢いに乗るチェルシーはエンソの豪快な一撃で一気に逆転までもっていく。交代選手の選手層も含めて苦しいトッテナム。それでも1点差ならばと何とか踏ん張っている中で今度はサールがPK献上。ゴールに向かいすらしていないパーマーを深追いしてファウルを犯すという非常に苦しいプレーでチームを追い込む。

 終盤は1点を返し意地を見せたトッテナム。しかし、4失点の逆転負けでリーグ戦連敗を喫することとなった。

ひとこと

 ブロック組んでもこれではハイプレス至上主義になるのもわかる。ただ両CBの強行出場はちょっとポステコグルーらしくないなと思った。

試合結果

2024.12.8
プレミアリーグ 第15節
トッテナム 3-4 チェルシー
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:5’ ソランケ, 11‘ クルゼフスキ, 90+5’ ソン
CHE:17‘ サンチョ, 61’(PK) 84‘(PK) パーマー, 73’ エンソ
主審:アンソニー・テイラー

第16節 サウサンプトン戦(A)

大胆な一手は初手から・・・

 ラッセル・マーティンがこの試合をどういう位置付けに置いていたのかは今となってはわからない。確かなことはこの試合に4-3-1-2という大胆な一手で臨んだこと。そして、それが全くと言っていいほどトッテナムに対してハマらなかったことである。

 遠慮なく言えば、1点目が決まった1分から前半が終了した45+5分まで延々とペースを握ったのはトッテナム。初手となったのは右のSBのスペンス。反転から中盤を引き剥がし、スルーパスを仕留めたのはマディソンだった。

 このシーンのようにトッテナムはSBからのキャリーで敵陣に進撃。構造的な話として4-3-1-2で4バックに立ち向かう場合、まずはSBのところをどのように捌くかは初手である。しかしながら、この日のサウサンプトンはその初手も定まっていないように思えた。

 トッテナムのポゼッションはとにかく自在。SBがボールを持ち、中盤を引き寄せるとインサイドに。中央を経由して逆サイドまで簡単に持っていくことができており、薄いサイドからさらなる進撃を重ねることでサウサンプトンに圧力をかけていく。

 さらにことを悪くしているのはボックス内の軽い守備対応。相手に動かされてしまい、動かされた先では特に潰し切ることもしない。マーカーが変わればスイッチを切ってしまう。こうした対応の繰り返しで結果的には15分までに3失点を喫する。

 サウサンプトンは3失点を喫したことで4-3-1-2をギブアップ。5バックにシフトし、いつも通りの5-4-1に回帰することに。しかし、トッテナムは止まらない。左サイドのソンを起点に攻撃を続け、サールが4点目のゴールを奪う。

 5-4-1で下がってもチャンスがあればトランジッションの馬力を見せつけることができるサウサンプトンだが、この日は完全に不発。ホルダーが出ていく動きに対して呼応するメンバーは不在。40分にディブリングのタメ→マニング→アームストロングの決定機までチャンスを作るのは待つ必要があった。

 後半は特に改めていうことはない。引き続き5-4-1で受けるサウサンプトンはサイドの裏からチャンスを作りにいくが、なかなかトッテナムをこじ開けることができず。トッテナムは無理にプレスをかけずに、リトリート優先でプランを構築する。

 よく言えば穏やか、悪く言えば緊張感の薄い展開になり、終盤はゆったりとした時間が流れる中でサウサンプトンがゴールを狙うという流れだった。

 最後まで展開は変わることはなくトッテナムが勝利。サウサンプトンはこの試合を最後に監督を交代することとなった。

ひとこと

 相手が相手ということは踏まえないといけないがゲームメイクに奔走したベリヴァル、先制点の起点となったスペンスといった少ないプレータイムの選手が結果を出したのは良かったと思う。

試合結果

2024.12.15
プレミアリーグ 第16節
サウサンプトン 0-5 トッテナム
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
TOT:1’ 45+5‘ マディソン, 12’ ソン, 14‘ クルゼフスキ, 25’ サール
主審:ダレン・イングランド

第17節 リバプール戦(H)

急造DFラインを圧巻の6得点で破壊

 2位のチェルシーは直前の時間帯の試合はドロー。またしても隣人にライバルチームの足止めのアシストを受けたリバプールはトッテナムとのアウェイゲームに挑む。

 序盤からペースを握ったのはリバプール。トッテナムが好みそうなハイテンポなゲームに堂々と乗っかり、インテンシティの高い展開でトッテナムを苦しめる。特に厄介だったのはトッテナムの左サイドに対するハイプレス。グレイ、スペンスという即席左サイドユニットに対してジリジリと圧力をかけてミスを誘発すると、ここから一気にショートカウンターで攻め込むことに成功する。

 リバプールの攻撃のストロングも同サイド。サラーを軸にアレクサンダー=アーノルドが絡む攻撃で一気に畳みかけに行く。両サイドはロングボールを収めることで攻撃の起点としても機能。トッテナムのバックスが中央への縦パスに対してアプローチが遅れることもあり、サイドにいい状態でボールを付けることが出来る。サイドに展開した後はシンプルなハーフスペースのオフザボールとの掛け合わせで定点攻撃でも攻め筋を作っていく。

 トッテナムもサイドからチャンスを作るべく長いボールを当てていくが、こちらはやや苦し紛れ感が先行。背中を向いてもなんとかできそうなクルゼフスキはともかく、ソンは丸投げではなかなか攻撃の手段としてはしんどいものがあった。

 サイドアタックに加えて、定期的に低い位置で発生するトッテナムのミスからチャンスを手にするリバプール。多くのチャンスをフイにしつづける嫌なムードを何とかしたのがディアス。クリーンな抜け出しから仕留めるゴールでようやく先行する。

 ゴールを決めたことで試合を動かしたリバプールは立て続けに追加点。トッテナムは中盤での潰しからのショートカウンターで1点を返すが、リバプールは前半終了間際に追加点を奪い、2点差をキープ。反撃の姿勢をとっている最中にトッテナムがぶんなぐられたところでハーフタイムを迎える。

 後半も大きく展開は変わらず。ハイラインを志向する両チームの中で利益をより多く得続けるのはリバプール。特にサイドからの裏抜けは電車道になっており、ダイレクトで抜けきるパターンとサイドのホルダーをピンとして、後から追い越す選手をラインブレイカーとして最終ラインを壊すパターンの2つで延々と攻撃を仕掛けていく。

 後半は左サイドを起点としたショボスライの前線への飛び出しが猛威を振るったリバプール。立て続けの2ゴールでさらにリードを広げる。

 クルゼフスキやソランケが意地を見せるトッテナムだが、終了間際にディアスが再びゴールを決めたリバプールとの点差はなかなか縮むことはなし。急造DFラインでは撃ち合いに耐えることが出来ず、テーブルの一番上でクリスマスを迎えるリバプールとは対照的に、トッテナムはクリスマスをボトムハーフで迎えることとなった。

ひとこと

 今の布陣で撃ち合ったらこうなるだろうし、それ以外の策がないのもわかるはわかる。

試合結果

2024.12.22
プレミアリーグ 第17節
トッテナム 3-6 リバプール
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:41‘ マディソン, 72’ クルゼフスキ, 83‘ ソランケ
LIV:23’ 85‘ ディアス, 36’ マック=アリスター, 45+1‘ ショボスライ, 54’ 61‘ サラー
主審:サム・バロット

第18節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)

余計なおまけ付きの敗戦

 連勝が出ずに苦しんでいるうちにいつの間にか勝利から遠ざかりつつあるトッテナム。このままでは年内でのボトムハーフでの折り返しも視野に入ってきてしまう。強敵のフォレスト相手のアウェイとはいえ、なんとか3ポイントが欲しいところだろう。

 序盤にペースを握ったのはトッテナム。左サイドからショートパスを繋ぎながらテンポ良く動かしていく。フォレストはブロックを構築しながらトッテナムを迎え打ちたいところだったが、普段と比べるとコンパクトさに欠けていた印象。特にライン間に入り込むソンへの対応に苦しんでいた。

 フォレストは保持に回るとマンツーベースの相手への対応をする必要があった。解決策はこちらも左サイド。アンダーソンとハドソン・オドイのポジションチェンジから少しずつズレを作っていく。

 ともに左サイドからのズレを狙っていく流れだったが、先制点はカウンター。中央のブロックに突っ込んでいったスペンスがボールをロストしたところからギブス=ホワイト→エランガでゴールを奪い切る。

 このゴールを皮切りにトッテナムはブロック攻略に苦戦。なかなかインサイドをこじ開けられない状況に苦しめられることに。時間の経過とともにフォレストの鋭いカウンターが目立っていく展開となった。

 後半もボールを持つのはトッテナム。ポジションチェンジを増やした右サイドからチャンスを構築していく。

 一方のフォレストも右サイド重視のプランに舵を切る。ウドジェ周辺のスペースの管理の甘さに追加点を奪い取るための道筋を見出していた。

 同サイド攻略にフォーカスする流れからトッテナムは徐々に広くピッチを使う方向性にシフト。中盤にマディソンやベリヴァルを入れることで保持のテイストも少しずつ変えていく。

 フォレストは左右に振られる形にも対応すべく5バックにシフト。幅にも強い陣形にすることでリードを守りにいく。

 押し込みながら打開に挑むトッテナムだが、フォレストがきっちりクローズを狙う形になって以降はチャンスをこじ開けることができず。最後はスペンスの退場という余計なおまけがついてしまったトッテナム。ただでさえやりくりが苦しいバックラインに更なる欠場者を出す踏んだり蹴ったりな幕切れとなった。

ひとこと

 トッテナムとしてはフォレストの守備のブロックが固まる前になんとかこじ開けたかったところだろう。

試合結果

2024.12.26
プレミアリーグ 第18節
ノッティンガム・フォレスト 1-0 トッテナム
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:28′ エランガ
主審:クレイグ・ポーソン

第19節 ウォルバーハンプトン戦(H)

止まらない負傷交代の連鎖

 12月に入って負傷者が続出。勝ち点を積み上げるペースが落ちているトッテナム。ここに来て対戦するのが監督解任以降、少しずつ調子が上がっているウルブスというのも嫌なところだろう。

 ウルブスはメリハリのあるプレスでトッテナムを苦しめるスタート。リトリートでの5バック構築とGKのみを放置するマンツー気味のプレスの両刀はハマった感がある。シャドーが外を切りつつコースを狭めて、中央でボールを刈り取るというスタイルからウルブスはファストブレイクを狙っていく。

 前が出ていくならば後ろも出ていくということできっちりと覚悟をそろえることができていたウルブス。高い位置からでの跳ね返しに成功すると、カウンターからファウルをゲット。このFKを横にずらす形からヒチャンが先制ゴールを決める。

 ハイプレスに出ていきながらボールを奪い返すということを狙っていきたいトッテナムだが、プレスがハマらず苦戦。特にサイドの縦の関係性のチェーンが切れやすくこの間に入ってくる選手を捕まえるのに苦労する。

 だが、セットプレーで同点に追いつくと少しずつ巻き返しに成功。前線の降りるアクションを見せることでプレスを外しつつ、ボールを敵陣まで運べることが増える。特にベンタンクールは相手との離れ方と味方が作ったスペースの使い方を時間経過とともに掴んでいったように見えた。

 敵陣に入ると右サイドからのコンビネーションが光る。細かいパスワークからの抜け出しで押し込んでからの一手を見せることができていた。

 右サイドのポケット侵入から得たPKはソンが止められてしまうが、右サイドの攻略は前半終了間際に実る展開。クルゼフスキとジョンソンのコンビネーションから勝ち越しゴールを決める。この右サイドにボールを運んだのは相手のプレスとの距離感を見つけたベンタンクールだった。

 迎えた後半もハイラインをめぐる攻防が目につく展開に。マンツーを外しに行くトッテナムに臆することなく、高い位置からボールを奪いにいく。

 そんな中でウドジェが負傷交代と嫌な流れを感じるトッテナム。徐々にウルブスがボール奪取からテンポを掴んでいくように。トッテナムはハイラインブレイクからチャンスを作りたいが、なかなかウルブスのプレスの背後を取ることができない。

 終盤は4バックにシフトしたウルブス。押し込むところから前線のメンバーを増員してなんとか追いつきにいく。このスタンスが実ったのは87分。左サイドから珍しく右足を使ったアイト=ヌーリからラーセンへのアシストが通り、角度のないところから仕留める。

 終盤はどちらのチームもチャンスがあるオープンな展開に。右サイドの抜け出しにサールが合わせる形でチャンスを作るトッテナムだったが、サールの抜け出しのタイミングが微妙に合わないのが痛恨だった。

 試合はドロー決着。トッテナムはリードを守り切れず、前節に続いて勝ち点を落とすこととなった。

ひとこと

 負傷交代がここまで増えると、なんとかどうにもならない部分もある気がする。

試合結果

2024.12.29
プレミアリーグ 第19節
トッテナム 2-2 ウォルバーハンプトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:12’ ベンタンクール, 45+3‘ ジョンソン
WOL:7‘ ヒチャン, 87’ ラーセン
主審:クリス・カヴァナー

第20節 ニューカッスル戦(H)

完成度の差が出た前半が勝敗を分ける

 正月モードも最終盤。過密日程のトリとなる第20節はノースロンドンからスタート。苦戦が続くトッテナムがニューカッスルを迎えての一戦に挑む。

 苦しいトッテナムだが早々に先制ゴールをゲット。前節も好調だった右サイドでの連携から。遅れて入ってきたポロがゴードンより素早い攻め上がりでクロスを入れて、ソランケがマークをものともせず叩き込んだ。ボットマンにとってはいきなりタフな復帰戦となった。

 しかし、ニューカッスルはすぐに同点に。ハイプレスに対してショートパスのコンビネーションからのプレス回避を狙うトッテナムをくじき、ショートカウンターからゴードンがゴールを決める。手に当たった!と言いたいスパーズファンの気持ちはわかるが、あそこまで寄せられてしまった時点でもはやエラーはいつ起こっても仕方ないのも確か。自軍のビルドアップにも傷はあるなという感じであった。

 このシーンのようにニューカッスルはプレスのスイッチの入れどころを心得ているように見えた。即席の中盤+DFユニットということでトッテナムのぎこちなさは仕方ない部分ではある。特に左サイドのユニットは厳しい。スペンスが地雷の状態でグレイにパスをつけるのを何度も見た。

 GKのオースティンはショートパスの制限をかけられてプレスがかかっている位置へのパスへの誘導を喰らうことも。ハイボール対応は安定していたので、ダメなところばかりのデビュー戦ではなく、きっちりやれることを示した試合となった。

 どちらもそれなりにプレスには手応えを感じる展開ではあったが、やはりスピード感に後ろが飲まれやすかったのはトッテナムの方。時間の経過とともにニューカッスルが組織の安定感を軸に攻め込む時間を増やしていく。

 特に効いていたのは右サイド。マーフィー周辺の崩しからサイドの背後を取り、折り返しから決定機を作っていく。40分手前のシーンもマーフィーから。縦へのスライドにはスペンスが付いていったように思えたが、股抜きでクロスを通されると、ラインを下げ損ねたドラグシンが処理を誤り、イサクがゴールを決める。

 この右サイドと中央のライン間のコンビネーションをベースに残りの時間もペースを握ったニューカッスル。スコアをひっくり返し、内容も制圧する満足度の高い前半の45分となった。

 後半、トッテナムはドラグシンが交代し、さらにDFラインのやりくりは厳しいことに。CBに送り込まれたスペンスはボールを持つ方でも、カウンターを受ける方でも怖いがここはさすがに本人を責めるのは酷である。

 サイドからの押し下げに関してはトッテナムはできていなくはなかったが、サイドで高い位置を取る分、ニューカッスルにひっくり返されてのカウンターを食らうなどそれなりに代償を支払う必要があった。ニューカッスルは中盤の背後を取れれば致死性の高いカウンターを繰り出すことができていた。

 60分過ぎのトッテナムの3枚交代はポステコグルーの勝負手。レギュラークラスを3人投入し、試合の流れを変えに行く。ナチュラルにサイドにボールを集めやすい形からさらに敵陣での時間を増やしていく。さらにはマディソンとソンのいる左サイドもクオリティが上乗せ。もともと崩しが期待できる右サイドに加えて両サイドから攻め筋が見えるように。

 終盤まで追い縋ったトッテナムだが、得点を掴むことはできず。逆転負けでリーグ戦は4試合勝利なしとなった。

ひとこと

 20試合で勝ち点24。CLボーダーが70とすると18試合で46ポイント取らないと食い込めないことに。相当厳しい数字。

試合結果

2025.1.4
プレミアリーグ 第20節
トッテナム 1-2 ニューカッスル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:4‘ ソランケ
NEW:6’ ゴードン, 38′ イサク
主審:アンディ・マドレー

第21節 アーセナル戦(A)

第22節 エバートン戦(A)

第23節 レスター戦(H)

第24節 ブレントフォード戦(A)

第25節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)

第26節 イプスウィッチ戦(A)

第27節 マンチェスター・シティ戦(H)

第28節 ボーンマス戦(H)

第29節 フラム戦(A)

第30節 チェルシー戦(A)

第31節 サウサンプトン戦(H)

第32節 ウォルバーハンプトン戦(A)

第33節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)

第34節 リバプール戦(A)

第35節 ウェストハム戦(A)

第36節 クリスタル・パレス戦(H)

第37節 アストンビラ戦(A)

第38節 ブライトン戦(H)

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