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「豪快な自己紹介」~2025.8.23 プレミアリーグ 第2節 アーセナル×リーズ レビュー

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レビュー

降りて受けた後の一手

 オールド・トラフォードでなんとか勝利を手にしたアーセナル。ロンドンに帰ってきて迎えるホーム開幕戦はリーズとの一戦だ。

 開幕戦ではエネルギッシュなプレスを見せたリーズ。特に中盤が列を追い越して前からプレスをかける形は彼らの馬力の象徴とも言える。まずはアーセナルがこのプレスに対してどのような立ち向かい方をするのか?というのが序盤の見どころとなる。

 アーセナルのとったプランは重心を低く枚数をかけたビルドアップだ。アンカー役のスビメンディは時には最終ラインに降りる形を使いつつ、ライスやウーデゴールがかなり低い位置まで下がっていく。後方に枚数をかけた状態でボールを動かしていくアーセナルに対して、リーズはなかなか強気に出ることができなかった印象。エバートン戦でみられた高い位置からのプレスは鳴りを顰め、どこにどのようにプレスをかけるか?というところに迷いが出ていた。

 そうなった理由はアーセナル側に降りて受けた後の一手があったからだろう。ライス、ウーデゴールといった中盤の面々にリーズがついていけばその出ていったスペースを使われてしまうリスクがあるからである。要は下げる動きとセットで列を上げる動きもあるということ。

 この点で際立っていたのはカラフィオーリ。味方の列降りとセットでライン間に侵入し、高い位置で前を向いて一気にドリブルで前進する。カラフィオーリが背後を狙っていたのはリーズのプレスの切込隊長である田中のところ。プレス隊の先陣を切る選手に対して牽制することでアーセナルはリーズに前からプレスをかけることを制限する。

 右サイドはバランス重視。ティンバー、サカ、ウーデゴールはポジションを旋回させながらレーンを入れ替えていく形。インサイドとアウトサイドをバランスよく使い分ける。

 バックラインのプレスが緩んだアーセナルはガブリエウとサリバがボールを自由に持てるように。アンカーのスビメンディは厳しいマークにあっていたが、半身で左右に揺さぶるなど薄いサイドからの攻め筋に繋げるためにタクトを振るっていた。アーセナルの後方は3-2,2-2,2-3,3-1という後方のビルドアップの陣形を器用に使い分けながら前進していく。

光るスビメンディの判断

 サイド攻撃においては右サイドの方がバランス良好。ティンバーのハーフスペースの突撃を囮にマイナスのウーデゴールにミドルを狙わせるサカという連携は去年の苦しんだ時期に比べれば明らかに成熟したように見える。左サイドはマドゥエケとカラフィオーリの利き足被りが引き金となりやや苦しんでいた感。それでも順足サイドということでクロスを上げ切ることはできていた。

 左右のサイドから狙うはファーサイドへのクロス。サカ、マドゥエケがそれぞれクロスに対して飛び込むなど、上げるだけでなく仕留める方にも意識が向いていた。

 押し込む機会を増やすアーセナルはセットプレーから先制。ゴールを生み出したティンバーのプレーはなかなかに難しい。ゴールとマイナス方向に向かいつつ、手前に壁となる選手がいて視野を確保しにくい状況でのヘディング。まさしくストライカー顔負けの一撃と言っていいだろう。

 非保持においてもアーセナルは開幕戦の課題に食らいついていった感あった。前からプレスに出ていったところがハマりきらず、簡単にライン間のブルーノを活用されてしまったユナイテッド戦の強引に過去のものにするかのように、この日は前からのプレスでリーズを追い込んでいく。

 WGはインサイド側に誘導するようにプレスをかけて縦にパスが入ったところを刈り取る。この点で見事だったのはスビメンディ。インサイドに誘導されたところに出されたパスのインターセプトがこの日は冴えており、前からのプレスに連動して刈りどころを定めることができていた。ウーデゴールが負傷してなお、アーセナルの前からのプレスは機能したと言っていいだろう。

 WGが外切りのプレスをするのであれば、背中を通されるリスクは非常に怖いところ。WGというマーカーがいる分、SBが自分のマークを捨てて素早くスライドできるかどうかが重要になるし、出て言った場合の陣形を決める必要がある。

 しかし、この点でもスビメンディが見事。SBの背後のスペースを埋めるためにサイドに流れたりなど危機察知が先回り。ティンバーが出ていった際にはきっちりとその位置を埋めてみせた。スビメンディが素晴らしいのはSBのカバーが彼の唯一のタスクではないこと。ギョケレシュが前に出ていければ連動して前に刈り取りに行く仕事をしつつ、SBのカバーもできるから見事なのである。

 リーズとしてはショートパスで繋ぎたいところだが、縦に進もうとすると刈り取られるし、サイドにつけても先回りをすることができない苦境。左サイドはシュタハが上下動してマークの基準をブラそうとするが、なかなか相手の先を取ることができない。

 かと言ってロングボールに逃げることができないのがリーズの辛いところ。前線のピルーはタワー型ではなく、サリバやガブリエウとロングボールで渡り合うのは明らかに無理。逃げ場のないショートパスと向き合いこととなる。なんとか18分過ぎにシュタハがボールを運んだシーンや、20分過ぎの田中の縦パスのスイッチからなど根性のショートパスからアーセナルのギャップを狙いに行く。押し込んだ貴重な機会で迎えたストライクのCKからの決定機はこの試合で最もリーズがゴールに近づいた瞬間と言えるだろう。

 だが、リーズの根性のショートパス作戦はうまくいかなかったところから逆噴射。スビメンディの網に引っ掛けることに成功したアーセナルはそのままカウンター。右サイドを鋭く進んだサカが追加点。前半終了間際にアーセナルはさらにリードを広げる。

らしいゴールでエミレーツに挨拶

 迎えた後半、いきなり生まれたのはアーセナルのゴール。前半の項で書いた背後に重いビルドアップからの勝負を制してアーセナルが追加点を奪う。ガブリエウに二度追いした田中の背後をジェームズがカバーできずにギャップが発生。入り込んだカラフィオーリからワンタッチで背後へのパスが生み出される。

 左サイドに流れたギョケレシュは重戦車ぶりを遺憾無く発揮するゴールで追加点。エミレーツに対する自己紹介としてはこれ以上ない形でギョケレシュはプレミアの初ゴールを決めた。

 それでもプレスに出ていくしかないリーズ。だが、アーセナルにプレスは完全に見切られてしまい、リーズは背走を余儀なくされる。ボックス内でもサイドアタッカーの威力に振り回されるリーズは非常に苦しい展開に。押し込まれたところからティンバーはこの日2つ目のゴールを決めて見せる。

 4失点目でさすがにリーズは消沈。前からのプレスにエネルギーを出すことができず、自陣に4-5-1のブロックでアーセナルを迎え撃つ。

 着実に得点を重ねるアーセナルにとってこの日唯一の計算外は負傷者の連鎖が止まらなかったこと。2回の負傷交代により、アーセナルは残り1回しか交代回数が残されていない状況に。さらに負傷者が出てしまった時の対処が難しくなるという観点から交代は控えるかな?と思われたアーセナルだったが、60分に残りの3枚の交代カードを使い切るという積極策に出る。

 この最後の交代でピッチに入ったのはダウマン。プレシーズンで大暴れした15歳はデビュー戦にして30分のプレータイムをもらうこととなった。

 終盤はこのダウマンを生かす形となるアイソレーションが試合の見どころに。対面のグドムンドソンに加えてSHも下がって受けるなどリーズの警戒は十分だったが、それでも見事な切れ味で見応えのあるマッチアップを披露する。

 そして、後半追加タイムにはPKを奪取。プレシーズンに続きダウマンはスコアに結びつくプレーを成功させる。このPKをギョケレシュがパワフルに決めて5点目。ホーム開幕戦のゴールラッシュを締め括った。

あとがき

 開幕戦とは異なる相手だったということは加味しなければいけないと思うが、オールド・トラフォードで見られたプレスやカウンターといった組織面での課題に対して一定の答えを提示しつつ、その中でも新戦力たちの個性が見られたという意味では非常に盛り沢山なホームの初戦となった。

 スビメンディ、ギョケレシュ、ダウマンといった今季から1stチームに入った面々はそれぞれ個性を豪快にアピール。異なるポジション、異なる立場ながらも今季のアーセナルに貢献できるという自己紹介をホームのファンにして見せた。

試合結果

2025.8.23
プレミアリーグ
第2節
アーセナル 5-0 リーズ
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:34′ 56′ ティンバー, 45+1′ サカ, 48′ 90+5′(PK) ギョケレシュ
主審:ジャレット・ジレット

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