MENU
カテゴリー

「Catch up アジア最終予選」~日本編~ アメリカ・メキシコ・カナダW杯 アジア最終予選

目次

第1節 中国戦(H)

4バックでも5バックでも関係なしで3大会ぶりの初戦勝利

 2026年のワールドカップをかけた最終予選がいよいよスタート。日本代表の旅の始まりは聖地・埼スタである。

 日本は6月シリーズに引き続き3バックを採用。両WBに三笘と堂安を置くという超攻撃的仕様の5バックである。中国は4-4-2で日本のバックラインには特にプレスをかけないスタート。日本は3バックから大外のWBを軸に攻め手を探るスタート。外にボールをつけて、バックラインを経由して逆サイドまで届けて中国を左右に動かしつつ、時折インサイドにつける縦パスを入れていくという流れだ。

 日本は構造で相手を外しきれなくてもそれぞれの箇所でそれぞれが攻め手になっている。中国にとっては厄介だろう。左の大外には三笘が1on1を仕掛けてくるし、右では久保と堂安のタッグから左足でのクロスとハーフスペースの裏抜けの両睨み。中央は固めているのだが、上田はそれでもあわやという反転を見せて中国のCB陣に冷や汗をかかせていた。

 どこからでも点が取れそうだった日本はセットプレーから先制点をゲット。マンツーで守る中国の守備に対して、スクリーンを活用してフリーになった遠藤がヘディングを叩き込んだ。

 失点直後、中国はひとまずボールを持ちながら解決策を探る。日本はフルスロットルでプレスに来たわけではないので、中国はボールを持つ余裕はあったが、キーパスである縦パスの収まりが悪い。ウー・レイが降りて受けてサイドに叩いた時はチャンスっぽくなったので、一本収まって展開できれば違うのだろう。しかしながら、この一本が入らずに中国は攻撃の起点を作ることができない。

 日本はボールを持つと先制点以前と同じくサイドからの揺さぶりに時々上田という形で追加点を狙う。あわやゴールインというVARチェックが入ったのは「時々上田」の方の縦パスからスタートした攻撃であった。

 日本は久保が左サイドに顔を出して南野と位置交換をしたりなど、徐々にサイド攻撃にアレンジを加えていく。ボックス内での遠藤や守田の突撃や大外の町田参上からの虚をついたクロスなど、後ろの枚数を減らすような攻撃を仕掛けることができたのは、日本が危うい形でボールを失っていないからだろう。

 前半の終了間際にはWB→WBから追加点。お手本となるようなファーへのクロスを三笘が仕留めてハーフタイム直前にリードをさらに広げることに成功した。

 後半、中国は5-3-2にシフト。5レーンをとりあえず埋めてしまおう!というのは2点差になってからやることなのか!という問題はあるが、それでもやらないよりはマシ!という判断なのだろう。

 それでも日本はあまりこのシステム変更を問題にしなかった。右サイドでは久保が早々に1枚を剥がしていたし、左サイドでは三笘が5バックのラインよりやや手前に降りて3センターの脇あたりに入り込むことで同サイドのハーフスペースの裏とボックスへのクロスを睨む。

 日本の3点目も三笘がややWBに捕まらない位置関係からシンプルに同サイドの南野を使ってのゴール。少し段差をつける工夫ではあるけども、中国に対してはこの少しの工夫がかなり効いた。

 日本のゴールはまだまだ止まらず。前半から狙っていた町田の縦パスから上田が潰れると、落としたところに入った南野が追加点をゲット。

 終盤の主役は伊東純也。右サイドからラッキーな跳ね返りでゴールを決めると、ファーサイドの前田のスピードを生かしたクロスでアシストも決めた。

 ゴールラッシュのトリを飾ったのは久保。フル出場の最後に得点を決めて、日本の快勝を締め括った。

ひとこと

 バーレーン相手にオーストラリアが足元を掬われるのを横目に日本は順調な発進に成功。川崎組で固めたところに高井をデビューさせるという心遣いも見せつつ、3大会ぶりの最終予選初戦勝利を収めた。

試合結果

2024.9.5
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第1節
日本 7-0 中国
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JPN:12‘ 遠藤航, 45+2‘ 三笘薫, 52′ 58′ 南野拓実, 77′ 伊東純也, 87′ 前田大然, 90+5′ 久保建英
主審:アブドゥルラフマン・アルジャシム

第2節 バーレーン戦(A)

後半の両軍のシフトチェンジが日本の大量得点に繋がる

 波乱が続くグループC。唯一、順当に初戦を勝ち抜いた日本が挑むのが初戦でアップセットを繰り広げたバーレーン。酷暑の中東での連勝を狙う。

 バーレーンは4-4-2。ただし、2列目の守備意識は非常に極端でSHが2トップとフラットな位置まで追いかけ回すこともあれば、最終ラインに吸収される形で5バックや6バックのような形になることもあった。SHだけでなく、CHもDFラインに入ることもあり、非常に守備の基準は流動的だったと言えるだろう。

 ボールを持つ日本はまずは王道のスタート。数的優位を有しているバックラインから大外のWBにつけて攻略を狙う。ハーフスペースの裏抜けもあったが、最もクリティカルにゴールに迫ったのは三笘からのファーへのクロス。堂安がポストを叩いたシーンが序盤の見どころということになった。

 保持において日本は先にあげた極端な二極化するバーレーンの中盤のギャップは使えそうな気もしたが、細かいズレを使った前進は狙わず。守田がサリーで後方の枚数調整をしていたが、基本的には大外でWBを経由するか、あるいはシンプルな裏抜けに終始。南野が精力的に裏に抜けてボールを引き出していたのが印象的だった。

 バーレーンの保持はシンプルなロングキックからスタート。日本は前3枚がスイッチを入れればバーレーンはすぐにボールを蹴る構えであったが、気温の高い環境下では頻繁にスイッチを入れることはできず。バーレーンもそれに気付いたのか、少しボールを持ちながら日本の時間を作らせないように振る舞っていた。

 日本のDFを背負ってのファウル奪取からのFK、サイドにボールが出たらロングスロー。両軍のオフサイドも含めてかなり試合は止まる時間が長くなる停滞ムード。三笘→堂安のファークロス以降はどちらにも明確なチャンスはなかったが、バーレーンも押し込む時間を作るという点では試合はフラットだったと言っていいだろう。

 そうした膠着した展開の中で日本は右サイドに抜け出した鎌田がハンドでPKを獲得。サイドを変えて南野の役割を踏襲した鎌田が結果を出したのは意義深いというか、停滞した戦況の中で一番試合を動かそうとした日本のシャドーがご褒美をもぎ取ってくるのは面白いなと思った。

 上田がゴールを決めて日本は先制。ハーフタイムをリードで迎えることとなった。

 日本はハーフタイムに伊東を投入。右サイドにスピードスターを入れる。すると、その伊東がいきなり得点に絡む。三笘がカットインしながらキープすると、右サイドの伊東に展開。折り返しをなんとか収めた上田がパワーあふれるシュートを押し込んでゴール。早々にリードをさらに広げる。

 後半の日本の変化点は守田が高い位置での仕事にシフトしたことである。前半の項でいうところの「細かいこと」を始めた感がある。鎌田も同様にライン間をウロウロしつつ、前に走る機会を伺っており、守田と似たようなエリアで仕事を探るようになった。

 この方向性に影響を与えたのはリードを広げられたバーレーンがかなりボールを奪いにこようとしたこと。ライン間が間延びしたことにより、守田と鎌田がライン間でボールを受けることはかなり容易になった。

 加えて、伊東純也の裏抜けがライン間の守田に次の選択肢になれた事もさらに日本の攻撃力を増す手伝いをしていた。間をとり、そこから裏抜けでスピードアップをすることでバーレーンを後手に回った状態で攻略ができるようになる。

 守田はここから前線への飛び出しで結果を出す。上田が強固な壁となってポストプレーで作ったスペースに飛び込んで3点目を奪うと、3分後に三笘のバックドアの並行サポートでフィニッシャーとなり、立て続けにゴールを仕留めた。

 バーレーンはこのゴールで完全に諦めムードが強くなる。特にプレスに出ていく意欲が削がれてしまい、日本のボール回しを見つめるだけのシーンが増えていく。

 その一方で日本は交代選手がアピールに躍起に。三笘と近いことができることをオフザボールとオンザボールで証明したい中村の仕掛けからゴールに迫ると、最後はこちらも結果が欲しかった小川がネットを揺らす。

ひとこと

 後半の日本の方向性の調整と、バーレーンの追い回す姿勢が噛み合っての大量得点となった。やや混戦模様のグループCを抜け出す連勝と得失点差を得た意義は大きい。バーレーンがプレスに出てくる契機となった先制点はもちろん大きいけども、中盤の守備のチューニングがフラフラしているこの日のバーレーンであれば、ハンドがなくともどこかで解決策は見つけていた感がある。それくらい守田や鎌田の役割調整の能力は高かった。

試合結果

2024.9.10
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第2節
バーレーン 0-5 日本
バーレーン・ナショナル・スタジアム
【得点者】
JPN:37‘(PK) 47′ 上田綺世, 61′ 64′ 守田英正, 81′ 小川航基
主審:ルスタン・ルトフリン

第3節 サウジアラビア戦(A)

仕掛けるサウジを尻目に大人の試合運び

 9月シリーズで出遅れたら有力国たち。日本はここで勝利をすれば、2位以下に3ポイント以上差をつけることができる。日本の独走を許さないためにも、サウジアラビアにはここで日本を止めなければという意識があるはずだ。

 サウジアラビアは4-3-3でのスタート。予想と少しずれがある形のフォーメーションになった。3バック、2人のIHで日本のバックラインに強気でプレスを仕掛けていく。ボールを奪ったらサイドにボールをつける。特に左サイドのアッ=ドーサりーのところでは日本の右サイドに優位を取れそうな状況。まずはここに預けるということでコンセンサスは取れていたようだ。

 日本はハメられていることを察知したため、素早く中盤で噛み合わせを外しにいく。バックラインに落ちる遠藤と中盤ともう1つ前を行き来する守田の2人でサウジアラビアがどこまで出ていくかを観察する。

 遠藤は相手のプレスを落ち着かせるイメージで、守田は攻撃を加速するためのスペースメイクがさらに上乗せされているイメージ。引いた守田に食いつくサウジアラビアの中盤の背後を南野が使う形は定番化。頻度は多くないが、前半の重要な攻め手になっていた。

 日本はこの縦パスから先制点をゲット。右に目線を集めてからの左に振って三笘!という形は直前にも見たシーン。日本はこの三笘からの折り返しからの攻撃を最後は鎌田が締めてリードを奪う。ズラしてルートを探して進むというのを非常に簡単にやってのけた。

 サウジアラビアの攻撃に対しては日本はミドルゾーンでは三笘と堂安の高さを変えたアシンメトリーの4-4-2に見えた。ただ、サイドの攻撃では後手を踏むことに関しては日本は自覚的だったのかワイドのCBの迎撃が早め。特に町田はかなり目立ったように見えた。

 どちらかというと日本のアクションがバタバタしたのはボールを奪った後。ボールを奪った後にボールを失ってしまったり、あるいは捨ててしまったりなどでサウジアラビアからリズムを奪い返せない。背負っている選手に強く当たってボールを回収するメカニズムを順調に動かすサウジアラビア。そして、奪ったとは相変わらずアッ=ドッサリーを軸とした攻撃から日本のゴールを脅かしていく。

 ピンチもあった鈴木の大きなファインセーブもあり、日本はなんとか無得点で凌ぐ。守田が攻撃のテンポを落ち着けて試合を制御しつつ、南野への縦パスから反撃を視野に入れるといったところでハーフタイムを迎えることとなった。

 後半も前半と変化のない展開でスタート。ボールを持つサウジアラビアに対して、日本は5-4-1で受けるスタートに。右のWBに伊東が入った分、守備ブロックは手当てをされている。

 サウジアラビアは押し込むものの、武器となりそうなところがはぶつ切り。前半の左のアッ=ドーサリー以外は単発感が否めない。特に前線へのロングボールは日本のCBには競り勝てるところもありそうな感じなのに、どこに落とすかなどのチームとしての狙いが見えにくかった。3バックへのシフトも瞬間的に見られたサウジアラビアだが、これはU字ポゼッションを誘発するだけで有効打にはならず。

 守田がボールを落ち着かせようとする展開は後半も見られたが、日本は前田の投入とともにカウンターにフォーカスする形にシフトチェンジ。長い距離を走る攻撃から一気に盤面をひっくり返そうとする。

 選手交代を絡めて4バックに戻したサウジアラビアだが、交代で入った選手が結果を出したのは日本。小川航基のセットプレーからのゴールで日本はリードを広げる。サウジアラビアはゾーン気味に構えるセットプレーの守備が前半から怪しかったが、ついにここで決壊をしてしまったイメージだ。

 サウジアラビアは4-4-2からSHも前線寄りでパワープレーにシフト。最後の総攻撃を仕掛けていく。だが、これも日本はなんとか対応。一度危うい場面を作られた以外は屈さず、最後に逆に決定機を作り返す。

 前回は勝てなかったサウジアラビアのアウェイゲームを克服した日本。完勝で最終予選3連勝を果たした。

ひとこと

 結構、仕掛けを見せてくる相手だったと思うが、それを受け止めて壊し切るという日本の試合運びは成熟したチームの振る舞いだった。

試合結果

2024.10.10
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第3節
サウジアラビア 0-2 日本
キング・アブドゥッラー・スポーツ・シティ
【得点者】
JPN:14′ 鎌田大地, 81′ 小川航基
主審:キム・ジョンヒョク

第4節 オーストラリア戦(H)

繰り返されたWGの縦突破がブロックをかち割る

 ここまで日本が重ねた連勝は3。ここでオーストラリアに勝てば両国の勝ち点差は8まで開くことになる。オーストラリアとすれば早くも逃げる日本を捕まえるためのラストチャンスと言えそうな状況である。

 9月下旬にポポヴィッチが就任し、中国戦では3バックを披露したオーストラリア。この試合でも3バックを採用。4日前の試合から継続の意思を見せる。ご存知の通り、日本もこの予選では延々と3バックを繰り返していたのでプレッシングとしては非保持側に噛み合う格好となる。

 プレスで噛み合わされた時の日本の対応はもはやお馴染みだろう。守田の列落ちである。谷口と並ぶように立つ守田によって、オーストラリアはプレスの基準点を失ったように。中盤に田中が残り、4-1-5のようになる日本に対して、オーストラリアのバックスはピン留め。オーストラリアの中盤の4枚から日本のバックスにプレスが行くようになると、オーストラリアのMF-DFのライン間が間延びするようになる。左サイドでは時折、上田の裏抜けと南野のライン間への顔出しが同時に行われることでオーストラリアの陣形を縦に引き伸ばすことに成功する。

 敵陣に入る機会を安定して得られるようになった日本。ライン間にボールを差し込むとサイドの奥を取り、WGの久保と三笘から仕上げにかかっていく。

 少し気になったのが両WGの選択肢が縦への進撃から速いグラウンダーの折り返しにほぼ固定されていたこと。日本のWGにボールが入るとオーストラリアはダブルチームにくる。確かにエンドラインから抜くアクションはダブルチームを無効化する有効なアクションではあるが、オーストラリアのDFはエンドライン側から抜かれることを知っていたかのようにクロス対応ができていた。ちょっとこちらから抜かれることを決め打つ形でも問題ないかなという感じが漂っていた。

 日本は例えば、WGがダブルチームの間を狙うとか、あるいはマイナスにつけるとかそういう形で変化をつけたかった。だが、日本は大外のマイナスのペナ角付近に誰かがヘルプで立つ様子もなく、サイドへのヘルプよりもボックス内への突撃を優先していたようだった。これによりややWGの仕掛けが独力での解決が可能なタッチライン側からの突破に限られてしまい、アタッキングサードの単調さに繋がったように思う。

 オフザボールの動きも時間の経過とともに減少。久保と堂安の狭いスペースが大好きなデュオは軽いタッチから相手を外せそうな可能性も見えたが、足元でボールを要求する動きが多い分、オーストラリアのボールの狩りどころにもなった。

 ボールを奪ったオーストラリアはトランジッションから左の背後を狙う動きで勝負をかける。だが、ここは広いスペースをカバーする板倉が一枚上手。スピード勝負で打ち抜くことは叶わずシャットアウトされる。この試合の板倉はスーパーだった。

 逆にオーストラリアの右サイドでは降りる動きを見せるマッグリーヘの縦パスを狙う形。ここへのチェックが間に合うかどうかがオーストラリアの攻撃成立の争点となった。序盤はやや後手を踏むこともあったが、日本のWGのプレスに連動した上田、守田、田中のプレスによりかなり早めに制限がかけられるようになってからは町田と谷口は十分に対抗ができていた。オーストラリアが久保と堂安をとりどころにしていたように、日本もまたマッグリー周辺への強引な縦パスをカウンターの機会に繋げていた。

 押し込む機会は得ることができていた日本。だが、裏抜けとライン間を同時に狙うような相手の陣形を縦に引き伸ばすアクションが時間の経過とともに減ったこと、そしてWGからの仕掛けが一本調子だったこともあり、ゴールを奪えないままハーフタイムに突入することとなった。

 迎えた後半も日本の保持がベースとなるスタート。守田もしくは田中が左サイドの位置にフローするなど、選手交代なしでマイナーチェンジが見られた。オーストラリアはCHを交代しつつ、フルスティッチを右に流すなどこちらも配置のマイナーチェンジが発生する。

 日本はCHの左サイドのフローによって、前半にはいなかった三笘のサポート役を作るのが容易になった印象。前半にはあまり見られなかった左サイドの人数をかけた攻撃が見られるように。日本は自陣側にオーストラリアのプレス隊を誘引しつつ、人数をかけたサイド攻撃で攻略を狙っていく。WGの縦突破縛りは前半よりは薄くなったが、引き続き攻撃の主旋律を狙っているように見られた。

 日本が攻撃の出口を探っている間にオーストラリアは先制ゴール奪取に成功。ロングボールから少しボールの所有権が曖昧なトランジッションが発生すると、デュークが収めたボールは右に展開。オーバーラップしたミラーのクロスから谷口がオウンゴール。少し下がりながらの対応にはなったが、周りに動きを制限するような選手がいなかったことを踏まえると、クリーンにプレーを切って欲しいところだろう。

 以降もオーストラリアはデュークへのロングボールを連打。少し中盤に降りることでよりデュエルの勝率を高めていたのが印象的だった。

 日本は伊東純也の登場により、右サイドでは縦突破の優先度が再びアップした感がある。だが、縦突破に落ち着いて対応するオーストラリアの守備には効果は薄く。逆にプレスが間延びすることでオーストラリアの前進を許してしまうように。

 日本は再び選手交代で左サイドのユニットの再構築を図る。三笘と中村のタンデムで大外からソロで壊せる選手を重ねるプランで勝負をかける。勝負手となった中村はこの試合でWGが拘り続けた縦突破からオウンゴールを奪取。縦からのマイナスという何度も何度も繰り返された光景でついに同点ゴールを掴む。

 さらに攻勢をかけたい日本だが、細かいパスでの連携がこの日は不十分。特に中村以外の交代選手は少しパスワークとプレスに入っていくことに苦戦したように見えた。トランジッションが増えることにより、終盤はオープンな展開に。そうした中で試合を決める決勝点を生むことはできないままタイムアップ。両軍は勝ち点1を分け合う結果となった。

ひとこと

 結果的に繰り返しがブロックをかち割ることになったので難しいところではあるが、ちょっとWGの縦突破一辺倒だったことでオーストラリアが楽に対応できる時間が長くなってしまったように思う。前で仕事ができるタレントの多様性が埋もれてしまう単調な前半を過ごしてしまったのが個人的には勿体無いように思えた。

試合結果

2024.10.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第4節
日本 1-1 オーストラリア
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JPN:76′ バージェス(OG)
AUS:58′ 谷口彰悟(OG)
主審:アハマド・アルアリ

第5節 インドネシア戦(A)

自由になる遠藤と待ち続けたライン間待機隊

 サッカー熱の大きさが話題になっているインドネシア。勝てばグループCで完全に抜け出す日本にとっても厄介なアウェイゲームということになる。さらには降りしきる雨も日本にとってはイレギュラーな要素となる。

 インドネシアのスターターは5-4-1。ストゥライクとオラットマングーンのどちらがトップに入るかは試合次第という今予選のインドネシアであるが、この試合ではオラットマングーンがCF。ややニッチな側のケースを日本は引き当てたことになる。

 日本は引き気味のインドネシアの5-4-1に対してボールを持つスタート。日本は3バック+遠藤が組み立ての軸。遠藤の相棒である守田は遠藤の隣に立つこともあったが、1列目前に入る頻度も高く3-1-6をベースに遠藤の相方を流動的に変えているイメージであった。CHとしても機能する鎌田が1列前にいるからこそという自在な配置だろう。左の大外役の三笘も含めて、日本の左サイドにはMF役が多かった感がある。

 その分、三笘は受ける位置がいつもよりは浅い位置になりがちであった。そのため、1枚を剥がすことがすぐにラストパスに直結するような形にはなりにくい。逆サイドの堂安も手前に入ることが多く、アーリー気味のクロスからのチャンスメイクが目立つ前半となった。

 インドネシアの守備がうまく機能していたかどうかは微妙なところ。ライン間を閉じるという意味ではきっちりやることはできていたが、アンカー役の遠藤はやたらとフリーになっていた。ここをフリーにしてしまうと、日本はスムーズに左右に揺さぶることができるし、サイドと中央のどちらに差し込んでいくかのトライを遠藤を軸にやりやすい。一見コンパクトには見えても、日本にそれなりに試行回数を与える類のものだったと思う。よって、守田や鎌田が粘り強くライン間で供給を待つという駆け引きも成り立ちやすい。

 ややジリジリとする日本の攻撃であったが、むしろ誤算だったのは個人的にはカウンター対応かと思う。初手でオラットマングーンの1on1を許してしまった板倉のように、この試合の日本は90分を通してバックラインが明確にインドネシアの前線に対して優位に立てているという感じではなかった。初手で鈴木が決定的な仕事を果たしていなければ、試合はまた違う景色を見せていたかもしれない。サイドの背後に流れるアクションなど、攻撃的なWBの背後を取る形で日本の3バック相手にインドネシアは起点を作り続ける。

 自陣からでもショートパスから動かしていく形もトライするインドネシア。日本の波状攻撃に持ち込ませないようにできる限り周到に試合を運んでいた印象だった。

 しかし、それでもこじ開けられるのは日本の強み。アンカーの遠藤のタメから1列前に進んだ町田が起点となり、守田→鎌田と繋いで小川へのラストパスがオウンゴールになる。日本の繋ぎはとても見事。遠藤が自由を享受しているというこの試合の序盤の傾向ははっきりとしたフリになり、遠藤が対面を固定したところに侵入した町田からライン間で待ち構える守田と遠藤にボールが入るという流れだった。

 日本は続くゴールも左から。低い位置に下がった鎌田から三笘のバックドアに合わせる裏パスが通り、最後は南野が追加点。左サイドでの駆け引きの勝利を最後は攻撃よりなシャドーの仕事を果たした南野が締める。

 2点のリードを得た日本は左サイドからバランスをとることに専念。落ち着かせて時間を使いハーフタイムを迎える。

 迎えた後半、インドネシアはハイプレスに来るリスク覚悟のスタート。日本もこれに応酬。守田と遠藤が1列前に入る形でプレスに加わり、前への圧力を強めていく。どこまでが狙ったものかはわからないが、WBに前田が入ったことで日本はプレスバックが強化されることになったこともプラスに働いていたように思う。

 前半とは違う流れの展開で先にミスが出たのはインドネシア。GKのパエスのパスミスを受けた守田は落ち着き満載のシュートでさらにリードを広げる。

 しかしながら、局面としてインドネシアがハイプレス合戦に劣勢だったというわけではない。日本のバックスのデュエルのクオリティが怪しかったし、ハイテンポな中で日本のロングボールの効果も微妙なところ。それなりに押し込む機会を得たインドネシアはファー狙いのセットプレー由来のクロスからチャンスを作りにいく。アルハンのロングスローなど交代選手も味を出すアクセントになっていた。

 しかし、決め手になったのは日本の交代選手。右サイドでのパス交換で伊東のサポートを受けて抜け出した菅原が追加点。クロスを基本線に狙いつつ、空いたニアを撃ち抜くという冷静さは見事。久しぶりの出場で結果を出して喜びを 爆発させたゴールパフォーマンスとは対照的なクールなフィニッシュだった。

 苦しい時間帯もあったが、要所で得点を重ねた日本が大勝。最終予選突破に大きな1勝を手にした。

ひとこと

 遠藤の隣をどう使うか?という観点における守田と鎌田の2人の工夫が見事。個人的にはこの2人と初手でのピンチを防いだ鈴木がこの勝利の立役者かなという感じ。

試合結果

2024.11.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第5節
インドネシア 0-4 日本
ゲロラ・ブン・カルノ・スタジアム
【得点者】
JPN:35′ ハブナー(OG), 40′ 南野拓実, 49′ 守田英正, 69′ 菅原由勢
主審:ムード・ボニーアディファード

第6節 中国戦(A)

第7節 バーレーン戦(H)

第8節 サウジアラビア戦(H)

第9節 オーストラリア戦(A)

第10節 インドネシア戦(H)

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次