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「2つの証明完了」~2025.1.22 UEFAチャンピオンズリーグ リーグフェーズ 第7節 アーセナル×ディナモ・ザグレブ レビュー

目次

レビュー

光るハヴァーツの仕上げ

 勝てばRound16へのストレートインが見えてくるアーセナル。リーグフェーズにおけるホーム最終節はディナモ・ザグレブとの一戦だ。

 プレビューでも触れたが、ディナモ・ザグレブはウィンターブレイク明けの初戦。そして、12月29日に就任したカンナバーロの初陣ということになる。

 ということでまずはディナモ・ザグレブの出方に注目である。非保持重視の布陣は5-4-1。後方に重たいフォーメーションをベースとする形であった。2024年のCLを見る限りはリトリートしてもブロックをコンパクトに維持するのは難しそうだったディナモ・ザグレブ。しかしながら、その当時に比べればカンナバーロ就任初戦のこの試合はコンパクトに中央を締める形は悪くなかった。

 しかし、アーセナルは早々に先制点をゲット。左サイドのマルティネッリの突破からハヴァーツがクロスを柔らかく落とすと、最後はライス。近頃のトレンドの左サイドからのクロスからの得点でアーセナルが先行する。

 ディナモ・ザグレブの守備ブロックは悪くないとは言ったが、それはあくまで我慢を前提に試合を運ぶことを念頭に置いた場合。先制点を奪われて追いかける展開になると、ボールの奪いどころを見つけることが出来ないディナモ・ザグレブの守備は一気に苦しいものになる。

 もっとも、ディナモ・ザグレブも攻めどころが全くないわけではない。クレノビッチからのロングボールは特にキヴィオルがマッチアップ相手であれば特に問題はなさそう。ただ、時間を作れるタイプではないので、単に長いボールを入れるだけでは前には進まない。これが空中戦で勝算が見込めてもディナモ・ザグレブが闇雲にロングボールを入れなかった理由だろう。とはいえ、ショートパスで幅を広げてもなかなか全体を押し上げることができず、苦しい保持局面となった。

 となると、次はアーセナルの保持局面からどのようにボールを取り上げるかが重要になる。序盤からアーセナルは外のWGを活用した1on1とディナモ・ザグレブのSHの背後を取るジンチェンコ、もしくは右のハーフスペースのウーデゴールやハヴァーツを使い分けながら前進を狙う。

 セットプレーもアーセナルにとっては大きなチャンス。高さでも優位に立っているし、GKの守備範囲が広いわけでも、キャッチングに優れているわけでもない。フリーのアーセナルの選手のシュート精度次第!という場面ばかりだった。

 順調だったアーセナル。しかしながら、時間の経過とともに中央につっかけるパスの比率が高まっていくことで中盤でのボールロストがちらほらみられるように。ディナモ・ザグレブは2列目の挟み込みを効果的につかってアーセナルが使いたいスペースを制限する。だが、これは2列目が後ろの形のボール奪取になるので効果は限定的。ロングボールを飛ばし、一度前にボールを付けてからロスト後に再度プレスを仕掛けることでディナモ・ザグレブはアーセナルのバックラインにミスを誘発させに行く。

 だが、アーセナルも反撃。前がかりなプレスに対してはマルティネッリの馬力を生かしたドリブルで陣地回復に成功。押し込んだ局面ではジョルジーニョから右サイドやや内側の裏を取るハヴァーツを生かすパスからスペースを作り出す。

 インフル以降はやや低調さが目立ったハヴァーツだが、この試合は復帰以降一番動きが良かった試合ではないだろうか。裏抜けの試行回数が格段に上がっているように思えたし、特に前半においてアタッキングサードでのスペースメイクはこのハヴァーツの裏抜けに一任されていた感がある。どっしり構えるタイプというよりは動いてナンボなのがハヴァーツの9番なので、こういう動きながら起点になる動きが戻ってきたのは朗報だろう。

 アーセナルの保持は不安定な前半の終盤だったが、ディナモ・ザグレブは攻め切る選択肢を取る遅さが致命傷。クリティカルなシュート場面を作る前にアーセナルの帰陣が間に合ってしまう。

 試合の展開を握る握力という点では終盤のアーセナルは少し緩んだが、主導権を手放すまではいかず。より多く得点する可能性を維持した展開で試合はハーフタイムを迎える。

オープンな展開は強度誇示にうってつけ

 後半、アーセナルはゆったりとした保持からボールを動かしていく。ディナモ・ザグレブも同じように深い位置からのボールをつなぐ展開を意識する。前半以上にリスクをとってアーセナルのプレスを引き寄せながらつなぐトライをすることでアーセナルの一方的な保持を回避しに行く。

 だが、押し込もうとすれば前半以上にカウンターでスペースはできやすくなる。プレビューでも触れた通り、CLでのここ数試合をベースに考えるのであれば、アーセナルがディナモ・ザグレブに優位を取れるのはセットプレーとトランジッション。後半はトランジッションでの優位が際立った。

 間延びするディナモ・ザグレブの中央のスペースを駆け回ったのはライス。豪快なドリブルでボールを運ぶことで一気に陣地回復を進めていく。ハイプレスでの圧力も含めて、アーセナルは連戦にも関わらず局面での強度でディナモ・ザグレブに力の差を見せつけていく。

 アーセナルは60分手前に選手交代。右サイドにヌワネリとトーマスを入れることでリフレッシュ。ここから再びアーセナルは幅を使いながら相手陣に入っていく形の攻め筋を重視するようになる。

 アーセナルの追加点はまたしても左サイドから。マルティネッリのシンプルなファーへのクロスはCBのマークを外したハヴァーツによってゴールにねじ込まれる。枚数は揃っていたが背後の相手にあっさりとマークを外されてしまったディナモ・ザグレブ。あまり大外からのファークロスはこの日多くなかったアーセナルだが、直後のヌワネリ→ライスの決定機などファーサイドへのクロス対応においてディナモ・ザグレブは明らかに難があった。ファークロス連打をやっていればもっと簡単に追加点を手に入れることが出来ていたかもしれない。

 以降もペースはアーセナル。強度で押し切るというよりはきっちり引くことを織り交ぜながら失点の危険性を減らすアプローチから展開を掌握する。

 クローズドに進めるアーセナルは終了間際に3点目。またも左サイドからのクロスが起点。トロサールのクロスは引っかかりながらも遅れて入ったウーデゴールが仕留めてゴール。完全に試合を決定づける。

 試合はアーセナルの完封勝利で終了。勝ち点16、得失点差は2桁とRound16ストレートインが非常に現実味を帯びる大きな勝利となった。

ひとこと

 ややジリジリした展開を強いられながらも最後は完勝だったアーセナル。1つ目であっさりリードを奪ったことでだいぶ試合展開は楽になった感がある。

 この試合のプレビューで課題としたのは「サリバなしの布陣でより保持局面での制御に振った内容にできるかどうか」である。この点はほぼ合格といっていいだろう。中2日で試合が控える中でゆったりとした展開を維持することができた。

 同時に7試合で2失点というリーグを通しての戦績も上々。楽ではない相手もあった中で、オープンプレーからの失点がなかったことは誇りに思っていい。持ち味の堅い守備が欧州でも勝負できることも同時に証明したリーグフェーズだった。

試合結果

2025.1.22
UEFAチャンピオンズリーグ
リーグフェーズ 第7節
アーセナル 3-0 ディナモ・ザグレブ
アーセナル・スタジアム
【得点者】
ARS:2‘ ライス, 66‘ ハヴァーツ, 90+1’ ウーデゴール
主審:ダニエル・シーベルト

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