このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。
Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第6節
2020.7.22
ベガルタ仙台(11位/勝ち点6/1勝3分2敗/得点6 失点6)
×
川崎フロンターレ(1位/勝ち点13/4勝1分0敗/得点14 失点3)
@ユアテックスタジアム仙台
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦で仙台の1勝、川崎の9勝、引き分けが3つ。
仙台ホームでの対戦成績
直近10回の対戦で仙台の3勝、川崎の4勝、引き分けが3回。
Head-to-Head
<Head-to-Head①>
・直近12試合のリーグでの対戦で川崎は仙台に負けなし(W7D5)
・リーグ戦における水曜日の対戦は2回目。2016年5月以来で、この試合は1-1の引き分け。
横浜FC戦に続き、川崎にとっては相性がいい相手との対戦といえそうだ。リーグ戦で最後に川崎が仙台に敗れたのは2013年の8月。6年間は無敗である。気を付けたいのはその無敗の12戦中5つは引き分けで終わっているということ。決して勝ちきれているわけではないということだ。前回水曜日に対戦した2016年のように、粘られて引き分けは避けていきたいところである。
<Head-to-Head②>
・7月の対戦は過去に2回(2016年,1999年)。いずれも川崎が勝利している。
・川崎がリーグ首位で迎える対戦は過去3回あり、いずれも川崎が勝利している。
7月の対戦は過去に2回ありいずれも川崎の勝利。川崎がリーグ首位で迎えるシチュエーションも川崎の全勝なのだが、この3試合は実はいずれもJ2時代のデータ。実はJ1になってからは川崎が首位でこの対戦を迎えたことはない。反対に仙台が首位で迎えたのが2012年5月の対戦。この時は当時7位だった川崎が後半追加タイムの矢島卓郎の決勝ゴールで勝利を決めている。
<Head-to-Head③>
・ユアテックスタジアム仙台での対戦に限れば直近の公式戦3試合は川崎は未勝利。
・リーグ戦における直近3回の仙台の川崎戦勝利のうち、2回は逆転勝利。
川崎にとって相性がいい!といった仙台だが、近年のユアテックスタジアムでの戦績に関しては微妙なところ。公式戦直近3試合で2分1敗と渋い成績である。敗れたのはルヴァンカップ。一時は3点先行されたあの試合だ。
ちなみに先制すると公式戦49試合無敗(W40D9)と強さを発揮する川崎だが、仙台戦で負けるシチュエーションは逆転負けが多い。そしてリーグ戦で仙台に負けた直近3試合はいずれもスコアが1-2という共通点もある。先制しても油断は禁物だ。
スカッド情報
【ベガルタ仙台】
・シマオ・マテは右膝の靭帯損傷で欠場。
・イサーク・クエンカは右膝半月板損傷で離脱中。
【川崎フロンターレ】
・左膝前十字靭帯損傷の中村憲剛は欠場。
・筋肉系の負傷だったジェジエウは軽傷。出場可否は不明。
予想スタメン
Match Facts
【ベガルタ仙台】
<仙台のMatch Facts①>
・ホームゲームでは今季公式戦勝ちなし(D2L1)
・昨季のリーグ戦12勝のうち、ホームゲームで9勝。
今季の唯一の勝利はBMWスタジアムで湘南相手に挙げた勝利のみ。ホームゲームではまだ白星がない状態だ。昨季の成績を見ても、もともとホームゲームが苦手なチームではない。ここ数年のように粘り強い戦いで川崎相手に勝利をつかみ取りたいところだろう。
<仙台のMatch Facts②>
・引き分け3試合はJ1で最多。
・リードから落とした勝ち点は4で横浜FCと並んでリーグ最多。
スタッツだけを見ると、やや試合運びの拙さを感じてしまうところ。まだ5試合しかやっていないので、リードから失った勝ち点がリーグ最多!というのは気にしなくてもいいのかもしれない。ただ、前節の札幌戦において1人少ない相手に追いつかれてしまったのはチームとしてダメージが大きいはず。途中交代の選手がここまで得点していないというデータも相手にダメ押しができない点で少し気にかかる。
<仙台のMatch Facts③>
・直近3試合はいずれも相手チームより多くシュートを打っているが勝利していない。
・今季の11失点中、7点が前半と後半のそれぞれ終盤15分に喫したもの。
シュートの数は相手を上回ることが多いが、決めきることができない仙台。シュート数はリーグ2位だが、シュートの決定率(ゴール/シュート)は5.3%で下から4番目。シチュエーションが悪いのか、シュートを蹴る人の能力の話なのかはわからない。
失点の時間帯も悪く、前半と後半の残り15分に決められている。交代策と給水後の戦術変更で後手を踏んでいる可能性もあるだろうか。
【川崎フロンターレ】
<川崎のMatch Facts①>
・今シーズン、リードされたシチュエーションを唯一経験していないチーム。
・開幕5戦で勝ち点13はクラブ史上最も多い勝ち点。
いきなり自慢っぽい入りですみません。そして川崎のMatch Factsは自慢みたいな話ばかり続きます。いい時は自慢みたいなスタッツを、悪い時は前を向けるオカルトをというのが本プレビューのモットーでございます。というわけで川崎はここまでリーグで唯一ビハインドの時間帯を経験していないチーム。開幕から強いなんてうちじゃないみたい。J2時代を通しても開幕5戦での勝ち点は最高。文句なしのスタートダッシュを決めたことになる。
<川崎のMatch Facts②>
・リーグ戦アウェイゲームは5連勝中
・東日本のチームとのアウェイゲームは直近14試合負けなし(W10D4)
例年にない好調なスタートダッシュの理由は何だろう。オカルト的に考えてみると、夏だからという要素はあるだろう。だって毎年夏強いもん。しかし、オカルトを1年そこそこ追っかけているものとしては対東日本にやたら強い説を推していきたいところ。川崎の対戦成績がいいクラブは鳥栖を除けば東日本に集中している。特にアウェイでは強く、2018年の埼スタ以降は14戦負けなしだ。
<川崎のMatch Facts③>
・小林悠は仙台戦で通算10得点。このカードにおける最多得点者。
・川崎は脇坂泰斗が得点を決めた9試合の公式戦で全勝。
前節で復帰を果たした小林悠は仙台戦に強く通算10ゴール。若干気がかりなのは、10ゴールのうち8ゴールをホームで挙げているという点。ちなみに夏場にめっちゃ強いってデータは次節紹介します。ネタは小出しに。
小林と同じく、前節今季初ゴールを決めたのが脇坂。見事なコントロールショットで貴重な先制点をもたらした。実はプロデビュー後、彼が得点を挙げた試合は全勝の川崎。アシストまで範囲を広げてみても無敗というラッキーボーイ。先代の不敗神話を持つ阿部浩之も移籍してしまったことだし、名乗りを上げてみてはどうだろうか。
展望
■それぞれのインサイドハーフの役割
今節も少しだけ見れたので簡単に。サンプリングしたのは札幌戦である。まずはビルドアップだが、これはアンカー+2CB+GKのひし形がベース。ビルドアップは比較的シンプルな仕組みで足りない場合はここにインサイドハーフが降りてくる。SBはアンカーと同じ高さで幅を取る役。
何度も言うが川崎の今年の非保持での課題はWG-SBの距離感が遠くなってしまうこと。SBがビルドアップで高い貢献度を果たすチームの方が苦手な気がする。
SBをめぐる仙台のボール保持の局面において気になる点は以下の2つ。
1. 仙台の攻撃の出口
昨季より縦に速い攻撃を志向しているのが特徴だ。攻撃の出口としての役割を担っているのは両サイドのゲデスとジャーメイン。後方でフリーの選手ができた時に、彼らに向けたロングボールは比較的優先度の高い手段である。
ドリブルで仕掛けられる彼らにスペースがある状態でボールが渡った時は非常に面倒くさい。彼らと対面が予想される登里と山根は再開後ほぼ出ずっぱり、そろそろ疲労の色が見えても不思議ではない。
仙台のSBも攻撃参加でアクセントを加えられる存在。特にジャーメインが深さを作ってから、マイナスで受けた蜂須賀があげるアーリークロスは殺傷性が高い。長谷川にはプレスバックを要求する機会も多くなるかもしれない。
さて、このサイドの話が仙台のビルドアップの局面にどう効いてくるか?という話。攻撃の出口の件から考えると川崎のSBは仙台のWGにピン止めされる可能性が高そう。となると、仙台のSBは横浜FC戦と同じく川崎のインサイドハーフが監視しなければいけない公算が強いということである。特に長いボールを蹴れる蜂須賀の監視の仕方は気になる。
2.川崎の中盤の人選
川崎の今季の中盤のプレータイムは30分刻みでプレータイムを管理。なるべく、時間のバランスが良くなるように大島、脇坂、田中、守田、下田の5人を起用している。ただし、毎節60分で交代が行われてきた第4節までとは異なり、前節の横浜FC戦は中盤の1stチョイス(田中、大島、脇坂)が全員80分以上プレーしている。これは今までにあまり見られなかった時間配分だ。
横浜FC戦のレビューでも取り上げたが、この試合において特に大島の負荷は高かった。登里を最終ラインにステイさせるために、WBを監視にサイドまで出ていく必要があったからである。
そして、上に記した通りこの試合でもその役割はインサイドハーフが担うことになりそうである。予想スタメンに守田と下田を入れてみたのは、前節のプレータイムと今節で想定される広い行動範囲を考慮した結果だ。
縦に速くなる仙台の攻撃を支えるのはインサイドハーフの運動量。前線に顔を出してWGを孤立させなければ、間違いなく攻撃に厚みは出る。
仙台目線で考えれば、アタッカーにいい形でボールを渡すことができれば天敵攻略の突破口になりうる。その先の一手をサポートできるかは仙台のインサイドハーフによるところが大きい。
■プレスに対してスイッチは入るか
仙台の非保持は4-5-1。特徴は中盤がフラットに近い形で5枚並ぶこと。WGと3センターで段をつけた守り方をすることが多い川崎と比べると少し違いがある。横に5人の選手がいると、攻撃側としては相手を溶かすように崩さないといけない。
したがって、川崎は仙台の4-5-1の5の部分をどう動かすかを考えるべきだ。仙台のプレッシングは前線に加えて、中盤から援軍が来る。WGが外から出ていくこともあれば、3CHから出てくることもある。この時に仙台は2列目からプレッシングで出ていった選手の穴を放置する傾向がある。
特に、3CHの1人が出てくるときは、ほかのCHも共に重心を上げてくるのでDF-MF間のスペースが空きやすくなる。もちろん、ひっかけてしまったらそのままショートカウンターなのでリスクは大きいが、ここは狙い目。組み立てで存在感を放つ車屋は積極的にこのスペースを狙ってほしいところだ。
サイド攻撃での進歩が見られる今季の川崎だが、中央から縦に速く相手の穴を陥れる動きは実は今季はあまり多くない。特にCHから攻撃を一気に急ぎたくなるようなスイッチとなる楔が入らないのは若干気がかり。守備面の負荷の話もあるが、今節はおそらくこの縦に刺すパスは有効になってくるはずなので、川崎のCHたちにはそこを期待したい。
タスクが多く、過密日程という状況もあり簡単なミッションではない。仙台戦で問われることになりそうなのは川崎の中盤の総合力だ。
参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
SANSPO.COM(https://www.sanspo.com/)