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Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第22節
名古屋グランパス(10位/勝ち点27/7勝6分8敗/得点31 失点29)
×
川崎フロンターレ(2位/勝ち点39/10勝9分2敗/得点33 失点15)
@豊田スタジアム
戦績
近年の対戦
直近5年間の10戦で名古屋の1勝、川崎の7勝、引き分けが2回。
名古屋での直近10試合の対戦成績
名古屋の2勝、川崎Fの7勝、引き分けが1回。
Head-to-Head
Head-to-Head①
【公式戦の対戦成績】
・公式戦における両チームの対戦は過去32戦で名古屋が7勝、川崎が19勝、ドローは6つ。
・直近12試合の対戦で名古屋は川崎相手に1勝のみ(D2L9)
対戦成績は川崎が有利。中でも直近では川崎にとって名古屋はお得意様である。今季前半戦こそドローだったものの、直近12試合で川崎が9勝。かなり一方的な対戦成績になっている。
Head-to-Head②
【スコアレスはあり得ない】
・スコアレスドローで終わったことはないカード。
・直近12試合において名古屋が川崎を無失点で抑えた試合はない。
近年はやや堅い試合も見られるが、このカードの特徴はそれぞれのチームカラーを前面に押し出す得点の多さ。過去にスコアレスドローに終わったことはなく、川崎は直近12試合すべてで得点を記録している。30回くらいやってるのにスコアレスドローがないのはすごいな・・・。
Head-to-Head③
【大観衆なら川崎、8月なら名古屋】
・観客数が20000人を超えた試合で川崎は名古屋に敗れたことがない。
・8月開催の直近3回の対戦はいずれも川崎が勝てていない(D1L2)
観客動員が20000人を超えた川崎と名古屋の対戦は過去に10回あるのだが、川崎が8勝2分。この試合もソールドアウト。おそらくこの試合も多くの観客が訪れるだろう。多摩川クラシコのように敵地の大観衆を黙らせる試合ができるだろうか。
川崎有利のデータばかり並べるのもアレなので名古屋有利のデータも少し。今年の前半戦とカップ戦を除けば、川崎が名古屋に勝てなかった直近3試合はいずれも8月の試合(2014,2012,2011)である。したがって川崎的には名古屋戦は「8月以外なら全部勝てる!でも8月はちょっと・・・」状態なのである。
Head-to-Head④
【アウェイでの強さはまだ通用するのか】
・名古屋ホームでの対戦成績は名古屋の3勝、川崎の10勝、引き分けが2つ。
・川崎を迎えての直近3試合ホームゲームにおいて、名古屋はいずれも無得点。
今季アウェイが得意な川崎だが、名古屋戦に関してアウェイが得意なのはかねてからのようだ。初対戦での勝利以降のホームのリーグ戦13試合で1勝のみ(D2L10)。川崎ホームよりも名古屋ホームの方が勝率の高い計算になる。しかも直近3試合は名古屋ホームで川崎がクリーンシートを達成。仮に名古屋がこの試合も無得点ならば、ホームの川崎戦は400分以上得点を挙げられていないことになる。
【名古屋グランパス】
選手情報
・相馬勇紀が鹿島に期限付き移籍。
・丸山祐市、米本拓司、青木亮太は離脱中。
・宮原和也と前田直輝は前節負傷交代。
Match Facts
名古屋のMatch Facts①
【直近の公式戦】
・直近10試合のリーグ戦で未勝利。
・この間の失点数は22。それ以前の11試合ではわずか7失点。
・直近7試合の公式戦のうち4試合で無得点。
前回の川崎戦のドローを皮切りに10戦未勝利。足を引っ張っているのは失点数の増加だ。開幕10試合で6つのクリーンシートを記録したものの、直近11試合ではクリーンシートはなし。失点も22を跳ね上がっている。昨季は開幕から11試合で23失点なので、めちゃめちゃ苦しんだ昨季序盤と同じペースに。
その陰で実は得点も苦しんでいる。直近の7試合では4試合が無得点。それ以前の公式戦22試合で無得点試合が3つだったことを考えると、いい時よりは攻撃力にも陰りが見えている。
名古屋のMatch Facts②
【実は得意なシチュエーション?】
・トップハーフとのホームゲームは4戦全勝。
しかし、ホームに上位チームを迎える状況は得意。今季は4戦全勝と猛威を振るっている。トップハーフとのアウェイゲームは未勝利であること、ボトムハーフとのホームゲームは5戦1勝ということを考えると、ホームに強いチームを迎えた時に異常な強さを発揮していることがわかる。
名古屋のMatch Facts③
【得失点の傾向】
・残り15分における得点数、失点数が共にリーグ最多。
・ショートパスからの得点が8得点。リーグ最多。
終盤の得失点が非常に多いのが名古屋の特徴。残り15分の得点数は13点で浦和、G大阪に並んでトップ。失点数も14点で神戸、鳥栖と同数で最多となる。終盤はかなりオープンな戦いになることが多いようだ。得点パターンはショートパス起点がリーグでトップ。ジョーに縦に入れた後、コンビネーションで崩す形が主体か。
名古屋のMatch Facts④
【要の三銃士、奮闘するドリブラー】
・丸山祐市、米本拓司、ジョーのいずれかが欠場したリーグ戦では今季未勝利。
・和泉竜司は今季のリーグ戦3ゴール3アシスト。キャリアハイを記録。
家長出場時の不出来を勝ち点で語るのどうなの?って言った俺がこんなオカルト的な数字を出しても怒られないだろうか。おそらくここに挙げた3人の重要度は特に名古屋サポーターは身に染みて痛感しているかもしれないけど。丸山不在の直近5試合は14失点。彼が出場時の平均失点が0.96でチーム平均より0.5も低い。ジョーは出場時の平均得点がチーム最高。スタメン出場時の平均勝ち点もこの3人がトップ3をそのまま記録している。この三銃士がそろうことで今季序盤の名古屋は快進撃を見せていた。
そんな風間監督下で今輝き始めているのが和泉竜司。3ゴール3アシストはすでにキャリアハイ。やや気がかりなのはこのうちホーム戦で記録したのは1アシストだけということ。3ゴール2アシストはアウェイで決めたもので、今季まだホームでの得点はなし。
【川崎フロンターレ】
選手情報
・大島僚太が全体練習に合流。スタメンの可能性。
・奈良竜樹、藤嶋栄介、安藤駿介は長期離脱中。
Match Facts
川崎のMatch Facts①
【記録的な引き分けの多さ】
・広島戦でアウェイゲームの連勝がストップ。
・引き分ければ今季10回目。07年以来最多になる。
ついに前回のアウェイゲームである広島戦でアウェイの連勝記録はストップ。今季初の黒星を喫した。とはいえ、大半のアウェイゲームはここまで勝ってきた。得意の名古屋の地で再度アウェイでの強さを見せつけられるか。。
ファンがフラストレーションをためているのは引き分けの多さだろう。すでにここ10年で最も引き分けた年になるのは確定。後は12引き分けを記録した07年以来J1昇格後最多の引き分けを記録するかどうかだ。
川崎のMatch Facts②
【過密日程】
・中5日以上の公式戦は直近11試合負けなし(W7D4)
・登里享平はすでに2013年以降で最もプレータイムが多いシーズンに。
あえて擁護をするのなら、厳しい日程での試合が続いたことが挙げられる。体力的にきつかったこともあっただろう。十分に休養を取った場合の川崎は直近11試合負けなし。中3日のリーグ戦は6戦1勝3敗2分と、大幅に成績に開きがある。
この日程による過労を象徴するのが登里享平。すでに過去5季のうち最も長いプレータイムを記録。最近の試合では疲労におるパフォーマンスの低下と元々多いけがへの懸念がある。果たして登里はフレッシュな状態で名古屋戦に臨めるだろうか。
川崎のMatch Facts③
【中部こそ得意分野なはず!】
・直近9試合のアウェイでの公式戦でクリーンシートが5つ。
・中部地方のアウェイゲームは14戦無敗(W12D2)。直近7連勝中。
アウェイの中でも特に中部地方でのゲームが得意な川崎。何しろ不調の今季でもここまで3試合すべて複数得点差をつけて勝っている。最後に敗れたのはあの5失点した日本平。豊田スタジアムでも勝利して、中部アウェイ4か所完全制覇なるか。まぁ得意なスタジアムや!って言って負けたんだけどね、エディオンスタジアムは。
川崎のMatch Facts④
【頼むぜスコアラー!】
・小林悠は直近9試合のスタメン出場した試合で8ゴール1アシスト。
・レアンドロ・ダミアンは途中交代した7試合で2ゴール2アシスト。リーグで最も途中交代から得点に絡んでいる。
夏男は今季も夏場に絶好調。毎試合コンスタントに得点に絡んでいるのも、例年通りといえる。すげぇな。スタメンがコンスタントなら控えているFWもコンスタントに活躍。レアンドロ・ダミアンは今季最もベンチから得点に絡んでいる選手。前節は知念が先発で出番が少なかった2人。今節はどのような起用法になるか。
予想スタメン
展望
■新しい土台構築に臨む名古屋
前回対戦時からはメンバー構成に変化があった名古屋。フォーメーションもそれを構成する人も入れ替わった。等々力では4-4-2だったフォーメーションは、3-4-3に変化している。負傷者で少し構成が読みにくいが、ここでは上のスタメンで予想してみた。
名古屋の攻撃は楔のスペシャリストが縦に入れた楔をキーに一気に加速していくのが特徴。前回対戦時にその役割を担っていたのが丸山祐市とジョアン・シミッチの2人だ。しかし、丸山は今回の対戦では負傷欠場。FC東京からやってきた太田がCBの一角を務めているのは、後方からのボールの供給源を確保するためだろう。丸山とはやや異なる球質だが、左足の精度は確かなものだ。
前回対戦で不在だった人物で、もう1人スイッチを入れられる人物がエドゥアルド・ネット。シミッチとの連携による相乗効果に関してはまだ向上の余地はありそうだが、単純にスイッチの入れどころが増えたという点では厄介極まりない。後方の太田も含めて3か所の起点をどう抑えるかを川崎は考えなければならない。さらに言えば3バックは直近の試合で川崎がガンガンプレスを交わされている並び。スイッチ役が増えたことに加えて、並び的にも相性が悪く、名古屋がボールを運ぶことはそこまで難しくないと考えられる。
直近の3バックとの試合で川崎が手を焼いたのはプレスだけではない。大分にも広島にも松本にもチャンスを作られたのはWBの突破。名古屋のWBは好調をキープする和泉竜司と、オフザボールの動きに優れる吉田豊。太田ではなく吉田をWBに起用しているのは、守備における対人の強さもあるだろうが、攻撃でWBによりエリアに近い位置で得点につながる仕事を求めているからだろう。この試合ではRSBの先発も噂されているがどうなるだろうか。
過密日程で疲労の見えた川崎の選手はここ数試合サイドの攻防で後手に回ることが多い。中央でクロスを待ち受けるのが、高さだけでなくポジショニングにも優れるジョーであることを考えるならば、いつも以上にサイドの突破の成否がスコアに反映される可能性は高い。
ジョーとシャドーの距離が近く、スイッチを入れてからの連携がスムーズな面など3バックにすることで攻撃面での恩恵は比較的多い。その一方で困っているのが守備だ。縦方向にコンパクトな陣形を敷き、中盤のきついプレスを軸にボール奪取をしていた4-4-2時代の名古屋。しかし、中盤のプレスの旗頭である米本拓司の離脱の影響は大きく、ボールの取りどころが定まらない場面が多い。ボールホルダーへのチェックが弱く、中盤の守り方に相手をどこに誘導したいかの意識づけが見えてきにくい。
最終ラインにおいてもDFリーダーである丸山の不在の影響は大きい。比較的相手のボール保持者がオープンになることが多く、裏を取られたままズルズルと下がってしまうシーンが多い。川崎としては裏を狙いながら名古屋の陣形を縦に間延びさせる手段が有効そう。序盤で名古屋の守備を前後に分断し、隙間のスペースを作ることがSTEP1。2列目の選手を中心にその間に空いた立ち位置から前進するのがSTEP2だ。裏と間をうまく使い分けることで、名古屋の対応を後手に回らせたいところだ。
前回対戦時のレビューに名古屋のチームとしての感想を「リーグトップクラスの質だが、センターラインに人の入れ替えがあった場合には質が下がる可能性もある」と書いた。負傷者に伴い、結果が出ないという事実もそうだし、おそらく肌感覚としても丸山や米本の不在が星取りに大きな影響を与えている実感はありそうだ。まさしく名古屋は現在再構築中。相馬の移籍などチーム状況もやや前を向きづらい状況だ。長いトンネルを終わらせるため、新たな土台をつくるためにも、個人個人が川崎封じの型を模索し、あの日等々力から始まった未勝利を終わらせる必要があるだろう。
■ケーキの上のイチゴの話
土台といえば、苦しんでいるのは川崎も同じだろう。昨季までの狭いスペースでの崩しは鳴りを潜めている。昨季の連覇の原動力となった選手の中で、今季もがき苦しんでいるのは家長昭博だ。今季ここまでノーゴール。昨季のMVPはシーズンの半分を過ぎても復調の兆しは見えていない。もちろん、彼1人にここ数試合の不出来の責任をすべてかぶせるのはあまりにも酷である。悪かったのは彼1人ではないことをレビューでは散々述べてきたつもりだ。
彼もまた今の名古屋のように土台を失い苦しんでいる選手でもある。CFに小林、トップ下に中村というパートナーを得ながら右サイドハーフで躍動する機会が多かった昨季。今季、川崎がリーグ戦においてこの並びでスタートしたことは驚くべきことに1回もない。エウシーニョが去ったあとに宙ぶらりんになっているサイドバックとの連携だけでなく、攻撃のユニットでも日々再構築を求められている状況だ。
もちろんこの事実だけで「そっか、じゃあ仕方ないね。」とはならないだろう。なにしろ彼はMVPなのだ。前節の松本戦では、川崎の右サイドの攻撃をあえて受け止める形で封じられるという、ある意味屈辱的な対策を打たれて勝利を逃している。初夏に活躍をした脇坂の序列をあげることも求める声が大きいのもよくわかる。僕自身も脇坂のプレータイムが増えることを望んでいる。
それでも家長の活躍を求めたいのは、彼の活躍はチームがうまく機能しているバロメーターだからだ。「ボールをつなぐたびに状況がよくなっているのが川崎の理想的な攻撃である。」ということを何回かnoteで話している。そのよくなった状況の先でスペシャルな仕事をするのが家長という男である。味方が汗水たらして作ったスペースを堂々と使い、涼しい顔して相手をあざ笑うようなプレーを見せるのが彼の真骨頂だ。
名古屋サポーターであるラグさんがこのような記事を書いている。「風間八宏はスポンジ職人であり、名古屋が求めているスポンジを作れる人材なのではないか」というのが大まかな内容である。このnoteに出てくる表現を使えば、川崎のスポンジは風間八宏と中村憲剛の共同デザイン作品。川崎の面々がスポンジをせっせと作っているとするのならば、家長はその上に鎮座するイチゴである。イチゴは単体でもおいしいけども、今の川崎はケーキの上にはイチゴは乗っていない。
状況は厳しい。首位との勝ち点差は6まで開いた。直近の試合の出来を考えても、名古屋相手にはよりスペースを使う感覚に優れている阿部や脇坂を使う方が適しているかもしれない。それでも、俺はどうしてもケーキにイチゴを乗せたフロンターレを見たくなってしまう。チェルシー戦で「止めて蹴る」の差を実感したならなおさらだ。今の川崎はスポンジを作る段階で危うくてそれどころじゃないよ!といわれるかもしれないが、スポンジからイチゴまで一気に仕上げる相手として真っ向勝負してくれる名古屋は悪くはないはずだ。
思えば、家長が厳しい言葉を浴びせられるのはこれが初めてではない。移籍初年度である2年前も今と同じような不要論が数多くサポーターから聞かれた。そんな彼がサポーターの心をつかんだのは、初ゴールを決めた鹿島戦だろう。あの日から家長は数多くのプレーで川崎サポーターを魅了してきた。彼は今苦しんでいる。この試合はあの2年前の鹿島戦と全く同じ第22節。2年前のあの日と同じように彼がトンネルから抜け出せる日が1日でも早く訪れること、そしてケーキの上にイチゴが乗った美しい川崎が見れることを期待したい。
参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
SANSPO.COM(https://www.sanspo.com/)