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「折り合いを欠いた後半」~2026.2.18 プレミアリーグ 第31節 ウォルバーハンプトン×アーセナル レビュー

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レビュー

ファー待ちギョケレシュのメリット

 カラバオカップ決勝進出に伴い、第31節を先行開催することとなったアーセナル。対するは降格が迫ってきているウルブス。勝利以外は降格を遠ざける手段はない状況でのリーグ戦である。

 まずは左サイドから手早く攻めていくアーセナル。縦に早くマルティネッリに入れて左の大外から仕掛けられるか探るスタートを切る。ウルブスの守備は5-4-1ではあったが立ち上がりにマルティネッリに対峙したのはWBではなくCBのモスケラ。WBのチャチュアはSBのインカピエにプレスにいくなど、やや前向きなプレスへの意欲を見せるスタートとなった。

 その左サイドからアーセナルは早々に先制ゴールをゲット。マルティネッリが2人目のマーカーの足を止めてからマイナスのパスを出したライスからのクロスでサカがゴールを仕留める。クロスを上げる手前の場面のマルティネッリの動きはスビメンディのミドルシュートをセットアップしたトロサールのムーブと同じ。ローブロック崩しにおけるスペースメイクとしてはとてもいい動きだった。

 インサイドのサカのアクションも見事。ファーに立つギョケレシュとレーンを入れ替えながらボックスに入っていくことで、ど真ん中ながら相手に全く触られない形でクリティカルなエリアに入っていくことができた。「ギョケレシュがニアに入るべきか?」という質問に対して、「彼自身も含めて誰かがニアに入れればそれでいい」といつも返すのだけども、そう答えているのはこういうシーンを想定してのこと。一番のターゲットとなるCFがファーで待つことをチームとして利用できるのであればそれも問題ないということである。

 失点以降も押し返すことができないウルブス。アーセナルのハイプレスに対して前線はプレッシャーに苦しむ形。マドゥエケの外切りからインサイドに差し込むことに誘導されてしまい、そこからボールを刈り取られてしまう。カウンターから追加点のチャンスを迎える場面もあった。

 逆にアーセナルはややパスワークがもたつき、ウルブスにひっくり返すチャンスを与えることもあったが、ネガトラが早くウルブスのホルダーを素早く囲い込むことに成功。奪い取ったところから素早く縦にボールをつけて、カウンターに移行する。序盤はペースはアーセナルにあったと言えるだろう。

重心変われど膠着変わらず

 ほんのりペースが変わったのはアンヘル・ゴメスの負傷によりアロコダレが前線に入ってから。いわゆるフィジカルモンスタータイプのCFが前線に入ることでウルブスはロングボールからの前進を進めていく。

 非保持においてもややラインを上げるプランにシフトしたウルブス。全体をグイッと押し上げながら陣形を敵陣側に上げていく。

 いわば、アーセナルにとってはウィガン戦と同じ状況になったと言えるだろう。ホルダーにチェックをかけるわけではなく、ラインを挙げている状態。アーセナルは背後を狙うことでダイレクトにゴールに向かうことができる局面ではあったが、サイドでジリジリと押し下げることを優先。リードをしていることもあってか、局面をきっちりと握る方を選択する。

 このアーセナルの判断により、試合は均衡した局面を迎える。アーセナルはサイドから押し下げるがそこから先の一手はなかなか見つけることができない。ウルブスは押し返して敵陣でのプレータイムを増やすことができない。どちらにもチャンスがないまま時間だけが過ぎていくのが前半の中盤。

 どちらかといえば押し込むアーセナルの方が理想的に時計の針を進めていたように思えるが、ボックス内の攻撃はシンプルなファーのクロスが中心。先制点のシーンと異なって純粋な競り合いとなるシーンが多かったので、あまりクリティカルではなかった。前節と同じくマドゥエケが高さを活かすターゲットとしての有用性をほんのり見せたくらいだろう。

 ウルブスは時間経過とともにアーセナルとデュエルで組み合うことができるように。サイドアタックでの縦に速い攻撃に対して、早めに囲い込むことでボールロストを誘発し、敵陣に入って行ける時間帯を作っていく。だが、そこから何かを引き起こすことができるかと言われると微妙なところ。ただ、アーセナルは2列目がカウンターを運びきれないので、重心だけが変わり、シュートがない停滞した展開は変わらなかった。

 ウルブスの初めてのシュートは前半の追加タイムに入ってから。アンドレのミドルがこの試合1本目のシュートであったがそれもクリティカルな侵入とはいえなかった。試合はアーセナルのリードでハーフタイムを迎える。

変化が見えた優先事項

 後半に変化を見せたのは追いかける立場のウルブス。5-4-1気味だった布陣をアームストロングが高い位置を取る形で修正。陣形を変更することが目的だったというよりは前から追う形にモデルチェンジする過程で結果的に布陣が変わったというイメージの方が近いかもしれない。

 アーセナルは左右に流れるギョケレシュへのロングボールを選択。それなりに収まるという点では悪くはなかったが、いかんせん2列目との接続がうまく行かなかった。

 ならば、非保持!ということで前からプレスにいくアーセナル。しかしながら広く幅を使いながらのポゼッションを行うウルブスに対して徐々にミドルブロックに。アロコダレへの強引な楔は後半も健在だったが、アームストロングの位置が近くなる分、落としを受ける選手が出てきてワイドへの展開が効いてくるようになった。

 WBからサイドの奥を取られるケースが出てきたアーセナル。徐々にエゼが中盤に組み込まれて5枚になり、SHが外側もカバーできるように修正を施す。

 苦戦気味だったアーセナルにとって光だったのは追加点である。後半初めての押し込むフェーズであっさりとゴールを決める。このシーンではまさしく「ウィガン的」な守備になってしまったウルブス。ホルダーはフリー、でも押し上げる意識は高いチームがあっさりと裏を取られるパターン。ライスに釣られて背後を空けてしまったモスケラの隙を逃さずにインカピエはゴールを沈めた。

 しかし、ウルブスはセットプレーから追撃。マネがセカンドボールからアーセナルの守備を2,3枚剥がすと、右サイドからセットプレーキッカーのウーゴ・ブエノのミドルが炸裂。リードを1点に縮める。

 アーセナルは60分から70分にかけてゆったりとポゼッションで押し下げ。まずはモリニューの追い上げムードを鎮火する。高い位置からのプレスは健在でアロコダレはサリバに任せるという信頼のもと、人を前から捕まえにいく選択をしていく。

 それでもこの日は2列目のロストが多く、繋げるはずの局面も繋げないアーセナル。ただし、押し返す局面を迎えたウルブスも大外からクロスを上げたいところだが、アーセナルのスライドが早く、なかなかギャップを作れることができない。チャチュア→ロドリゴ・ゴメスという攻撃色が強まる交代はそうした局面を打開するためのドリブラー投入だったが、これもさして効果を上げることはなかった。

 サカが負傷後退して以降、アーセナルはファストブレイクからゴールを狙っていく。特にトロサールは急ぐ姿勢を見せていたし、逆にエゼはそうした中でもボールをキープすることを優先した振る舞いを見せていた。チームにおいてどのように時間を過ごすか?の大枠は変わったように見えたが、テンポが早くなろうと仕留めきれないのがこの試合のアーセナルのアタッカー陣のクオリティ。2列目より前の選手で後半満足にプレーできた選手は一人もいないと言っていいだろう。

 そのバチが当たったのは後半AT。問題なくクロスの対応ができていたアーセナルだったが、この場面ではラヤとガブリエウが被ってしまい、ボックス内にボールが転がる形に。このボールをエドジーが蹴り込んでゴールをゲット。土壇場で追いつく。

 エミレーツでの再現を果たしたウルブスに対して、同様の再勝ち越しを突きつける元気はなかったアーセナル。あまりにも停滞勝ち点ロスを献上することとなった。

あとがき

 基本的にはローブロック守備のクオリティに概ね問題はないように思える。クロスは基本的に滞空時間の多いものばかりであり、アーセナルのバックスには常に跳ね返す余裕があった。確かにティンバーに疲労は感じたが、サイドを深く抉られたわけではないし、少なくとも2失点目のクリティカルな要因として挙げるのは個人的には無し。ノアゴールやモスケラを含めて2失点目を誰かの投入で直接的に防ぐのは不可能だ。

 後半の停滞の要因は紛れもなく2列目の前の選手たちのクオリティだろう。これだけ少ないタッチでのプレーが乱れてしまえば何もできない。本来であれば前に進める場面であっさりとボールを離してしまったり、ロストをするシーンが多すぎる。モスケラを突き飛ばすことが一番目立つようなパフォーマンスを見せてもらっては困るのである。

 この試合の流れはウーゴ・ブエノのゴール以降、10分間近くはローテンポのポゼッションで時間を潰し、サカが退いたそれ以降はスピードアップからトランジッションからゴールを狙う姿勢を強めたように見える。エゼだけが例外的にプレー選択が一貫してスローリーなままだった。

 もちろん、選手交代で流れを変えるのは普通のことではある。ただ、この日の前線のクオリティであれば殴り合ってもアーセナルに得がない。正直、これだけ過密でかつ前線がややショート気味ということになればこういう出来の日はある。同点以下ならばそれでも食らいついて行かねばならないが、この試合はそうではなかった。ならば、例外的なエゼの選択のように保持を試合のコントロールに振り切っても良かったように思う。クオリティが低いなら、低いなりに飲み込んで進むこともできた試合だ。

 押し込まれる時間帯が続いた79分と80分にそれぞれ素早くリスタートしたラヤのマネジメントには疑問が残る。GKのプレー選択はチーム全体のテンポを決めるもの。縦に急いで実りがない状態の中でチームを落ち着かせる選択肢をとっても良かったところだった。

 ただし、前提としてアーセナルは守り勝ってタイトルを取るチーム。ラヤとガブリエウの連携ミスはそういうスタイルのチームにとってあってはならないミスである。勝ち点ロスの一番の責任がこのミスにあるのは動かしようがない。

 いずれにしても過ぎたことは変えられない。順位表を眺めるのには勇気がいる領域になっていたが、次の試合によりよく臨めるように準備を進めるだけ。

試合結果

2026.2.18
プレミアリーグ
第31節
ウォルバーハンプトン 2-2 アーセナル
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:61′ ウーゴ・ブエノ, 90+4′ エドジー
ARS:5′ サカ, 56′ インカピエ
主審:ポール・ティアニー

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