MENU
カテゴリー

「マイナスからのスタート」~2024.10.23 AFC Champions League Elite リーグステージ 第3節 上海申花×川崎フロンターレ マッチレビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

 数分前にレイトコンタクトでのファウルという怪しい前触れを回収するように、マルシーニョは開始早々に退場。この試合では11人と11人での睨み合いは見れることはなく、不均衡な状態で紐解く必要がある90分となった。

 ボールを持つのは11人の上海申花。川崎は家長を4-4-1の左にスライドさせる形でカバーする。上海申花の攻撃の特徴はプレビューで述べたように、2トップへのロングボールと中盤が中心となるハーフスペース裏への飛び出しである。川崎はひとまずライン間をコンパクトにしたが、上海申花のボールホルダーへのチェックがかからない。中盤は空洞化しても前と後ろに人数をかければOKという上海申花との方向性と川崎の中盤をコンパクトにする守備の相性はあまりよくなかった。

 上海申花は前線へのボールを入れるだけでなく、SBを高い位置に上げて大外から押し下げるアクションを使っていく。ここからハーフスペースへの抜け出しを駆使することで上海申花は川崎のラインを押し下げ。ボックス内に川崎のMF陣が吸収される中で、マイナス方向のバイタルの外からミドルを放つことでゴールを狙っていく。

 上海申花のミドルシュートは精度が高いとはいえず、枠を捉える頻度が低かったのは助かったところ。しかしながら、それでも24分にはディフレクトから先制ゴールを決めるなど上海申花は必要なものをきっちりもぎ取っていた。

 川崎の保持は行けそうな雰囲気もなくはないかなという感じ。4-3-1-2の上海申花の川崎のバックスに対するプレスは積極的ではあったが、気まぐれなので連動して2,3人というテイスト。どこかしらにボールを置くことができそうではあったし、後方からキャリーをすることもできそうだった。実際に佐々木はバックスからのドリブルで何回かチャンスを作っていた。逆に丸山は動けずに保持面でも苦しい対応が続くことになる。

 山田へのロングボールも攻撃の軸になっていたが、成功率自体は微妙なところ。それでもサイドに流れるなど工夫をすることで時間の経過とともに収まるケースは増えていったように思う。川崎は途中で守備を4-3-2に変更し、CBにプレスをかけつつ3センターをスライドさせて上海申花のSBを高い位置で止める変更をしたが、すぐに4-4-1に戻したりもしている。仮説ではあるが、もしかすると時間経過で山田が収まるようになったことで、守備面でリスクを取る判断をしない選択をしたのかもしれない。

 後方から追い越してくる川崎のMFを捕まえることが上海申花は全くできていなかったため、川崎の攻撃はどこかで前線にボールを収めてしまえば中盤からの攻め上がりでチャンスを作ることができた。ただし、SBや中盤は攻め上がるので、失敗すれば後方には広い範囲を守るのが苦手なCB陣がカウンターの対応をしなければいけないというリスクつきではある。

 それでも、川崎はビハインドなのである程度リスクを負う必要があると判断したのだろう。実際にチャンスは作ることができた。だが、決定的な場面でシュートを仕留めることができず、試合は1-0のままハーフタイムを迎える。

 後半も試合の景色は変わらず、上海申花のボール保持でスタート。ハーフスペースに潰しに出た丸山の判断の遅れをひっくり返される形でピンチを迎える立ち上がりとなった。

 ミドルの精度が上がらない上海申花は少しずつアーリークロスを増やしながら攻撃のパターンを作る。大外で深さを作り、同サイドでマイナス、ペナ角付近からファーへのクロスを狙う形で川崎のSBを狙い撃ちする。それでもチャンスの数は大幅には増えず、この辺りは押し込んだ相手に対する攻撃の精度不足を感じる部分である。

 60分過ぎには週末に備えて上海申花は主力外国籍選手が続々と退勤。4-2-3-1にシフトする。まぁ、一応サイドも中央もバランスよく守ろうというコンセプトはわからなくもなかったが、ライン間のコンパクトさは依然かけていたので、川崎は異なるルートで同じように前進の方針を探ることができた。縦パスを受けた選手が自分でターンできる程度のコンパクトさでしたブロックを組めなかった上海申花は守備の手当てを十分にしたとはいえないだろう。

 簡単に前に進める手段として奮闘していた山田が下がったこともあり、川崎は押し込まれた守備をする時間が増えていく。それでも保持に回れば川崎は交代選手が前にエネルギーを出して攻め上がる。しかしながら、攻め上がった際の攻撃はあまり意図が合わなかった様子。70分の河原のパスミスに対して、それぞれの動きに対してパスが欲しかった脇坂とエリソンが大きな不満を示すなど、アタッキングサードで空いている位置をどう攻めるかの共有はできていないように見えた。

 2失点目のPK献上シーンの遠野のミドルもその一例だろう。彼の左にはフリーの味方がいたが、前の壁にぶち当てるミドルでカウンターの起点になってしまった。丸山の対応も拙いものであったが、この場面では瀬川の対応の悪さも際立つ。河原のサイドへの誘導に対して選手を捕まえるのが遅れてしまったのが1つ、そして遅れて出ていくことによってさらに傷口を広げたのが1つ。瀬川が犯したこの2つの悪手が後方に丸山への負荷をかけたことも間違いない。

 いつも言っていることだが、明らかに間に合わない状況で遅れて出ていくくらいならばステイしたほうがマシ(ミドルシュートを狙える場合は別かもしれないが)。ACLの短期決戦のレギュレーションであれば0-1と0-2の差はそれなりにあるので、そういう中で取っていい類のリスクじゃなかったように思える。遠野の判断から始まる一連のプレーは10人とかとは関係なく、直近の川崎におけるチグハグさがよく見えるプレーだった。

ひとこと

 「できないことに取り組む姿勢という意味で0と1は違うよ」という記事を書いた試合でマイナスからスタートするというのは想定の斜め上という感じでしかなかった。10人という中で苦しい試合にはなったが、佐々木の奮闘というトピックもありつつ、2失点目のような個々の判断のまずい部分の掛け合わせなど、数が減ったところと切り離せそうな課題も十分に見えたので、こういう部分を一個一個潰していくしかないのかなという感じ。しかしまぁ、マルシーニョが次からいない中でこのポジションを託したいと思える選手がなかなか出てこないのは辛いものがある。

試合結果

2024.10.23
AFC Champions League Elite
リーグステージ 第3節
上海申花 2-0 川崎フロンターレ
上海体育場
【得点者】
上海申花:24′ 汪海健, 90+3′(PK) ルイス
主審:ムハンマド・タキ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次