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「サイドフロー起点のパズル崩し」~2024.11.26 UEFAチャンピオンズリーグ リーグフェーズ 第5節 スポルティング×アーセナル プレビュー

目次

Fixture

UEFAチャンピオンズリーグ
リーグフェーズ 第5節
2024.11.26
スポルティング(2位/3勝1分0敗/勝ち点10/得点9 失点2)
×
アーセナル(12位/2勝1分1敗/勝ち点7/得点3 失点1)
@エスタディオ・ジョゼ・アルバラーデ

戦績

過去の対戦成績

 過去6回の対戦でアーセナルの2勝、引き分けが4つ。

Match facts from BBC sport

Match facts
  • これがスポルティングとアーセナルにとっては欧州では7回目の対戦。スポルティングは未だにアーセナルに勝利したことはない(D4,L2)が、直近3回の対戦はいずれもドローで決着。
  • スポルティングが仮に勝利を逃すと、アーセナル相手に7戦未勝利となり欧州の大会でもっとも多く対戦している未勝利のチームとなる。現在は6戦未勝利でレバークーゼンとパルチザン・ベオグラードに並んでいる。
  • アーセナルは欧州大会における11回のポルトガル遠征で1勝のみ(D6,L4)で、直近のポルトガル遠征でも今年2月にポルトに敗れている。しかし、アーセナルの唯一のポルトガルでの勝利は2018年10月に1-0で勝利したスポルティングとの試合。
  • スポルティングは今季ここまでのCLで無敗(W3,L1)だが、すべてルベン・アモリムが指揮した状況下によるもの。ジョアン・ペレイラにとっては初めてのCLとなる。CL初陣を制したスポルティングの指揮官は2006年にインテルで勝利したパウロ・ベントまでさかのぼる。直近3人の指揮官は勝てていない(D1,L2)
  • アーセナルは直近5試合のCLでのアウェイゲームで未勝利(D2,L3)。直近4試合はいずれも無得点。欧州カップ戦でアウェイ5試合連続無得点に終わったチームは2004-05年のマンチェスター・ユナイテッドだけ。
  • 今季、スポルティングと対戦するチームは57%の場面で相手からの強いプレッシャーを受けており、特定の相手としては最も高い数字。
  • ヴィクトル・ギェケレシュは今季の4試合のCLで6得点に関与(5G,1A)。すでにクラブにおける1シーズンのタイ記録に並んでいる。
  • デクラン・ライス(79%,11/14)とミケル・メリーノ(75%, 12/16)は10回以上コンタクトした選手の中でもっともデュエル勝率が高い中盤。ただし空中戦は12/14での勝率を図るガブリエウ・マガリャンイスがチームトップ。
  • 17歳のジオバニ・クエンダが出場すれば、スポルティングはルベン・ネベスが達成した以来の18歳以下の選手が出場。
  • カイ・ハヴァーツ(146)とレアンドロ・トロサール(99)は今季のCLにおいて最も多くのハイインテンシティでのプレスを実施しているトップ3に入っている選手。チームでも543回と最多。

予習

CL 第3節 シュトゥルム・グラーツ戦

CL 第4節 マンチェスター・シティ戦

プリメイラ・リーガ 第11節 ブラガ戦

予想スタメン

展望

名将が去った後でも

 リーグフェーズは半分を終えたのだが、未だに手ごたえがないように思える現行のCLのフォーマット。アーセナルは12位につけているのだが、ポット1と2の全チームとの対戦が終了しており、区分上はここからは下のポットのクラブとの試合が続くことになる。

 ただし、今節対戦するスポルティングと今後対戦予定のモナコはいずれもアーセナルから見て順位は上。リーグ戦のイメージを持つのであれば、自分たちの勝ち点を積むのと同じくらい相手にポイントを与えたくない相手となっている。

 特にスポルティングにはなんとしてもここで差を縮めたい。ここからのスポルティングの相手はクラブ・ブルッヘ(22位)、ライプツィヒ(32位)、ボローニャ(33位)と下位勢が中心。ここで並んでおかなければ完全に先に行かれてしまう。アーセナルとしては止める必要性は高い。

 とはいえ、ポルトガルのアウェイゲームは残すリーグフェーズの中では最も重たい試合といえるだろう。アモリムはユナイテッドに去ったとは言え、スポルティングは絶好調。無敗を誇るCLだけでなく、リーグ戦ではまさかの全勝。9月に至っては5試合の公式戦を全て無失点で駆け抜けている。

 アモリムはいなくなったが、残される選手が同じであり、後任の指導者が下部組織からの登用であるジョアン・ペレイラとなれば、基本的に志向する路線は同じになるだろう。週末の国内カップ戦の映像は見当たらなかったため、ペレイラの初陣の内容は確認できず。ここからはアモリムの時代におけるスポルティングについて考える。

 リーグとCLの両面で無敗を継続していることもあり、シンプルに強度が高いチームであることは間違いない。4-1というサプライズを提供したシティ戦のように速い攻撃をベースにしたカウンターにフォーカスが集まりがちではあるが、2点のビハインドから4点を奪い返したブラガ戦では、下がって受ける相手に対してあの手この手でのこじ開けに成功した。前線のプレーの幅の広さに加えて、中盤の高いタレント力が速攻と遅攻の両面で機能している印象だ。

 特に圧巻なのはやはりギェケレシュだろう。中央でのポストプレーもさることながら、今季はサイドに流れたところからでのスピード勝負でも優勢。ただのかけっこであればなかなか相手を置き去りにするのは難しいが、強靭な体幹を活かして前に入り込むという並走の仕方を心得ているので、スピードで優位に立てる守備者も入れ替わられてしまうことも珍しくはない。味方を活かすという点では以前から優れていたギェケレシュだが、自らが千切って決めるという点ではさらに凄みが増しているシーズンということが出来る。

 その他の前線はどちらかといえば軽量級寄り。大外のWBはどの選手が出てきても縦への突破力があるし、シャドーの選手もボールをキャリーしてカウンターを完結することが出来る。スペースがある状態で対峙するのは難しいだろう。

 保持においては外と中のバランスを活かした攻め筋を作るのがうまい。外を回しつつ、インサイドもきっちり覗きますよというバランスの良さは今のリバプールとかに通じるところがある。陣形は全然違うけども。

 非保持においては縦にコンパクトな5-4-1がベース。低い位置の守備ではなるべくCHとシャドーがスライドし、後方の5バックは動かさないというプランがベースになる。

 ボックス内を守ることになっても守備は堅く、枚数に余裕を持っているためなかなか壁を突き破ることが出来ない。特に中央のディオマンデは強力だ。

 攻守にレベルが高く、アモリムが去っても彼の遺産を引き継ぐリソースは十分にあると考えられる。非常に難しい一戦となるだろう。

ディオマンデは釣りだす、デバストに負荷をかける

 シティ相手のスポルティングの戦い方をベースにアーセナルにどう向かってくるかを考えるのであれば、バックラインは無理なプレスに行かず、ギェケレシュはアンカーを消すというところから入ってくることになる。

 堅い守備を壊す想定を組むのであれば、いかにDFの行動範囲を広くするかというところになってくる。今季力を入れているサイドフローは崩しの下ごしらえとして有効だろう。シャドーをバックラインに食いつかせつつ、2列目がサイドに流れればおそらくスポルティングの守備原則であればCHがサイドについてくるはずだ。

 2列目をサイドに引き寄せることが出来れば、今度は前線が降りるアクションから揺さぶりをかけたいところ。トップに入るであろうハヴァーツの降りるアクションから中央に起点を作りたい。

 バックラインから釣りだすのはディオマンデだったら理想的。デバストなどは負荷をかければエラーを引き起こす兆しは見えるので、ディオマンデをどかして、デバスト周辺に人をわらわらまとわりつけるイメージで攻略をしていきたい。ハヴァーツをディオマンデにぶつけるのであれば、WGやSBは斜めにDFラインの背後を取るイメージは持っておきたいところだ。

 要はWGのピン留めを利用するサイドフローにより、中央で1つずつズレるのをパズルを解くようにいかに正確に早く利用できるかの勝負だと思う。ウーデゴールが帰ってきた今のアーセナルならば、この点でのスポルティングとの駆け引きは非常に見ごたえのあるものになるのではないかと予想している。

 守備においてはやはりまずはギェケレシュを止められるかどうかだろう。ガブリエウかサリバは広い範囲に出て行ってでも彼を止めることに注力してもいいレベル。それだけ今のギェケレシュは厄介だ。

 もちろん、スポルティングの攻撃はそれだけではない。サイドにもアジリティの優れているアタッカーはいるし、中央と同じくここでもデュエルでどちらが優位を握るかは重要なポイント。バックスの技術の高さと中盤の枚数調整能力は高いので、おそらくハイプレスはかかりにくい。それだけに後方の迎撃では優位を保ちたいところである。

 後方にスペースを作るアーセナルはスポルティングにとってはおそらく与しやすいスタイルの相手だろう。大量得点は望みにくいので、おそらくは1点勝負。軽いプレーでの失点で敗れたインテル戦の反省を生かし、スポルティングにCLでの土を付けたいところだ。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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