■老獪さが打ち砕いたルーマニアの希望
ルーマニアはこれまでの予選においてのドイツの対戦相手とは一線を画した戦い方だった。コンパクトな守備ブロックではなく、マンマーク気味のハイプレスでドイツのポゼッションを阻害するアプローチはEURO以降のドイツの相手としては初めて対峙するタイプである。
ドイツはこのハイプレスに対して、横にパスを振りながら対応。バックラインの枚数を確保し、相手のプレスのきっかけとなる人を絞らせないアプローチをかけていく。前進の手段はフリーの選手を作ってからの縦パス。ライン間をどこまで潰されるかのチキンレースである。
そんな流れの中、後方のスペースが空いている分、イキイキしていたヴェルナーが裏抜けからPKを獲得。しかし、これがOFRで取り消される。すると、その直後にロングカウンターからルーマニアが先制。ハジの強烈なミドルがドイツのゴールを打ち抜いて見せた。
この場面に限らず、ドイツは少々ケーラーが雑な対応が多かったの気がかり。失点シーンにおいてはあっさりとかわされてしまった。
ルーマニアは先制点以降も戦い方を変えずにドイツに向かっていく。ドイツにとっては敵陣まで迫れば、これまでの相手ほど守備の人数はいない状況だったので、攻略に向けて光がある状況ではあった。それでもルーマニアの前線の脚力はなかなかでハイプレスをロングカウンターの二刀流が効く限り、ドイツはルーマニアに苦しめられ続けた試合だったといっていいだろう。
20分を過ぎるとだいぶドイツが押し込む時間を増やす。右サイド裏からエリア内に迫っていくと、徐々にゴールの匂いがするチャンスは増えていく。気がかりだったのは左サイドのサネ。右サイドの面々とは対照的にこの試合ではこれまでの試合のような存在感を見ることが出来なかった。
後半も両チームのスタンスは変わらず、攻めるドイツとカウンターのルーマニア。ルーマニアは隙あらば前5枚はプレスに行くなど間延び上等の正面衝突のスタンスは後半も継続する。
そんなドイツを救ったのはグナブリー。深い懐を見せてからのコントロールショットでようやく同点となるゴールを手にする。
以降はドイツがワンサイドに攻め立てる流れに。さすがに70分も過ぎるとルーマニアの抵抗もだいぶ弱まる。
決め手になったのはセットプレー。ニアすらしに飛び込んだのはトーマス・ミュラー。彼らしい老獪さがあふれるゴールで終盤にルーマニアを退けたドイツ。健闘したルーマニアだったが、ドイツから勝ち点を奪うことはかなわなかった。
試合結果
2021.10.8
カタールW杯欧州予選 第7節
ドイツ 2-1 ルーマニア
フォルクスパルク・シュタディオン
【得点者】
GER:52′ グナブリー, 81′ ミュラー
ROM:9′ ハジ
主審:ジュネイト・チャキル