中国×インドネシア
粘りのセットプレーで景色を変える
ここまで3試合全て引き分けという全部引き分けるマンとなっているインドネシア。今節対峙するのはここまで勝利がない中国だ。いや、インドネシアも勝利はないのだけども。
勢いを持って入ったのは中国。ボールを持つのはインドネシアだったが、4-3-1-2と中央を固めてくる中国はそのままの陣形のまま同サイドにスライドすることで相手のボール保持を圧縮。細かいことはいいから馬力で押し切るんだ!というメンタルを全面に押し出す形でインドネシアの保持を阻害する。
インドネシアはややプレスの勢いに面食らった感があったが、落ち着いて後方を経由しても中国のスライドは厳しいということに気づいてからは落ち着いた対応が光る格好になる。試合はインドネシアがボールを持ちながら、中国を敵陣に追い込み打開策を探す展開となる。
中国の戦い方はカウンターベース。自陣からのロングボールから少ない手数で陣地を回復し、そこから一気にゴールを狙う形とシンプルで明確だった。インドネシアは比較的順調にこのロングボールを軸としたプランに対応できていたように思う。
だが、ボックス内の守備に落とし穴が。中国はセットプレーから16番の蒋聖竜の折り返しからアブドゥウェリがゴールを仕留める。蒋聖竜の体を放り出しての折り返しはまさしく粘りそのもの。インドネシアの対応が少し緩慢なものになったことも含めて、このワンプレーは試合の明暗を大きく分けたものだと言っていいだろう。
引き続き、ボールを持ちつつ展開を変えることができないインドネシア。そんなインドネシアを尻目に中国は前半のうちに追加点をゲット。ロングボールからのカウンターを張玉寧が仕留めることでリードをさらに広げる。
後半も試合の展開は同じ。インドネシアはメンバーを入れ替えながらも陣形を維持しつつ、敵陣でのプレータイムを増やしていく。しかしながら、中国の同サイドを閉じる守備は後半もそれなりに機能。やや勢い任せのところは否めなかったが、インドネシアの保持が中国が動いたスペースを使うような繊細さを見せなかったこともあり、大きな問題にはならなかった。
中国は保持で落ち着けない分、守備一辺倒の展開に。終盤にはインドネシアに1点を返されるが、反撃をここまでに食い止めることに成功。インドネシアの無敗を止め、今大会初めての勝利を飾ることに成功した中国だった。
ひとこと
先制点の粘りは見事。局面での粘りで試合全体の景色を変えてみせた中国だった。
試合結果
2024.10.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第4節
中国 2-1 インドネシア
青春サッカー場
【得点者】
CHI:21′ アブドゥウェリ, 44′ 張玉寧
IND:86′ ハイェ
主審:オマル・モハメド・アルアリ
日本×オーストラリア
繰り返されたWGの縦突破がブロックをかち割る
ここまで日本が重ねた連勝は3。ここでオーストラリアに勝てば両国の勝ち点差は8まで開くことになる。オーストラリアとすれば早くも逃げる日本を捕まえるためのラストチャンスと言えそうな状況である。
9月下旬にポポヴィッチが就任し、中国戦では3バックを披露したオーストラリア。この試合でも3バックを採用。4日前の試合から継続の意思を見せる。ご存知の通り、日本もこの予選では延々と3バックを繰り返していたのでプレッシングとしては非保持側に噛み合う格好となる。
プレスで噛み合わされた時の日本の対応はもはやお馴染みだろう。守田の列落ちである。谷口と並ぶように立つ守田によって、オーストラリアはプレスの基準点を失ったように。中盤に田中が残り、4-1-5のようになる日本に対して、オーストラリアのバックスはピン留め。オーストラリアの中盤の4枚から日本のバックスにプレスが行くようになると、オーストラリアのMF-DFのライン間が間延びするようになる。左サイドでは時折、上田の裏抜けと南野のライン間への顔出しが同時に行われることでオーストラリアの陣形を縦に引き伸ばすことに成功する。
敵陣に入る機会を安定して得られるようになった日本。ライン間にボールを差し込むとサイドの奥を取り、WGの久保と三笘から仕上げにかかっていく。
少し気になったのが両WGの選択肢が縦への進撃から速いグラウンダーの折り返しにほぼ固定されていたこと。日本のWGにボールが入るとオーストラリアはダブルチームにくる。確かにエンドラインから抜くアクションはダブルチームを無効化する有効なアクションではあるが、オーストラリアのDFはエンドライン側から抜かれることを知っていたかのようにクロス対応ができていた。ちょっとこちらから抜かれることを決め打つ形でも問題ないかなという感じが漂っていた。
日本は例えば、WGがダブルチームの間を狙うとか、あるいはマイナスにつけるとかそういう形で変化をつけたかった。だが、日本は大外のマイナスのペナ角付近に誰かがヘルプで立つ様子もなく、サイドへのヘルプよりもボックス内への突撃を優先していたようだった。これによりややWGの仕掛けが独力での解決が可能なタッチライン側からの突破に限られてしまい、アタッキングサードの単調さに繋がったように思う。
オフザボールの動きも時間の経過とともに減少。久保と堂安の狭いスペースが大好きなデュオは軽いタッチから相手を外せそうな可能性も見えたが、足元でボールを要求する動きが多い分、オーストラリアのボールの狩りどころにもなった。
ボールを奪ったオーストラリアはトランジッションから左の背後を狙う動きで勝負をかける。だが、ここは広いスペースをカバーする板倉が一枚上手。スピード勝負で打ち抜くことは叶わずシャットアウトされる。この試合の板倉はスーパーだった。
逆にオーストラリアの右サイドでは降りる動きを見せるマッグリーヘの縦パスを狙う形。ここへのチェックが間に合うかどうかがオーストラリアの攻撃成立の争点となった。序盤はやや後手を踏むこともあったが、日本のWGのプレスに連動した上田、守田、田中のプレスによりかなり早めに制限がかけられるようになってからは町田と谷口は十分に対抗ができていた。オーストラリアが久保と堂安をとりどころにしていたように、日本もまたマッグリー周辺への強引な縦パスをカウンターの機会に繋げていた。
押し込む機会は得ることができていた日本。だが、裏抜けとライン間を同時に狙うような相手の陣形を縦に引き伸ばすアクションが時間の経過とともに減ったこと、そしてWGからの仕掛けが一本調子だったこともあり、ゴールを奪えないままハーフタイムに突入することとなった。
迎えた後半も日本の保持がベースとなるスタート。守田もしくは田中が左サイドの位置にフローするなど、選手交代なしでマイナーチェンジが見られた。オーストラリアはCHを交代しつつ、フルスティッチを右に流すなどこちらも配置のマイナーチェンジが発生する。
日本はCHの左サイドのフローによって、前半にはいなかった三笘のサポート役を作るのが容易になった印象。前半にはあまり見られなかった左サイドの人数をかけた攻撃が見られるように。日本は自陣側にオーストラリアのプレス隊を誘引しつつ、人数をかけたサイド攻撃で攻略を狙っていく。WGの縦突破縛りは前半よりは薄くなったが、引き続き攻撃の主旋律を狙っているように見られた。
日本が攻撃の出口を探っている間にオーストラリアは先制ゴール奪取に成功。ロングボールから少しボールの所有権が曖昧なトランジッションが発生すると、デュークが収めたボールは右に展開。オーバーラップしたミラーのクロスから谷口がオウンゴール。少し下がりながらの対応にはなったが、周りに動きを制限するような選手がいなかったことを踏まえると、クリーンにプレーを切って欲しいところだろう。
以降もオーストラリアはデュークへのロングボールを連打。少し中盤に降りることでよりデュエルの勝率を高めていたのが印象的だった。
日本は伊東純也の登場により、右サイドでは縦突破の優先度が再びアップした感がある。だが、縦突破に落ち着いて対応するオーストラリアの守備には効果は薄く。逆にプレスが間延びすることでオーストラリアの前進を許してしまうように。
日本は再び選手交代で左サイドのユニットの再構築を図る。三笘と中村のタンデムで大外からソロで壊せる選手を重ねるプランで勝負をかける。勝負手となった中村はこの試合でWGが拘り続けた縦突破からオウンゴールを奪取。縦からのマイナスという何度も何度も繰り返された光景でついに同点ゴールを掴む。
さらに攻勢をかけたい日本だが、細かいパスでの連携がこの日は不十分。特に中村以外の交代選手は少しパスワークとプレスに入っていくことに苦戦したように見えた。トランジッションが増えることにより、終盤はオープンな展開に。そうした中で試合を決める決勝点を生むことはできないままタイムアップ。両軍は勝ち点1を分け合う結果となった。
ひとこと
結果的に繰り返しがブロックをかち割ることになったので難しいところではあるが、ちょっとWGの縦突破一辺倒だったことでオーストラリアが楽に対応できる時間が長くなってしまったように思う。前で仕事ができるタレントの多様性が埋もれてしまう単調な前半を過ごしてしまったのが個人的には勿体無いように思えた。
試合結果
2024.10.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第4節
日本 1-1 オーストラリア
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JPN:76′ バージェス(OG)
AUS:58′ 谷口彰悟(OG)
主審:アハマド・アルアリ
サウジアラビア×バーレーン
負傷者が開きかけた扉を閉じる
第3節で日本に敗れてしまい、首位との勝ち点差が5まで開いてしまったサウジアラビア。バーレーンとのホームゲームで日本とオーストラリアが削りあっている間に何とか勝ち点を積み上げたいところだろう。
ボールを持つスタートとなったのはホームのサウジアラビア。3-2-5をベースにポジションを取る。中盤の一角に入るアル・マルキが柔軟なポジションを取るのが特徴であり、彼がサウジアラビアの守田といえる立ち位置なのだろう。
バーレーンの4-4-2での非保持に対して、サウジアラビアの3-2-5の保持は安定。その一方でどこまでバグを生み出すか?のところははっきりしておらず。この仕組みなら率直に言えばサイドからズレを作れる方策を準備しておきたかったところだが、あまりそうしたアプローチは見られない試合となった。
だからこそサウジアラビアにとって助かったのはトランジッションの要素。保持に回ったバーレーンはロングボールから戦況を動かそうとするが、前線で収められずに跳ね返されたところからピンチに陥る。こうした動的要素を含むとアル=ブライカーンの抜け出しからアル・サハティがPKを獲得するというシーンのような決定的なチャンスになる。
だが、このPKはストップ。ルトファラのファインセーブでサウジアラビアの先制のチャンスは跳ね返されることとなる。
このPKは試合の展開を変えず。サウジアラビアの保持を主体とする静的な展開は一進一退という様相で進んでいく。先制点のような前線のサイドの裏の抜け出しに関しても、PK以降はバーレーンが迷いなくCBが潰しに出て行くようになったため、大きなチャンスにはならなかった。攻撃においてもなかなかシュートまでたどり着けなかったバーレーンだったが、トランジッションからアル・ケラシのオーバーラップで時間を作るなど、少しずつゴールまでの距離を縮めていく。
後半も試合の大枠は同じくサウジアラビアの保持がベース。サイドでボールを持った時を中心に後方の選手がオーバーラップして追い越すアクションを見せるなど、前半よりも動きをつけることはできていた。ただし、パスの精度は低く、この追い越すアクションを得点に結びつけるにはもう一声といった印象だろう。
結局のところは前半のようなカウンターをベースにスペースがある状態の方がサウジアラビアにとってはやりやすそうだった。バーレーンは後半に色気を見せていたため、サウジアラビアにとっては願ってもいない展開になる。だが、負傷者が出たことで終盤にバーレーンは10人に。こうなると、バーレーンは引き分けやむなしになるので撤退するほかない。
サウジアラビアにとってはせっかく開きかけた扉が閉じてしまった印象。結局押し込む機会をいかせないまま試合終了のホイッスルを迎えることに。サウジアラビアは10月シリーズを未勝利で終えることとなった。
ひとこと
保持ベースのチームがカウンター基調の方が全然やれそうというあるあるに陥ってしまった感のあるサウジアラビアだった。カンノとか戻ってくれば違うのだろうか。
試合結果
2024.10.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第4節
サウジアラビア 0-0 バーレーン
キング・アブドゥッラー・スポーツシティ・スタジアム
主審:サルマン・ファラヒ