■カウンターにおける個人の打開力をスコアに反映
新国立競技場での開催、そして山下良美主審のJ1デビュー戦と何かと話題性に長けた舞台装置が揃った試合。観客は50000人を超え、FC東京主催試合の中では最も多い数字となった。
両チームとも多くの観客に包まれるという後押しを受けてハイプレスの応酬で始まった。プレッシングの形は両チームとも比較的似ていた。3トップのうち、2枚がCBにプレッシャーをかける。FC東京で言えばレアンドロとオリベイラ、そして京都で言えばウタカと豊川である。3人目となる渡邊と松田は低い位置まで下がりながら中盤に加わる形が多かった。
より運動量を持ってプレスに行ったのは京都。バックラインでのボール保持には怪しいところがあるという判断なのだろう。実際にスウォビィクには危険なミスを犯していたし、ハイプレスで引っ掛けてのチャンスは十分に見込める相手だった。
しかし、前に出るということは逆にプレスを回避すればチャンスが広がるということでもある。松田が外切りをしに前に出てきたタイミングは特にチャンスになる。FC東京はSBがWGの裏でボールを持てた時にスムーズに前進ができるように。フリーになったSBからオリベイラにボールを斜めの楔を当てて、逆サイドに展開する形でアタッキングサードに迫っていく。
京都の保持はロングボールによって落ち着いて回避することを選択。トップに入ったウタカを味方が追い越していく形でチャンスメイクする。詰まりそうになったらサイドに展開してやり直しを図る。FC東京がプレスを回避した後に直線的に敵陣に進んでいくのだとしたら、京都は一旦陣地回復した後に丁寧にポゼッションを挟んでいくという違いがあった。
先制したFC東京はアタッキングサードでの崩しで個の質を見せたと言えるだろう。バングーナガンデのオーバーラップでマイナス方向でフリーになったレアンドロがスーパーミドルを炸裂させる。ポストとクロスバーの両方に当てるというこの世に止められるGKなどいなそうなゴールでFC東京が前に出る。
後半は前半に輪をかけてプレスを行う展開に。特に両チームとも、前線から降りてくる選手に対して厳しくチェックをかけている。
この展開でも両チームの前線の質の差は少し感じるところがあった。ファウルでしか相手を止められないケースが増える京都。ボールを奪った後に交代で入った山田に素早く預けるが、なかなかここを起点とすることができない。
FC東京はその点、ボールを奪ったらレアンドロという方針がはっきりしていた。最低でもファウルという結果を持って帰ってくる彼にボールを預けることで京都のプレスを機能させない。アダイウトンへのスイッチでボールの預けどころを維持できるのも京都からすればズルという感じだ。
それでも京都は交代選手を軸に右サイドからチャンスを作る。金子の決定機などあわやゴールというシーンを作ることはできていたが、それを逃した後にFC東京はきっちりと反撃。中盤でスルスルと持ち上がった三田を咎めることができずにミドルを許すと、こぼれ球をアダイウトンが仕留めて決着。
大観衆が押し寄せた国立で勝利を手にしたのはFC東京。アタッキングサードでの個のクオリティの差をきっちりスコアに反映させた。
試合結果
2022.9.18
J1 第30節
FC東京 2-0 京都サンガF.C.
国立競技場
【得点者】
FC東京:28′ レアンドロ, 78′ アダイウトン
主審:山下良美