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「扉を叩いてこそ」~2024.10.13 Jリーグ YBCルヴァンカップ Semi-final 2nd leg 川崎フロンターレ×アルビレックス新潟 プレビュー

目次

Fixture

Jリーグ YBCルヴァンカップ
Semi-final 2nd leg
2024.10.13
川崎フロンターレ
×
アルビレックス新潟
@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

戦績

近年の対戦成績

直近10試合の対戦で川崎は4勝、新潟の3勝、引き分けが3つ。

川崎ホームでの戦績

過去10戦で川崎の8勝、新潟の2勝。

Match facts

Head-to-head
  • 川崎は直近16試合の新潟とのホームゲームでいずれも得点を決めている。
    • そのうち、3得点以上を決めているのは9試合。3点差以上をつけているのは7試合で直近のリーグ戦も含まれる。
  • 川崎は直近7試合のカップ戦の2nd legで未勝利(D5,L2)
  • 新潟はリーグカップ決勝トーナメントにおける2nd legは3戦全敗でトータルスコアは0-7。
    • ただし、このうち2戦は敗れながらもラウンド突破を果たす。
  • 太田修介は川崎戦で3得点を挙げており、現在J1に在籍するチームの中で最も得点を挙げている相手。うち2得点は途中交代からスコアを決めており、1ゴールあたりにかかる平均時間は47分。

スカッド情報

川崎フロンターレ
  • 大島僚太は肉離れにより離脱。自国での治療を終えて来日したジェジエウとともに欠場の見込み。
  • 高井幸大は肉離れで離脱。
  • チョン・ソンリョンは1st legでベンチ外。
アルビレックス新潟
  • トーマス・デンは代表活動で不在。
  • 早川史哉は左排腹筋損傷で離脱中。
  • 谷口海斗は1st legで負傷交代。

予想スタメン

予習

1st leg

展望

狙った大量得点差の難しさ

 これで直近1ヶ月間での対戦は3回目。川崎と新潟の今季最後の対戦は2024年に両クラブが唯一狙えるタイトルであるルヴァンカップの決勝の椅子をかけた大一番である。

 これまでの2回の対戦を通して両チームの得意な形と苦手な形ははっきりと見えた。簡単に振り返ってみよう。

 等々力で川崎が大勝したリーグ戦は川崎のプレスが機能することで新潟のショートパスを軸としたプランが機能しなかった試合である。キーマンとなる長倉も河原に抑えられてしまい、追いかける中で前に出ていくと前線のエリソンと山田にボールを当てて反撃を受けるという展開だった。

 翻ってルヴァンカップの1st legは新潟が圧勝。稲村の登場によって、相手の矢印の逆を取り続けることができたという新潟のビルドアップ隊側の事情もあるが、先に挙げたリーグでの新潟戦や蔚山戦、そして町田戦など川崎のハイプレスが機能するには荒れたピッチかボールが転がらないほどの雨が必要であることを逆説的に証明した試合だった。今の川崎のハイプレスのクオリティはボールがよく動く芝生の上では通用しないことは光州戦と先日のビッグスワンでよくわかった。

 新潟は守備面では川崎のCBを放置することで中盤をコンパクトに。川崎の中盤を2トップとCHで挟み込むことで、ビルドアップの要所を抑えることができていた。

 守備面では対照的なアプローチだったと言えるだろう。前から追いかけた選手が背中を取られる川崎は中盤の守備範囲が広がる一方で、新潟のCHは前線のヘルプにより守備に出ていく必要がある範囲を制限することができた。

 おそらく、両チームのCHを比較すれば広い範囲を守ることができるのは川崎のセットの方だろう。しかしながら、どんな優れた中盤でも無秩序に追い回す前線と連携が取らなければクリーンに守るのは難しい。1st legの両チームの守備の仕組みは2チームの中盤の守備機能の差を補ってお釣りが余裕でくるくらいの差があった。

 リーグ戦では5-1で勝利していることから突破は十分に可能という見立てももしかしたら川崎ファンの中にはあるかもしれない。しかしながら、事態はそう簡単ではない。リードが広がる試合においては、守備側の多くはリスクを賭してプレスに出ていったり攻撃に人数をかけたりすることが多い。前者は1st legの川崎であり、後者はリーグで川崎に敗れた町田である。

 リーグにおいてある程度の点差がついて負けている試合、失点を重ねても順位表の上では比較的影響は少ない。もちろん水際を争っているチームにとっては重要だろうが、1点差で負けようが5点差で負けようが勝ち点は0である。

 しかしながら、2レグ制のカップ戦では少し事情が違う。仮にこの試合で川崎が先制したとしても新潟のやることは変わらない。守備ブロックを固めたり、あるいはボールを持ったりするなど、あらゆる手段でリードを守りつつ時計の針を進めることを目指すことになる。

 というわけでこの試合に関しては川崎は先制点を取ったとしても、得点が取りやすい方向に転がることはない。新潟は前から捕まえにいく要素を排除して1st legで成果をあげた通り、守備において相手を捕まえにいく展開になれば自分たちに分が悪いことは自覚している。裏を返せばそういう状況を作られてしまうと、リーグ戦だったりこれまでの対戦のように大量失点をする可能性をはらんでいるということだろう。だからこそ、スコアが少し動いたとしてもリスクを管理することを優先するはずである。

 というわけで、結果的に4点差で勝利することと狙って4点差で勝利することの難易度は全く異なる。ましてや、目の前の相手が大量失点差で負けなければいいという条件を背負っているなら尚更だ。

大量点差の唯一ポジティブなポイント

 川崎が組むべき守備のプランははっきりしている。高い位置からのハイプレスを繰り返し、攻守のサイクルをとにかく回すこと。基本的にはオールコートマンツーで行けるところまで行くスタートで走り出すのがベターだろう。

 無論、このプランは新潟に対しては相性がいいものではない。稲村を除くCBはキャリーは苦手だけどボールを差し込むことは得意なので、進んでスペースを作ってくれるようなプレスに来てくれるチームは大好物である。本当は川崎も1st legの新潟のようにCHをプロテクトしつつ、バックスにある程度ボールを持つことを許容するプランを組むのが相性を考えればベターだろう。

 だが、川崎は不利と分かっていてもこのプランで突っ込む必要がある。新潟はプレスをかけなければ自陣でいくらでもパスを回すことができるチーム。そのチームに前進するためのパスを促すためには、守備側は相手のバックラインにプレスをかけ続けるのはマスト。不利と分かっていても、これをやらなければ話にならない。通用しなくても負けるし、やらなくても負け。どちらにしても一緒。これが大量に負けているチームの辛いところである。

 ビッグスワンで川崎のプレスが通用しなかった一因は中盤やバックスなど後方の選手が出ていくのが遅れてしまう(前線の誘導が悪いなど要因が必ずしも背後のブロックにある場合ばかりではないが)ことにある。大量のビハインドを背負っている状況から無理やりいいことを探し出すとすれば、高い位置から追いかけ回すというプランをキックオフから共有しやすいことにある。前線の誘導が効かない展開でもリスクをとって、後方を同数で受けて目の前の相手を潰すことにフォーカスすることができる。

 この試合における川崎のハイプレスは相手の保持を制限するというよりは、攻守のサイクルを早く回したりあるいは高い位置でボールを奪って致死性のショートカウンターを喰らわせることが目的なので、ここでエネルギーを惜しむ必要は全くない。リーグ戦のことは一旦頭から放り出すべきだ。

 救いがあるとすれば新潟は長いボールを当てて独力で陣地を回復できるタイプのFWは他のチームに比べると足りていないことだろう。長いキックで逃げられるかどうかは相手のハイプレスの心を折れるかどうかの分水嶺になる。

 もちろん、この試合で先発が予想される丸山も広い範囲を守るような展開はあまり得意とはしていない。だが、繰り返しになるがこの試合の川崎はやるか黙って負けるかの二択なので、そこに関しては得意としていなくてもやるしかない。そこで迷ったら、この試合はその時点で負けだ。

 ボール保持においては前回新潟が施してきたプランへの反撃をする必要がある。CBは放っておいてよし、三浦に関してもバックラインに落ちている間は無視してOKでラインを上げたタイミングで捕まえにいくという形で持ち味を潰していた。

 新潟が1st legと同じ形で挑んでくると仮定して川崎ができることを考えよう。新潟の守備プランの源泉は「川崎のCBにはボールを持たせてOK」というところにある。アイダルは運んで差す動きは得意ではないし、丸山もどちらかと言えば運ぶことをサボって縦パスの精度で勝負したい選手。相手との駆け引きはサボることは少なくない。

 本来であれば佐々木を左に回して後方の仕切りを彼に任せたいが、右のCBが務められる相棒がいないので仕方がない。出場できるメンバーでやるべきことにトライするしかない。

 「CBにボールを持たせてOK」と状況は何もCBが悪いだけではない。川崎のバックスは長いキックを蹴ることができる選手たちなので、前線には相手のバックスと駆け引きして勝負ができる選手は欲しいところ。1st legの2トップはこの点で全く仕事をすることができなかった。

 今の川崎ではエリソンと山田の2人に期待するのが一番いいだろう。小林の投入は前進に力を入れる必要がなくなったタイミング。終盤に押し込んで更なるゴールを手にする必要があるのであれば、11番の神通力に期待することになる。

 中央を固めてくる+SBへのマークがタイトという2つの要素を考えると、中央以外に前進できる起点を作ることだけならば右の大外に家長を置くのが最も確実だとは思う。しかしながら、これはハイプレスの強度や反復性能に影響があるので守備におけるトレードオフがあるプランだ。

 いずれにしても前かサイドにボールを預けるポイントを作るのが理想。後ろからの長いボールが通れば、新潟の前線は川崎のCBに出ていなければいけない!となるし、サイドで後手に回ればサイドに人員をかけることになる。そうなれば、1st legではタイトだった中盤中央の徹底マークは緩和されることになるだろう。中盤を生かした前進という水曜日には機能不全だったプランも復活する可能性がある。

 保持でも非保持でも1st legで機能しなかったことにトライする必要がある川崎。3点差をひっくり返さなければいけないという状況は奇跡を起こすと言ってもいいだろう。そのためには不利と分かっていてもやるべきことをやること。ハイプレスをかけることが代表例だ。扉を叩き続けなければ奇跡は起きない。扉をたくさん叩き、奇跡を起こすための準備ができているかの答え合わせは日曜日だ。

 

【参考】
transfermarkt(
https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(
https://soccer-db.net/)
Football LAB(
http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(
https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(
https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(
https://www.nikkansports.com/soccer/)

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