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「こだわりの行方」~2020.10.18 J1 第23節 川崎フロンターレ×名古屋グランパス BBC風オカルトプレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第23節
2020.10.18
川崎フロンターレ(1位/20勝2分1敗/勝ち点62/得点65 失点19)
×
名古屋グランパス(4位/13勝3分6敗/勝ち点42/得点35 失点20)
@等々力陸上競技場

戦績

近年の対戦成績

図1

直近5年で川崎の7勝、名古屋の3勝、引き分けが3つ。

川崎ホームでの戦績

図2

直近10試合で川崎の6勝、名古屋の3勝、引き分けが1つ。

Head-to-head

<Head-to-head①>
・直近3試合の公式戦での対戦において川崎は名古屋に勝利していない。
・直近5試合のリーグでの名古屋戦において川崎が複数得点を決めたのは一度だけ。

 今季のリーグ戦無敗を阻んだ相手というだけで名古屋への苦手意識は強く植え付けられただろう。直近3試合での名古屋戦では未勝利の川崎である。

    確かにルヴァンカップは共に引き分けでOKという状況だった。それでも川崎は退場者を出しながら苦しんで突破を決めた感はぬぐえない。何よりリーグ戦に限定しても未勝利は3試合連続。武器の得点も重ねられておらず戦績だけ見ればかつての「お得意様」感はかなり薄れてしまっている。

<Head-to-head②>
・しかし、等々力でのリーグ戦で名古屋は8年間勝利なし。
・当カードにおいて直近7試合はアウェイチームの勝利がない。

 ただ、名古屋にとってもこの等々力は近年いい思い出がないスタジアムである。等々力でのリーグ戦は8年間未勝利。直近4年間では13失点を喫している。

 カード全体で見てもアウェイチームは分が悪い。公式戦直近7試合はアウェイチームの勝利がないカード。大久保嘉人の得点で逃げ切った2018年以来カップ戦も含めてアウェイチームは勝ちがないカードである。

<Head-to-head③>
・名古屋がシーズンダブルを達成すれば2011年以来の9年ぶり。
・日曜の等々力開催のリーグ戦は過去に一度だけ。2005年のことで名古屋が川崎を下している。

 名古屋目線でいえばシーズンダブル達成がかかっている試合。達成すれば2位でシーズンフィニッシュした2011年以来である。この年は瑞穂で玉田圭司が、そして等々力ではケネディが共に2得点で川崎を下している。

 等々力での日曜開催というのも名古屋に追い風である。同様のシチュエーションは2005年に一度だけ。中村直志と杉本恵太のゴールで逆転勝ちを決めた試合である。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・広島戦で途中交代した小林悠は筋肉系のトラブル。
・長谷川竜也は離脱以降ベンチ入りはなし。

【名古屋グランパス】

・相馬勇紀は左第11肋骨骨折による3週間の離脱。
・ガブリエル・シャビエルは左大腿二頭筋肉離れで3週間の離脱。
・吉田豊は第4腰椎左横突起骨折により4週間の離脱。
・長谷川アーリアジャスールと渡邉柊斗も離脱中。

予想スタメン

画像3

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts①>
・勝てばリーグ戦11連勝の1シーズンにおけるリーグ新記録を達成
・リーグ戦、直近5試合で1点差勝利が3試合。

 J1の歴史の中でも1シーズンに2回の11連勝への挑戦権を得る機会があるクラブというのは史上初めてだろう。ましてやその2回の挑戦に立ちはだかるのが共に名古屋グランパスというのは今後のJ1においても非常にレアな話であるのは間違いないだろう。やられた時の鬼木監督は執念深い。某銀行系ドラマの主人公くらい執念深いのではないだろうか。ちなみにこの試合はリーグにおけるホームゲームの11連勝もかかっていたりする。

 川崎ファンにとって懸念なのは目に見えてぎりぎりの試合が増えていることだろう。連勝しているとはいえ5試合のリーグ戦での1点差勝利は3試合。複数得点差をつけた2試合も終盤の得点で突き放したC大阪戦と広島戦であることを踏まえると楽に勝てていない。それ以前の18試合において1点差での勝利は4試合だけだったことを考えれば、大量リードでの勝利が減っているのは事実である。

<川崎のMatch facts②>
・直近2試合のリーグ戦はクリーンシート
・リーグ戦直近8試合全てで先制点を得ている。

 しかし、ここ2試合はクリーンシートを達成中。広島戦では本当にソンリョンとジェジエウに救われたシーンの多かったこと。レビューで書き忘れてしまったがMOM級の活躍だった。クリーンシート3試合連続は今季未達成。達成すれば2017年のラスト3節以来のことになる。

 ちなみにここ8試合のリーグ戦ではいずれも先制点を挙げている。先制点を取った時の強さはかなり保証されていて、直近65試合で55勝10分の無敗である。

<川崎のMatch facts③>
・直近4試合のリーグ戦においては小林悠とレアンドロ・ダミアンが1試合ごとに交互に得点を決めている。
・登里享平は今季6アシストでキャリアハイ

 爆発的な得点力は鳴りを潜めている昨今の川崎だが、FW陣はコンスタントに得点を重ねている。最近は小林→ダミアン→小林→ダミアンと交互に得点を決めている。順番でいえば小林の番だが、今回は欠場濃厚ということでダミアンと宮代には得点源としての大きな期待がかかる。

 アシスト数はJリーグ公式サイトに載っていないので媒体によってブレがあるのだが、『transfermarkt』によれば、今季はすでにリーグ戦で6アシストを決めている登里。本人のキャリアハイはすでに更新。それどころかチーム内でのアシスト王である。さらにリーグでは彼より多くアシストを決めている選手は3人しかいなかったりする。

【名古屋グランパス】

<名古屋のMatch facts①>
・リーグ戦3連勝中。4連勝を達成すれば今季初。
・直近3試合のリーグ戦はすべてクリーンシート。

 連勝記録に挑戦中なのは川崎だけではなく名古屋も同じ。フィッカデンティ政権下での4連勝は未達である。達成したのは2018年の風間監督時代の7連勝のときが最後である。
 
 ちなみに3試合連続クリーンシートはシーズン2回目。川崎がシーズン2回目の11連勝チャレンジに挑む裏で、名古屋は2回目の4試合連続クリーンシート達成に挑むことになる

<名古屋のMatch facts②>
・公式戦の41得点中前半での得点が25。
・J1で起用している選手が21人とリーグ最少。

 得点の傾向は前半に偏重気味。全体の61%が前半に決めている得点である。特に30-45分の間では13得点。全体の31%がこの時間帯。川崎が豊田スタジアムで金崎夢生に決められたのもこの時間帯である。

 今季ここまでリーグで起用している人数は21人とリーグで最小(transfermarkt調べ)。ちなみに次点で少ないのは22人の川崎。層が厚い!といわれることが多い川崎なので、この数字だけで名古屋が層が薄いと決めつけるのは早計な感じではある。

 というわけで川崎と名古屋の標準偏差でも出してみるか?とか思っていたら名古屋方面から素晴らしいプロのお仕事が飛んできたので、こちらをご参考あれ!!出場時間の偏りに両チームの差があるのは確かなようだ。



好調名古屋グランパス,過密日程で心配なのは…?:出場時間の集中度合いをはかってみる


名古屋グランパスっていっつも同じスタメンだよね、って他のクラブのサポーターから言われます。印象はデータで検証しみよう、とい


grapo.net

<名古屋のMatch facts③>
・マッシモ・フィッカデンティは過去5回の等々力での試合で未勝利
・マテウスは直近3試合のリーグにおける川崎戦でいずれも得点に絡んでいる(1G2A)

 すっかり難敵認定されている感のあるフィッカデンティだが、川崎戦の勝率は13戦で3勝とあまり相性がいい相手ではない。中でも等々力は苦手なスタジアムで過去5試合で勝利なし。得点は5試合でわずか1得点である。ただし、直近3試合はいずれも引き分け。負けまくっているというよりはロースコアに持ち込んでいるという方が正しそう。

 川崎戦で絶好調なのがマテウス。素材感あふれるマテウスだったが、今季はフィッカデンティの元で安定して活躍をしている印象だ。左足から繰り出される精度バツグンのキックは名古屋の大きな武器。登里よりアシストが多い2人の選手のうち、1人は彼。今季9アシストはリーグリーダーである。

展望

■名古屋の強みとは?

 さて、リベンジの一戦である。名古屋の試合を少し見てみたが、非常に安定しているというのが率直な感想である。特にボール回しに関しては安定感が増している。CHの片方が最終ラインに落ちて、CBと共に3枚で回すビルドアップは健在。SBはその分、サイドで高い位置を取ることができる。以前よりも流暢さは落ち着きが増し、スムーズで迷いが少なくなったように思う。

 危険な縦パスをリスクを賭してチャレンジするような場面はあまり多くはない。それよりはマテウスやシャビエルのようなスペシャルな選手にボールを回すことによって彼らに最終局面でのアイデアを生み出してもらうことが多い。リスクを負ったバスを追い求めすぎず、できる選手にスペシャルな仕事を求める方がチームの優先度として高いのだろう。

   突破とクロスの精度を兼ね備えるマテウス、中央での細かい崩しでより活きる機会が多いシャビエルは共に稀有な攻撃の軸になれる選手。それだけにシャビエルの離脱は間違いなく痛いはずだ。マテウスは攻守に安定感を増してプレーのムラも少なくなり、フィッカデンティの下で『ジョーカー』から『超主力』に変貌を遂げたといえる。

    サイドを経由することで作った優位を中央で仕留めるという大枠の方針は不変。まさしく、豊田スタジアムで川崎相手に決めたあのゴールは今季の名古屋らしい仕留め方といっていいのではないだろうか。

 個人のアイデアに依存するというと聞こえが悪いかもしれないが、その分ビルドアップでチャレンジングなトライが少ないので下手なロストが少ないといういい部分もある。リスクを回避することを優先するフィッカデンティらしい指針といえるかもしれない。

 非保持においてもリスク回避の姿勢は同じ。まず中央を固めることが優先で、CBは前に動くことは多くとも横に出張して潰しにいくことはあまり多くはない。はじめからサイドの守備のタスクを一部CBに放り投げている川崎とは異なり、横に広い動きは優先順位が低く位置付けられているように思う。もし出ていかなければいけない時はSBやCHがカバーに入り、穴をあけないようにする。

 サイドの守備は同じ4-4-2スタイルのC大阪やFC東京と比べると、囲い込んで閉じ込めるような守り方はあまりしない。強みはシンプルな対人守備。名古屋と対戦する際にSBの対人の強さで苦しめられるチームは多いだろう。川崎もそのチームの1つ。成瀬や吉田にはかなり手を焼いた。

 一方で、仮にその対人で敗れてしまうと脆さを感じる部分もある。浦和戦では吉田が完全にマルティノスに後手を踏みまくる場面が非常に多かったのだが、そうなった時の中の備えはあまり十分ではなかった。SBが相手選手とマッチアップしている際にCBとの距離は遠め。CBはあくまで中央を優先でヘルプに行くには距離が遠い。抜かれることはあまり想定していなかったのではないだろうか。

画像4

 ハイプレスの圧力はそこまで高くはない。質が悪いというよりは人数をかけすぎないという方がイメージとしては近い。米本も稲垣も本来のポテンシャルを考えれば前まで潰しに行けるのだろうが、強引に人数をかけたショートカウンターを狙うよりは、後方にステイすることが多い。

 CHが自重することで相手チームはファーストプレスを回避したとしてもカウンターでのチャンスがそこまで広がらず。後方でCHに食い止められてスピードダウンすることも多く。リトリートの局面に移行することができる。ハイプレスで取り切りはしない代わりに、被カウンターの局面の整備の質は高くなっている。

 今の名古屋の強みは相手がどのような局面を選択してきても迎え撃つ力があることだろう。ボールを持たれた時の守備も整備されているし、被カウンター時にも対応はできる。そういうチームにありがちな「それならボールを持たせておこう」も通用しない。ボールを持ったら持ったで何とか出来る選手が前にはいる。膠着した局面を打開するプレースキックの精度も高い。今の名古屋は苦手な局面が少ないチームという印象である。

■先制すれば楽、しかし・・・

 さて、どうやって勝てばいいだろうか。名古屋の数少ない苦手な局面の1つはビハインドから追いかける展開である。名古屋はベンチメンバーが出てきたときにキャラクターが変わることが多いチーム。フィッカデンティがもともと固定型の監督という所もあるだろうが、選手交代が少ないのは選手の質によるところも間違いなくある。後半に追いかけるときにエネルギーがしんどくなってしまう可能性は高い。

 川崎としては立ち上がりからハイプレスの奇襲をかける可能性はあるだろうか。最前線にダミアンを抱えながら全体が押し上げてプレスをするのはやや無謀な感じはする。小林が先発の時でも最近の川崎の立ち上がりは慎重な入りが多く、前半から押せ押せでガツンとぶち当たる展開は自分にはあまりイメージできない。

 となると腰を据えて攻略するやり方も考えなければならない。ルヴァンカップの際はシャビエルがCHに入ったことで中央からかち割れる隙を感じたが、米本と稲垣がコンビを組む現状では中央からかち割るメソッドはいくら細かいことが得意な川崎といえどやや筋が悪いように思う。

 というわけで狙い目はサイドである。とはいえ名古屋も無策にサイドとの1対1を繰り返してくれるわけではない。CBが中央にステイするのならば、スライドしてスペースを埋めるのはCHやSH。彼らがハーフスペースを埋めるようにカバーに入ることで最終ラインをヘルプする。今季の名古屋の守備時の2列目のタスクは多い。

 狙いはこの2列目の運動量だろう。米本、稲垣はベンチのシミッチとは大きくキャラクターが異なるし、相馬、シャビエルが離脱した2列目は層が薄くなった。吉田が離脱しているSBも人員に余裕があるとはいいがたいだろう。2列目とSBを疲弊させるボールの動かし方を意識したいところである。

 C大阪戦での勝利以降、ここまでの数試合で同サイドを攻略することにこだわるような局面は少し増えてきたように思う。うまくいく試合もあれば、そうでない試合もあった。FC東京戦は同サイドの密集打開にこだわって沼にハマった感じがあったし、広島戦ではこだわっても打開できていた。

 もっとも、鬼木監督の声掛けや采配を聞いていると、逆サイドで幅を取ることは重要視していそうである。粘り強くやるならば、優先案件は名古屋のSBの仕事量を増やすことと2列目にスライドの負荷を増やすことである。サイドへの崩しにこだわりすぎずに打開する。

    大事なのは狭く崩すところと広く動かすところの使い分けだろう。鬼木監督はそこの部分を強く意識しているのは間違いない。戦況によって狙いを変えながら打開の方法を模索したいところだ。

    というわけでカギになるのはWG。いずれにせよ打開はサイドからになるはず。中盤が広く広く使うやり方をしたとしても、薄いサイドを崩せなければ意味がない。サイドを割られた時に弱みを見せやすい相手に齋藤、三笘、旗手がどこまで仕事ができるかである。

 鬼木監督のコメントを聞いていると11連勝へのこだわりを感じる。目の前の試合を意識している旨のコメントが多かったので正直ちょっと意外だった。その記録へのこだわりが実るかは、「サイドでの細かい崩しをどこまでやるか?」というもう1つのこだわりの運用方法次第である。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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