■説得力抜群の裏抜け一発で同点に追いつく
初戦は敗れてしまった両チーム。連敗となったチームはこの後行われるブラジル×スイスの試合結果次第で、最終節を待たずに敗退が決定してしまうというシビアな状況だ。
どちらかといえばボールを持つ機会が多かったのはセルビアの方。3バックが落ち着いてボールを持つ。しかし、カメルーンは4-1-4-1であり、前のプレス隊に3枚かけることはやぶさかではない。よって、セルビアは時折ミレンンコビッチをSB的に活用する4バックシフトでのボール回しもバリエーションとして持っていた。こうなると噛み合わせきれないカメルーンには迷いが出るようになる。
中盤を引き出すことができるようになれば、セルビアは中盤を活用しながら前進する。ボールを前に運ぶ原動力になっていたのは両サイドのWBである。コスティッチとジヴコビッチはいずれもボール運ぶことができる攻撃的な人材。4バックのカメルーンは逆サイドの大外のケアが甘くなることが多く、バックラインが中盤を引き出すことができれば、セルビアは中盤を使った素早いサイドチェンジでWBにボールを供給することができる。
この形でサイドからアタッキングサードに侵入。ミトロビッチやミリンコビッチ=サビッチなどのターゲットに積極的にクロスを上げていく。特にミトロビッチは前半の内に決定機を手にしていたが、フィニッシュがはまらず。先制点のヒーローになりそこねた。
一方のカメルーンは前進に苦戦。WBの背後に流れるムベウモのボールキープなど単発では光るところはあったが、セルビアほど前進のルートを確立はできず。時折、セルビアのビルドアップミスを引っ掛けてのカウンターがメインとなっていた。
しかし、試合の流れに逆らうように先制したのはカメルーン。セットプレーからファーに詰めたカステレットが抜け出してゴールに叩き込む。ベンチメンバー総出で喜びまくったカメルーンはこのゴールから一気に勢いに乗る。プレスからテンポを掴み、セルビアを追い立てるようになる。光っていたのは中盤のボールハント能力である。
先制直後のカメルーンのラッシュを凌いだセルビアはWB主体のボール保持からテンポを取り戻して反撃に移行。こちらもセットプレーからパヴロビッチが脅威の背筋力を生かしたヘディングで前半追加タイムに追いついてみせる。
すると、この勢いで畳み掛けるセルビア。自陣深い位置でのアンギサの処理ミスを掻っ攫うと、これをミリンコビッチ=サビッチが決めて一気に逆転まで持っていく。直後にミトロビッチが3点目を決めていれば前半のうちにさらにリードを広げられた可能性も。乗り切れないこの男は気がかりなものの、前半をリードした状況でセルビアは折り返しに成功する。
しかし、ミトロビッチは後半早々に結果を出す。激しい中盤の攻防でスタートした後半は、背後のスペースが空きやすい展開に。左サイドのコスティッチを起点とした攻撃が冴えていたセルビアは彼のボール奪取からミトロビッチが左右のWBと連携しながらゴールに迫りようやくゴール。リードを広げてみせる。
2点差というセーフティリードを得たと思われたセルビアだが、ハイラインの割にはボールホルダーを捕まえきれない状況をカメルーンにやたらと突かれると雲行きが怪しくなっていく。リードが広がってもセルビアはプランを変える様子はなし。追いかけるカメルーンは一発の裏抜けを連発し、セルビア陣内に侵入する。
この形から一気に追いついてみせたカメルーン。中盤から飛び出したアブバカルがループシュートを決めて反撃の狼煙を上げると、逆サイドに残ったミレンコビッチを置き去りにした右サイドの裏抜けからチュポ=モティングが同点ゴールを決める。「繋ぐな!蹴れ!」という命令に背いたGKのオナナを追放しての一発裏抜けのゴールはやたらと説得力がある。
以降はグロッキーな撃ち合いとなった。最終節の戦いを見越すと勝っておきたいのはブラジルとの試合を控えているカメルーンだが、コスティッチにサイドから押し込まれるなど苦戦。5バックへのシフトを余儀なくされる。
終盤にもミトロビッチには決定機があったが、いずれも決めることができず。後半頭に得点を決めたもののおそらくコンディションが悪いのだろう。もらったチャンスの数に比べれば、1得点という結果は物足りない。
試合は痛み分けで終了。自力突破の可能性が最終節まで残るかどうかは裏のカードの結果次第という形となった。
試合結果
2022.11.28
FIFA World Cup QATAR 2022
Group G 第2節
カメルーン 3-3 セルビア
アル・ジャヌーブ・スタジアム
【得点者】
CAM:29′ カステレット, 63′ アブバカル, 66′ チュポ=モティング
SER:45+1′ パヴロビッチ, 45+3′ ミリンコビッチ=サビッチ, 53′ ミトロビッチ
主審:モハメド・アブドゥラ