MENU
アーカイブ
カテゴリー

「特異点なのか?」~2026.2.8 J1百年構想リーグ 第1節 川崎フロンターレ×柏レイソル レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

構造重視と一撃重視

 様子見の立ち上がりからスタートしたこの試合の川崎。左に流れるエリソンへのロングボールから今季は左SHでシーズンを始めることとなった伊藤を軸にサイドの連携を構築していく。

 まず、ポイントとなったのはこのエリソンへのロングボールである。古賀との競り合いはほぼ完勝。後方で同数を受け入れるプレスを敢行する柏に対して、川崎は迷いなく前線にボールを入れていく。

 落としを拾う→左右のドリブラー勝負でスピーディーに敵陣に入っていく川崎。ロングボールを受けたエリソン→左サイドの伊藤と連携すると、脇坂との連携でボックス内に侵入に成功。後手に回った柏は中川がPKを献上。エリソンが間に合わない位置に間に合わないスピードでPKを蹴り込み柏が先行する。

 先制点を許した柏はポゼッションをベースに左右にボールを動かしていく。川崎は4-4-2が基本形で2トップとCHが柏のCHを受け渡しなら時には柏のバックラインも監視する。プレスのスイッチ役はSH。彼らが柏のワイドのCBにプレスをかければ後方が連動。SBが縦にスライド+CHはカバーをする。

 川崎は柏に対してどのように守るか?ということに関してはそれなりに準備しているようには見えた。しかしながら、柏は横断しながら川崎のプランを阻害。瀬川が大外に流れて河原を引きつけたり、左サイドのプレスのきっかけ役だった伊藤を剥がしたりなど、川崎の中盤にズレを生み出させるようなプランを敷く。

 だが、川崎はそうした柏の構造上のズレに対して、保持に回った際の破壊力で上書き。再びエリソンへのロングボールが炸裂すると、紺野と伊藤で一気に敵陣まで入っていくことに成功。エリソンが伊藤のドリブルを奪う形でシュートを放ち、小島を撃ち抜いてみせた。

 構造で柏がズレを作っていく中で川崎が重たい一撃を放ってゴールを決めて台無しにする。そういう構図が続いた立ち上がりとなった。

方向性と異なる最大の目的

 中継映像で2点目が決まった際に目についたのは長谷部監督が必死に誰かを呼ぶ姿。このアクションで誰に何を伝えたかったのかは定かではないが、2点目を川崎がとったところで脇坂の守備位置に変化が。4-4-2で前からのプレスをかける役割から、徐々に中盤に入って山本と河原とフラットに並ぶような3センターに入る役割に変化した。

 基本的には中盤をずらされてスライドさせてくる柏のポゼッションへの対策と言っていいだろう。特に伊藤が釣り出されて、山本の守備範囲が増えた結果、自由にやられてしまうというシーンは増加。増えていくスコアとは裏腹に川崎は順調な守備ができているとは言えなかった。ずらされたとしても、もう1枚中盤を埋める選手を作ればカバーはしやすくなる。いわば対症療法的な策である。

 ミドルゾーンからハイプレスを行う際には4-4-2の一角、自陣に入るような守備時には脇坂がCH的に振る舞う4-5-1にシフトするイメージ。しかしながら、実際には後者の時間が多かった。プレビューでも触れたが、柏のポゼッションに対してはCBにプレスをかけられなければ延々と彼らのターンが続くことになる。

 脇坂の起用位置を下げることはボールを持つ柏のCBへの圧力が下がるということ。ズレを防ぐという対症療法と引き換えに川崎は延々と柏のポゼッションを受け入れ、一方的に押し込まれる展開が流れることとなる。この時間を境に、柏は三丸のオーバーラップが増加。川崎が前に残る人数が減った分、攻撃に思い切って人数を割くように。紺野と山原の守備の連携の甘さをついて、サイドをえぐるオーバーラップからチャンスを作っていく。

 川崎は背走しながらギリギリの体勢でのクリアが増える。谷口や松長根が体を投げ出す場面には頼もしさを感じる反面、脇坂を下げてなお対症療法はなかなか効果が出てこないように見えた。

 キャンプで掲げた話を前提とするのであれば、今季の守備の改善は「敵陣でのプレータイムを増やすこと」で図られるということになる。脇坂の列下げはどちらかと言えば「自陣でのプレータイムが増えることを受け入れる」タイプの判断である。

 ならば保持で敵陣でのプレー時間増加を図ることはできるのか?というのがキャンプの目標に沿ったお題目ということとなる。ショートパスで繋ぐことにこだわる必要はないけども、ロングボールを活用した際にも川崎の重心を上げるアクションに持っていくことができたのか?ということを検証する必要がある。

 結論から言えばできた頻度は多かったとは言えない。山本から紺野に飛ばされた対角パスは山原のオーバーラップを促すなど多少の効果はあった一方で、ショートパスでの繋ぎは柏のハイプレスに対してどこかで引っかかってしまうケースが多く、柏がボールを持つことになってしまうことも。

 エリソンへのロングボールはどちらかと言えば「攻め切れる方策」になったという意味で「敵陣でのプレータイムを増やす」という方向性とはやや違う方向性となった。いうまでもなくゴールに繋がった2つのシーンがそれに当たることとなる。

 もう1つ、エリソンへのロングボールと並んで攻め切ることができる方策となったのは降りる伊藤とついてくる馬場のマッチアップ。半身で受けた伊藤が仕掛けるドリブルによって、高い位置におびき寄せた馬場を振り回すことに成功していた。

 この低い位置に降りた伊藤によって与えられたのが3点目。エリソンが簡単にインサイドに侵入しハットトリックを達成。馬場が出ていった分、広くなったスペースで内外への対応の駆け引きで古賀はエリソンに敗れる格好。もっとも、ホルダーの脇坂も全く捕まっていない状況だったので、古賀からすれば率直にキャパオーバーだったという方が正しいかもしれない。

 このシーンのように攻め切ることができるからこそ川崎は裏へのパスから柏を揺さぶる。河原や山原などポゼッションができそうな場面でも背後を狙うことで得点に近づく一撃必殺を目指すイメージである。ただ、こうした裏へのパスは被カウンターを受けにくいというメリットはありつつも「敵陣でのプレータイムを増やす」という方向性とは異なる。

 難しいのはこのスタイルで川崎が得点を取れているといるということ。サッカー最大の目的と言ってもいいゴールを奪えている方向性に対して、「キャンプで目指すスタイルとして掲げていたから」という理由で否定をするのは目的と手段の入れ替わりにも思えなくもない。確かなことは川崎が縦に速い攻撃で得点を奪えたということ、そして川崎の縦に速い選択が柏のポゼッションの高まりを促進し「敵陣でのプレータイムを増やす」を目的と反する方向に試合を導いたことである。

根本にある発想が変容した最終盤

 伊藤に対して明らかに後手を踏んでいた馬場を原田に入れ替えた柏は右サイドからの侵入で追撃弾をゲット。細谷のヒールフリックが炸裂し、1点を奪い返す。

 川崎の守備の混乱は伊藤が大外の久保にチェックに行かず、そこを三浦がカバーする動きが起点に発生している感があった。三浦が出ていった際の山本、谷口、伊藤の連携があまりハマっておらず、特に伊藤は誰も管理できていない時間が長く発生しがちだった。

 細谷の得点の場面においては小泉に対して伊藤がカバーに出ていったが一発で交わされてしまうことに。このカバーとして山本と河原を引き出すことに成功した小泉は高い位置をとった原田にラストパス。ドフリーとなった原田を慌てて谷口が捕まえにいき、谷口がそもそも捕まえていた細谷のシュートが決まった格好だった。

 川崎は特定の選手を捕まえることにおいて2人が同時に行ってしまったり、あるいは1人もいけなかったりなどでギャップを生み出してしまうシーンが多かった。こういう偏りがあると、ピッチのどこかしらは空くこととなってしまう。川崎の守備が整理されていないととることもできるし、柏がこのようなファジーな状況を作るのが得意とも言える。

 2人に管理されている選手(=細谷の得点シーンにおける小泉)と誰にも管理されていない選手(=原田)を使い分けることによって、相手の守備にズレを生み出し、もっとも危険なエリア(=細谷)を開けるというのはある意味柏の真骨頂。原田の投入によって柏の右サイドはそうしたオフザボールの動きが促進されていた。

 後半に入っても流れは同じ。川崎の左サイドは柏のオフザボールに対して後手を踏み続け、最終的にはより危険なエリアにボールを運ばれるシーンが続く。右サイドでは紺野と脇坂がうまく手綱を握り、左ほど後手に回っていなかったのは印象的だった。

 少しテイストは違うが柏の2点目もファジーな選手が川崎の守備者の負荷をかけることを誘った場面。瀬川への裏への動き出しは細谷を監視していた松長根につっかけるフリーランになっている。松長根にとっては判断が遅れるのは当然。これは「1人が管理すべき人が2人になっているパターン」だ。

 松長根の対応遅れが直接原因ではあるが、いくつかエクスキューズはある。1つは裏へのボールは松長根のちょうど真後ろに落とされたこと。ボールと相手を視野に入れながら走る前提で考えると、真後ろというのは一番難易度が高い。半身での背走が難しく、状況を把握しながら速度を上げてボールに追いつくのはハードだ。

 もう1つはこの場面では柏の前線5枚に対して、川崎は4枚で受ける形になっている。「1人が管理すべき人が2人になっているパターン」は明らかにできやすい状況となっており、そうした状況を松長根が特段呼び込んだわけではない。

 2点目のシーンは基本的には保持側が後出しジャンケンができるパターンである。山原が外に開き、瀬川が広がった松長根と山原の間に突っかけるランをするという状況を見て、小西はフィードを蹴っている。

 「瀬川にパスが出る」という前提でこの場面の改善策を話すのであれば、松長根が瀬川により近いポジションを取り、斜めのフリーランを阻害することが挙げられる。だが、松長根が瀬川に近いポジションをとるということも踏まえて、小西はフィードを蹴ることができる。そうなってくれば、今度は広がった谷口-松長根の間を走る細谷にパスをつけようと考えるかもしれない。

 先にバグが発生しやすい状況(=相手のDF4枚に対して5枚を用意する)を作り、相手の対応次第でこちらの選択を変える。前半のゴールも含めてこのような考え方が柏の崩しの根本にある発想と言える。

 後半の川崎の保持は前半よりも割り切り重視。後方でのポゼッションの割合は減り、ブローダーセンからのロングボールが増える。しかしながら、前半よりも厳しく当たる姿勢が見えた古賀により、なかなかボールは収まらず。そのため、マルシーニョというスピードを武器とした選手を投入することで異なる前進の手段を用意する。

 そのマルシーニョとエリソンによる前進から得たセットプレーから川崎は追加点。設計されたセットプレーから松長根がゴールを決めた。

 再び2点を追いかける状況となった柏は山内と山之内を投入。古巣対決となった山内は明らかに異物。得点を仕留める、ドリブルで仕掛けるという意味では仕事を果たしたとも取れるが、柏のベース部分である相手に誰を管理するか迷わせるようなオフザボールによる貢献度は低かった。加入して間もないので仕方ないと言えばそれまでだが、まだ明らかに柏ナイズされていないというのが彼のこの試合のパフォーマンスに対する感想だ。

 終盤はどちらかといえば複数枚引きつけた久保が根性でクロスを上げ切るとか、細谷が反転して前を向こうとするとか、相手に捕まっている状況をなんとかしよう!という方向性にマイナーチェンジしたように思う。より力技的というか。押し込まれ続けていたので引き続き川崎が困っていたのは確かだけども、選手個々がやることを迷うケースは明確に減ったなという印象を持った。

 柏のプレスに関しても終盤は力技先行。一人一人が順々にホルダーにプレスに来るため、ホルダーは余裕を持ってボールを動かすケースが出てくる。そういう意味で柏が一方的に攻め続けるという状況も終盤は緩和傾向だったと言えるだろう。

 前進の機会が少しずつ出てきた川崎は脇坂が5点目をゲット。勝負を決めるダメ押しゴールは後半のラストプレーに。乱打戦を制してホームでの開幕戦勝利を飾った。

あとがき

 今の川崎のスカッドで柏を倒すという意味ではこの試合の振る舞いが最適解なのだろう。昨季と陸続きとも言える一撃の重たさで得点を重ね、柏の守備の対人の弱さを炙り出すという方向性は2025年終盤の等々力での柏戦を思い出すものであった。

 その一方で本文で触れたように「敵陣でのプレータイムを増やして失点を減らす」という方向性の達成度としてはこの試合で評価できることはあまりないように見える。オープンに殴り合い、3失点を喫した姿もまた去年からおなじみの姿である。

 ただ、これも本文で述べた通り、方向性の提示はあくまでチームが勝利を挙げるための手段。目的はチームが勝利することであり、この試合の川崎はそれを遂行した。そういう意味では正当化をすることができる。その一方で柏と異なるカラーの相手、具体的にはエリソンへのロングボールをこんなに簡単に収めさせてはくれない相手に同じような戦い方をした場合、前線の火力すら封じられてタコ殴りにするパターンも考えられるだろう。

 柏戦は今季の川崎にとって特異点となる試合なのか。答えはこれからのシーズンで明らかになることだろう。

試合結果

2026.2.8
J1百年構想リーグ
第1節
川崎フロンターレ 5-3 柏レイソル
U-vanceとどろきスタジアム by Fujitsu
【得点者】
川崎:6′(PK) 11′ 25′ エリソン, 68′ 松長根悠仁, 90+4′ 脇坂泰斗
柏:38′ 細谷真大, 61′ 瀬川祐輔, 81′ 山内日向汰
主審:池内明彦

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次