■高い身体能力×組織力の掛け合わせで20年ぶりの決勝Tへ
グループステージ突破をかけた直接対決。エクアドルは目の前のセネガルを上回ることができれば突破が確定。引き分け以上というのが突破の要件となる。一方のセネガルは引き分けでも突破の可能性は数字上は残るが、オランダが複数失点でカタールに敗れるという実現見込みが低い他力が絡む必要がある。こちらも実質目の前のセネガルを上回る勝利を手にすることが突破要件と言えるだろう。
より厳しい突破要件を持っているチームの方が吹っ切れたパフォーマンスを見せることができるというのはサッカー界のあるあるである。この試合もこのあるあるに則り、のびのびとパフォーマンスをしていたのはセネガルの方だった。
セネガルはボールを奪うと素早く縦に。左サイドはハーフスペースの裏抜けからパブ・ゲイェが飛び出してエリア内に侵入。折り返しからチャンスメイクを作っていく。右サイドはシンプルに大外の裏抜けを重ねる形で突破していく形である。
前節のカタール戦でもそうだったが、セネガルは理屈の上では突破できない状況でも運動能力の高さで解決してしまう場面が多い。この試合でも右サイドでは大外に縦に並んだSB→SHのパスで抜け出してエクアドルのサイドをエグるという現代サッカーのポゼッションにおける攻略としてはあまり見ないルートでチャンスを作り出していた。
セネガルのゴリゴリにエクアドルは対応しきれなかった。メンデス不在による4-3-3へのシフトも裏目でセネガルはカットインからアンカー脇のスペースに侵入を繰り返すことができていた。
一方のエクアドルは攻め手が見つからない。セネガルのプレスはマンマークともゾーンともつかないものだが、IHとWGが前向きの矢印を気まぐれに出してくるスタンスに手を焼いていた。4-3-3で後方の人数不足による引っ掛けが多発していたため、途中からカイセドが低い位置に降りてプレスの脱出をサポートするように。これによりミドルゾーンまでボールを運ぶ頻度が増えたエクアドル。しかしながらアタッキングサードに繋ぐ段階でパスミスが出てしまい、セネガル陣内の広大なスペースを打ち壊すまでには至らない。
セネガルのバックラインは組み立ての危うさはあった。だが、エクアドルがそもそも前に出ていけない状況だったことに加え、セネガルが迷いなく前に放り込むことができていたため、彼らの足元の組み立てはアキレス腱にはならなかった。
そうした中で先手を奪ったのはセネガル。エリア内で倒されたサールが自ら決めて突破に必要なリードを奪う。PK判定自体はやや微妙な印象を受けたが、アバウトなボールでも前に出ることができるセネガルの強みが出た場面とも言えるだろう。
後がなくなったエクアドル。後半にシステムを4-4-2に変更。セネガル相手にリスク勝利で間延びしつつもダイレクトに2トップに当てる形で前進を狙っていく。
しかしながら、セネガルはしたたか。前半とは異なり、前に出ていくことを抑制した4-1-4-1で中央を封鎖し、エクアドルの攻撃の動線をサイドに限定。右サイドからのプレシアードのオーバーラップもヤコブスが封じており、うまく丸め込むことができていたと言えるだろう。
苦しいエクアドルだが、セットプレーの好機を活かして先制する。決めたのはカイセド。ニアでのフリックをファーで待ち構える形で同点を奪う。これにより、再び2位はエクアドルのものになった。
しかしながら、すぐにセネガルはやり返す。こちらも負けじとセットプレーでの反撃。FW顔負けのボレーを決めたクリバリにより、セネガルは再び前に出ることに成功する。
以降はエクアドルがうまくセネガルに丸め込まれてしまった。セネガルは前に出て行ける時と構える時のメリハリが見事。正直、ここまでの戦いは大味な印象が先行していたセネガルだったが、この試合の後半は出ていくところと控えるところのさじ加減が絶妙。これまでには感じられなかった組織的な意思統一の強固さを感じさせる試合運びだった。
CFからサイドに配置を変えたディアは対面のエストゥピニャンを簡単に手玉に取っており、背負ってはターンを決めまくる。セネガルがリード後にも受け身一辺倒にならなかったのは彼の功績が大きい。
最後のエクアドルのパワープレーもクリバリとメンディを中心に跳ね返してみせたセネガル。終了のホイッスルは20年ぶりの決勝トーナメント進出を決める合図となった。
試合結果
2022.11.29
FIFA World Cup QATAR 2022
Group A 第3節
エクアドル 1-2 セネガル
ハリファ・インターナショナル・スタジアム
【得点者】
ECU:67′ カイセド
SEN:44′(PK)’ サール, 70′ クリバリ
主審:クレマン・トゥルパン