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「悪い出来なりに」~2024.10.20 プレミアリーグ 第8節 ボーンマス×アーセナル レビュー

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レビュー

ハヴァーツにかかる過度な負担

 再び代表ウィークで負傷者が出たアーセナル。間に合うかどうかわからないとされたサカはベンチを外れ、マルティネッリはベンチから。前線はハヴァーツ、スターリング、トロサールの3枚が入る形となった。

 立ち上がりにボールを持つのはアーセナル。ただ様子がいつもと違う感じはした。まず目についたのが後方に重たいビルドアップの設計である。ここ数試合のアーセナルはカラフィオーリをアンカー役の脇に立たせる形をベースにしつつ、その前に入るIH(ライス)がカラフィオーリの移動によってできた守備の穴を突く形を採用していた。

 しかしながら、この日のアーセナルはCHのプレー位置がかなり低めだった。ライスはトーマスとほぼフラット、時々サリーも行う。さらには普段はウーデゴールがやっているポジションを担当していたメリーノはかなり自陣側に下がって張り付く。

 そのうえでいつも通りカラフィオーリもインサイドには入り込んでくるので中盤中央は渋滞に。そのうえであえて多くの人を集めてフリーマンを作って運ぶというような工夫もなかったため、単に後ろが重たいフォーメーションになっていた。

 もちろん、それでも成立する時はある。なぜならアーセナルの前線はロングボールを収めることができるから。だが、この日のアーセナルの前線は先に述べたようにワイドがトロサールとスターリングというセット。普段のスターターであるサカやマルティネッリと異なり、長いボールを収めることが出来るタイプではない。

 後ろに重たい陣形、そしてロングボールを収めることができない両翼。というわけでアーセナルの前進の手段はハヴァーツにすべてがかかっているといってもおかしくない状況となる。前後分断を解消するためにキープし、両翼に時間を送り続けるこの試合のハヴァーツの異能さはとてもよく目立っていた。

 前後分断気味だったアーセナルは中央への縦パスがクリーンに通り、ここからサイドに展開することが出来ればアタッキングサードでの矢印を作り出すことが出来る。だが、ボーンマスはトロサールとスターリングのサイドに対して、少なくともロングボールで過度な警戒をする必要はない。ボーンマスは中央に狙いを絞り、ナローな陣形でハヴァーツへのロングボールの迎撃とセカンドボールの回収にリソースを注ぐことが出来ていた。

 特に貢献が光っていたのはクック。SBの背後のスペースのカバーからインサイドに絞るカラフィオーリの管理まで広い範囲の仕事でア―セナルの攻撃を寸断。地味ながらも効果的な仕事でボーンマスの右サイドを埋めていた。

 相手に中央を効果的に埋められている状態だったため、ハヴァーツにとってはいつも以上にタフなロングボールでのキープになったはず。縦パスをさばいてサイドにつけるプレーがクリーンに出来たのはおよそ15分過ぎだった、

 さらには、この日のサイド攻撃の連携は不十分。仮に押し込んだとしてもそこから何を生み出せていたわけではない。ここでも右に流れるハヴァーツがスターリングの相棒役を行うなど、アタッキングサードでもハヴァーツの仕事が減ることはなかった。

いい流れに入り込みそうな矢先に・・・

 ボーンマスはGKをCBで挟むといういつも通り、深い位置からのボール保持を画策するスタート。アーセナルのプレスを自陣に誘発しつつ、前進を狙う。

 ただし、前進の仕方はややアバウト。一発を狙ったロングボールの精度はそこまで高くはないし、相手に連戦連勝できるほど圧倒的にボールを収めることが出来る選手もいない。アーセナルのハイプレスを交わす手段にはなっても、敵陣に攻め込む手段までには昇華できなかった印象だ。

 その分、効果があったのは高い位置からのプレッシング。降りていくアーセナルの中盤に積極的についていくことでボーンマスは敵陣でのボールカットを実現。いつもほど冴えていなかったラヤを絡めたボール回しを寸断し、ショートカウンターからゴールに迫るシーンも出てくるように。

 限られた方法ではあるが、それぞれがそれぞれの前進を模索する展開。徐々にアーセナルは高い位置でライスやメリーノがボールを触る頻度が上がるようになり、サイド攻略の構築に本格的にトライしていく時間に突入するかと思われた。

 しかしながら、その流れを壊してしまったのがサリバの退場劇。トロサールの不用意という言葉では片づけることが難しいバックパスで貧乏くじを引かされたサリバが一発退場でアーセナルは今季のリーグ戦で早くも3回目の数的不利を経験することとなる。

 押し込む頻度が増えたボーンマスはここからサイド攻撃を本格化。セメンヨの突破が目立つ左サイドが攻撃の軸に。彼の単騎突破はもちろんのこと、スコットやエヴァニウソンもボーンマスの左サイドに流れながら攻撃を構築していく。ボーンマスの左サイドから放たれるクロスからの攻撃はアーセナルのボックス内を震え上がらせるには十分な攻撃をすることが出来ていた。

 10人になったアーセナルに全く攻め筋がなかったわけではない。ハヴァーツへの縦パスが通ればそこからサイドへ展開するルートは残ってはいる。

 ハヴァーツに縦パスを入れるミッションの難易度自体はそこまで難しくはない。だが、トロサールにしても直線的に一気にボールを進めるわけではないし、スターリングも同じ。さらには右サイドのテコ入れのため、スターリングは割を喰って交代をしまい、30分にはピッチを去ってしまっている。11人以上に前進からサイドを使った攻撃は難易度が高いものになった。

またしてもバックパスに苦しめられる

 迎える後半もペースはボーンマス。アーセナルに対してボールを握り、4-4-1ブロックの攻略に挑んでいく。

 少し変化があったのは左右のWGの配置である。イラオラは左に入っていたセメンヨを右に回すことに。ただし、配置は変えても狙いとするサイドを左に設計したのは同じ。セネシの後方からのキャリーからケルケズ、ワッタラ等とパス交換をしながらアーセナルの選手を一人ずつ外していく。

 アーセナルの選手の中ではトーマスはかなり食らいついていたように見えた。後方のキヴィオルではフィルター役として難があるのは間違いないので、その分なるべく高い位置で!という意識が見える素晴らしいパフォーマンスだった。

 だが、そんなトーマスも百発百中とはいかず。サイドでボーンマスが一手先に進むことが出来た場合は左サイドからの押し下げに成功し、アーセナルに背走しながらのバタバタとしたボックス対応を強いることが出来る。右サイドで待ち構えるセメンヨはこのクロスに対してボックスに侵入し、フィニッシャーとしての役割を果たそうとしていた。

 アーセナルは敵陣に出て行く余裕がなく苦しいところ。退場以降の話で言えばメリーノとマルティネッリというスポット程度でしかチャンスを作ることが出来ない状態となる。

 そうした中で試合を動かしたのはセットプレーだった。得意なCKがなかなか決まらないアーセナルを尻目に、デザインされたプレーブックでネットを揺らす。ニアですらしたクライファートによりおぜん立てされたミドルシュートの機会を逃さなかったクリスティー。70分にボーンマスが前に出る。

 何とか巻き返したいアーセナルだが、またしてもこの試合ではバックパスに泣かされることに。キヴィオルのバックパスが短くなってしまい、これがPKのきっかけに。いつもと違うサイドでの起用となったのは確かではあるが、利き足でのコントロールだっただけにここはきっちりとラヤまでつなぎたかったところだろう。

 2点のビハインドとなったアーセナルは最後にジェズスとヌワネリを投入するが10人で流れを変えるには至らず。アーセナルは代表ウィーク明けに今季初めての公式戦での敗北を経験することとなった。

あとがき

 内容が良くない試合だったのはあるかもしれないが、この時期はシティを見ても内容が良くないなりに勝ち点を取れるかどうかのチャレンジでもある。そういう時期において退場者で試合展開やあるいはスカッドに過度な負荷がかかる展開は避けたいところ。

 ましてや、今回は自分たちの不用意なミスが直接数的不利や失点に繋がっている。セットプレーでの1点はしょうがないかもしれないが、11人でその1点を何とか90分をリカバリーするという展開であれば、もう少し勝ち点を取る可能性は現実的なものになっていたはず。苦しいなりになんとかしなければいけない時期に自分たちの首をこれ以上占める行為はやはり見たくはない。

試合結果

2024.10.19
プレミアリーグ 第7節
ボーンマス 2-0 アーセナル
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:70’ クリスティー, 79‘(PK) クライファート
主審:ロベルト・ジョーンズ

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