
整備されたポート・ヴェイルのプレスの懸念
いわゆるユース組からの引き上げはダウマンだけ。それでも週末からの継続スタメンはサリバとメリーノの2人だけというのは今季のアーセナル。3部で19位のポート・ヴェイルの本拠地に乗り込んでの3回戦を迎える。
序盤からボールを持つのはアーセナル。ポート・ヴェイルは5-4-1からシャドーをジリっと上げる形から勝負。奪ったら右サイドから縦に進んで行きたいという意欲が見える立ち上がりだった。
しかし、前から奪って右につけるというポート・ヴェイルの攻撃の狙いが成立するケースはそう多くなかった。アーセナルはCB、特にサリバのキャリーからシャドーの背後のスペースにつけてサイドに進撃。ポート・ヴェイルのプレッシングを撃退する。
攻撃はサイドが中心。サイドは少なくとも3枚ほど枚数をかけながら。右サイドのサカを中心としてヌワネリ、ホワイトとの連携でフリーの選手を作って侵入していく。この日はCFに入ったメリーノも右サイドに絡むことが多め。自陣の低い位置に入ってビルドアップに関与するウーデゴール的な役割を時折行い、サカやヌワネリとポジションを入れ替えていく。
仕掛けていくところからの即時奪回で圧力をかけていくという流れはいかにもカテゴリーの差を感じる展開。CBも両サイドの後方支援を行うなど列を高い位置にキープし続けて勝負をかけていく。延々とアーセナルが攻撃のターンを続けると左サイドの連携から先制。マルティネッリのパスをスリーオンライン気味で受けたエゼが8分にゴールを決める。
時間の経過とともに少しずつポート・ヴェイルがアーセナル陣内に入っていくシーンも。一気に縦に進むシーンは少なく、ポゼッションで手数をかけていくことが多かった。だが、一番のチャンスは右サイドのガブリエウがバックドアを仕掛けたシーン。わずかにオフサイドだったが、大幅にメンバーを入れ替えたアーセナルのDFラインは微妙に高さが揃っていなかった。
30分になるとポート・ヴェイルの守備は前線から後方までが連動するようになりコンパクトさをキープ。ライン間へのパスに対してのアプローチが明確になり、試合は序盤の一方的な保持のタームよりは均衡した展開に。
敵陣では左右からシンプルなクロスを上げるポート・ヴェイル。アーセナルは大きなクリアをきっちり行いつつ、余裕があれば右サイドの選手を主体としてタメを作りながら陣地を回復。時折、サカやヌワネリを軸としたファストブレイクも見せたアーセナルだが、追加点を奪うところまでは至らず。試合はアーセナルの1点差のリードでハーフタイムを迎える。
後半はオープンな展開でスタート。マルティネッリはシティ戦を彷彿とさせるような単独抜け出しを敢行したが、ポート・ヴェイルのGKのガウチの素晴らしい飛び出しが決定機を阻止。クリーンなアプローチでピンチを切り抜ける。
前からジリジリとしたプレスを行うことでラインを上げていきたいポート・ヴェイル。降りる選手を潰すということに関しては迷いなくできていたが、前半と同じくアーセナルのCBの持ち運びに対してどのように対応したらいいかはあまりわからない様子だった。
ここのキャリーからチャンスを作っていきたいアーセナルだが、サリバとホワイトのパスのフィーリングがあまり合わず。パスがサイドラインを割ってしまう場面が目立ってしまうこととなった。
時間の経過とともにアーセナルの保持は落ち着いた印象だ。ポート・ヴェイルの左のCHのウォルターズの周辺にあらゆる選手が顔を出すようになり、潰しに出ていくアクションに迷いを与えていく。交代で入ったダウマンも上手くその流れに絡んでいった。
ポート・ヴェイルは選手交代でプレッシングに再び注力。70分過ぎからの時間帯はその効果が出たのか、アーセナルの中央の低めの位置からボール奪取に立て続けに成功。アンカーのノアゴールにプレッシャーをかけることでアーセナルのパスワークを乱すという狙いがとてもよく効いていた。特に75分付近のコールのシュートはこの試合で一番ゴールに近づいたシーンだとも言えるだろう。
前がかりなポート・ヴェイルに対して牽制になっていたのはマルティネッリやギョケレシュといった選手たちのダイレクトに背後を取るアクション。前がかりな守備に対して、一発大きなチャンスを作るためのフリーランからリカバリーを狙う。ポート・ヴェイルの守備陣もなんとか粘り強く対応していく。
均衡した展開となった後半だったが、自分たちの攻撃の形を完結させたのはアーセナル。サリバ→トロサールの背後をつくパスから86分に追加点。トロサールらしい冷静なフィニッシュだった。ややオフサイドが怪しいシーンだったが、このラウンドにはVARは不在。副審の旗も上がらず、アーセナルにとっては試合を決める大きな追加点が生まれることとなった。
このゴールでポート・ヴェイルのプレスは完全に勢いを失うことに。アーセナルは残り時間をきっちりポゼッションすることでリードを守りきり、カラバオカップ4回戦進出を決めた。
あとがき
ポート・ヴェイルはプレスのかけ方が連動していて悪くはないなと思ったが、アーセナルのCBにどうプレスをかけにいくのかにあった迷いが最後まで続いてしまったかなという印象。ホワイトのオーバーラップのタイミングや潰されたノアゴール周辺の整理は課題も残しつつというところもあったが、プレータイム管理優先の運用から危なげない結果を出したことをまずは評価すべきだろう。
試合結果
2025.9.24
カラバオカップ 3回戦
ポート・ヴェイル 0-2 アーセナル
ヴェイル・パーク
【得点者】
ARS:8’ エゼ, 86′ トロサール
主審:アンドリュー・キッチン