■両エースの揃い踏みで新体制の船出を飾る
「新しい鹿島を作り上げる」という目標をぶち上げて、レネ・ヴァイラー解任後の監督の就任した岩政監督。初陣の相手となるのはコロナウイルスでの離脱者に苦しみながらもルヴァンカップで神戸を下した福岡である。
福岡のスタメンは大枠で継続。ベンチメンバーは戻ってきたが、おそらくコンディションはまだ整っていないのだろう。城後のCHやルキアンがサイドに出たりなど適正ポジションとは異なる起用も継続されている。
ともにフォーメーションは4-4-2。そんな中で保持でポジションを動かしていこうという意識があったのは鹿島の方。福岡の2トップの脇に樋口が顔を出し、ジョン・マリがこれについていこうか悩んでいる形だった。
岩政監督はおそらく鈴木をきっちりと王様に据えたいのだろう。ヴァイラー時代以上に鈴木のプレーエリアは広く自由度は高め。2列目の土居、カイキ、仲間の3人はポジションを守ることよりも、鈴木が降りることで穴が空いた前線に顔を出すことをとにかくサボらないというのが使命だった。
2列目の並びの規律意識は二の次。むしろ、意識的に同サイドに密集(主に左サイド)を作りながら逆サイドに展開する形で、大きく相手を横に振る展開を作っていた。
一方の福岡はシンプル。トップにボールを当てて競り勝つという形で前進していく。ぶっちゃけ単純でワンパターンではあるものの、何せパワーがある。筋肉最強。鹿島はファウルでしか止められない場面も多く、なかなかに苦戦。
福岡の攻撃はクロスはペナ角付近からインスイングになるような形で放り込む形を重宝。特にドリブルで1人でこの間合いをとることができるクルークスからの形は有効であった。
互いの攻撃パターンの中で先制したのは鹿島。右サイドに流れる鈴木がオウンゴールを誘発。新体制でも中心的な役割を果たすことが確実なエースが初ゴールを呼び寄せる。
オープンな形では両チームとも五分五分の展開。人数をかけた鹿島の攻撃は福岡のカバーしきれないスペースをつくフリーランができてはいたが、ネガトラにおいて2列目が戻りきれず、ピトゥカがサイドにカバーに出ていくシーンも何度か見られた。
後半、福岡は3バックにシフトチェンジ。WBからのクロス攻勢を強める。陣地回復に苦しむ鹿島は安西を投入。非保持においては5バック気味の形を作りながら迎撃。続く3枚替えで5-3-2の形できっちりと陣形を固めたという感じである。
後半になるとここまで少人数で戦ってきた福岡はガス欠気味に。両チームとも前半ほどの強度のトランジッションは見せることができなくなる。泥試合における鹿島の狡猾さはさすが。ファウルが多い悪癖は終盤まで直らなかったが、いちいちモメる感じは相手からすると疲れるものだろうなと思う。
試合が決まったのは後半追加タイム。GKの村上を上げた福岡はニアでクロスを跳ね返されて大ピンチに。独走したエヴェラウドのシュートは一度は阻まれるも、冷静に再度押し込み追加点。両エースが実質揃い踏みだった鹿島が岩政新体制の船出を勝利で祝うことに成功した。
試合結果
2022.8.14
J1 第25節
鹿島アントラーズ 1-0 アビスパ福岡
県立カシマサッカースタジアム
【得点者】
鹿島:10′ 平塚悠知(OG), 90+3′ エヴェラウド
主審:小屋幸栄