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「Catch up アジア最終予選」~インドネシア編~ アメリカ・メキシコ・カナダW杯 アジア最終予選

目次

第1節 サウジアラビア戦(A)

シャープさに欠けるサウジアラビアがホーム開幕戦を落とす

 自国のリーグに急速に欧州の選手が流入する流れがやってきているサウジアラビア。そんな方向性がナショナルチームのどのような影響を与えるのか、今回大会のサウジアラビア代表の最終予選はその点からも興味深いものになるだろう。

 インドネシアは5-4-1でがっちりと構えるスタート。サウジアラビアのバックラインにはプレッシャーをかけず、ゆったりとボールを持つことを許容する守備のスタンスであった。

 サウジアラビアはカンノとアル=ジュワーイルの2人がIHのように振る舞い、アンカーはアル=ハイバリという3-1-6のような形に変形する。しかしながら、オーストラリア同様に3-1-6の手ごたえはイマイチ。いい形でボールを奪い、トランジッションからの縦に速い攻撃の方が攻め筋のある感じであった。

 しかしながら、インドネシアもトランジッションは上等。ロングボールのターゲットになるオラットマングーンはとにかくゴツイ。インサイドに絞りながらあらゆるポイントで自陣からのロングボールを引きだす。

 インドネシアは前の3人で攻撃を完結することができる力があった。CFのストゥライクのいいプレスバックからインドネシアはカウンターに成功。アウェイで貴重な先制点を奪う。パスを狙われたアル=ハイバリは奪われた後の対応もバタバタしてしまい、味方につっかけてしまうなど一連のプレーは散々なものであった。

 この場面のようにインドネシアはハイプレスのスイッチが入った時の仕留め方が見事。ポゼッションに移行してもボールを持つ余裕を見せて、手ごたえのある状況を作り出す。

 サウジアラビアも右サイドにアブドゥルハミドを早々に投入してからは少しずつ攻撃に奥行きが出るように。大外が攻めのポイントとして機能したサウジアラビアは前半終了間際に同点。左サイドからドリブルでカットインしたカンノが深さを作り、アル=ジュワーイルのミドルシュートをおぜん立てして見せた。

 迎えた後半も追いついたサウジアラビアが保持から解決策を探る。ハイプレスから蹴らせて回収のメカニズムは前半よりは効くようになったし、左右のシンプルなクロスからインドネシアのバックラインに脅威を与える。

 カウンターでも対抗できてはいたインドネシアだったが、前半よりは苦しい状況に。すると、ハイプレスからGKのファウルを誘発したサウジアラビアがPKを獲得。だが、これはパエスのファインセーブに遭い、勝ち越しのチャンスを逃す。

 このワンプレーでインドネシアのGKは覚醒。終盤のサウジアラビアの猛攻をしのぎ、これ以上のゴールを許さず。

 結局試合はそのまま終了。オーストラリアに続き、ホームでサウジアラビアも勝ち点を落とす波乱の開幕節となった。

ひとこと

 後半のPK失敗までは悪くはなかったけども、サウジアラビアはシャープさが欠けていて全体的に低調な出来がしなくもない。

試合結果

2024.9.5
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第1節
サウジアラビア 1-1 インドネシア
キング・アブドゥッラー・スポーツ・シティ
【得点者】
KSA:45+2’ アル=ジュワーイル
IND:19‘ ストゥライク
主審:アドハム・マハドメ

第2節 オーストラリア戦(H)

出遅れが続くオーストラリア

 開幕節はバーレーンにホームで敗れてしまったオーストラリア。出遅れをこれ以上酷くしないためにもインドネシアとのアウェイゲームは必勝の構えである。

 しかしながら、サウジアラビア相手に勝ち点を取ったインドネシアも手応えは十分。中盤でのデュエルに堂々と渡り合うなど、自信をつけたような展開となった。

 オーストラリアは早い展開ならば、長いボールからオープンな展開を生かそうとするが、ロングボールは精度も悪く、やたら伸びていってしまったり、あるいは体の当て合いでそこまで優位を取れなかったり。挙げ句の果てにはファウルを犯してボールを奪い返すところもスムーズにいくことができなかったりなど、かなりスムーズさを欠いていた。

 インドネシアは保持に回るとゆったりと。オーストラリアのプレスの意識は高かったが、割とひっくり返すことができる様子。中盤に縦に差し込むなど、オーストラリアの前がかりさを逆手に取るような前進をすることができていた。

 敵陣でも大外ではパス交換から抜け出すチャンスを作るなどかなり上々。非保持に回ってもミドルゾーンに構えてラインをイタズラに下げないなど、文字通りオーストラリアと互角に渡り合っていたように思う。

 20分が過ぎると少しずつペースを握ったのはオーストラリア。左サイドのオーバーラップを仕掛けるアーヴァインからのクロスでチャンスを作っていく。押し込むことで増えるセットプレーはさすがにオーストラリアが有利。圧力を高めていく。

 長いキックを蹴って、セカンドを回収すべく押し上げるという前進のモデルも少しずつ確立されてきたオーストラリア。セットプレーとロングボールを軸に徐々に押し込むも、先制ゴールを決めることができないままハーフタイムを迎える。

 後半、ゆったりとボールを持つオーストラリア。インドネシアはかなり前進がアバウトになった。それでもオーストラリアは自陣のパスミスからインドネシアにチャンスを与えるなど、完全に安定したわけではなかった。

 オーストラリアは交代で入ったメイビルが少しずつ存在感を見せるように。中央に強引に差し込むようなパスからゴールに迫るが、シュートはパエスの正面に飛び、ネットを揺らすことができない。

 長らく、5バックが押し込まれたインドネシアだったが、追加タイムにペースをゲット。得点は欲しいが前に出ていくことができず、間延びしたオーストラリアに対して逆に攻め返すことができるように。

 結局試合はそのままスコアが動かず終了。オーストラリアは開幕節に続いた勝てないまま9月シリーズを終えることとなった。

ひとこと

 短期勝負の最終予選で痛恨の出遅れを見せたオーストラリア。上がり目もよくわからなかったので、普通に結構やばそう。

試合結果

2024.9.10
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第2節
インドネシア 0-0 オーストラリア
ゲロラ・ブン・トモ・スタジアム
主審:サルマン・ファラヒ

第3節 バーレーン戦(A)

2024年有数の超絶FK

 サウジアラビアとオーストラリアに引き分けた9月シリーズでグループCの台風の目になっている感があるインドネシア。アウェイでアジア予選においてはやや格上感のあるバーレーンとの一戦に挑む。

 立ち上がりは落ち着かないスタート。ロングボールでの競り合いがベースとなり、ともに痛む選手が出るというフィジカル色の強い立ち上がりとなった。

 どちらかといえば保持で主導権を握ったのはバーレーンの方だろう。3-2-5っぽいボール保持から機を見たハイプレスへの移行でインドネシアを追い込みにいく。ただ、ダークホースも伊達ではなく時折このプレスを交わしながら前進することもできており、試合は一進一退の展開だったと言えるだろう。

 そうした中で生まれた先制点はスーパーなFK。マルフーンの一撃は個人的には今年見たFKの中でも特大のインパクトを放つもの。無回転でのシュートを超長距離から仕留めてバーレーンが試合を動かすことに成功する。

 バーレーンは先制点以降は落ち着いたゲームメイクが目立った。相手の前線の4-1のブロックを伸縮させながら自陣におびきよせ、敵陣に侵入するための動線を作ることができていた。インドネシアも保持に回ればハーフスペースへのアタックで特攻はできていたが、バーレーンはCHがこのスペースを埋めることで十分に対抗できていた感がある。

 プレスに行く頻度はリードしても変わらないバーレーンは前半の主導権を握ったと言えるだろう。中盤からスピードに乗って、アリ・マダンのパンチ力のあるシュートなどで完結するバーレーンの攻撃は確かに手応えのあるものであった。

 だが、前半終了間際にインドネシアは同点ゴールをゲット。右サイドをこじ開けてのオラットマングーンの得点でハーフタイムの前に試合を振り出しに戻す。

 後半も展開は変わらずボール保持の主体となるのはバーレーン。インドネシアはカウンターをベースにチャンスを作るというのも前半と同じ形である。

 先にスコアを動かすことができたのはインドネシア。カウンターからストゥライクがゴールを決めてついにバーレーンをひっくり返す。

 バーレーンはセットプレーを中心にインドネシアのゴールを脅かすシーンを数多く作ることができていたが、なかなかこじ開けることができないまま試合は進んでいく。だが、苦しむバーレーンをVAR絡みの遅延があったとはいえ長すぎるように思える後半ATが手助け。99分のセットプレーからマルフーンが再びしたたかにゴールを決める。

 あと一歩で最終予選勝利を挙げることができたインドネシア。目前でバーレーンに勝利をかっさらわれる格好になってしまった。

ひとこと

 マルフーンのFK、ベラボーにすごかった。

試合結果

2024.10.10
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第3節
バーレーン 2-2 インドネシア
バーレーン・ナショナル・スタジアム
【得点者】
BHR:15‘ 90+9′ マルフーン
IND:45+3‘ オラットマングーン, 74′ ストゥライク
主審:アフメド・アルカフ

第4節 中国戦(A)

粘りのセットプレーで景色を変える

 ここまで3試合全て引き分けという全部引き分けるマンとなっているインドネシア。今節対峙するのはここまで勝利がない中国だ。いや、インドネシアも勝利はないのだけども。

 勢いを持って入ったのは中国。ボールを持つのはインドネシアだったが、4-3-1-2と中央を固めてくる中国はそのままの陣形のまま同サイドにスライドすることで相手のボール保持を圧縮。細かいことはいいから馬力で押し切るんだ!というメンタルを全面に押し出す形でインドネシアの保持を阻害する。

 インドネシアはややプレスの勢いに面食らった感があったが、落ち着いて後方を経由しても中国のスライドは厳しいということに気づいてからは落ち着いた対応が光る格好になる。試合はインドネシアがボールを持ちながら、中国を敵陣に追い込み打開策を探す展開となる。

 中国の戦い方はカウンターベース。自陣からのロングボールから少ない手数で陣地を回復し、そこから一気にゴールを狙う形とシンプルで明確だった。インドネシアは比較的順調にこのロングボールを軸としたプランに対応できていたように思う。

 だが、ボックス内の守備に落とし穴が。中国はセットプレーから16番の蒋聖竜の折り返しからアブドゥウェリがゴールを仕留める。蒋聖竜の体を放り出しての折り返しはまさしく粘りそのもの。インドネシアの対応が少し緩慢なものになったことも含めて、このワンプレーは試合の明暗を大きく分けたものだと言っていいだろう。

 引き続き、ボールを持ちつつ展開を変えることができないインドネシア。そんなインドネシアを尻目に中国は前半のうちに追加点をゲット。ロングボールからのカウンターを張玉寧が仕留めることでリードをさらに広げる。

 後半も試合の展開は同じ。インドネシアはメンバーを入れ替えながらも陣形を維持しつつ、敵陣でのプレータイムを増やしていく。しかしながら、中国の同サイドを閉じる守備は後半もそれなりに機能。やや勢い任せのところは否めなかったが、インドネシアの保持が中国が動いたスペースを使うような繊細さを見せなかったこともあり、大きな問題にはならなかった。

 中国は保持で落ち着けない分、守備一辺倒の展開に。終盤にはインドネシアに1点を返されるが、反撃をここまでに食い止めることに成功。インドネシアの無敗を止め、今大会初めての勝利を飾ることに成功した中国だった。

ひとこと

 先制点の粘りは見事。局面での粘りで試合全体の景色を変えてみせた中国だった。

試合結果

2024.10.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第4節
中国 2-1 インドネシア
青春サッカー場
【得点者】
CHI:21′ アブドゥウェリ, 44′ 張玉寧
IND:86′ ハイェ
主審:オマル・モハメド・アルアリ

第5節 日本戦(H)

自由になる遠藤と待ち続けたライン間待機隊

 サッカー熱の大きさが話題になっているインドネシア。勝てばグループCで完全に抜け出す日本にとっても厄介なアウェイゲームということになる。さらには降りしきる雨も日本にとってはイレギュラーな要素となる。

 インドネシアのスターターは5-4-1。ストゥライクとオラットマングーンのどちらがトップに入るかは試合次第という今予選のインドネシアであるが、この試合ではオラットマングーンがCF。ややニッチな側のケースを日本は引き当てたことになる。

 日本は引き気味のインドネシアの5-4-1に対してボールを持つスタート。日本は3バック+遠藤が組み立ての軸。遠藤の相棒である守田は遠藤の隣に立つこともあったが、1列目前に入る頻度も高く3-1-6をベースに遠藤の相方を流動的に変えているイメージであった。CHとしても機能する鎌田が1列前にいるからこそという自在な配置だろう。左の大外役の三笘も含めて、日本の左サイドにはMF役が多かった感がある。

 その分、三笘は受ける位置がいつもよりは浅い位置になりがちであった。そのため、1枚を剥がすことがすぐにラストパスに直結するような形にはなりにくい。逆サイドの堂安も手前に入ることが多く、アーリー気味のクロスからのチャンスメイクが目立つ前半となった。

 インドネシアの守備がうまく機能していたかどうかは微妙なところ。ライン間を閉じるという意味ではきっちりやることはできていたが、アンカー役の遠藤はやたらとフリーになっていた。ここをフリーにしてしまうと、日本はスムーズに左右に揺さぶることができるし、サイドと中央のどちらに差し込んでいくかのトライを遠藤を軸にやりやすい。一見コンパクトには見えても、日本にそれなりに試行回数を与える類のものだったと思う。よって、守田や鎌田が粘り強くライン間で供給を待つという駆け引きも成り立ちやすい。

 ややジリジリとする日本の攻撃であったが、むしろ誤算だったのは個人的にはカウンター対応かと思う。初手でオラットマングーンの1on1を許してしまった板倉のように、この試合の日本は90分を通してバックラインが明確にインドネシアの前線に対して優位に立てているという感じではなかった。初手で鈴木が決定的な仕事を果たしていなければ、試合はまた違う景色を見せていたかもしれない。サイドの背後に流れるアクションなど、攻撃的なWBの背後を取る形で日本の3バック相手にインドネシアは起点を作り続ける。

 自陣からでもショートパスから動かしていく形もトライするインドネシア。日本の波状攻撃に持ち込ませないようにできる限り周到に試合を運んでいた印象だった。

 しかし、それでもこじ開けられるのは日本の強み。アンカーの遠藤のタメから1列前に進んだ町田が起点となり、守田→鎌田と繋いで小川へのラストパスがオウンゴールになる。日本の繋ぎはとても見事。遠藤が自由を享受しているというこの試合の序盤の傾向ははっきりとしたフリになり、遠藤が対面を固定したところに侵入した町田からライン間で待ち構える守田と遠藤にボールが入るという流れだった。

 日本は続くゴールも左から。低い位置に下がった鎌田から三笘のバックドアに合わせる裏パスが通り、最後は南野が追加点。左サイドでの駆け引きの勝利を最後は攻撃よりなシャドーの仕事を果たした南野が締める。

 2点のリードを得た日本は左サイドからバランスをとることに専念。落ち着かせて時間を使いハーフタイムを迎える。

 迎えた後半、インドネシアはハイプレスに来るリスク覚悟のスタート。日本もこれに応酬。守田と遠藤が1列前に入る形でプレスに加わり、前への圧力を強めていく。どこまでが狙ったものかはわからないが、WBに前田が入ったことで日本はプレスバックが強化されることになったこともプラスに働いていたように思う。

 前半とは違う流れの展開で先にミスが出たのはインドネシア。GKのパエスのパスミスを受けた守田は落ち着き満載のシュートでさらにリードを広げる。

 しかしながら、局面としてインドネシアがハイプレス合戦に劣勢だったというわけではない。日本のバックスのデュエルのクオリティが怪しかったし、ハイテンポな中で日本のロングボールの効果も微妙なところ。それなりに押し込む機会を得たインドネシアはファー狙いのセットプレー由来のクロスからチャンスを作りにいく。アルハンのロングスローなど交代選手も味を出すアクセントになっていた。

 しかし、決め手になったのは日本の交代選手。右サイドでのパス交換で伊東のサポートを受けて抜け出した菅原が追加点。クロスを基本線に狙いつつ、空いたニアを撃ち抜くという冷静さは見事。久しぶりの出場で結果を出して喜びを 爆発させたゴールパフォーマンスとは対照的なクールなフィニッシュだった。

 苦しい時間帯もあったが、要所で得点を重ねた日本が大勝。最終予選突破に大きな1勝を手にした。

ひとこと

 遠藤の隣をどう使うか?という観点における守田と鎌田の2人の工夫が見事。個人的にはこの2人と初手でのピンチを防いだ鈴木がこの勝利の立役者かなという感じ。

試合結果

2024.11.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第5節
インドネシア 0-4 日本
ゲロラ・ブン・カルノ・スタジアム
【得点者】
JPN:35′ ハブナー(OG), 40′ 南野拓実, 49′ 守田英正, 69′ 菅原由勢
主審:ムード・ボニーアディファード

第6節 サウジアラビア戦(H)

第7節 オーストラリア戦(A)

第8節 バーレーン戦(H)

第9節 中国戦(H)

第10節 インドネシア戦(A)

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