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「試合運びのバリエーション」~2020.3.11 UEFAチャンピオンズリーグ Round 16 2nd leg パリ・サンジェルマン×ドルトムント レビュー

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
噛み合わせの隙はつくけど…

 大観衆のもとで行われた1stレグとは打って変わって、2ndレグは無観客試合。スタンドにあしらわれたPSGのエンブレムをCLの試合中にこんなにはっきりと確認できる日が来るとは思わなかった。

 試合開始直後にはスタジアムの外で何度か花火が上がる。サポーターがスタジアムの外から見守っている証として打ち上げたのか定かではないが、PSGを後押しするサポーターがスタンドにいなくとも、ここは花の都パリなのだなと感じることができる出来事だった。

 今年はCLをたくさんみているのだが、この試合の1stレグは、個人的にはナンバーワンボーッとみてしまったカード。1stレグからの変化等を綴れないことは先に謝っておく。

 開始直後の両チームの様子を見れば、より得点が欲しいのはPSGであることが1stレグのスコアを知らずともよくわかる。特徴的だったのは、相手陣まで押し込んだあとのボール奪還のためのハイプレス。カバーニ、サラビアのプレス隊やハードワークが持ち味のディ・マリアはもちろん、時にはネイマールもプレスを前からかけていた。

 ドルトムントをうまくハイプレス網に絡めて波状攻撃をかけられた要因はパレデスとゲイェのCHコンビの活躍が大きい。ドルトムントはプレス回避に長いボールを使う機会が少なかったため、この2人が仕掛ける網にあっさり引っかかってしまった感がある。引いて受けようとするアザールやサンチョにもCHがスライドして蓋。なるべく高い位置で止めてやるぜ!というPSGの狙いはプレッシングに現れていたと言える。

 ドルトムントは下手に失うくらいなら・・・・と蹴っ飛ばすシーンが多かった。ハーランドのポストを活かして一気に攻勢に出た場面が現れるまでには随分と時間がかかった。

 一方のPSGのボール保持は2CBプラス1がベース。ボールサイドのCHがCBの脇に落ちる形でフォローに回る。即時奪回ハイプレスのPSGとは異なり、後ろ重心も多かったドルトムント。5-4-1で構える形になる。

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 ドルトムントのWBにはPSGのビルドアップ時にボールがサイドに移ったときに前に出ていってプレスをする役割を任されていた。したがって時折5-4-1→4-4-2に変化するような陣形でのプレスになる。

 何回か再現性をもって見られたのはディ・マリアが降りて受ける動き。これにゲレーロがプレスについていくのと入れ替わるように、SBのケーラーが高い位置を取る。このサイドの入れ替わりでPSGは何回か前進に成功していた。

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 加えてPSGの前進の手段は間への楔。ディ・マリアに加えて、サラビア、ネイマールなど2列目の選手が受け手となる。特にサラビアは14分過ぎのシーンのように、ボールを引き出して攻撃を加速させる能力が高かった。

 こう言うと、PSGがドルトムントを一方的に攻め立ててたように聞こえるかもしれないが、うまく前進できるシーンはそこまで多くなく、むしろドルトムントのブロックの手前でボールを回させられているシーンが多かった。ドルトムントもボールを持った時は前進ができる場面は少なかったけど。

 というわけでジリジリした展開になりかけた試合。こういう試合でキーになるのはセットプレーである。CKで先制するのはあるあるなんだろうが、合わせるのがネイマールというのは結構意外だったぜ。

 これでトータルスコアで逆転したPSG。ドルトムントが前に出ていかなければならないターンである。前進は外側から。PSGのボール保持時はずらされていたドルトムントのWBが今度は起点に。PSGのSHとSBは前後に監視しなければいけない存在がいるため、浮きやすくなっていた。

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 特にネイマールサイドのハキミは高い位置で起点となる機会が多かった。シャドーとWBの連携でサイドを破ることで徐々に圧力を高めていくドルトムント。

 そんな中で試合を動かしたのは再びPSG。前半の終盤、ボールの奪い合いからカウンターに出ようとしたボールをベルナトがカット。そのまま、ゴール前まで上がってラストパスを技ありゴールで押し込んだ。狙ったものかはわからないけど、ビューティフルでありクリティカルなタイミングでのゴール。ドルトムントとしては反撃に出る時間帯の失点となってしまった。

 試合は2-0。PSGリードでハーフタイムを迎える。

【後半】
とどめを刺すために自由度が上がる

 前半と全く逆で今度はドルトムントが攻める番である。後半開始直後は何回か有効な攻撃を行うことができていたドルトムント。前半もあったネイマールの裏側のスペースからの侵入が一番頻度が高かったパターン。これをフリに一度ネイマールのサイドに侵入してから、逆サイドにボールを展開することで横幅を使ってPSGを揺さぶる。

 ただし、貴重な機会にも精度が伴わないドルトムント。ハーランドはポストから逆サイドのゲレーロへのパスが流れてしまったし、ゲイェーパレデスの包囲網を突破したサンチョもサイドへのパスが大きくなってしまっていた。

 序盤は破られることも多かったPSGのブロックだが、徐々に強固になり始める。サイドでもベルナト、ディ・マリア、ケーラーなど対人でドルトムントの選手を上回り始める。サイドで揺さぶれないとなると、中央の選手を引き出すのは難しい。PSGの中央ブロックは強固でなかなかシンプルなクロスで崩すのは困難なミッションである。

   中央でもハーランドが起点になる機会は少なく、サイドチェンジの機会は最終ラインを経由し、時間がかかるように。こうなると横への揺さぶりの効果も半減してしまう。

 攻めあぐねる場面が増えてくるドルトムント。PSGは前がかりになるドルトムントにとどめを刺すべく、ムバッペを投入。ドルトムントもブラントを投入し、ここから迎える最終局面に向けて両チーム準備を始めた形である。

 ムバッペの投入でネイマールは息の合う友達が飲み会に途中合流したかのように楽しくプレーするようになってきたが、同時にフリーダムさが増強されたのも事実。カバーニはムバッペが投入されてからの方が守備を頑張っていたように思うのは気のせいだろうか。とはいえ、ネイマールとムバッペのデュオが脅威だったのは事実。ディ・マリア⇒クルザワの交代で、PSGの攻撃はさらに手段を絞った形になっていく。

 一方のドルトムントも終盤には再度PSGゴールまで迫ることに。選手交代後にサイドから深い位置を取ることができるようになってくるようになる。ブラントの投入も中盤からの配球役として1つアクセントになっていた印象を受けた。

 自由だけど、歪になっていくPSG。選手交代で再度追い上げムードがほんのり香るようになってきたドルトムント。ドルトムントに1点が入れば延長の可能性があっただけに、さぞ緊迫した終盤戦になるかと思いきや、90分手前で小競り合いからジャンが退場。反撃の香りに自らフタをかぶせてしまう。

 結局試合はそのまま終了。PSGが1stレグのスコアを逆転し、次ラウンドにコマを進めることになった。

あとがき

■試合巧者ぶりが目立ったPSG

 手の打ち合いというよりはシンプルな局面が続く対戦となった。ドルトムント側が追う立場になってきても、形の入れ替えからのアプローチを試みることがあまりなかったからのように思える。ただ、フォーメーションの噛み合わせの中でのズレはあったので、お互い攻撃時にはそこを利用していたけど。レビューとしてはあっさり仕上げになってしまったのは、僕の深堀りが足りていないせいかもしれない。

 2ndレグではPSGの試合巧者ぶりが目立つ展開となった。優位に進めたとはいえ、決してシュート機会は多くなかった状態でセットプレーから先制点を得て、試合のバランスを逆転させたのは非常に大きかった。

    序盤の波状攻撃を支えたCHコンビや、押し込まれる展開になってもサイドからの決壊を防いだベルナト、ケーラーなどのSB陣など時間帯ごとに目立つメンバーは異なった。そういう意味ではドルトムントよりはPSGの方が手持ちの色のバリエーションが現段階では多かったのかもしれない。チームの色というか、プレイヤー個人の色かもしれないけども。

 ドルトムントはここ一番!というところでパスの精度がついてこない場面があって、この日は攻めの場面での決め手に欠ける印象。いつもなのか、この日が特別なのかはわからなかったけど。ドルトムントをじっくり見たのは久しぶりだったけど、以前(個人的にはクロップ時代で時は止まっている)とは結構毛色の違うチームになったなと思う。当たり前か。

 中断期間であえてよかったなと思うことを挙げるなら、新しく見られるチームが増えたことなので、せっかくの時間をこういう新しい出会いに使っていきたい。レビュー書くかはわからないけど。

試合結果
UEFA Champions League 
Round 16 2nd leg
パリ・サンジェルマン 1-1 ドルトムント
パルク・デ・フランス
【得点者】
PSG: 28′ ネイマール, 45+1′ ベルナト
主審: アンソニー・テイラー

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