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「威圧感が欲しい」~2025.12.23 カラバオカップ 準々決勝 アーセナル×クリスタル・パレス レビュー

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レビュー

お疲れムードの中で無双するマルティネッリ

 カラバオカップ、ベスト4の最後の枠を決めるのはエミレーツ。6日間で3試合というふざけた日程に襲われているパレスがエミレーツを訪れる一戦だ。

 より積極的な戦力の入れ替えを敢行したのはアーセナル。前線を中心に入れ替えを実施。一方のパレスはできるだけ継続路線の中でGKにはベニテスを起用する。

 ポゼッションベースで試合を進めるのはアーセナル。5-4-1でコンパクトに構えるパレスに対してバックラインからボールを動かしていく。3-1-6の陣形から縦パスを入れるところを探っていく。ジェズスへの縦パスを起点にマドゥエケが背後を取った決定機の場面はプレビューで触れた「縦パスでバックラインを引き出してその背後を取る」というアクションそのものだった。

 パレスはシャドーがプレスのスイッチを入れようとバックスにプレッシャーをかけてきたので、アーセナルの狙いはまずはシャドーの背後。SBは広がる正位置に立つケースが多かった。ただ、徐々にそこを使われることを警戒したパレスはシャドーが下がるように。陣形が後ろ重心になっていく。

 陣形としては縦方向によりコンパクトになったクリスタル・パレス。より時間がもらえるようになったカラフィオーリとノアゴールからボールを動かしていく。アーセナルは裏一発にまずはジャブのようなパスをつけていく。

 後方からズレを作るためにアーセナルはルイス=スケりーとノアゴールのポジション交換などの工夫を施すように。ルイス=スケリーがノアゴールの横に並び立って3-2-5としなかったのは相手に対してあえてプレスに噛み合わさせるような振る舞いを避けるためだろう。

 パレスは追う元気があまりない立ち上がり。前半は非常に重たい印象を受けるパフォーマンスだった。一方的にアーセナルに押し込まれながら、ボールの奪いどころを見つけられない展開に。

 ボールを奪った後のトランジッションからもなかなかきっかけを作ることができず。右サイドにパスをつけながらのプレス回避にトライしていたが、前線のマテタがボールの収まりどころとして機能せず、ミッチェルのオーバーラップもムニョスに比べれば迫力不足という感じだった。

 むしろ、アーセナルサイドは相手が攻めてきたタイミングはファストブレイクでひっくり返すチャンス。だが、ボールを持って前を向くことができたエゼがなかなか鋭さを見せることができず。直近で見られているお疲れモードは少し継続感があった。

 前半の中盤にアーセナルの攻撃はギアがアップ。左サイドからカンヴォとのアイソレーションが多くなっていくと、1on1の突破でほとんど完勝。カットインからインサイドに入っていくイメージ通りの形はもちろんのこと、縦に突破する形からクロスを入れるなど、ボックスに入っていく起点に。インサイドではジェズスやティンバーが決定機を迎えるが、なかなかマルティネッリを軸とする攻撃が得点にはつながらず。

 ジェズスはまだボックス付近のタイトなスペースやスピードに乗った状態でのプレーの精度が低く、なかなか本調子ではないのかなではないのかなという感じであった。もう1人、個人のパフォーマンスで気になったのはルイス=スケリー。ワンタッチで相手を引き寄せた後にリリースすべきタイミングを逃し、ツータッチ、スリータッチして状況がさらに悪くなるというケースがあった。この辺りは視野の確保とスキルの接続がうまくいっていない感があった。

 それでも高い位置に出ていくところではチャンスメイクに貢献したルイス=スケリー。WGにSBに絡む攻撃でよりパレスのゴールに迫っていくが、ベニテスの奮闘もありなんとかスコアレスをキープ。アーセナルにリードを許さない状態でハーフタイムを迎える。

CHが捕まらない流れから延々と・・・

 後半、パレスはジリっとプレスの重心を上げつつワンサイドにボールを追い込んでいく。ノアゴールの受け渡しも前半よりもしっかりと。プレスの強度を上げて前に蹴らせる形を作っていく。

 アーセナルはまず左右に広げながらプレスをスライドさせようとするのだが、SBのところでノッキング。ルイス=スケりーとティンバーの2人のところでまごまごしてしまい、中盤より先に進めなかった。

 そういう状況でもなんとかできるのがアーセナルのWGでもある。しかし、マルティネッリは前半のような正対して突破する状況を作ることができず、右のマドゥエケはサポート役不在で苦戦。メリーノは右のハーフスペースの奥を抜けていくなど、もう少し動きに工夫が欲しかった。

 それ以上にアーセナルが後手を踏んだのは非保持のところだろう。中盤のゲームメーカーであるウォートンのところを捕まえることができない。これに合わせてレルマは自由に動いていく。主に列を上げる動きが効いていた。

 メリーノは深追いした結果、ウォートンのケアに間に合っておらず、エゼはフリーズ。ワンツーで入れ替われてインサイドにウォートンに入り込まれて決定機を作られる場面も。このように後半頭に主導権をパレスに明け渡してしまったのは中央でボールを止めるところの引き金を作るチャンスにならなかったからだろう。ライス不在の中盤はいつもよりもプレスでの制圧力が甘くなかなかここからペースを握ることができず。センターラインのところでパレスは起点を作り、大外からのクロスでボックスに迫っていく。

 非保持でリズムをつけられないのであれば、保持でテンポを作りたいところ。しかし、バックラインで左右に揺さぶる形はタイミングよく縦にパスがスビメンディがいないと各駅停車感が出てしまう。ノアゴールやノアゴールに託された仕事を実直にやっていたが、スビメンディにしかできないこともあるのも事実だ。

 それならばスピードアップするケースでパレスに罰を与えないところであるが、ここでもなかなかスピードアップしてゴールに迫ることができず。特にこの点ではジェズスのボールタッチの定まらなさが気になった。

 選手交代しても大幅には流れがかわらず。ウーデゴールが入ってきたことにより、中盤のプレスで穴を開けしまうケースは減ったように思えたが、ボールを奪い返して主導権を一方的に引き戻すことができず。1人を強引にぶち抜いていくマルティネッリに代わって入ったトロサールは持ち味を出せた方なのかなとは思う。特にファストブレイクに関しては彼やメリーノのような出続けている選手の方が速攻を完結させるリズムを掴んでいるように思えた。

 リチャーズの負傷に見舞われながらも後半はアーセナルと渡り合うことができたパレス。苦しむアーセナルだったがセットプレーから先制。近頃エミレーツでお世話になっているオウンゴールでリードを奪う。

 これ以降は良くも悪くも展開はかわらず。特別引くようなことはなかったのだが、後半頭から続く流れのどっちつかず感は継続。バックラインで奪った後の1つ目のプレーが安定しないことでパレスの攻撃をきれないことは最後に致命傷に。95分にサリバがファウルを犯したところからのFKをグエイに仕留められてしまい同点に追いつかれる。

 PK戦にもつれた試合は互いのGKの動き出しが早すぎるためにキッカーが常に逆を取り続けるという長期戦に。最後にラクロワがケパが飛び続けていた左側に蹴った結果、ぴたりとタイミングが合ってしまってセーブ。アーセナルが準決勝進出を果たした。

あとがき

 後半頭が全てかな。きっちりとポゼッションで握り直すことができればパレスにはげんなりする前半と同じ展開が待っていてもおかしくない。あそこでプレスに飲み込まれて、保持で仕組みをつくらせてしまったことが試合が最後までもつれる要因になってしまった感がある。

 勝てないなと諦めさせる姿を見せて心を折る威圧感は身につけたいところ。それがないチームはたとえリードしていても関係なく前から相手が捕まえにきてしまう。リードされているから無理だとか、ボールを持たれる局面から逃げ出せないみたいな絶望感は過密日程において大きな効果を発揮する。威圧感を削ぐような後半の振る舞いは率直に言って残念だったなと言わざるを得ない。

試合結果

2025.12.23
カラバオカップ 準々決勝
アーセナル 1-1(PK:8-7) クリスタル・パレス
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:80′ ラクロワ(OG)
CRY:90+5′ グエイ
主審:スチュアート・アットウェル

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