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「Catch up Premier League」~Match week 12~ 2024.11.23-11.25

目次

レスター【15位】×チェルシー【3位】

3-1-6による支配力アップで古巣凱旋を飾る勝利

 年内最後の代表ウィーク明けはマレスカのキング・パワー・スタジアム帰還からスタート。チェルシーが先陣を切って昇格組のレスターと相対する一戦だ。

 序盤からこの試合のチェルシーには変化が見えた。後方の陣形は3-1型。カイセドをアンカーにして、3人のCBキャラクターを並べる形に。明確にカイセドの相棒は定めず、降りるパルマーなどその前にいる2列目やジャクソンが柔軟に中央のスペースを使うイメージとなった。このポジションバランスとネト→フェリックスの入れ替えの相関についてはもう少し見たいところである。

 攻撃のルートとして増えたのはサイドからのワンツーを活かしての抜け出し。ワイドの選手をフェリックスやエンソがサポートすることで抜け出すアクションを生み出し、速いクロスで折り返す形を延々と狙うのがこの日のチェルシーのスタンス。オフサイドに終わったが、マドゥエケがネットを揺らしたシーンなどは方向性をきっちり示すタイプの崩しだ。

 守備でもエンソが明確に1列前にいるなど、ハイプレスでレスターのショートパスを封殺。二次攻撃においては左のククレジャ、バディアシルを軸に出足の良さを活かしたボール奪取で波状攻撃に繋げる。攻守において、より支配的に攻撃を進めるテストのように見受けられた。

 狙い通り、20分まではチェルシーは完全にレスターに息をさせないままの展開。ファエスとのタイマンに勝利したジャクソンが先制弾をもたらすなど、ここまでは完璧な流れと言っていいだろう。

 レスターは20分過ぎから少しずつボールを持てるように。特に効いていたのは左のエル・カンヌス。時には2人に囲まれながらもボールを逃すことで苦しい展開の中からチャンスを作りだす。チェルシーはこちらのサイドの相手の囲み方に少し甘さが見られた。

 20分のカウンターを機にボールを持つ時間を作れるようになったレスター。エル・カンヌスとヴァーディが時間を作りつつ、敵陣に攻め込む機会を増やす。非保持でも4-4-2からエル・カンヌスが1列前に入ることでチェルシーの3バックを捕まえる形をとる。強気の守備に中盤も連動して応答。高い位置でのボール奪取が見られるように。

 それでも時折見られる軽いパスや繋げそうな時間帯にもゴールキックをいきなり蹴り出すハーマンセンのプレー選択などでリズムを掴みきれず。ボールを奪った後のチェルシーのファストブレイクも刺さる寸前までは行ったが、リードをさらに広げられないままハーフタイムを迎える。

 後半、チェルシーはハイプレスに出ていく前半と同じスタート。レスターも前半に怪しさを見せていたチェルシーの右の守備ブロックを重点的に狙うことで対抗する。チェルシーはクリスチャンセンをどう捕まえるかに難儀するが、クリスチャンセンもまたボールプレイヤーではないので、特に与えられた時間を使うことができずに悩ましいという流れだった。

 時間が経つとチェルシーは保持の時間を取り戻すように。だが、攻撃の本命はレスターのパスワークを引っ掛けてのカウンター。ホルダーの横にサポートをつけて追い越すことの積み重ねで前に進もうとするレスターに対して、ボールを奪って一気に前に進んでいく。出口になっているのは中央のフェリックスと右のマドゥエケが多かった。

 押し込む機会を増やすチェルシーは順当に追加点。左のククレジャのクロスの溢れにボックスに入り込んでいたエンソが押し込んでゴール。今季初ゴールを決める。

 選手交代で店じまいを図るチェルシーに対して、レスターは交代で入ったマヴィディディを軸になんとか攻め筋を探っていく。その攻め筋探しが実ったのは後半AT。リードへのラストパスを通してラヴィアのファウルを誘発する。このファウルで得たPKをアイェウが仕留めて1点差に。アイェウはこれで今季あげた3得点が全て後半ATに記録したものだ。

 しかし、反撃もここまで。チェルシーは複数得点のリードをきっちり活かしての逃げ切り勝利。マレスカの古巣凱旋試合を飾った。

ひとこと

 チェルシーの3-1-6は狙いと人選がマッチしていて面白かったが、さすがにカイセドの負担が重たい気もする。ただ、支配力を高めるという一手としては有効だと思うので、少なくともこの試合くらい力量差があるチームに対しては悪くないオプションになる可能性がある。

試合結果

2024.11.23
プレミアリーグ 第12節
レスター 1-2 チェルシー
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:90+5′(PK) アイェウ
CHE:15‘ ジャクソン, 75′ エンソ
主審:アンディ・マドレー

フラム【7位】×ウォルバーハンプトン【19位】

早め早めの交代策がしっぺ返しに

 フラムはバックスにはボールを持たせてOKと言うスタンスのスタート。ウルブスは少しサリー気味で外循環でボールを動かしていく。大外からラインを押し下げていくことでフラムの陣内に進んでいく。

 ウルブスはフラムに比べれば高い位置からプレスをかけていこうという意識がある立ち上がりだった。フラムはこのプレスをショートパスで交わしながら、右サイドを中心にファウルでチャンスを作りにいく。

 時間の経過とともにボールを持つ機会が増えたのはフラム。左右からサイドを押し下げてイウォビがミドルを放って先制ゴールを生み出す。

 反撃に出たいウルブスだが、外循環の保持の流れを変えられず。フラムはサイドのスライドをひたすら間に合わせることでウルブスのポゼッションに十分に対抗していく。2トップの脇に立つジョアン・ゴメスが手探りで解決策を模索していたのが印象的だった。

 ウルブスの同点ゴールは目先を変えたところから。この日はCBに入ったレミナからのフィードに抜け出したクーニャがゴールを決める。素晴らしいタッチダウンパスからの同点ゴールだった。

 フラムの攻撃もウルブスと同じく徐々に外循環に収束。ウルブスの守備にクリティカルに刺さる形を作ることに苦戦した。

 後半、再び保持の時間を増やしつつあったフラム。ヒメネスの裏への抜け出しなど、前半とは少しテイストの違いを感じる打開からボールを動かしていく。

 しかし、得点を決めたのはウルブス。中央の細かいパスから抜け出すところからジョアン・ゴメスがフィニッシュを決めて逆転に成功する。

 フラムは左サイドの攻めにフォーカス。前線のタメとロビンソンのオーバーラップを併用することでウルブスの守備にガンガンクロスを差し込んでいく。

 持たれる展開が続く中で隙を伺うのはクーニャ。マイナスのパスを狙ってカットするところからショートカウンターに移行し、フラムのゴールを脅かしていく。2トップの相方であるラーセンもターゲットマンとしての役割を果たし、ウルブスは前線のタレントを生かした形からさらなるゴールを狙っていく。

 早め早めの交代策からチャンスを伺っていたフラムだったが、交代枠を使い切ったところでのアンデルセンの負傷というしっぺ返しを喰らうことに。これでフラムは残りの10分強を10人で過ごすことに。

 3-4-2というアグレッシブなスタイルから追いつくスタンスを諦めなかったフラムだったが、前からのチェイシングをリード後も諦めなかったウルブスは数的優位をスムーズに活かす。高い位置からのプレスでフラムの前進を咎めると、またしてもクーニャの一撃で追加点。最後はゲデスがおまけの一撃を見舞う。

 終わってみれば大量3点のリードでの勝利となったウルブス。初勝利からすぐに連勝を手にした。

ひとこと

 クーニャ、ほんといい選手だな。

試合結果

2024.11.23
プレミアリーグ 第12節
フラム 1-4 ウォルバーハンプトン
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:20′ イウォビ
WOL:31’ 87′ クーニャ, 53′ ジョアン・ゴメス, 90+5′ ゲデス
主審:ロベルト・ジョーンズ

エバートン【16位】×ブレントフォード【11位】

まったりに絡め取られたエバートン

 ボールを持つ意欲を見せたのはブレントフォード。GKをCBが挟む形の保持でショートパスから試合を組み立てていこうとする。エバートンは全力でこの狙いを阻止。高い位置からのプレスでブレントフォードの陣内でなるべくボールを回収しようという流れ。ボールを奪ったところからサイドでクロスを上げて一気にフィニッシュに持っていこうとする。

 ブレントフォードは徐々に横パスを使いながら相手のプレスを回避。エバートンのハイプレスへの耐性を見せていく。ただし、エバートンは自陣からでもロングカウンターで一気に攻め込む姿勢を見せるなど、押し込まれたら押し込まれたで普通に戦うことが出来るというスタンスではあった。

 ブレントフォードは30分くらいからプレスのスイッチを入れる機会を増やし、展開はオープンに。そうした中でシュート機会を得たのはエバートン。押し込んでクロスを前にひと工夫を入れていたのは確かなのだが、クロスとシュートの両面の精度が足りずシュートが枠に飛ばない。

 ブレントフォードもルイス-ポッターとムベウモの幅取り役を軸に自由に動く中盤3人+ダムズゴーで反撃に打って出る。だが、ブレントフォードはノアゴールのピックフォードへの危険なチャージで退場に。後半まるっと10人で戦う状況に追い込まれたところでハーフタイムを迎えることとなった。

 後半、数的優位を得たエバートンはガンガン押し込んでいく。左右から押し下げてシンプルなクロスを入れていく。

 ブレントフォードにとって幸運だったのは単純なクロスを跳ね返すことに関してはこの日はとても安定していたこと、そして時折時間を使うことで展開をまったりとさせようとしていたブレントフォードのペースにエバートンがやたらと付き合ってくれたことである。なんとなくラッシュをかけられないエバートンを尻目にブレントフォードはポゼッションも絡めながら押し返しにいく。

 最後までギアを入れ替えることができなかった感のあるエバートン。前からのプレスでもペースチェンジをすることができないまま、ズルズルと時間だけが過ぎていくというような後半だった。

 ブレントフォードは狙い通りスコアレスで勝ち点の持ち逃げに成功。エバートンを10人で絡め取ることでスコアレスドローをもぎ取った。

ひとこと

 エバートン、完全に付き合わされてしまった感があった。

試合結果

2024.11.23
プレミアリーグ 第12節
エバートン 0-0 ブレントフォード
グディソン・パーク
主審:クリス・カヴァナー

アーセナル【4位】×ノッティンガム・フォレスト【5位】

あまりにもあっさりとしたトンネルの出口

 レビューはこちら。

 リーグ戦5試合ぶりの勝利を目指すアーセナル。11月の代表ウィーク明けにエミレーツで迎え撃つのは好調のフォレスト。アンフィールドでリバプールに今季唯一の敗戦を味わわせたチームだ。エミレーツでも金星の再現を狙ってくるだろう。

 立ち上がり、セットプレーから早々にチャンスを迎えたアーセナル。メリーノのヘッドからのティンバーのゴールはオフサイドによって取り消されてしまう。

 だが、以降も押し込むのはアーセナル。左右からファーへのクロスを軸にまずはフォレストのクロス対応を揺さぶっていく。

 変化があったのは15分。トロサールからのグラウンダーのパスはここまでの試合で中心だったファー狙いのクロスとは一線を画すもの。ウーデゴールのミドルという慣れ親しんだフィニッシュのためのラストパスだった。

 アーセナルはこのパスの流れからボールを得たサカが強引なミドルでこじ開けに成功。あっという間に先制点を生み出す。

 以降もアーセナルはサイドからの攻撃を強化。ウーデゴールが入ってバランスが良くなった右とジェズスとカラフィオーリのサポートがある左の両サイドで効果的なショートパスを連打し、フォレストを追い詰めていく。中央に顔を出すジョルジーニョの後方からの右サイド支援が刺さる展開は非常に懐かしい。

 フォレストからすると苦しい展開。時折、右サイドからの陣地回復は成功するが、アーセナルのブロック構築が早く効果的な攻撃にはならない。終盤にようやく多少アウォニイが収まるようになるが、スピードアップの決め手にはならず。前半のフォレストの良かった点はさらなる追加点をアーセナルに許さなかったことくらいだろう。

 後半、ハイプレスに出て行くフォレストに対してアーセナルはポゼッションで真っ向勝負。右に流れるウーデゴールと中央でバランスを取るメリーノの2人を軸としたポゼッションからフォレストのプレスを挫いていく。

 丁寧なビルドアップで右サイドから前進に成功したアーセナル。サカのダブルチームとウーデゴールのフリーランで中盤をどかし、トーマスのミドルで追加点を仕留める。

 このゴールで試合は決着の様相。フォレストのプレスは散発的になり、以降はトーンダウンしたゲームをアーセナルが支配する展開に。終盤は右サイドに入ったスターリングとヌワネリのコンビが3点目をゲット。完勝に華を添える一撃をお見舞いした。

 長かった未勝利のトンネルは難敵相手にあっさりと。エミレーツで迎えた5試合ぶりの勝利は驚くほど落ち着いた状態でタイムアップの笛を聞く完勝となった。

ひとこと

 アーセナルの右への対応にフォレストは終始迷いが見られた。

試合結果

2024.11.23
プレミアリーグ 第12節
アーセナル 3-0 ノッティンガム・フォレスト
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:15′ サカ, 52′ トーマス, 86′ ヌワネリ
主審:サイモン・フーパー

ボーンマス【12位】×ブライトン【6位】

畳みかけが遅くなり逃げ切りを許す

 強力な攻撃力を兼ね備えており、大物食いの一発のパンチ力のある両チームの一戦。今季で言えばすでにシティに勝利しているボーンマスとブライトンのゲームである。

 高い位置からブライトンの保持を阻害しに行くボーンマス。奪ったらまず素早く縦へという方向づけで縦に速い攻撃から相手のバックスに襲い掛かる。

 ブライトンは2-2でのビルドでボーンマスのプレスを回避しに行く。SBはビルドアップの関与は控えめで高い位置に専念。特に右のフェルトマンは縦関係のラターがインサイドに絞る分、幅を取って攻めあがることでバランスを取る必要性があった。

 ブライトンのビルドアップは横にパスをつなぎつつ、ボーンマスのプレス隊がいないところからのキャリーを狙う。特にイゴールとバレバはキャリーの意欲の高さが見える。CHはかなり可動範囲が広く、自身がボールを受けるために降りていくケースもあれば、縦パスのコースが空くという副次的な効果があるケースもあった。

 4分にジョアン・ペドロがゴールを仕留めても展開はとくには変わらなかった。ブライトンはボール保持をベースに、ボーンマスは縦に速く。自陣からでの攻撃機会にもとっととセメンヨに長いボールを当てていたため、割とボーンマスの縦に速くは徹底されていた感がある。

 ボーンマスはライン間のセメンヨからの加速からエヴァニウソンがネットを揺らすがこれはわずかにオフサイド。だが、このシーンをきっかけにボーンマスは縦パスから押し込む場面が増えていく。一方のブライトンは時間の経過と共に押し込めないようになり、細かいファウルでプレーがいちいち止まる展開にイライラしていた様子だった。

 しかし、後半早々に試合を動かしたのはブライトン。三笘の見事なバッグドアとそれを見逃さなかったジョアン・ペドロからボーンマスの守備をこじ開けることに成功。押し込むフェーズを続けたいボーンマスの出鼻をくじく。

 だが、ブライトンはバレバが2枚目の警告で退場。再びボーンマスに絶好の押し込む機会が回ってくる。しかし、この機会をすぐには有効に使えないボーンマス。試合は行ったり来たりのカウンターであまりボーンマスの数的優位を感じさせるものにはなっていなかった。

 それでも75分が過ぎたころにはようやく押し込む展開が発動したボーンマス。ブライトンはひたすら割り切っての耐えの展開が続く。ボーンマスが試合をようやく動かしたのは93分。ブルックスのゴールでなんとか1点差に。

 しかしながら、反撃の機運が高まるのが遅すぎた。10人のブライトンを相手に押し込む時間は20分弱。一方的な攻勢作りに手間取ったボーンマスがブライトンに逃げ切りを許した。

ひとこと

 バレバ、1枚目の軽率さがあるから2枚目の判定に文句を言いにくい。

試合結果

2024.11.23
プレミアリーグ 第12節
ボーンマス 1-2 ブライトン
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:90+3′ ブルックス
BHA:4‘ ペドロ, 49′ 三笘薫
主審:スチュアート・アットウェル

アストンビラ【9位】×クリスタル・パレス【18位】

保持と非保持のはっきりとしたコントラスト

 どちらもバックスに無理にプレスは書けないスタートとなったが、自然とボールを持つことになったのはアストンビラ。トップのマテタは中央のティーレマンスをマークするため、フリーになりやすいCBからボールを動かしていく。

 パレスはとにかく非保持がナロー。少しでもスキがある中央のパスを差し込んでこようものなら、すぐにカウンターで咎めてやろうという心意気だった。実際にパレスは縦に速い攻撃からあっさりと先制点をゲット。降りるマテタに対して、アストンビラのCB陣は非常に中途半端な対応になったところをサールにひっくり返されてしまい、早々に先制ゴールを許す。

 この先制点は保持のビラ、カウンターにフォーカスのパレスのコントラストを際立たせるものに。中央を強引に割ると食らうしっぺ返しの強力さを知ったアストンビラはボハルデのサイドからのキャリーなど慎重な攻め手を織り交ぜていく。

 だが、そうした中で強気だったのはティーレマンスとバークリーのCHコンビ。縦に強気に差し込んでいくティーレマンスとキャリーで前線に顔を出しがちなバークリーの攻め筋は失敗した時のしっぺ返しが強烈。中央にぶち当ててパレスの強力なカウンターを食らうこともしばしばという展開となった。

 そうした中で隙をついた縦パスからビラが同点ゴールをゲット。マッギン→ワトキンスの縦パスをトリガーとしてパレスのバックスをラインブレイク。まさしく、パレスの先制点をオマージュした形でビラが同点に追いつく。

 少しずつ保持で相手を上回っていくビラ。押し込むフェーズを増やすと、ベイリーがヒューズに倒されてPKを獲得。だが、このPKをティーレマンスが決めることが出来ない。

 すると、CKからのカウンターでパレスは前半終了間際に勝ち越し。何度もあったカウンターのチャンスをようやくデベニーが決めてハーフタイム直前にリードを得る。

 後半もビラの保持、パレスのカウンターで展開する流れに。ビラはライン間→裏抜けとポイントを作りながら中央を活用していたので、前半よりも無理なく効果的に相手を押し込むことが出来ていた。

 しかし、ビラも盤石というわけではない。マートセンのタックルはあわや退場というものだったし、反撃のムードを削がれてもおかしくない軽率さがこの日のビラのバックラインにはあった。

 だが、押し込むフェーズを継続したご褒美でセットプレーからビラはマッギンが同点ゴールをゲット。以降も推進力を失ったパレス相手に勝ち越しゴールを狙うが、どうしてもこじ開けることはできず。試合は2-2のドローで幕を閉じた。

ひとこと

 パレス、後半に推進力がなくなるのであれば前半にもう1点ほしかった感がある。

試合結果

2024.11.23
プレミアリーグ 第12節
アストンビラ 2-2 クリスタル・パレス
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:36′ ワトキンス, 77′ バークリー
CRY:4′ サール, 45+1′ デベニー
主審:ティム・ロビンソン

マンチェスター・シティ【2位】×トッテナム【10位】

先制点で「いつものトッテナム戦」に

 グアルディオラ政権になって初めての公式戦4連敗を喫しているマンチェスター・シティ。これ以上の勝ち点逸は避けたいところ。そういう流れの中で迎えるのは相性的に苦手としているトッテナムである。

 試合はシティの保持からスタート。2-3-5気味でアンカーを務めるギュンドアンの両脇をルイスとベルナルドでシェアする。トッテナムのプレスに対して外循環でボールを回すシティはここからチャンスメイク。ハーフスペースの手前と裏の両方に3トップが飛び出し、あわやというシーンを作る。

 特に手前に引くアクションは効果があった。ドラグシンなどトッテナムのDFを手前に引き出すステップを踏むことで背後を破壊するミッションに成功しやすくなる。このように多様な形でチャンスを作るシティが完全に主導権を掌握。トッテナムはヴィカーリオのセーブなど、緊急対応でなんとかピンチに対処するしかなかった。

 だが、保持で少しずつ異変が。トッテナムは初手とも言っていい落ち着いたロングボールでクルゼフスキを起点とした前進を披露。この初手で先制点をゲット。遅れて入ってくるマディソンにぴたりと合わせてトッテナムが先制する。

 シティは先制点を許すと少しずつパスミスが増えるなど、シュートの手前のところでエラーが出てくるように。これはある意味「いつものトッテナム戦」と表現していい展開だろう。そのミスからトッテナムは追加点。ハイプレスに追い込んだところからグバルディオルのパスミスを誘い、マディソンが美しい追加点を決める。

 トッテナムは保持において降りてくるマディソン、列上げするSBがフリーになることで大きな展開から両翼のソンとクルゼフスキで勝負に出る。シティからすると4-4-2の2列目の互いの関係性が悪いうえに、運動量も少なく無理が効かない。シティ側もチャンスがないわけではないが、より思い切り攻撃に打って出ることができるトッテナム相手にやや押されたまま前半を終える。

 後半、追いかけるシティはサヴィーニョを右に配置。ルイスをギュンドアンとフラットに並べる形で3-2-5で固定気味に。トッテナムに対してハイプレスから勝負に出るが、手数をかけてきっちりと交わされるという流れからスタートすることに。

 保持に回れば押し込むことができるシティだったが、同時にカウンターを受けるリスクも内包する。それが顕在化したのがトッテナムの3点目のシーン。トランジッションから左へのドライブでシティの中盤を華麗に巻き取ったクルゼフスキがファーのソランケに絶妙なパス。トランジッションで対面を置き去りにしたポロが最後は仕留めて追加点。後半もトッテナムが先にスコアを動かす。

 以降もシティは押し込む場面を作ることができるが、最後の一山を綺麗に越えることができず。ハーフスペースアタックも前半よりは増えてはいたが、プレスバックを厭わないトッテナムの2列目によってボックスは封鎖。

 ブロックの外から相手を壊すデ・ブライネは効果が薄く、相手を引きつけられるグリーリッシュは4失点目の起点となるロストで逆噴射。ヴェルナーとジョンソンのスピードスターの連携でトッテナムはさらにリード。3点目がマディソンのケーキにイチゴを乗せるゴールならば、このゴールはその上にローソクを立てるトドメの一撃だ。

 シティはこれで5連敗。ホームでの無敗記録もストップ。代表ウィーク明けでも立て直すことができず、CLを経てアンフィールド遠征というハードな1週間に立ち向かうこととなる。

ひとこと

 さすがに4点差は下振れ感はあるが、中盤のスライドの精度と強度などの足りない部分は無視できないだろう。どの失点シーンも攻撃参加したトッテナムの選手をシティの中盤が逃してDFラインに預けている様子が目立つ。失点を重ねている必然性はそれなりにある。中期的にその点を払拭できそうな見通しがないのも不安材料だ。

試合結果

2024.11.23
プレミアリーグ 第12節
マンチェスター・シティ 0-4 トッテナム
エティハド・スタジアム
【得点者】
TOT:13′ 20′ マディソン, 52′ ポロ, 90+3′ ジョンソン
主審:ジョン・ブルックス

サウサンプトン【20位】×リバプール【1位】

緩さを緩さで上書きした逆転負け

 サウサンプトンはダウンズを最終ラインに配置する形での5-4-1。公式戦初先発となったオヌアチュの抜擢も含め、驚きの多いスターターとなった。

 メンバーは変わっても試合展開はいつもと同じ。強引に繋ごうとするショートパスはリスク過多。序盤はリバプールがやや軽率に前線の追い出しを図ったこともあり、サウサンプトンは左サイドからボールを運ぶことができてはいたが、15分がすぎた頃には前線のプレスが繋がるようになり、危ういロストの連続に持ち込まれることとなった。

 こうなると一方的なリバプールペースに。左サイドのガクポを軸にクロスを上げることでボックスに迫ると、そこから軽率なサウサンプトンのワンプレー目を狙うことで波状攻撃を仕掛けていく。

 30分の先制点はまさにそのサウサンプトンの軽率さが顕在化した場面。ボールに関わった全員が「なんでそんなことをする必要が?」と言いたくなるようなプレーの連続でショボスライにゴールをあっさりとプレゼントする。

 これで試合は完全にリバプールのペースかと思われたが、今度はバックスの軽率さがリバプールに伝染。簡単なパスミスから押し下げる手前の段階でサウサンプトンにボールをプレゼントする。

 サウサンプトンはスペースがある状態でボールをもらえれば何かができるアタッカーは揃っているので、こうしたプレーでボールを渡すリスクはそれなりにある。オヌアチュにマークされていたファン・ダイクがボールを奪われると、引き取ったディブリングがPKを獲得。ロバートソンのアタックも含めて軽率な一連のプレーに。終了間際にセインツが追いつく形となった。

 後半も展開は同じ。左サイドを軸に攻勢を仕掛けるリバプールに対してサウサンプトンは後手を踏む。前半途中からボールの預けどころとして覚醒しつつあったオヌアチュも負傷でピッチを退いてしまう。

 しかし、そのセインツが試合を動かすゴールをゲット。ややアクシデンタルにマッカーシーからリリースされたボールはサイドでディブリングがなんとかキープ、アームストロングがつなぎ、最後はフェルナンデスがゴールを決める。

 このゴールシーンもそうだが、リバプールの後半の守備はとても緩い。後方の対応が一発で奪いにいくものばかりで簡単に逆を取られてしまう。また、前からの守備が再び緩慢になり、4枚前方にプレス隊がいるにも関わらず、非常に簡単にファーストラインを通されてしまう。どうせ通されるのならSHがそもそも高い位置を取る意味がない。

 しかし、それが問題にならなかったのは対峙しているチームがそれ以上に緩さを見せたからだろう。リバプールの2点目は確かにグラフェンベルフのパスもサラーの柔らかいフィニッシュも見事ではあるが、マッカーシーがわざわざゴールまでの道をガラ空きにする義理などどこにもないだろう。こちらのサイドでステーフェンスが攻守に散々なプレーを連発していたこともあるが、この場面のマッカーシーのプレーはGKとして最も避けるべきもの。このプレー1つでこの試合で見せた再三のスーパーセーブは全て台無しになるレベルだと思う。

 リバプールはその後菅原のハンドでPKを獲得して逆転。以降もサラーを軸にしたカウンターで追加点を目指す。前からの守備の緩さは最後まで変化はなかったが、遠藤の投入で対症療法的に改善が見られたため、なんとかなったという印象だ。内容的には乏しいリバプールであったが、シティが敗れた週にきっちり勝ち点3を積み、またしても独走体制を強化することに成功した。

ひとこと

 4-2-4で守る意味をきっちり洗い出さないと普通にどこかでしっぺ返しは食らうことになると思う。

試合結果

2024.11.24
プレミアリーグ 第12節
サウサンプトン 2-3 リバプール
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:42‘ アームストロング, 56′ フェルナンデス
LIV:30’ ショボスライ, 65′ 83′(PK) サラー
主審:サム・バロット

イプスウィッチ【17位】×マンチェスター・ユナイテッド【13位】

大枠の提示に終始した初陣

 アモリムのプレミアの監督キャリアのスタートはポートマン・ロードから。今季ここまで唯一ホームチームが勝利をしていないスタジアムで就任初陣を飾るための一戦に挑む。

 ユナイテッドは早々に先制。縦関係をブルーノとスイッチする形で前進することで独走。ラッシュフォードの先制点をアシスト。2分でアモリム体制の初ゴールを決める。

 このゴールのようにサイドからスピードを生かした突破力勝負での前進が多かったユナイテッド。ディアロは対面のスモディクスがマークを離してくれることもあったし、逆サイドのガルナチョはシンプルにスピードでトゥアンゼベを苦しめる。

 守備で少し手応えのなかったイプスウィッチはユナイテッドの3バックに枚数を合わせる形で修正。そこから前線の守備をCHを封鎖しつつ、ワイドのCBにプレスに行く両睨みに変更。マズラウィはやや持たせつつ、エバンスに強くプレスをかけてボールを奪い切りに行く。

 こうなるとユナイテッドの左はやや厳しさが先行。個々が分断されるようになり、ガルナチョのヨーイドンのスピード勝負に傾倒する。降りてくるハッチンソンをケアするためにカゼミーロとエリクセンの左右を入れ替えたことも保持面での影響を考えるとマイナスに作用したかもしれない。

 イプスウィッチは保持に回ればそれなりに手応えがある状態だった。ユナイテッドとしてはなるべく静的にシャドーとCHが相手のバックスと中盤を監視することでバックスを楽に守らせたいところだが、時間の経過とともにその秩序は乱れるように。先に述べたハッチンソンがその立役者でこちらも機動力に差がある対面のエバンスを苦しめる。ユナイテッドの中盤はカバー範囲が広いわけではないため、狭く位置をとるイプスウィッチの2列目は比較的自由にパスを受けた後のプレーを選択できる状態だった。

 苦しい状況をオナナに救ってもらうシーンが続くユナイテッドだったが、43分のハッチンソンのシュートにはディフレクトがかかってさすがのオナナも対応できず。イプスウィッチはHT前に同点に追いつくことに成功した。

 ユナイテッドの後半の頭のボールの動かし方は理想的だった。エリクセンのサイドフローでマンツー気味のイプスウィッチの守備に対して解決策をきっちりと提示し、ラッシュフォードのポストから逆サイドへの展開で押し込んでいく。

 前半は少しノッキング気味だった左サイドのビルドアップもより動き直しに長けているウガルテの登場で改善する。しかしながら、イプスウィッチもそのウガルテにきっちり食いついていたし、ユナイテッドの前線にはなかなか自由を与えなかったため、展開としては急激にユナイテッドに傾くことはなかった。

 むしろ、前線の馬力からのチャンスメイクも光っていたイプスウィッチ。デラップの推進力は簡単に止めきることが出来ず、後半もオナナのファインセーブによって救われるシーンが数多く出てくる展開となった。

 ホイルンド等の交代選手も奮闘していたが決定的な働きを見せることはできず。試合はドローのまま終幕し、アモリムは初戦を勝ち点3で飾ることはできなかった。

ひとこと

 まずはこんな感じのことをやりたいのだなという大枠の提示となった一戦。もう少し、中央を覗く機会は増やしたいし、次節はイプスウィッチよりも全然動いてくれないであろうエバートンとの一戦なので、どう転がるかが今から楽しみだ。

試合結果

2024.11.24
プレミアリーグ 第12節
イプスウィッチ 1-1 マンチェスター・ユナイテッド
ポートマン・ロード
【得点者】
IPS:43′ ハッチンソン
Man Utd:2′ ラッシュフォード
主審:アンソニー・テイラー

ニューカッスル【8位】×ウェストハム【14位】

得点で流れを好転させたウェストハム

 ポゼッションベースでのスタートとなったのはニューカッスル。ウェストハムは2トップが縦関係の4-2-3-1で受ける形。バックスにプレスをかけるのではなく、中盤の枚数をかみ合わせる形でのスタートだ。

 ウェストハムの狙いはカウンター。ニューカッスルの攻撃を引っ掛けると一気にアントニオめがけたカウンターが発動する。だが、展開が早くなるとウェストハムの守備陣形は不利に。ニューカッスルがカウンターをカウンターで返すようなムーブをすると、逆にウェストハムは追い詰められるという形になっていた。

 しかし、セットプレーから先制点をこじ開けたのはウェストハム。ソーチェクの空中戦の強さを生かした一撃で試合を動かす。

 この先制ゴールは試合の流れを変化させる。プレスでウェストハムを追いかけ回すニューカッスルだが、なかなか捕まえきれずにファウルを連発。深い位置をとることとロングボールで逃すウェストハムのバランスの取り方も見事であった。

 ニューカッスルはボールを取り戻した後の保持もやたらと裏に急いでしまったため、ウェストハムの守備陣は読みを利かせやすい展開に。リトリートをした後の4-5-1~5-4-1ブロックも安定で、ニューカッスルはアタッキングサードで苦戦する。

 それでも徐々にゴールに迫るシーンを作るニューカッスルだが、この日は肝心の仕留め役が不振。ゴードンのシャープなキレは完全に鳴りを顰め、イサクのフィニッシュも枠を捉えることができない。仕上げの拙さが焦りとして後方に伝播し、再び攻撃の流れが悪くなるという悪循環だった。

 後半の頭もオープンなデュエル合戦。交代で入ったバーンズはこの流れに乗りながらうまく立ち回れそうな予感もあるスタートとなった。ゴードンは相変わらず流れに乗れていなかったが。

 だが、試合を動かしたのはウェストハム。右サイドのボーウェンの速い攻撃を後方支援でサポートしたワン=ビサカがそのままシュートを放ち、これが追加点に。後半早々にリードを広げる。

 すると再びニューカッスルのリズムが悪化。カウンターの対応をクリーンにできずにファウルがかさみ、アタッキングサードではゴードンのブレーキが目立つように。ボックス内でウィルソンが倒されたシーンは確かにPKを貰えてもおかしくはなかったが、それ以外の場面ではゴールに迫る過程でミスが出てしまった印象だ。

 逆にウェストハムは最後まで前向きの守備を忘れず。いい流れに乗って前へのベクトルを貫き続けたウェストハムが敵地で3ポイントをもぎ取った。

ひとこと

 ほぼモイーズの勝ち点の取り方な気もするが、ニューカッスルの土俵できっちり上回ったウェストハムのシャープさが際立った。

試合結果

2024.11.25
プレミアリーグ 第12節
ニューカッスル 0-2 ウェストハム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
WHU:10′ ソーチェク, 53′ ワン=ビサカ
主審:クレイグ・ポーソン

今節のベストイレブン

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