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「誘導への立ち向かい方」~2020.10.31 J1 第25節 川崎フロンターレ×FC東京 BBC風オカルトプレビュー

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第25節
2020.10.31
川崎フロンターレ(1位/21勝2分1敗/勝ち点65/得点68 失点19)
×
FC東京(位/勝分敗/勝ち点/得点 失点)
@等々力陸上競技場

戦績

近年の対戦成績

図1

直近5年間の対戦で川崎の9勝、FC東京の4勝、引き分けが2つ。

川崎ホームでの戦績

図2

直近10試合で川崎の3勝、FC東京の3勝、引き分けが4つ。

Head-to-head

<Head-to-head①>
・リーグ戦における多摩川クラシコは川崎の4戦無敗(W2,D2)。この間、FC東京は川崎相手に得点を決めていない。
・しかし、直近の対戦であるルヴァンカップ準決勝ではFC東京が川崎を0-2で下している。

 近年のクラシコにおいて苦手意識があるのはどちらかといえばFC東京だろう。川崎は目下リーグ戦のクラシコは4試合無敗。4試合とも川崎はクリーンシートを達成している。FC東京の最後の得点は2018年5月。等々力において森重と橋本のゴールを共に太田宏介がアシストして川崎を下した試合だ。

 しかし、川崎にも返さなければいけない借りがある。いうまでもなくルヴァンカップ準決勝だ。今季のタイトルの光を一つ消されたあの一戦のやり返しは必須。名古屋相手に「ダブルをされたらタイトルを取ったとしてもモヤっとする」と語った守田のコメントから察するに対FC東京にも同じ思いがあるはず。心に曇りが残るシーズンにはしたくないところだ。

<Head-to-head②>
・直近3試合の公式戦の等々力におけるFC東京戦において川崎は未勝利(D1,L2)。
・直近6試合の等々力でのリーグ戦でのクラシコは両軍合わせて7得点のみ。

 しかし、ホーム等々力でのクラシコでは勝利から遠ざかっている川崎。直近3試合、ホームのクラシコに関しては未勝利である。リーグ戦最後の勝利は2016年のこと。小林悠の得点で首位を守った試合である。

 等々力でのクラシコの特徴といえば、非常にロースコアでの決着が多いこと。ここ6年間のリーグ戦で両軍に生まれた得点はわずかに7。同期間での味スタでのクラシコで21得点が生まれているので、味スタの1/3の得点数ということになる。

<Head-to-head③>
・直近6試合の公式戦の多摩川クラシコにおいて、ホームチームが得点をしたことはない。
・片方がJ1首位のシチュエーションで迎えるクラシコは過去に4回。いずれも川崎がFC東京を下している。

 先ほど、等々力でのクラシコにおいて川崎の勝利が遠ざかっていると述べたが、このカードは非常にホームチームが苦しむ傾向がある。多摩川クラシコは6試合もの間、ホームチームが得点を挙げたことのないカードである。リーグ戦で最後にホームチームが得点を挙げたのが2017年の等々力における谷口彰悟のゴール。この時のFC東京のスタメンの中で、現在も在籍しているのは高萩洋次郎と林彰洋の2名だけ。だいぶ時がたった。

 どちらかのチームがJ1首位で迎えるクラシコは過去に4回。川崎が3回、FC東京が1回首位の状況でこの対戦が実現しているが、どちらのチームが首位に立っているかは関係なく勝ったのは川崎というのが過去の結果。4試合で10得点1失点と内容も圧倒している。J2時代を含めても6戦無敗(W5,D1)。プレッシャーのかかる状態で迎えるクラシコが得意なのは川崎の方である。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・小林悠は左ふくらはぎの肉離れで6~8週間の離脱。

【FC東京】

・東慶悟、岡崎慎は欠場予定。
・アルトゥール・シルバは出場停止から復帰。

予想スタメン

画像3

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts①>
・勝てばリーグ戦12連勝。
・4試合連続クリーンシート。

 名古屋相手にリベンジを達成してついに同一シーズン内での記録となる11連勝を達成。シーズン2回目の連勝は1回目の10連勝を超えるものになった。

 直近で目立つのは数字を残しているのは守備面である。とりわけジェジエウとソンリョンを中心にしたブロックは直近5試合で4回のクリーンシートを記録している。

<川崎のMatch facts②>
・リーグ戦のホームゲームは11連勝中。
・負ければ今季初めて同じ相手に対して公式戦連敗を記録。

 ホームゲームも連勝は続いている。開幕戦で鳥栖に引き分けて以降はリーグ戦は全勝。FC東京にはカップ戦で敗れた舞台だが、リーグ戦でリベンジなるか。

 ちなみに同一の相手に公式戦で連敗を喫すれば昨年の神戸以来。天皇杯とリーグ戦で連敗し、再戦で返り討ちにあっている。

<川崎のMatch facts③>
・セットプレーからの得点は14でリーグ最多。
・今季のリーグ戦での得点者16人はリーグ最多。

 名古屋戦で完勝の引き金になったのはセットプレーの得点。昨年はあまり得点を重ねられなかったセットプレーで3得点すべてをたたき出した。今まで手が回らなかった部分だが、今年は戸田コーチのもとで入念な対策があるようだ。ちなみにセットプレーからの失点は3でG大阪、広島と並んで最少。守る方でも強さがある。

 その名古屋戦で得点したジェジエウが今季川崎のリーグ戦で16人目のスコアラー。今季のリーグ戦では22人とリーグ最少人数での戦いになっているが、そのうち16人が決めているのだから上々だろう。出場選手の中で今季まだ得点がないFPは登里、マテウス、下田、守田、リーグ戦に限ればこれに加えて齋藤が入るだけである。

【FC東京】

<FC東京のMatch facts①>
・リーグ戦3連敗中。
・直近5試合はクリーンシートがない。

 元気がない。リーグ戦は3連敗中で来週のルヴァンカップ決勝という大舞台を前にいいリズムで臨めているわけではなさそうだ。仮に4連敗になれば2013年4月以来。7年ぶりの不振でファイナルに向かうことだけは避けたいが。

 ここ数試合で目立つのは失点。ルヴァンカップ準決勝で魅せた堅守は鳴りを潜めており、直近2試合では7失点。退場者もいたとはいえかなり失点は嵩んでいる。

<FC東京のMatch facts②>
・直近4試合の公式戦でのアウェイでの勝利はクリーンシート。
・直近6試合の公式戦で勝利した2試合はいずれも前半に得点している。

 アウェイでの直近での勝利はクリーンシートが条件になっているようだ。川崎を下したルヴァンカップもやはりクリーンシート。やはり堅い守備の復活がなければ再度の等々力攻略とはいかないだろう。

 その準決勝でもう1つキーになったのは先制点。とりわけここ数試合は前半で得点を取った試合で勝利を収めている。逆に好機はあるものの、ズルズル得点が取れないまま時間帯を経過して、1つの失点をきっかけに決壊するのがここ数試合の悪癖である。

<FC東京のMatch facts③>
・ディエゴ・オリベイラは直近8試合の公式戦の出場で無得点。
・リーグ戦での直接FKの得点は3でリーグ最多。

 FC東京のエースといえばディエゴ・オリベイラ。しかし、直近の試合では得点がない。後半戦の不振は今季に限ったことでなく数年来の彼の課題でもある。ここ3シーズンのリーグ戦で35得点を挙げているオリベイラだが、うち26得点は前半戦に記録したもの。終盤のブレーキは今年だけではないのだ。

 出場停止明け2試合目となるレアンドロ。彼の武器である直接FKは今季のJでも屈指のキレ味。すでに川崎はその脅威を味わっている。危険な位置での安易なファウルは避けなければならない。

展望

■直近の流れとは異なる手法か?

 横浜FM戦は早い相手のテンポに合わせて、そして柏戦は引き込んでも守れないだろうターンオーバーしたメンバーの特色に合わせてそれぞれミドルゾーン付近からプレスをかける積極策が見られたFC東京。可変も多い横浜FM相手にはマンマークの成分を多めにしての対応も見られた。

 おそらく、どちらの試合もこれまでよりはフィジカルコンディションに余裕があるという見立てだろう。横浜FM戦は久しぶりに1週間準備ができる日程的な猶予があったし、柏戦はメンバーを入れ替えてフレッシュさを維持していた。柏戦が手の内隠しなのかどうかは7日のファイナルでわかる話である。まぁ、今更隠す手の内があるのかどうかはわからないけども。

 おそらく週末の多摩川クラシコのFC東京のスタンスはこういう形にはならないのではないか。基本的にはルヴァンカップ準決勝と同じ流れをFC東京は狙いたいはずである。その要因としてまず挙げられるのはは中2日という体力的な側面。試合勘の心配はあれど、2週間のブレイクを挟んで体力がある川崎相手に、横浜FM戦のようにテンポを上げて挑むのはリスクがある。

 確かにリーグ戦の連敗は止めたいところではあるが、長谷川監督の中では悪い流れで決勝に臨まないことが優先事項としてあるはずである。それであれば、大破のリスクがあるオープンな展開を序盤から繰り出していくよりは、自陣にブロックを固めて一刺しを狙うという流れを優先しても不思議ではない。

 そして、FC東京には自陣のブロックを低く設定しても少ない人数で長いカウンターを何とか出来るアタッカー陣がそろっている。揃っているどころかリーグ屈指といってもいいくらいだ。ディエゴ・オリベイラ、永井謙佑、レアンドロに加えて田川亨介やアダイウトンなどの準レギュラー格の選手も同様のタスクを担える資質を持っている。FC東京は低いブロックを敷いたとしても攻撃力が落ちるわけではないチームである。

 前進の手段としては大きな裏へのボールはもちろん、横浜FM戦では縦パスを受けたトップの選手がワンタッチでポストして、待ち受ける2列目の選手がそれを広い前進するパターンが増えていた。純粋なスピード勝負に加えてこのポストがバリエーションに入ると厄介。FWとCBのマッチアップで全戦全勝は難しい相手だけに、前線に入るボールに対しては挟み込んで対応したいところ。中盤のプレスバックによるサポートは必須になりそうだ。

■失敗が約束されているわけではないが

 川崎としてもルヴァンカップ準決勝の話は避けて通れないだろう。正直、「この展開とこの結果がこのタイミングで来るのかよ!」と自分は頭を抱えた覚えがある。この試合のポイントは左サイドを軸に狭いスペースをこじ開けることに固執したせいで、FC東京のサイドに囲い込むような守備が機能したことにある。試合序盤は広く使う意識を持ちつつも、徐々に狭く狭く狭くなっていくことがあるのは今季の川崎の特徴である。このFC東京戦もそうだった。

 難しいのは、今季このパターンになった試合がことごとく失敗しているわけではないということである。典型例はヤンマーでのC大阪戦で正確なボールタッチ、多い人数、細かいサポートで狭いスペースにおいても、相手に囲い込むことを許さずに深い位置まで侵入することに成功している。他の試合においても、サイドに過剰に人数をかけたことで打開ができた試合はある。何かと忌み嫌われる密集だが、それが結果を出している試合もあるということはまた事実である。

 だからこそ、その悪い要素が出てくるのがよりによってワンマッチのトーナメントなのかよ!と頭を抱えたのである。広く使いたいはずが狭いスペースに固執してドツボにハマるパターンはもっと早く来るはずと個人的には思っていた。しかしここまでは狭い展開を回避しながら、または狭い展開になっても強引に打開しながら進んできたのである。

 とはいえ、大一番で下手こいたのは事実。狭いスペースでのボールスキルの高さという従来の強みが依然活きているのは、もう確認できた。やはり薄いサイドや中央を織り交ぜて定点に固執しないボールの流れからの打開を期待したいところである。

 逆に言えば、FC東京は川崎に対して攻めどころを1か所に固執させることで勝利のチャンスが拓けてくる。全体よりも目の前の相手にフォーカスさせて、視野と選択肢を近め近めに誘導する。

 1つの指標になりそうなのはFC東京のCH。安部とアルトゥール・シルバは食いつきがいい上に、サイドに相手を閉じ込めることをタスクとして言い渡されるケースが多いように見える。彼らはスペースを空けてまで川崎をサイドに封じ込めようとする。ダミアンが最終ラインで踏ん張って駆け引きすることができて、かつサイドを脱出できれば川崎には空いたバイタルを攻略するチャンスが出てくる。CHが空けたスペースをどれだけ使えているかが川崎がFC東京の誘導に乗っているかの指標になりそうである。

 川崎にとっては狭いスペース攻略は矜持であるだろうが、それだけに相手にとっては誘導しやすい。誘導と固執を回避しながら準決勝のリベンジを果たしたいところだ。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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