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「繋がるオフザボール」〜2024.12.18 カラバオカップ 準々決勝 アーセナル×クリスタル・パレス レビュー

目次

レビュー

ウーデゴールが生み出したスペース攻略の連鎖

 カラバオカップは準々決勝。ボルトン、プレストンと下部リーグ相手に快勝をしてきたアーセナルは準々決勝でパレスと対戦。プレミア勢と今大会初の衝突となる。ちなみに、このラウンドにおける残り6チームはリバプール、トッテナム、マンチェスター・ユナイテッド、サウサンプトン、ニューカッスル、ブレントフォードなので、どこと対戦してもプレミア勢対決にはなっていた。

 スタメン選びは非常に対照的だった。パレスはほぼ週末のスタメンをリピート。週末のリーグ戦だけでなく、カラバオカップも累積警告(2枚で準決勝でリセットらしい)で出場停止のムニョスのところをクポルハに入れ替えた以外は週末のリーグ戦のリピートとなった。

 一方のアーセナルは大幅にシャッフル。ハヴァーツ、マルティネッリ、サカ、ウーデゴール、ライス、ルイス=スケリー、サリバ、ガブリエウの8枚を入れ替え。週末を見据えたというよりはここで一息を入れないとどうにもならないなという感じのターンオーバーだった。

 序盤の落ち着かない展開の中で先制したのはパレス。ヘンダーソンからのフィードに対して、追いすがるキヴィオルを剥がして抜け出したマテタが先制ゴールを決める。マテタが出てくるのであればどれだけやれるのかの試金石になるのでは?とプレビューで書いたが、キヴィオルにとっては厳しいスタートとなってしまった。

 このゴールによって試合は落ち着きアーセナルがボールを持つ形に。4バックスタートの布陣だが、ビルドアップの基本形は3バック。左のSBであるティアニーは大外を取り、ビルドアップにはあまり関与しない形を作る。アンカーはジョルジーニョ1枚が基本でヌワネリとメリーノがここにどのように絡んでくるかを思案するという形だった。

 パレスは5-4-1がベース。序盤は3トップがアーセナルの3バックを捕まえに行き、アンカーにはCHが後方から飛び出して捕まえる形を見せていた。だが、時間の経過と共に徐々に撤退を優先するように。

 アーセナルはコンパクトなパレスの5-4-1ブロックを壊す必要がある展開に。「ティアニーは関わらせない」という前提の元、IHが何とかするという構図だったが、これが前半のアーセナルにとっては大いなる鬼門に。

 左のメリーノは上下動しつつ、その後方にジェズスが流れることも含めてまぁギリギリ手はなくはなかったのかな?という気はするが、ヌワネリが調整役を託された右サイドはハード。スターリング、トーマスもできることや取る立ち位置は割と決まっている中でヌワネリがブロックの中と外を行き来しながら何かを生み出しましょう!というのはそもそも仕組みとして酷だろう。まだ若いのもあるし、単純にウーデゴールより資質がアタッカー寄りなこともある。たぶん、同じ役割をスミス・ロウにお願いしてもちょっと適正違いかなという感じがある。

 こういう手詰まり感があるときに何とかしてくれるのはWGである。特に左サイドのトロサールとマッチアップするクポルハのところにパレスはかなり手を焼いていた。

 しかしながら、アーセナルもこのマッチアップを十分に生かせていたとは言い難い。ティアニーはトロサールよりも低い位置で幅を取るので単純にバックラインからトロサールへのパスコースが埋まるケースが起こりやすい。

 ティアニーにそうしたパスコースの駆け引きは少ないので、結果的に動き回るメリーノとヌワネリがいる真ん中からジェズスに縦パスを入れる方がまだコースがあるという感じである。ただし、パレスの3バックは縦方向のスライドがとても素早いので、コンパクトなブロックを維持できているうちは特に問題にはならなかった。

 パレスはやや撤退気味でもお構いなしでマテタとサールを軸にロングカウンターを仕掛ける。後方のブロックがしっかりしていれば、特に問題はないという方向性だろう。アーセナルは前半にこのパレスの方向性を揺るがすことが出来なかった。

 後半、アーセナルは右サイドにテコ入れ。サリバをCBに入れてティンバーを右にスライド。ヌワネリに代えてウーデゴールを入れた。一方のパレスも右にクラインを手当てすることで唯一前半に致命傷になりかねない箇所だったトロサールのところを補強する。

 主力組なのでという前提はありつつもウーデゴールの投入は明らかに試合を変えた感があった。特に手前に引いてビルドアップ隊の一員になるアクションの効果が抜群。SBへの移動でより自由となったティンバーも含め、右サイドはパレスの2列目を徐々に引き寄せてくるように。

 ウーデゴール投入の結果、発生したのはパレスのDF-MF間の間延び。前半であればバックスが迷いなく出て行って潰せる範囲だったライン間のスペースが空くように。早速このスペースを活用したのはトロサール。降りるアクションで対面のクラインを釣りだすと、大外を駆け上がるティアニーにクロスの絶好機をおぜん立て。

 「大外をかけあがり」「目の前に誰もいない」というティアニーを生かす2つの条件を揃えたトロサールによって、ティアニーからこの日初めての決定機がスターリングに届けられることとなった。

 ライン間のスペースから発生する連鎖でアーセナルは同点に。メリーノの動きで釣られたラクロワの背後をつく形で抜けたジェズスが先制ゴールをゲット。動き出しを見逃さなかったウーデゴールも見事だが、ジェズスの角度のある所から技ありゴールも直近のフィニッシュのタッチの悪さから考えるとさすがであった。

 逆転に畳みかけるべく、アーセナルはさらに主力を投入。サカが入った右サイドは主力が勢ぞろいに。

 2点目はこの主力が揃った右サイドから。サカの内側に入り込むアクションとバックラインの逆を取る動きでジェズスが抜け出すと、この日2点目のゴール。正直これはオフサイドくさかったが、中盤の動きに呼応する背後への抜け出しは好印象だった。

 3点目もハーフウェイラインをオフサイドラインとするロングカウンターから追加点。ハットトリックを達成する。

 逆転に成功したアーセナルは以降なかなか前に出て行けず、パレスの攻めを受けることに。この恩恵を受けたのはエンケティア。判断の悪さからにカウンターでブレーキ役になることでリズムを崩していた今シーズンだったが、押し込める状況であればそうした手前のタスクは問われることはない。ボックス内の仕事に集中した結果、右サイドからのクロスを叩き込んでゴールを決めた。

 アーセナルはこの場面以外にも自軍左側から破られるシーンは散見されたので最後の最後でガブリエウが出てくるのは必然だろう。押し込まれながらもきっちりサイドを手当てしたアーセナルであった。

 何とか逃げ切り勝利を決めたアーセナル。年明けのカラバオカップ準決勝の舞台に駒を進めた。

あとがき

 あっという間にライン間を間延びさせたウーデゴールは圧巻。初手の矢印を出させることでオフザボールの連続的な繋がりを生み出し、勝利の決め手となった。ジェズスもこういう得点につながる動き出しはここ数試合で微妙に増えていたし、今日は後方のビルドアップを任せるムーブだったので、無駄に降りるアクションもせず。そういうところとフィニッシュ精度がようやく噛み合った結果なのかなと思う。

 ほかの選手はよくも悪くも想像通り。ジェズスに加えて、トロサール、メリーノがオフザボールの嗅覚がいいのはさすがプレータイムを貰っているだけあるなという感じだし、なかなかそれ以外の選手が序列を覆すイメージは湧かなかった。きっちりとメンバーを入れ替えて勝ち切るということをやってのけたなという90分だった。

試合結果

2024.12.18
カラバオカップ 準々決勝
アーセナル 3-2 クリスタル・パレス
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:54‘ 73’ 81‘ ジェズス
CRY:4’ マテタ, 85‘ エンケティア
主審:アンディ・マドレー

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