FA杯優勝おめでとう!ということで無事にシーズンが終わりました。みんな仲良く(一部から目をそらしながら)今季を終えられてよかったですね。
というわけでシーズンレビュー代わりといっては何だが、再開直前にあげた「気になるアーセナルの10のこと」という記事のトピック10個について、実際にシーズン終わった視点から見るとどうだったか?を検証していきたいと思う。予想をしたなら答え合わせするのが大事。早速行ってみよう。予想を読みたい人は下記記事をクリックだ。
点の取り方は?
オーバメヤン以外の点の取り方を確立できる?
解答⇒トライはあったが、結局頼みのオーバメヤン
オーバメヤンの契約問題と絡めて、スコアラーを分散した仕組みを作れないか?というのがこの項の問いかけであった。結果を見てみると、終わってみればやっぱり頼りになったのはオーバメヤン。得点王の座こそ届かなかったもののFA杯では準決勝、決勝等の大一番で大事な得点を決めてみせた。
簡単なシュートを外す場面があるのは否めないが、裏を返せばポジショニングが優れていることの証左でもある。単なるスピードスターではなく、駆け引きの巧みさも見られており、まだまだ第一線での活躍は期待できるはず。ファンからの契約延長を望む声は根強くなる一方だった。
一方でペペを使ったフィニッシュの方法もトライされた。大外に張るのではなく内側に絞ることでラカゼットとのポストの合わせ技で前を向き、右の斜め方向からゴールに迫る動きは悪くはなかったように思う。ただし、アーセナルの中盤の得点力は依然低いまま。仮にオーバメヤンが抜けた場合の得点を一手に引き受けられるほどの完成度か?といわれてしまうと言葉に困ってしまう。
いずれにせよ、ファンの第一の願いはキャプテンの契約延長であることは間違いないだろう。
「ナンバー9」のレギュラー争いは?
FWのレギュラーはラカゼット?エンケティア?
解答⇒鬼門のアウェイ克服で意地を見せた「9番」
再開直後はエンケティアが一歩リードしていたこのレース。風向きが変わったのはラカゼットがモリニューでジンクスを打ち破ってからだ。この日、1年5か月ぶりにリーグ戦のアウェイゲームで得点を決めたラカゼット。レギュラー争いを再び混沌とさせると、次節のレスター戦でエンケティアが退場。3試合の出場停止となり、必然的にラカゼットのプレータイムは長くなった。
ここからは圧巻だったラカゼット。スタメンを任されたリバプール戦、シティ戦などの大一番では低い位置に降りてのポストプレーでのハイプレス回避やハイプレスの先導役になるなど、ストライカーとしての地道なタスクを非常に高い水準でこなした。若さを見せたエンケティアは一歩後退してしまった印象だった。
ただ、もともとラカゼットはこうしたスキルに長けているFW。スタメン落ちした理由も極端なフィニッシュワークのスランプであり、そのトンネルから脱すればレギュラーに返り咲くのは必然のようにも思える。中断期間に感じられた売却致し方なしの雰囲気もだいぶ風向きが変わった。ようやくアーセナルが巡り合えた「9番」は来季も赤いユニフォームをまとっているだろうか。
マルティネッリの起用法は?
本命:LWG、対抗:CF、大穴:RWG
解答⇒まさかの未検証、しかし・・・・
非常に悲しい結論になったトピックスである。結果は負傷で未検証。来季以降にお預けになった。ただ、なぜこのトピックスを立てたのか?というところまでさかのぼると、負傷前の段階でマルティネッリの起用が減少し、どのポジションで使われることになるのか?という部分が読めなかったことである。
短い期間なので確信をもっては言えないが、エメリ政権下に比べるとアルテタの中で若干マルティネッリの優先度は下がったようにも見える。だからこそこの大けがは痛い。
それでも中断前までは得点力と運動量でアーセナルファンを魅了。暗い話題しかなかった前半戦の希望の星になったのは間違いない。ファンの期待は大きいはずで、来季以降に提示したお題の答えが見られることを祈りたいところである。
左サイドの運用の仕方は?
サカとティアニーの二者択一?共存?
解答⇒共存、もしくは三つ巴
左サイドを主戦場とするプレイヤーから見れば、ブライトン戦までの悪い流れを断ち切るために行われた3-4-3へのシステム変更は歓迎といえるだろう。4バックならばSBをめぐる争いに終始したであろうサカとティアニーだったが、コラシナツを含めての三つ巴で出場機会を分け合う終盤戦となった。
幸運だったのはアルテタが3CBの左側に左利きを置くのにこだわったこと。パブロ・マリの負傷で左利きのCBは全滅したアーセナル。コラシナツやティアニーがこのポジションに置かれることが増加し、WBと合わせた2つのポジションを3人で分け合う形になった。
対人の強さを見せるコラシナツやアシスト数でチームを牽引したサカもよかったが、総合的な完成度でいえばティアニーが1枚抜けていたように思う。CBとしてもWBとしても水準が高いプレーを見せており、後方からのフィードもエリアへの仕上げのクロスもどちらも精度は高い。悪い時のアーセナルに大体ないとされている「キャプテンシー」も有していることは言動からもうかがえる。負傷癖さえ乗り越えればアーセナルのレジェンド級のSBになるポテンシャルは秘めているように思えるが。
「問題児たち」の処遇は?
2人の若手に逆転の芽はあるか
解答⇒「ピッチ」と「ビーチ」。対照的な居場所。
SBは嫌だ!という駄々が原因だったのかはわからないが、中断前後は半分戦力外のような扱いを受けていたメイトランド=ナイルズ。しかし、そんな彼は見事FA杯のファイナルで90分間ピッチに立ち続けてタイトル獲得に貢献した。それも本来嫌なはずのサイドの守備的なポジションでの出場である。ここぞというタイミングで結果を出した終盤戦のメイトランド=ナイルズ。できることなら残留してほしいところだが、選手がコンスタントな出場機会を求めたならば引き留めることは難しいかもしれない。
一方でゲンドゥージは再開直後に早々にスタメンを獲得。彼が前を向くことがビルドアップの軸となるゲンドゥージシステムでいい流れで再開できたはずだった。一変したのはブライトン戦。ここはもう説明不要だろう。多くのアーセナルファンから憎まれたモペイに喧嘩を打った行為は、試合直後はカルトヒーローのような称賛をするファンもいたものの、それ以降の報道でチームメイトやアルテタとの問題が報じられるとその声もトーンダウン。それ以降は影も形も見ることがなくなってしまった。
かたやピッチでトロフィーを掲げ、かたやビーチで一足早いバカンスを楽しむ。2人の問題児はコントラストくっきりのシーズンオフを迎えることになった。
CHに求められる資質は?
CHの人選はどうなるか?
解答⇒覚醒?再来?結局頼りになったのは「8番」
エメリ時代から様々なシステムの中で優先度が代わっていった中盤の組み合わせ。1月にはお払い箱のような形でヘルタベルリン行きになりかけていたジャカがシーズン終了間際には絶対的な存在になっていたことが激動の一年だったことを象徴している。
問題だったのはアルテタが残留を志願して柱に据えたジャカのパートナー選び。当初はトレイラをスタメンに起用していたアルテタだったが、彼がコンディション不良に陥った再開後はセバージョスを抜擢。ジャカとのコンビは初めはトランジッション時の守備の脆さを見せていたが、前線のプレスの上達と合わせるようにセバージョスの守備における貢献度も飛躍的に上昇。まるで別人かのような覚醒具合だった。もう少し前のポジションが適性であろうテクニシャンが中盤で守備に走り回っている姿にかつてのレジェンドのカソルラを重ねる人もいたくらいだ。
レンタル選手に「8番」を与えるのはどうか?という議論も開幕時にはあったものの、再開後の貢献度はピカイチ。昨年と同じく、終盤戦は「8番」に助けられたシーズンとなった。
来季を見据えたCBのレギュラー争いは?
CBの序列はどうなるか?
解答⇒去就は不透明も見えてきた序列
おそらくシーズン終了時のアルテタの中でのプライオリティはダビド・ルイスとムスタフィの2人であるはず。パブロ・マリの優先度はまだわからないが、貴重な左利きということでアルテタの中での序列は高いと見る。
入団するサリバも含めて、現有戦力はどこまでスタメン争いに絡めるか。ただし、報道では出番の確保が難しそうなソクラティスが退団に難色を示しているとも。数が多いCB陣の人員整理はオフの課題ではあるが、昨今の情勢もあってなかなかスムーズに進めないだろう。
長期離脱組のフィットネスは?
ホールディングとベジェリンのコンディションは?
解答⇒まだ途上、踏ん張りどころのホールディング
ベジェリン、ホールディング共に再開後に出番はあった。特にベジェリンは最終盤には徐々に高い位置での攻撃に絡めるようになるなど本来の持ち味を発揮。FA杯決勝では相手を切り裂く目覚ましいドリブル突破を見せつけた。チームが苦境に陥った際の発信力も含めて柱のような存在。ピッチの中での存在感が段々と戻ってきたのは心強い。
一方で踏ん張りどころなのはホールディング。対人守備、配球ともにムスタフィには一歩前に行かれてしまった印象で、まだまだ試合勘を取り戻すまでには至っていない。CBは上にも書いたように人数が多く、黙っていても出場の機会が回ってくるとは限らない。途切れ途切れの出場機会で本来の力を戻すという点ではCBは非常に難しいポジションである。正念場になりそうだ。
超過密日程との向き合い方は?
怪我人とFAカップのプライオリティは?
解答⇒災難で腹をくくってカップ戦に
一足先に始まったブンデスでのけが人続出を見て、ハードなボディコンタクトが特長なプレミアリーグのファンは戦々恐々としていたかもしれない。復帰初戦のアーセナルはまさにそんな心配を具現化してしまったかのようだった。シティ相手にジャカとマリをわずか20分で負傷交代で失うと、次節のブライトン戦ではレノのシーズンが終了。まさに踏んだり蹴ったりだった。
現実的にはこの2試合でCL出場への扉は閉ざされたといっていいだろう。FA杯にフォーカスしたわけではないだろうが、今季一旗あげる目的がFA杯しかなかったのはモチベーションを集中させる材料にはなった。中でもシティ戦は今年のハイライト。我慢を重ねてチャンスを待ち仕留めるという、再建中のチームとしては理想的な展開で決勝進出を決めることができた。
無観客の影響は?
無観客試合による試合展開、精神面への影響
解答⇒最後でいい無人のファイナル
精神的にどこかひ弱な印象があるアーセナル。観客のリアクションが反映されにくい状況が彼らにどこまで影響があるか?と思ったが、そこまで影響は感じなかった。ナーバスになる状況は振り返ってみてもあまり思い当たらず、落ち着いてプレーをしていた印象だ。
しかしながら、FA杯のファイナルはどこかもの悲しさがあった。本来ならばスタジアムを埋め尽くしていたであろうロンドンの赤と青のファンの姿はどこにもなし。両軍が懸命にやっていることは伝わったが試合の緊張感という意味ではどこかコミュニティーシールドのようなふわふわした部分もあった。個人的には観客が作り出す雰囲気の重要度を今季最も大事な試合で感じることになった。
タイトルを手にしたのはアーセナルだったが、彼らが無人の中でトロフィーを掲げる最後の王者になってほしいと切に願う。
以上!また来月な!