MENU
カテゴリー

「嵌った先制点、嵌められた同点弾」~2025.4.12 プレミアリーグ 第32節 アーセナル×ブレントフォード レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

個人の最適化は全体の最適化にあらず

 火曜の夜にはエミレーツでレアル・マドリー相手に大仕事を果たしたアーセナル。ベルナベウでのリターンレグに臨む試合を控えて、今節はホームにブレントフォードを迎えての一戦に臨む。

 アーセナルはメンバーを大幅に入れ替えての一戦となるのだが、ホワイトの負傷によりトーマスがこの試合でも起用されたり、あるいはスターリングは先発でなかったりなど、いくつかの変化があった。言葉を選ばずに言ってしまえば、スターリングに関しての判断はすでに完了したということになるだろう。負傷者が出てくれば事情は変わるかもしれないが、今のスカッドにおいて週2で出番がないということは基本的にはそういうことだと思う。

 さて、この試合でLSBとして先発を飾ったのはティアニー。実直な選手ではあるが、インサイドに絞るアクションは得意ではない。かつては適性がない選手に対しても絞ることを求めることが多いアルテタだったが、この試合のティアニーはインサイドに絞るアクションはなし。シンプルな外側でのプレーに終始した。

 ティアニーの最適化という意味ではもちろんそれでいいのだが、ルイス=スケリーがやっているような絞るアクションがなくなることは前線の守備で相手に判断をさせるための材料が減ったことになる。アーセナルはCBでなるべくブレントフォードのプレス隊を自陣に引き寄せながらロングボールで勝負するが、なかなかこのボールも収まらず。GKをCBで挟み、後方でボールを動かして捕まるようなことはなかったが、効果的な前進には苦戦する流れだった。

 一方のブレントフォードもGKをCBが挟みながらロングボールをベースに前進するというで比較的同じ。WGの背後や2トップの縦関係を生かす形からボールを前に進めようとするが、ローブロックできっちりと受け止めることが間に合い続けたアーセナルに対して、なかなか風穴を開けることができなかった。

 むしろ、ブレントフォードのセットプレーの守備に対してはアーセナルはキャッチしたラヤからかなり早いリスタートを狙うことでブレントフォードを一気に陥れようという意図を見ることが出来た。スペースに素早くボールを送り、馬力のある前線に託すことで一気にゴールを狙う形はマルティネッリに最適。スターリングではなく、彼をスターターに選んだのはそういった部分を意識してかもしれない。

機能する左サイドと貧乏くじ

 アーセナルは時間の経過と共にポゼッションを安定させるように。いつもよりは箇所は限定的ではあるが、何人かの選手による移動からブレントフォードのマークを外していく。

 例えば、ジンチェンコの降りる動きなどはその一端。4-4-2のブロックの基準点を乱しにいく。徐々にブレントフォードはFW-MFの間がルーズになっていく。他にもサリバの積極的なキャリーは出足に迷いが出てきたブレントフォードの守備にかなり刺さっていたように見えた。

 サイドに押し込むきっかけを作れるようになったアーセナル。サイド攻撃は押し込みながらの3人目の抜け出しからチャンスメイク。ナローなスペースを崩すための後方支援役としてジョルジーニョ、ジンチェンコの2人は打ってつけ。抜け出すアクションをうまく使いながらブレントフォードの少ないスペースを作り出している。44分のトロサールのライン間のプレーも流石であった。

 セットプレーからのチャンスメイクにも工夫がみられたアーセナル。ショートコーナーなどスモールラインナップならではの手札を切るトライをする。効果的だったかは微妙だけども。

 ティアニーがネットを揺らしたシーンはゴールだったら感動的なものであったが、オフサイドで取り消し。先制のチャンスを活かすことができない。コリンズのラインコントロールはアーセナルファンにとっては感動的なストーリーに水を刺す邪魔者だが、サッカーの守備者としては非常に優れたプレーだった。

 反撃に出たいブレントフォードだが、攻撃に出ていく機会は限られていた。その中でも22分の左サイドからの横断は決定的。右の大外のオーバーラップからアイエルのチャンスは貴重な機会。だが、これもアーセナルによってブロックする。

 試合のペースを握っていたのはアーセナル。だが、完全なものだったわけではない。左サイドのユニットのつながりからチャンスを作れてはいたが、右サイドはやや停滞気味。ヌワネリは繋がりをなかなか持てずに輝けないでいた。最近のヌワネリは結構貧乏くじを引く事が多い気がするのだけども、この日も彼には同じ役回りが巡ってきたように思う。

互いの狙いが交錯する後半

 仮にトーマス・フランクの立場になった場合、前半のブレントフォードに修正を施すとすれば、プレスの開始位置の設定と整理だろう。前半のブレントフォードはこの部分を設定しきれずに、後手に回った感があった。ひとまずは動き回るジンチェンコをどうするかを考えることから始めるのが妥当だろう。

 ブレントフォードのプランから逆算すれば、アーセナルが後半に臨むべきはジンチェンコの移動に伴うブレントフォードのプレスの整理に対して先手を打つこととなる。ということで後半のアーセナルは先手を打つ形で可変成分をアップ。ジンチェンコ以外にも自陣まで降りるトロサールや前線に飛び出すトーマスやジンチェンコなど多方面でのポジションチェンジを行うことでブレントフォードの狙いを絞らせない。

 というわけで後半もブレントフォードはプレスの迷子に。出ていくことができずに押し込まれる時間が増えることとなる。

 狙いが刺さったという意味ではアーセナルの先制点も当てはまるだろう。スローインのキャッチからの素早いリスタートでアーセナルは数的優位を生み出す速攻に成功。相手の注意が自分に向くまでキャリーを続けたライスのエスコートにより、右の大外を駆け上がったトーマスは先制ゴールをゲット。前半から狙っていた相手のセットプレーをひっくり返す形でのトランジッションからアーセナルは先制点を生み出す。

 ボールを奪い返すところが見つからないブレントフォード。生命線となっていたのは右サイドでカウンターの起点となっているムベウモ。トーマス・フランクの反撃のプランはここを突破口にすること。ムベウモの外側からクロスを上げるために駆け上がることができるカヨーデを投入することでさらにこちらのサイドを強化する。

 72分にルイス=スケリーが間に合ったように左利きのムベウモはゴールに向かう際に一度スピードを落とさないといけないのが難点。外を回るカヨーデのオーバーラップは一度止まった動きを再加速することができる。

 それが成立したのが同点ゴールのシーンだろう。アーセナルはセットプレーの流れということもあり、サイドの守備のズレが完全に後手に。マルティネッリとトロサールの守備の受け渡しがうまくいかず、ライスもとびだせないままフリーになったカヨーデによって上げられたクロスでブレントフォードは同点に追いつく。

 終盤は押し込みながら勝ち越しゴールを狙うアーセナルだが、左サイドのユニットは疲労困憊でありチャンスをフイにする場面が目立つ。さらにはジョルジーニョが負傷でアーセナルは10人に。こうなってしまうと前後に負荷の高い試合が控えているアーセナルには出ていくことに迷いが出てしまう。

 最後は攻めにいくことで意思統一しきれなかったアーセナル。またしてもドローでリバプールとの勝ち点差はさらに広がる結果となった。

あとがき

 限られたリソースで戦わなきゃいけない試合というのはわかっていたので、終盤に左サイドがヘロヘロになるといったことはある程度想定の範囲内。ということで追いつかれてしまったことがこの試合の悔いということになるだろう。先制点までは狙いがハマったアーセナルだが、その後の反撃策に関してはブレントフォードにがっちりハマってしまった。自分がアーセナルファンということを抜きにすれば後半の出し抜き合いは非常に見応えがあるスリリングなものだった。

試合結果

2025.4.12
プレミアリーグ
第32節
アーセナル 1-1 ブレントフォード
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:61′ トーマス
BRE:74′ ウィサ
主審:サイモン・フーパー

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次