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「ロングスローを逆手に取る」~2025.11.1 プレミアリーグ 第10節 バーンリー×アーセナル レビュー

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レビュー

仮に奪われたとしても

 10月のロンドン引きこもり月間を終了し、アーセナルはここから代表ウィークまではアウェイ行脚。ロンドンから飛び出していく3連戦の初戦はターフ・ムーアのアウェイゲームとなる。

 前節のウルブス戦では4バックでガッツリ組み合う選択から互角な内容を続け、最終的には劇的な決勝ゴールで仕留めたバーンリー。だが、今節では前節手応えがあったはずの4バックを放棄し、5バックにシフト。パーカーは熟考した結果、勢いに乗っていても同じ形ではアーセナルには通用しないと踏んだのだろう。バックラインの枚数を増やした布陣でアーセナルに挑む。

 バーンリーは従来のイメージとは異なり、今は押し込まれると厳しいチーム。よって、5バックだからということで重たさを出してしまうと難しいということになる。サイドは隙あらばラインを上げていくことでなんとかミドルブロックを維持したいというのが彼らの望みである。

 ボールを持つアーセナルが立ち上がりに狙っていたのはまずはサイドのギャップ。中央を同数となる5-3-2気味のバーンリーに対して、アーセナルは大外にボールをつけるのはイージー。中盤が同数であれば、中盤ではない人が顔を出せば揺さぶりをかけることができる。序盤はトロサールに預けて、カラフィオーリがハーフスペースの裏抜けを狙っていく形が目立っていた。

 左サイドの裏抜けという形に関してはギョケレシュも絡んでいくなどエリアとして狙っていた感がある。ギョケレシュが左の奥を取る場合、中央のCBであるトゥアンゼベがどこまでついていくのか?はポイントになる。出ていって入れ替わられるが最悪の状況の中で1つ目のプレーできっちりとギョケレシュを止めたトゥアンゼベはいい入りを見せた。

 ただ、サイドの奥行きを取られるフェーズを許してしまうと、バーンリーとしてはその時点であっさりと自陣に引き下がられることを容認することとなってしまう。よって、大外につけるパスを咎めたいのがバーンリーの思惑。ウォーカーはボール奪取することができてはいたが、そこからスピードアップするのはなかなか難しい状況。アーセナルの2列目は戻りが早く、さらには奪われるところがサイドだったというのはアーセナルからすればダメージが少ない要素。フラムやパレスと異なり、中盤中央のボール奪取とはカウンターになる時の脅威が明らかに少なかった。

見事な緩急の追加点

 押し込むアーセナルは順当に先制。お馴染みとなっていたCKからファーのガブリエウの折り返しをギョケレシュが仕留めてゴール。ファーサイドに走り込んだガブリエウには相手を振り切って、足で折り返す余裕があった。ここまではホームでのゴールが目立っていたギョケレシュだが、この試合では貴重な先取点を手にすることができた。

 反撃に出たいバーンリー。プレビューで紹介した通り、彼らはショートパスからギャップを作り、進んでいく形が好み。アバウトに長いボールを入れることとなってしまうと、ガブリエウやサリバとマッチアップするフレミングには荷が重たい。長いボールのポイントを作るならば、まともにアーセナルのCBとマッチアップしないウゴチュクの方が有望だった。

 だが、なかなかパスワークはスムーズに行かず。相手の穴を開けるようにポゼッションをしたいという立ち位置の工夫は見えないこともあるが、いかんせんバーンリーはパスの速度が遅く、相手からすればボールが出た後のリアクションでも間に合うことが多々。盤面的にフリーを作れても、アーセナルの寄せる速度をパスワークで上回れず、結果的には中盤で繋がれてしまうという苦しみがあった。

 体のぶつけ合いという点でもアーセナルは優位に。相手が捕まえたと思っても入れ替わられて加速された結果あっさりと抜け出されるというサカの決定機はまさにその典型。さらには中盤のカレンが早々に警告を受けてしまったことも、なるべくタイトに行きたいバーンリーに対して、後手を踏むケースが多かった。

 ボックス内に迫る手段がなくハードモードなバーンリー。もっともきっちりボックス内にボールを入れる手段はロングスロー。ウォーカーをスローワーとする形でボックス内にボールを入れていく。

 しかし、この形をひっくり返すところからアーセナルは追加点。ロングスローを跳ね返したところからカウンターを発動。右に流れるギョケレシュを起点としたカウンターはピッチを横断。逆サイドからのトロサールの折り返しをライスが仕留めた。

 まずはあっさりと陣地回復に成功したギョケレシュを咎められなかったのがバーンリーにとっては誤差。カウンター対応であれば、まずはここを捕まえたい。そして、逆サイドのトロサールまで持って行かれたのも苦しいところ。

 バーンリーはSBのウォーカーを左サイドに出張させて行ったロングスローを跳ね返されると、トロサールの対面は不在になってしまう。ロングスローを投げると後方の右サイドにウォーカーはいないということなので、アーセナルはトランジッションから繰り返しこのサイドを狙っている感があった。ロングスローがある時、そこにウォーカーはいないということでアーセナルがうまく逆手にとったということだろう。

 アーセナルの2点目はスピードアップをしつつ、相手のウィークをつくために幅を使い、できた時間で攻め上がった中盤がゴールを決めるという緩急が見事。バーンリーは早いプレスバックの中でライスをどのように仕留めるかを整理することができていなかった。

 アーセナルは残り時間をポゼッションで整理しながらゆったりと時間を使う。ライス、スビメンディが自軍の深いところにポジションを取り、ティンバーやカラフィオーリが自由度を上げて勝負をしていく。やばそうな時や行けそうな時だけきっちりと出力を発揮。カウンター局面はもちろんのこと、最前線でプレスバックするギョケレシュのは守備局面でもエネルギーを出すタイミングを図りながら、相手を阻害するという効果的な動きを見せていた。

CFの交代で耐える展開に

 後半、ややプランのテイストを変えたのはバーンリーの方。フラフラと高い位置をとるカラフィオーリをローランが咎めた通り、アーセナルの中盤で浮く選手をバックラインから咎めることを許可するように。深い位置に立つライスまで咎めることで追うこともあり、前半以上にリスクを負うことでボールを奪う位置を高めるアプローチを仕掛けていく。

 アーセナルは負傷の影響からギョケレシュ→メリーノという選手交代を敢行。この交代もバーンリー目線からするとありがたい。ハイプレスの意識を強めよう!としているチームにとって、反転から加速されて一気にゴールに向かっていくことができるギョケレシュは厄介なことこの上ない。メリーノも相手を背負いながらのポストは悪くないが、反転して加速する怖さはないので、前にプレスに出てくる敵に対する牽制という意味ではギョケレシュと同じプレッシャーにはならないかなという感じであった。

 よって、アーセナルは保持においてはサイドに深さを作りつつ、横断というCFに時間を与える形からサイドを広く使っていく。ただ、メリーノはそもそも少しタッチのクオリティがやや怪しく、パスがずれてしまう場面も散見。立ち位置を守って、左右に振るという役割はやや精度を欠いていた感があった。

 多少押し返されたとしても、我慢ができるのが今のアーセナルの強みではある。サイドはネガトラの強度が高く、サイドから押し下げたとしても前がフリーでクロスを入れられる状況を作れない。押し込む頻度が増えてもアーセナルの耐久度はほぼ変わらずだった。

 ウォーカーの場所を狙われてもロングスローを選択せざるをなかったのはこういう要素もあるはず。人を揃えて、確実にボックスにボールを入れられる状況がこの日のバーンリーにとってはロングスローだったということだろう。

 バーンリーがアーセナルに先回りができていたのは70分過ぎのロングボールの抜け出し。フロレンティーノ・ルイスが合わせが決めれば、相当ラヤを脅かすシュートを打つことができたはず。終盤には左サイドにハンニバル、エドワーズを入れることでフレッシュさを加え、後半追加タイムにはエドワーズがバーを捉えるキックを見せるも最後までシュートは決まらなかった。

 後半はギョケレシュがいなくなった分、陣地回復はままならなかった感があるが、クリーンシートでの勝利という一番欲しいものは手にしたアーセナル。アウェイでの初戦で連勝をさらに伸ばした。

あとがき

 ミッションコンプリートという感じ。前線のプレスのサボらなさがバーンリーに完全にリズムを渡すことを許さなかった。残り2つはこの試合以上に苦しいやりくりとなることが想定されるが、なんとか勝ちを重ねた状態でインターナショナルブレイクに入りたいところだろう。

試合結果

2025.11.1
プレミアリーグ
第10節
バーンリー 0-2 アーセナル
ターフ・ムーア
【得点者】
ARS:14′ ギョケレシュ, 35′ ライス
主審:クリス・カヴァナー

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