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「0と1は違う」~2024.10.23 AFC Champions League Elite リーグステージ 第3節 上海申花×川崎フロンターレ マッチプレビュー

目次

Fixture

2024.10.23
AFC Champions League Elite
リーグステージ 第3節
上海申花(7位/1勝0分1敗/勝ち点3/得点4 失点4)
×
川崎フロンターレ(9位/1勝0分1敗/勝ち点3/得点1 失点1)
@上海体育場

Match facts

Match facts
  • 川崎は直近3試合のACLで2敗しているが、アウェイでは5戦無敗でうち4試合に勝利。
  • 川崎は中国勢相手に4連勝中だが、これはコロナ禍により中国勢がACLにユース組を送り込んでいた時期と一致。それ以前においては6戦未勝利(D3,L3)
  • 上海申花はここまでリーグ戦28試合(残り2試合)で73ポイントを稼いでおり、これは2008年の61ポイントを大幅に上回るクラブ記録。
    • 優勝すれば2003年以来21年ぶりのリーグタイトル。
  • 上海申花は日本勢とのACLの対戦は直近10試合で1勝(D5,L4)であり、その1勝は日本で挙げたもの。
    • ホームでの日本勢に対するACLの勝利は2004年4月の磐田戦が直近であり、歴史上唯一の白星。

予習

ACLE LS 第1節 浦項スティーラース戦

ACLE LS 第2節 ジョホール・ダルル・タクジム戦

中国超級リーグ 第28節 河南戦

予想スタメン

展望

『The ACL』の攻撃と脆さのある守備

 G大阪とのリーグ戦は金曜であり、この試合までは中4日。そして、この後に控えるリーグ戦は1週間以上空きがある。移動場所が上海ということを鑑みても、今回の川崎の遠征はいつもに比べればかなり日程にゆとりがある行程といえるだろう。リソース的なところを考えても比較的準備をきっちり行って試合に臨むことができる。

 対戦相手となる上海申花は充実のシーズンを送っている。上に書いたようにクラブ記録を大幅に更新する勝ち点を積み上げていて、国内では28戦23勝で敗戦はわずかに1つ。ここまで素晴らしい戦績にも関わらず、残り2試合で優勝は確定していない。川崎が2週間後に対戦する上海海港が後ろに勝ち点1差でぴったりついているからだ。というわけで金曜のリーグ戦にも思いっきり主力組を投入している。

 基本的なフォーメーションは4-3-1-2で中盤はひし形。予習した試合の中ではACLの初戦である浦項との試合では中盤が直線に並ぶ4-4-2でスタートしたが、20分過ぎに4-3-1-2に変更している。おそらくは浦項が4-4-2だったので、それに噛み合わせる形でスタートしてみたが、うまくいかなかったからいつもの形に戻したという流れなのではないかなと思う。

 ビルドアップは後方3枚。CB2人にGKもしくは片側のSBを組み込む形が多い。IHが列落ちして、SBを押し上げるパターンもある。直近のリーグ戦で見られたのはこんな感じのタスク分けだった。

 ただ、ポゼッションに関してはショートパスで相手を動かすということよりも、基本的には長いボールで前線の特徴を生かすことが多い。2トップのマレレとルイスは非常に強力でシンプルなロングボールを収めるパワーとハイラインの背後を取ることが出来る馬力もある。

 特にマレレはスコアリング能力も含めて警戒をしたい強力なFW。光州と違い、いかにもACLっぽい前線に強力な核があるチームという感じだ。

 トップ下に入っているフェルナンジーニョは左右のハーフスペースに抜け出すアクションを見せるなど2トップの陰に隠れた抜け出しから暗躍する。ちなみに、このフェルナンジーニョは2月には山東にいた選手。川崎とのRound 16では1st legでの途中交代からゲームチェンジャーとなり、逆転突破の布石を打ったあのフェルナンジーニョである。

 このフェルナンジーニョを筆頭に中盤の移動は自由度が高め。アンカーのアマドゥもかなり広い範囲で動くし、ボックス付近に顔を出してミドルも放つことが出来る。

 この中盤の自由度の高さは強いチームゆえだろう。動いた際の攻撃で変な失い方が少ないので、自分たちのやり方を相手に押し付けることが出来る。押し込んだ際の引き出しはそこまで多くはないように思うが、シンプルに前線に高さがあるのでハイボール対応に回るだけである程度守備側にはリスクがある。左のSBの陳晋一から連発されるクロスは直近のリーグ戦では同点ゴールのきっかけになっていた。

 ちなみにこの陳晋一は香港代表の選手で、日本とのハーフ。そして出身地は東京らしいという豆知識も調べていたら出てきた。

https://twitter.com/guojiadui/status/1802630156554571993?s=61&t=hk35TK6BT2zxQWzu5WH8bg

 強力な攻撃面と裏腹に守備面での問題は少なくない。押し込むフェーズの即時奪回など、乗っている場面に勢いに任せて圧力をかけることは得意なのだが、セットした状態での守備はむしろ不得手といってもいいくらいだ。4-3-1-2と見た目は中央に人をかけたフォーメーションなのだが、2トップの脇などこのフォーメーションで想定される空きスペースをどう埋めるかが非常にあいまいになっている。

 IHが出て行くなど適当にその場しのぎで解決しているように見えるが、後方の選手は1人の選手が出て行く動きに連動しないし、前線の選手も特にプレスバックしないので、結果的には人がいるはずの中央もスカスカになってしまうという状況。

 直近の公式戦で唯一の敗戦となっている前節のACLのジョホール戦の出来はそれはそれはひどいもの。ジョホールは左右に大きく動かして裏を取るというシンプルなプランであっさりと上海申花の守備網を破壊していた。

 守備では個人としては4番の蒋聖竜が面白い存在。193cmと長身の23歳のCBで中国代表でもプレーしている。先日のインドネシア戦では攻撃時のセットプレーでライン際での根性の折り返しを見せて、先制点をアシスト。中国の今予選の初勝利に大きく貢献した存在だ。

ポケット抜け出し周辺の対処法を整理したい

 混戦のリーグステージにおいては1つの勝利が重要。全勝は光州のみであとは勝ち点4と3が団子状態。J1の残留争いと同じく勝ち点3で大きく目標に向けて前進するような情勢となっている。川崎にとってはアウェイとはいえども勝ち点を確実に取っておくべき試合だ。

 とはいえアウェイゲームであり、相手は好調の中国リーグの首位。まずは守備から考えたいところである。ハードな役割が想定されるのはCBだろう。2トップに対して正面から向き合うだけでも大変なのに、トップ下のフェルナンジーニョがその脇から前線に飛び出してくるのだから、たまったものではない。

 基本的には中盤が下がってフェルナンジーニョの抜け出しについていく対応になると思うが、こうなるとボックス前が空いてしまう。川崎はCHが釣りだされた時の対応方法が大体はCBが前に出て行くことで何とかするという後方の根性に依存するものであるが、この試合ではおそらくCBにそんな余裕はない。2トップの一角が降りて埋めるか、もしくは中盤がボールサイドにスライドするかのどちらかを徹底しなければ、ミドルシュートで簡単に仕留められてしまうだろう。

 今の川崎の2トップのカラーから考えると、ボールサイドへのスライドがいいのだろう。だが、ボックス内での上海申花の前線の脅威は無視できず、大外のSBからのクロスも寄せたいので非常に難しいところではある。それを踏まえると、CFへのロングボールを抑えることやサイドの裏に抜けるフェルナンジーニョを潰し切ることが重要になるだろう。

 逆に言えば、ここを潰す目途が立たないのであれば、蹴らせること自体が厳しいものになる。蹴らせないための玉砕覚悟のプレスか、あるいは蹴られても挟んで対応しやすいように中盤がバックスに吸収されるとか極端なプランを取らざるを得ない可能性もあるだろう。

 より良いのは保持のフェーズを長くして相手の攻撃の機会を取り上げることである。ジョホール戦の出来を見ていると、かなり守備面はもろさがある。特に初手で相手の中盤を間延びさせることが出来れば、十分に蹂躙する未来も見えるはずだ。

 攻撃面で効きそうなのは三浦颯太。負傷明けでの帯同ということでどこまでプレーが可能かはわからないが、あの追い越すアクションに対応できるほどの中盤の守備のアラートさは上海申花にはない。大外の追い越しもいいが、インサイド側に立つことで相手の中盤のマークを混乱させたいところだ。

 あとはやはりCB。彼らが1stプレスラインを越えて、相手の中盤と駆け引きできるかどうかは非常に大きく戦況を左右すると思う。G大阪戦で同点ゴールの起点となったのは確かだが、丸山はこの点ではほぼトライをしない。非保持での潰すタスクの不確実性を考えても、ここはアイダルの身体能力に賭ける方がまだベターかなと思う。アイダルは放置されると一応運ぶ素振りは見せるので、保持でも丸山よりは改善の未来はある気がする。年齢面というかこれは意識の問題のような気がするが。

 とっととバックスに当てるようなロングボールよりも、中盤の守備を剥がして薄いサイドを作り、そこからサイドでスピード勝負に持ち込んで、最後はボックス内での折り返しで仕上げることが理想である。まぁ、こんなうまくはいかないかもしれないだろうが、一応その形が理想。マルシーニョの出番は崩しにおいては遅い方がより殺傷性が高いはずだ。

 この試合に限ったことではないのだけど、やらないこととできないことは違う。0と1くらい違う。FWの無計画前プレと運ばないCBの棒立ちのポゼッションに関しては本当に強くそう思う。やってみてできないことの洗い出しをしてうまくいかないことは自分としては受け入れる覚悟はあるので、まずは0ではなく1をやるということを徹底してほしい。そうじゃないと、たぶんもう1回強くなるのは無理だと思う。

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