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「連勝の中に見える課題」~2025.5.18 J1 第17節 川崎フロンターレ×セレッソ大阪 レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

不具合を帳消しにする右サイド

 前節、横浜FC戦で未勝利の連続記録が止まった川崎。ホームで4連戦の2戦目となる今節は苦手としており3連勝中と勢いに乗るC大阪との一戦に挑む。

 C大阪のフォーメーションは川崎が前節対戦した横浜FCと同じ5-4-1が基本。序盤はややバタバタした形にはなったが、早速家長が左サイドに出張に出て行くことで攻撃としては狭く狭くという状況を作り出すことでボールを動かしていく。

 この日の川崎の攻撃の特徴の一つは早めにクロスを上げていくというところ。相手は5バックでがっちりとブロックを組んでいたのだが、3分の家長のクロスのように中央でターゲット(この場合は山田)が数的不利な状態でもとりあえず入れてみようというスタンスだった。

 一方のC大阪は外循環のボール回しから陣地回復を狙っていく形。特に効かせることが出来そうなのはC大阪から見て左サイド側。家長の守備基準を乱したところから芋づる式に一気に動かしていくことが出来る。

 特に家長を西尾で引き寄せられた時にこの効果が顕著。低い位置を取る高橋にファン・ウェルメスケルケンが遅れて出て行き、ルーカスに繋がれるというパターンがよく見られた。

 家長の守備開始位置をチームとして基本どこに設定しているのか?というところなのだが、基本的には家長が出て行ったところに周りが連動しないことによってギャップが出てきてしまうことが大きい。ファン・ウェルメスケルケンとの分担はローブロックでも怪しく、主にルーカスと高橋をどう見るのか?という点が共有できていないように見えた。

 こういった部分をリカバリーしたのはCBコンビ。後方の高井は時には降りるルーカスを潰していたし、逆サイドの丸山は高井のいなくなった部分にスライドして出て行くことでC大阪のクロスを潰すことが出来ていた。C大阪はルーカスと高橋で左サイドの背後を取ることはできていたが、そこからもう一手が足りない状況だったといえるだろう。

川崎優位構築のきっかけは?

 時間の経過と共に少しずつ川崎はボールを握る展開となる。きっかけとなったのは川崎の左サイドの奥行きを使った攻撃だろう。14分のシーン、佐々木からマルシーニョの裏抜けで一気にサイドを押し下げた場面は個人的には興味深かった。

 というのも、C大阪はここまで予習した試合においてはこうした片側サイドに相手の攻撃を誘導してそこでボールを刈り取る守備というのを非常にうまくできており、ここをカウンターのきっかけにしていた。ところがこの試合では左サイドの佐々木、あるいは山本から出てくる背後へのボールへのケアが十分ではなかった。

C大阪のDFラインの中では西尾のラインが乱れることが多く、思ったようにオフサイドを取れないシーンもなかった。C大阪からするとこの部分は想定外だったはずだ。

 そのうえ、マルシーニョと対面している奥田はよーいドンでも少し対人守備には不安がある状況。そういう中で佐々木や山本をフリーにするわけにはいかないというのがC大阪のスタンスだろう。要は川崎が家長周辺で困っていたマークの危うさがC大阪は上門周辺で発生していたということになるだろう。

徐々に上門はCBにプレスに出て行くフェーズを減らしつつ、SBをケアする形で下がる形になっていく。こうなると、CBに時間がもらうことが出来る川崎としては非常に安定した保持の局面を迎えることとなった。

 敵陣に押し込むフェーズにおいては即時奪回ができるかどうか?というのが保持側の重要な要素。その点で抜群だったのは山本と河原という2人のCHの働き。家長が左サイドに傾倒しておりやや密集で狭いパスワークが多かったり、あるいはとりあえずクロスを入れてみたりという中央で跳ね返ってくる選択肢を取ることが多かったのだが、彼ら2人がきっちり回収することでC大阪に反撃を許さなかった。

逆にいえば川崎のCHという山を越えることができるか?というのがC大阪のカウンターが通る潮目ということとなる。先に挙げた家長周辺の外循環ルートはこの山を迂回するイメージの形である。

 前がかりになりやすい川崎のCHの守備を手前に引き寄せながら、背後を取ることが出来るシーンもあった。24分手前の喜田がキャリーに成功したシーンは明らかに川崎としては守備が前後に分断していた。C大阪としては仕留めたかったところではあるだろうが、川崎は両CBのフォローで対応。この日は本当に高井と丸山の守備の安定感が光っていた。

 川崎の保持、C大阪のカウンターという形で両チームのカラーは異なれど、均衡がとれていた状況だった立ち上がり。ただ、中盤から終盤にかけては少しずつ川崎が優位となった展開に移行したといえる。

 C大阪は自陣でのもったいないパスミスが目立った。相手のプレスに穴を空けることが出来そうなホルダーがオープンなパスワークでミスが出てしまう。川崎の守備は間に合っていないシーンもあったので、ここはシンプルに技術とかコンディションの要因になるだろう。

 もう1つの要因としては川崎の右サイドの守備が時間経過と共に整っていったことが挙げられる。右サイドの守備は家長が出て行くアクションと連動するようになり、高井やファン・ウェルメスケルケンは敵陣でボールを奪える場面を少しずつ整えることが出来るようになった。

 というわけでアタッキングサードにフォーカスすることが出来た川崎。ただ、サイドの抜け出すアクションをうまく得点のチャンスにつなげられなかった感がある。奥をとっても手前に戻しつつ、脇坂や山本からファーに鋭いクロスを入れるパターンからゴールを狙うが、味方にきっちりと合いきらない。

 やや無茶ぶり感があったこの日の山田もコーナーからチャンスを迎えるなど少しずつ可能性を感じるプレーは増えてきた印象。しかしながら、前半はスコアレス。川崎がハイプレスの整理を早い段階で済ませた分、優勢を取れた感があるが、それをスコアに反映できないままハーフタイムを迎えた。

交代選手で召喚した苦手パターン

 後半、先に敵陣に攻め込むきっかけを作ったのはC大阪。降りるハットンのポストを起点とする攻撃は左右のサイドに向けた供給ルートを新しく作るためのアクションといえるだろう。

 右サイドの上門のポケット侵入は前半左サイド偏重だったC大阪としては少し目新しいものでもある。しかしながら、逆サイドから飛んでくる高井の絞りも見事で簡単にクロスから得点を許さない。

 逆サイドからの絞りだけでなく、高井の存在感は縦方向のスライドでも抜群。ルーカスの潰しも後半はほぼパーフェクト。相手の攻撃をきっちりと潰すことだけではなく、前に攻めに行くための奪い方ができる立ち上がりとなった。

 ルーカスのロストからカウンターを受ける頻度が増えたのは後半のC大阪の誤算だろう。54分の山田とマルシーニョの決定機となったのは川崎のハイプレスの逃がしどころとしてルーカスを生かせなかったところから。後半頭から右サイドに守備のカバーに入ることが多かった脇坂の存在ももしかすると大きかったかもしれない。このシーンでの山田の裏抜けは非常にシャープで横浜FC戦からの復調をうかがわせるワンシーンだった。

 脇坂は52分の決定機では非常に惜しい形だった。佐々木からのクロスを山田の位置を利用してマイナスに飛び込む形はいかにも2トップというクロスの入り方。脇坂はFWとは言えないかもしれないが、川崎の2トップはこういう1人の位置を利用した飛び込み方は見られないので、ある意味2トップよりも2トップといえるかもしれない。

 やや劣勢気味のC大阪は中島と北野を投入し、右サイドの攻撃の活性化を狙っていく。CHにより攻撃的な中島を入れつつ、ライン間の細かいスペースで前を向くことが出来る北野の2人は確かに押し込んだ際のアクセントにはなっていた。特に北野のプレーは投入前にはあまり見られなかった類のプレーだといえるだろう。

 一方で川崎もCHの背後をつくアクションからカウンター的な前進が出てくるように。この辺りは川崎側の選手交代の要因もC大阪の前がかりな用兵の影響もあるだろう。62分のC大阪の中盤を引き付けてのチャンスメイクは川崎が非常に見事にひっくり返していた。

 それ以上に川崎の選手交代で顕著だったのはハイプレスへのギアアップ。4-4-2というよりはほぼ3バックに噛合わせるようなSHをスイッチとしたプレスでC大阪の攻撃をなるべく敵陣で阻害する。

 プレビューでも書いた通り、圧力をかけられると屈するというのはC大阪の最も苦手な試合展開。前に明確なターゲットがいない分、強引なショートパスでの打開を引っ掛けたり、苦し紛れのクリアを拾われたりで自分たちの時間を作ることができない。81分のようにCKからのカウンターなど単発でチャンスはあったが、安定した川崎の守備対応を前にチャンスを活かすことはできず。

 優位に後半を進めた川崎は85分にようやく先制。ライン間を繋いだ瀬川→エリソンのラインが機能。前半からラインが乱れがちだった西尾が残るDFラインをエリソンがラインブレイクに成功し、川崎が試合を動かす。

 勢いに乗るエリソンは88分に丸山の自陣からの大きなロブ性のボールからそのままシュートまで。飛び出した福井と入れ替わるようにヘディングを無人のゴールに押し込んだ。

 85分の大きな2つのゴールで今季2回目のリーグ連勝を達成した川崎。これで順位は6位にジャンプアップした。

あとがき

 川崎としては非常に大きな勝利。どちらに転がるかわからない試合をものにしたというのは個人的に満足度が高い。優勝争いに残るためにはこういう勝ち方を積んで行く必要がある。

 その一方で前半のパフォーマンスはもう少し上げていきたいところ。具体的には右サイドの守備のチューニングはもう少し早く済ませたい。高井と丸山が常にベストパフォーマンスで後方に控えてくれるならば、この日のような迎撃はできるかもしれないが、前者は移籍、後者は故障と加齢によるパフォーマンス低下の可能性が懸念される。

 後半のようなプレスの機能性であれば押し切れるのがわかったのは朗報。だが、常に攻め切れる支配力を持っているチームじゃないだけに、特にクローズドな守備における精度はもう少し磨いておきたいところだ。

試合結果

2025.5.18
J1リーグ
第17節
川崎フロンターレ 2-0 セレッソ大阪
U-vanceとどろきスタジアム by Fujitsu
【得点者】
川崎:85′ 88′ エリソン
主審:大橋侑祐

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