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「人によらない」~2026.2.15 J1百年構想リーグ 第2節 ジェフユナイテッド千葉×川崎フロンターレ レビュー

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レビュー

イサカ・ゼインの仕掛けをひっくり返せない

 開幕節は柏相手に大量5得点を奪って勝利を挙げた川崎。アウェイ開幕戦となる第2節はフクアリでの千葉との一戦。千葉県勢との連戦となる今節も勝利を狙っていきたいところだろう。

 川崎はショートパスを繋ぎながらのパスを敢行する立ち上がり。千葉は右SHのイサカ・ゼインの外切りからプレスをかけていく。谷口の左足側からかけていくプレスは背後を三浦に取られるリスクもあるが、川崎はこのイサカ・ゼインのプレスをうまく逃すことができない。

 谷口がイサカ・ゼインの背後にいる三浦にボールを届けるのであれば、インサイドにパスをつけてCHを壁にサイドに叩く形が例として挙げられる。山本は瞬間的に相手の間からパスを受けられるシーンがあったように思えたが、顔を出すことなく谷口から縦パスを引き出すことができなかった。

 谷口から三浦に直接パスをつけるシーンもあったが、左利きではない分、奥に巻くようなパスをつけることができず、三浦が自陣側に下がるようなパスになってしまう。こうなると、三浦にパスを届けるという目標は達成できるが、イサカ・ゼインの二度追いが間に合ってしまう。相手の背後を取ることができていないので三浦にパスを届けたところで前にボールを運ぶことができない。

 ブローダーセンまで戻して角度を変えてロブパスを通す形も考えられるが、川崎の方針としてあまりシビアなプレス回避にブローダーセンを巻き込むことはないのだろう。ビルドアップ関与が少ないGK、左利きではないLCB、中央で壁役をやらないCHによって千葉の前向きの矢印を折ることができなかった川崎。ギャップを覚悟でプレスに来た千葉は結果的に得をしたといってもいいだろう。

 川崎は山本をサリーすることで後方を3バックに変形。中盤の重心は下がるが、これであれば三浦を高い位置に送り込むことができる。相手の陣形とのギャップも生むこととなり、この変形により保持は安定した。

 サイドから深い位置を取る形を作ることができたという点では進歩があった川崎。ただ、高い位置でのサイドアタックはあまり整理されている感はなし。三浦が大外からクロスを上げられそうなタイミングでも、あまりボックス内での準備ができているようには見えず。この辺りは柏戦でもちらほら見られた課題のように思える。

 逆サイドでは紺野と山原を軸としたサイド攻撃の連携が途上。それぞれ得意な形を作ろうとはしているのだけども、あまり噛み合っている感じがない。裏を取る選手からの押し下げもほぼないし、紺野のカットインもすぐにカバーが来て無効化されていた。

 そういう意味では結局のところ、前線の得意な形を作るのがチャンスに一番近いのだろう。前を向けるところまで下がる伊藤からのドリブル、アバウトに裏に走るエリソンなど「押し下げて守備の機会を減らす」という方向性とは少し違っているようにも思うが、そういう形からチャンスを作っていたことも確かである。

 ちなみに、10分が少し過ぎたあたりからはブローダーセンからのリスタートを中心に前線にあてる動きが多かったが、エリソンへのロングボールは前節ほど威力を発揮することはできず。前線の特性を活かす方向性が柏戦ほど刺さらなかったことの一因は間違いなくここにあるといっていいし、明らかに小柄なDF構成の柏以外に通用するの?というエリソンへのロングボールの疑問点は第2節で早くも課題にぶち当たってしまった感があった。

ホルダー軽視の方針が悪循環を呼び込む

 川崎の守備は4-4-2。千葉と噛み合わせる形から前に進んでいく。RSBの高橋が高さを調整したり、CHが縦関係を作ったりなど、多少の構造の変化はあったが、現代において可変というには慎ましい範囲の変化ということができるだろう。

 川崎は立ち上がりは4-4-2の陣形を保ったまま押し上げていくことで千葉に圧力をかけていくが、時間の経過とともにプレスが空振りするように。プレスが効かなくなった要因は分かりやすく言えば高い位置に出ていくアクションが連動していないことだろう。

 例に挙げたいのは4分のシーン。エリソンが河野をサイドに追いやるように守備をしているにもかかわらず、日高に紺野が出ていくことができていない。縦に簡単に進まれはしなかったが、これくらい誘導できていれば前に運ぶ余裕がないくらいには詰めておきたい。

 要因として、紺野が日高に出ていく前に気にしているのは降りる石川のアクションである。CHにプレスに行った河原を埋めるように、絞ったポジションをとっている。紺野が出ていくのは河原が戻ってからだ。

 出ていった味方との位置関係を考えるのであれば、紺野の動きはゾーンのカバーとしては理解ができる。しかしながら、この局面はあくまでハイプレス。人をきっちりと捕まえることで圧力を上げたい時に適しているアクションではないように思える。

 ざっくりといえばピッチの各所で起こっている川崎の守備の不具合はこの部分に集約されているといっていい。この試合の川崎の優先事項は「自陣側に相手のフリーマンを作らない」こと。プレスに出ていくことをしていいのはあくまでそこの方針が固まってから。そうでなければ、まずは後ろを埋めることを優先する。特にCHとSB、紺野はこのアクションをかなり意識していたように思える。

 こうなってしまうと、ボールホルダーが本当に捕まらない。前からプレスに出ていくことは先のエリソンと紺野の連携のように事態を悪化させることにつながる。よって、前線はプレスをやめる。そうなると誘導がかからない。フリーのホルダーがライン間に差し込む、そしてラインを下げるという循環の繰り返しである。

 低い位置でのサイドの守備も同じ原理だったので、千葉はフリーマンを作るのが簡単。結果的にはオフサイドとなった津久井がネットを揺らしたシーンはサイドに迎撃に行った谷口がポジションを戻し、三浦とマークを受け渡しているうちにクロスを許した場面である。

 このホルダーに出ていくアクションのもっさり感こそがこの試合の川崎の問題点。ハイプレスだろうがローブロックだろうがあちこちでホルダーを捕まえることを軽視し、後ろのスペースを埋めることを優先することによる不具合が起きていた。

 とにかく川崎の選手たちは一度ボックスに押し込めば簡単に外に出てこないので千葉はサイドのポジションを入れ替えることで簡単にフリーマンを作ることができる。低い位置を埋めている川崎の選手は何のために埋めているのかという目的がはっきりしない。

 14分の日高の決定機の紺野がいい例である。大外で津久井と山原が大事している場面。紺野はSB-CBの間は埋めているけども、そこに入り込む日高を最終的には逃がしている。マイナスのパスにも寄せられる位置にいない。かといって1on1のカバーとしては遠すぎる。山原と対峙する津久井に対するどのアクションに対しても影響を与えられていない。これではわざわざ位置を下げてスペースを埋める意味が薄い。

 紺野は家長に比べれば明らかに機動力があり、守備でも献身的で、危機察知能力が高い。にもかかわらず、高い位置でのプレスだろうが、低い位置でのブロック守備だろうが、平気で右サイドはエラーを起こしている。紺野が忠実にタスクをこなしているのであれば、問題となるのは設計図だろう。SHの非保持のタスクの量が組織的な守備にあまり影響を与えていないことは早急に解決すべき課題のように思える。

 川崎にとって助かったのは千葉の保持のスタイルがインサイドにガンガン差し込んでくるカラーではないこと。対角パスも外循環だらけであり、複数人での崩しはあまり得意としておらず、川崎のまずい場面が突かれるのは限定的だった。テンポが速くなると、ミスも出ており、この点はまだJ1の試合のテンポへの適応不足だと言えるだろう。

 構造的にはやられる機会が多かった川崎だが、徐々にバックラインが押し込む局面の勘所を掴みながら進撃をするように。谷口の対角パスや松長根の楔など少しずつ有効打となるパスワークを見せていく。山本、河原はプレスを回避して前線にダイレクトなボールを送り込むという縦に速い攻撃で貢献。押し込むという文脈とは違うが、前半の終盤は川崎がほんのりペースを握った感があった。

J1力でのチャンスメイク

 後半も川崎がポゼッションするスタート。山本が左右にボールを散らしながら千葉を押し込んでいく。左右のサイドのユニットは前半と同じく停滞気味。インサイドにカットインする紺野はやや詰まったように見えたが、逆サイドまで横断することで左サイドからのクロスを誘発。チャンスメイクに貢献する。その一方で同サイドの奥を取るアクションは右サイドは最後まで乏しく、この点は試合中に解決に至らなかった。

 逆サイドの伊藤も強引にカットインからシュートまで持っていくが、シュートコースはなかなかクリーンにできずに苦戦する。伊藤は守備でも致命的なミス。50分過ぎのシーン、CBの久保庭にプレッシャーに行った伊藤は川崎から見て左の大外に体を向けながらプレスに出ていくが、その方向は自らがマークを捨ててきた場所。二度追いが間に合うのであればそれでも問題ないが、間に合わないのに誘導しながら出ていくというのは文字通り自殺行為だと言えるだろう。

 ならば下の図のように外切りをするほうがまだハイプレスで刈り取れる可能性を残せる。当然頭をこされて背中を使われる可能性はあるが、内から外に誘導をするという無料でスペースをプレゼントするプレーよりはうまくいった時のメリットは残るはずだ。

 このように川崎のプレスは後半も機能不全のまま。千葉は左右のサイドから押し込みつつ、主に空中戦のターゲットに山原とマッチアップする津久井を任命することで空中戦から解決を図っていく。

 川崎のチャンスメイクは少しずつ長年のJ1らしいタレント力のゴリ押しになっていった。密集地帯を強引に体をぶつけながら脱出、そして瞬発力勝負に持ち込み、裏のスペースに向けたかけっこを行うことでエリソンの馬力を生かす。マルシーニョが入っていけばさらにそのカラーは強まったと言えるだろう。

 交代で入ったマルシーニョは序盤こそダッシュで存在感を見せていたが、途中から怪我をしてしまったのではないかな?と思うくらいに運動力がガクッと落ちる。守備での献身性が足りないのはいつものことなので気にしないにしても、前にカウンターに出ていくところのスピード感も一定時間からは消失してしまった。交代枠を別の選手に使っていたので、本当に怪我ではないのだろうけども。

 いずれにしてもロマリッチに交代してからは前線の接続が悪くなって苦戦する川崎の攻撃。ロマニッチはボールを収めて時間を作ることができるのだが、エリソンのように反転して敵陣まで持っていくような推進力を生み出すのは難しい。押し上げせずにロングボールを当てることで間延びしてヘルプが出てこれないループに陥る川崎。構造上の問題はなかなかに難儀だった。

 終盤は千葉が交代選手を軸にゴールに向かうアクションが出てくる。猪狩で盤面を整えて押し込むと、セットプレーでは高さのある鈴木大輔がスモールラインナップの川崎の守備の脅威になる。なんとか体を投げ出してセーブした川崎は無失点をキープ。PK戦に持ち込んで勝利し、勝ち点2をもぎ取った。

あとがき

 すでに2試合先発をした松長根を含めて、補強した人の分の上積みは感じるし、その人たちのスキルはそれなりには見えている。だが、それがあまりチーム力に乗っていないことに関してはまずいように思える。悪い意味で誰が出ても同じような問題があり、人によらずこのチームは問題を抱えているように思える。

 エリソンのプレスバックのサボりとか、家長やマルシーニョの献身性の低さなど明らかに個人依存の部分は原因がはっきりしている分いいのだが、紺野周辺のエラーはそもそも監督がやりたいことを実装してもうまく守れない可能性を孕んでいる。それであれば早急に方向性の見直しが必要ということになる。橘田やロマニッチのようなスターターよりも守備面での活躍が期待できるメンバーを入れたとしても、物事が解決しない可能性があるのが千葉戦を見て想像できる最悪のシナリオのように思える。

 このチームの問題点がどのフェーズにあるのかをわかっているのはチームの中の人だけ。今は彼らが現状を正しく分析し、解決するためのアプローチを進めてくれることを信じることしかできない。

試合結果

2026.2.15
J1百年構想リーグ
第2節
ジェフユナイテッド千葉 0-0(PK:8-9) 川崎フロンターレ
フクダ電子アリーナ
主審:長峯滉希

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