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レビュー
先制点で落ち着いた試合運びのアーセナル
共にFA杯ではターンオーバーを敢行しての大勝。4回戦進出を決めた両チームは休む間もなくカラバオカップでダービーに挑む。ロシニアーにとってはスタンフォード・ブリッジでの初采配となる。
序盤から両チームとも積極的なプレスでのスタート。アーセナルはビルドアップにおいては3バック気味に変化。この日は左サイドに入ったティンバーはビルドアップにはほぼ関与なく高い位置に出ていく。
その分、左の大外に開いたのはガブリエウ。ここから縦にボールを差し込んでいくことでプレスを回避しに行く。ギョケレシュが流れるなど、こちらのサイドからもボールを収めに行く動きはアーセナルの前線にも共有されていたように見えた。
エンソのミドルを呼び込むなどチェルシーがアーセナルのビルドアップを詰まらせることに成功することもなくはなかった。だが、高い位置に出ていった機会をつかんだアーセナルは得意のセットプレーから先制。サンチェスがCKをクリアしきれずかぶってしまったところをホワイトが仕留めてリードを得る。
先制して余裕ができたアーセナルはポゼッションのやり直しを繰り返しながら、打開できるポイントを探していく。チェルシーは人へのプレスを強めたため、アーセナルの前線の降りて受けるレシーバーへの圧力は特に高まった。
アーセナルの右サイドは見事にチェルシーの圧力を逃がした感があった。15分手前にスビメンディが右の奥を取るアクションがチャンスメイクした場面はチェルシーの人に強くあたりに行く性質を逆手に取ったもの。ククレジャがサカについてくることを利用し、そのスペースにスビメンディを逃がすことでチャンスを作る。
スビメンディはこの試合でもさすがのパフォーマンス。人によっては明らかに地雷パスとなるようなマーカーを引き連れながらCBの間に降りてボールを受けるアクションも難なくこなしてしまうあたり、見えている盤面が違うのだなと思う。
アーセナルの左サイドは右利きぞろいでやや窮屈ではあったが、28分にはトロサールとティンバーのシンプルなコンビネーションから進撃。トロサールがカットインしながらシュートを狙えるところまで入り込むことができたシーンも。
ただ、基本的にはこの試合は定点でのサイドアタックを組み立てる場面は減り、後述するチェルシーの攻撃を跳ね返したところからのカウンター局面が多くなっていく。中盤のフィフティーのボールを争うデュエルではこの日はアーセナルが優勢だったため、咎めたところからのカウンターの場面を作ることができていた。
しかしながら、そこから仕上げの局面まで進むところはいまいち攻めきれずややノッキング気味。ボールを奪う機会がそのままチャンスの数に結びつくわけではなかった。
スビメンディ周辺から2列目の推進力を生かす
非保持においてはチェルシーと同じくアーセナルは前からのプレスを敢行。チェルシーは高い位置から人を捕まえに来るアーセナルのプレスを捌く必要がある。そこから逃げた場合のロングボールに関してはさすがに分が悪い。グイウにとってはアーセナルのCB相手に背負ってもらうという役割はやや重荷のように思える。
保持におけるチェルシーのベースポジションは3-2-5。初手としてはRSBのアチェンポンが大外に入り、SHのエステヴァンがインサイドに絞る形でシャドーのポジションに入る。
チェルシーの狙いはライン間に入るジョアン・ペドロ、エステヴァン、そしてやや外目のレーンのネトが下りるところからのアクションで奥行きを生み出すことである。主に狙い目にしたのはスビメンディ周辺。ここのスペースを生かしながらインサイドで前を向く選手を作ることだ。詳しく説明する前にまずはアーセナルのCHの守備のタスクについて説明したい。
ハイプレスに向かう時、スビメンディとライスは2つの役割を切り替えながら対応している。1つ目は前が深追いするアクションに合わせて降りる選手を捕まえに行くこと、2つ目は前の誘導に合わせてパスが出てきそうなスペースを圧縮すること。


スビメンディが捕まえに行くアクションをする場合、この試合のターゲットはエンソ。そのスイッチが入ったらジョアン・ペドロなど2列目の選手が下りていく。この時にはアーセナルのCBがついていくか迷うほどはっきりと降りるアクションを見せるのがコツ。スビメンディが瞬間的に2人を管理するような状況に持っていく。

基本的には2列目の選手がボールを背負って受けることでエンソをフリーして、ここから背後や左右の大外にボールを供給する形が多かった。例外的にはフリーになる選手も2列目になるケース。ただ、アーセナルの守備は基本的には降りるアクション先行のチェルシーに対して、圧縮することができており、危険なスペースで前を向くケースは少なめ。結果的には持ち場にいないことが多いティンバーのスペースを使うように右の大外のアチェンポンに展開するケースが多かった。
むしろ、スピードに乗った状態で2列目が加速するケースは縦パスを受けた選手がそのまま反転する形が多かった。これができるのはネトがメイン。タッチライン際に立つことが多い分、挟まれにくい特性を活用しながら前に進んでいく。
こうした要素を組み合わせていたチェルシーの前進の工夫も面白かったが、アーセナルもさすが。降りるアクション先行+仮に背後を取られても相棒がつぶせるという2つの根拠によって、CBが下りる相手をつぶすのに躊躇がなかった。
ショートパスから2列目の推進力を見せに行くチェルシーとハイプレスとブロック内の圧縮を両立しながら対抗するアーセナル。見ごたえのあるデュエルを繰り広げながら試合は前半を終える。
落ち着きを打ち破るガルナチョ
後半頭に少し気になったのはチェルシーの保持。左右のサイドの裏にスペースを作りながら長いボールを狙っていくスタンスにマイナーチェンジ。アーセナルのCBの食いつき癖を利用しつつ、背後を取っていくという前半とはまた少しテイストの違うアプローチから試合に入る。アーセナルはCBの横スライドで対応。カバー範囲の広さで勝負する
しかし、後半先に試合を動かしたのはアーセナル。右サイドからスローインが生み出したファストブレイクを右サイドで完結。あまり前半は多く見られなかった右サイドからの定点攻撃からゴールを生み出す。サカを追い越すホワイトのクロスを沈めたのはギョケレシュ。流れの中からのゴールでリードを広げる。クロスをカットできなかったサンチェスにとってはまたも痛恨のワンプレーとなってしまった。
このゴールで落ち着いたアーセナルは左右に動かしながらのポゼッションで押し込む機会を増やしていく。しかし、保持からミスが出てしまったアーセナル。ウーデゴールの落としを受けるはずだったスビメンディが足を滑らせてしまったところからチェルシーはカウンター発動。右サイドからのクロスを逆サイドから絞ったガルナチョが仕留めてゴールを1点差に追い上げる。
アーセナルとしてはやはりロストの仕方が悔やまれる。また、エンソがボックスへの突撃をサボらなかったことでホワイトがガルナチョをマークできなかったのも痛かった。ちなみにこのシーンの直前にはガブリエウにロングボールで突っかけて競り合いに持ち込むエステヴァンの姿も見られた。得意ではない分野で第一人者に向かっていく姿勢、とてもいいと思う。
得点で勢いに乗るチェルシーはネトとエステヴァンを軸に右サイドからのトランジッションからチャンスを作っていく。ただし、チェルシーは前からのプレスに関してはややガス欠感があった。そのため、アーセナルのウーデゴールやスビメンディといった面々のポジションの取り直しについていくことができず、相手にボールが渡ればそこから下がってしまうことは避けられない状況となった。
押し込むところは問題ないアーセナルは再び右サイドから追加点。メリーノからの斜めのパスでインサイドにボールを差し込むと、ギョケレシュの落としを受けたスビメンディが見事な左足でのフィニッシュでゴール。サイドから相手を1枚ずつ丁寧にはがしていく試みからスペースを作るというキレイな崩しだった。
以降もボール保持と中盤の運動量と強度をベースに主導権を握ったアーセナル。チェルシーもカウンターから反撃に出ようとするが、オフサイドにかかってしまうなど攻撃を簡単に終わらせてしまう。
プレーの強度も落ちてきてこのまま2点差をキープできそうだったアーセナル。その試合のムードをぶち壊したのはまたしてもガルナチョ。CKからのこぼれ球を抑えの効いたシュートで叩き込んで1点差に追い上げる。アーセナルは出ていって触れなかったケパのハイボール対応の拙さが致命傷となった。
再び緊張感を取り戻した試合最終盤、ジェズスが抜け出すところからPKを獲得したように思えたが、これはオフサイド。2点差を取り戻すことはできなかったアーセナルだが、勝利を手にしてエミレーツでのリターンレグに臨むこととなった。
あとがき
これよりもいい結果を出すこともできた試合だと思うが、アウェイでの勝利ということでまずは満足という感じだろうか。できれば3点差、少なくとも2点差をつけられなかったことで2nd legも緊張感のある展開となることは予想される。ベストではないがベターというのが個人的には妥当な評価だろう。
チェルシーは自信を深めたかもしれないが、局面的には悪くない対応を続けられたと思うし、ここから2nd legまでの間は少なくともCLに関して順位表的にアーセナルはチェルシーほどの重きを置かないで臨むことができる。適切なコンディションで準備を進めたい。おそらくチェルシーは3週間も経てば、新監督就任後の雰囲気は何かしらの変容が起きているだろうけども、そこはまぁコントロールできないところなので、自分たちがいい状態で臨めるように過ごしていきたいところだ。
メンバー選考の話をするのであれば2nd legはGKをどうするか。足りない部分は感じさせる内容だったし、PK戦まで進む可能性を加味すると、ラヤを戻す判断をしてもおかしくない。国内カップ戦はケパという今季の原則を貫くかも注目だ。
試合結果
2026.1.14
カラバオカップ
準決勝 1st leg
チェルシー 2-3 アーセナル
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:57‘ 83’ ガルナチョ
ARS:7‘ ホワイト, 49‘ ギョケレシュ, 71’ スビメンディ
主審:サイモン・フーパー