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「結果を求める予行演習の成果」~2025.4.5 プレミアリーグ 第31節 エバートン×アーセナル レビュー

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目次

レビュー

セットプレーに燃える両チーム

 ついにレアル・マドリーとの大一番を4日後に控えるアーセナル。ただし、リーグ戦でも引き続き緊張感のある戦いを強いられるのが今の立ち位置。2つのコンペティションで競争力を維持している幸福な立場故の苦悩にアーセナルは立ち向かっている。

 今節の相手はエバートン。ミッドウィークにマージー・サイド・ダービーをこなし、アーセナルに対しては1日の日程的なディスアドバンテージがある。近年は苦手なグディソン・パークへの遠征も今回で最後。アーセナルはこのスタジアムで有終の美を飾りたいところだろう。

 アーセナルはレアル・マドリーとの一戦を視野に入れたメンバーを組んだ。トーマス、ウーデゴール、ティンバー、マルティネッリ、サカといった面々はベンチから。重要な一戦を前にプレータイム管理は欠かせないという判断は非常に理解できるものだ。

 フレッシュさを求められる前線は高い位置からのチェイシングでエバートンのバックラインに襲い掛かる。開始早々にピックフォードを咎めた場面は立ち上がりに迎えた大きなチャンスとなった。正直、前プレスからあまりチャンスを作れるイメージのない面々だが、この点で馬力を出す立ち上がりになったというのは悪くないように思う。

 メンバーを入れ替えた試合においてアーセナルはセットプレーから得点を獲れれば非常に望ましい展開に持って行くことが出来る。そういう意味では立ち上がりからハイプレスを起点に押し込むことが出来る流れはアーセナルにとっては悪くはない。

 ただ、もちろんエバートンからすればアーセナルにセットプレーでやられて楽な展開に持ち込まれるのは絶対に避けたいところ。ニアだろうが、ファーだろうがあるいは直接向かってくるボールだろうが、意地でも体の前には入れさせない!という根性からエバートンはアーセナルのプレースキックを跳ね返していく。

 セットプレーに対する考え方は攻守が入れ替わってもほぼ同じだ。エバートンからすればこの日のアーセナルのスモールラインナップに対して、先制点を盾に自陣で引いて受けるという流れに持ち込むことが出来れば、少なくとも勝ち点を持ち帰ることが出来る公算は高い。

 そして、そのことは守備に回るアーセナルにとっても明らかである。エバートン得意のファーに人を集めるセットプレーに対して、人をファーサイドに集めるアーセナルはきっちりとエバートン対策をしていたことを伺わせる。日程が詰まっているのに。

 とにかくセットプレーではやらせない、そして自分たちのセットプレーでは絶対に仕留める。そういう気概を感じる立ち上がりとなった。

八方ふさがりのチャンスメイクの解決策

 セットプレーでより色濃いチャンスを作ったのはエバートンの方だろう。とりわけ、16分のファーに構えていたオブライエンまでボールが抜けてしまったワンシーンはアーセナルファンにとっては非常に心臓に悪いものだった。

 ただ、オープンプレーでよりチャンスを作ることが出来ていたのはアーセナルの方だろう。このメンバーでエバートンに取り組むと考えた時にどこまでの内容を期待するか?というのは個々人によって異なるとは思うが、少なくとも自分にとっては期待していたものよりは少し上のものだったとは思う。サイドからの連携で抜け出す味方を使う意識というのは少なくとも持つことが出来ていた。

 もちろん、人によってはより高いものを求めているだろうし、そういった人にとっては物足りない展開だっただろうというのもわかる。なぜならばエバートンの体を投げ出したクロス対応を明確に上回ったといえるシーンはそこまで多くはないからである。それでもトップのトロサールが狙いを定めての右サイドへの流れと、懐かしいオーバーラップのタイミングで大外を抉ったホワイトからは人数をかけたサイド攻撃の形を感じることが出来た。

 期待値が薄かったのは長いボールを当てての前進である。小兵ぞろいのアーセナルの前線では屈強なエバートンのバックラインに対して勝ち目はほぼなし。長いボールを使うケースもそこそこにあったが、セカンドボール回収を含めてアーセナルには有用なものにはならなかった。

 一方のエバートンもカウンターはあまりうまくはない。攻撃が直線的で最短ルートを志向するケースが多い分、アーセナルにとっては予測しやすい部分が続く。もっとも、アーセナルにとってもそれは同じでトランジッションからスピードに乗る局面が残っていたとしても、効率的に利用できる場面があまり多くは見られなかった。

 アーセナルのリトリートが間に合ってしまうと、エバートンに残されていたのはミドルシュート。相手を動かしてクロスを上げることよりもとにかくブロックの外からシンプルに叩きに行くことで攻撃を仕掛けていくというのがこの日のエバートンの方針でもあった。

 ただ、枠外に飛ぶことが多いミドルを見る限りはエバートンの得点の可能性は低め。むしろ、ハイプレスの方がチャンスはあった。特にプレス耐性で試合勘のなさを見せたホワイトがいるアーセナルの右サイドに対してのプレスは効果が見られた。その一方でメリーノが効果的なサイドフローを見せるアーセナルの左サイドに対しては効果が薄く、キヴィオルがこの点であまり足かせにならなかったのはレアル・マドリー戦に向けた好材料のように思える。

 とにかく得点へのきっかけが薄い両チーム。チャンスの少ない試合で先制点を奪ったアーセナルはカウンターからの解決策にたどり着くことが出来た。ゲイェのパスミスを起点としたスターリングとトロサールの2人での速攻はトロサールの足を止めたエバートンの守備が間に合ったかのように見えた。

 2人の守備者に囲まれて万事休すかと思われたトロサールだが、ここから強引にコースを作っての逆足のシュートでピックフォードを打ち抜くことに成功。アーセナルは前半の内に先制点を獲得。速攻においての駆け引きでエバートンの守備陣を手玉に取ったトロサールがアーセナルをリードに導き、試合はハーフタイムを迎える。

求めたい関与の幅の広さ

 迎えた後半。エバートンはロングボールから打開策を図る。その結果、引き起こすことが出来たのはルイス=スケリーがPKに値するファウルを犯したという判定だ。

 この判定の正誤はともかくとして、エバートンは後半序盤のロングボール2つをキヴィオル周辺に集める形を作っている。この形がたまたまかどうかは何とも言えないところではあるが、このロングボールに対してキヴィオルの関与が少し薄かったのは気になるところ。

 前節のフラム戦でもそうだったのだけども、キヴィオルはサリバとガブリエウに比べるとかなり味方のマークを受け渡そうとすることが多い。例えばそれがサイドに流れるFWとかでも割とルイス=スケリーに渡してミスマッチを利用されるといったケースも見受けられる。

 出て行って失敗するのが最も避けるべき事態というのはゴールに近いポジションを守る選手としては確かに言わずもがなだけども、アーセナルのCBがかなり広い裁量を任されているポジションであることを加味すれば少しミスマッチを感じるところがある。

 この場面ではルイス=スケリーへのPK判定の正誤にフォーカスしたリプレイが多かったため、キヴィオルが一連を通して明確なミスがあったかどうかというのはあまり検証できなかった感があったが、流れの中で跳ね返す形で全く関与できなかったのは不安材料である。

 ホワイトの現状のコンディションを見る限りはおそらくマドリー戦の先発はキヴィオルになるだろう。不安要素ではなく左サイドからのフィードという彼らしい持ち味が前に出る展開を望みたい。

 何はともあれ追いつかれてしまったアーセナル。後半頭に投入したマルティネッリとサカという両翼を生かして攻撃に出て行きたいところ。

しかしながら、特に右サイドはあまりブーストがかからず。ホワイトはミスを重ねてしまい、いいイメージを持てないままティンバーにスイッチ。サカも完全復調にはまだ時間がかかるのか?という不安要素を残しての仕上げになってしまった感があった。

 逆に左サイドのマルティネッリは十分に可能性を感じさせたといってもいいだろう。かなり負荷がかかる使われ方をしていたようにも思うが、それでも突破したり何とかコーナーをもぎ取ったりなど、できることをきっちりやっていた感があった。相棒がティアニーでもルイス=スケリーでも問題なくこなしていたのは好材料である。エバートンもハーフスペースの潰しをサボらず行うなど、アーセナルの左サイドの崩しに食らいついていった感があった。

 背後に抜けるトロサールへのロングボールなどアーセナルはクリティカルに抜け出してのチャンスも作ることが出来ていたが、ピックフォードのセーブに阻まれるなど更なるゴールを挙げることはできず。試合はドローのまま終了した。

あとがき

 フラム戦のプレビューで「この2試合は結果を求める予行演習」と位置付けたが、引き分けという結果以上にマドリー戦でも不安要素はそれなりに積み重ねることになってしまった。

 もちろん、一番大きいのはガブリエウを失ってしまったこと。以降はそれに伴うバックスの再編をしつつ、長期離脱者のコンディションチェックを行うような流れだった。サカ、ホワイトはその点で不安要素を残してしまっており、この2試合分の上積みがどこまで載せられるかは未知数。マルティネッリが徐々に調子を上げているというのは数少ない好材料でもある。

 エバートン戦では結果を出せなかったアーセナルだが、今あるすべてをぶつけるマドリー戦にしたい。

試合結果

2025.4.5
プレミアリーグ
第31節
エバートン 1-1 アーセナル
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:49‘(PK) エンジアイ
ARS:34’ トロサール
主審:ダレン・イングランド

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