■足りなかったスモールスペース攻略の手段
カタールワールドカップの出場権をかけたアジア最終予選では専制守備からのカウンターでの反撃というスタンスを貫いた中国。しかしながら、ウー・レイ以外の選手がほとんど通用せず、頼みの帰化選手たちは衰えが目立ってしまったところに国内リーグの地盤沈下が重なったため、サウジアラビア、オーストラリア、日本といった同グループの強豪にはほとんど歯が立たなかった。
この試合においても中国の基本線は5-4-1の撤退守備。ただし、中国も何もしないまま指をくわえて撤退するのは嫌だったようで、立ち上がりは高い位置からのプレッシングで日本を揺さぶる。
日本はこれに対して、幅を使いながらいなすというよりはハイテンポの流れに乗っかりながら縦にボールを刺すという形で付き合った様相が強かった。逆に日本もプレッシングを強気でかけていくことで反撃。日本の右サイドは食いつきがよすぎたため、中国にいなされてしまう場面もなくはなかったが、基本的にはアップテンポな展開に乗っかる序盤戦を過ごした。
10分もすれば中国のプレスは沈静化。CBまではプレッシャーをかけにいかず、横幅もナローに設定。縦横共にコンパクトな陣形を維持することを優先した。日本はこの動きにはだいぶ苦労した。そもそもこの日のバックラインは荒木、佐々木、中谷という顔ぶれ。大迫も含め、撤退守備に専念した相手にあれこれ保持で引き出しがあるタイプの選手ではない。
最終ラインの中で唯一、高い位置での仕事ができる小池は押し込める時間帯には右サイドのハーフスペースを主戦場としてチャンスメイクに貢献できていた。同サイドの宮市との関係性も良好で、森島と佐々木という広島のWBを間引きされたような左サイドに比べれば連携は良好だったといっていいだろう。
中国の5-4-1の専制守備ブロックを壊すにはどうしても人がひしめくPA内をなんとかする必要がある。そのためにはスモールスペースを攻略する武器がいくつか必要。この日のアタッカー陣の中でそれができそうだったのはライン間でのボールの引き出しと細かいボールタッチで相手を外せる脇坂とオープンスペース以外にもミクロな動き出しでもズレを作れる宮市の2人。この2人を軸に日本は中国のゴールに迫っていく。
中央から右サイドを中心に押し込んでくる日本に対して、中国は割り切ったロングボールから反撃。しかしながら日本のこの日のバックラインはロングボールの迎撃には非常に向いているメンバーだったので、そこまで大きな問題にはならない質の物。80分のセットプレーを除けばあわやというシーンを作るのにも苦労していた印象だ。
失点の心配は薄い日本だったが、保持において打開できる空気は薄い。5-4-1の中国のブロックに対しては徐々に日本のバックラインの保持における引き出しの少なさから苦しむ場面が目立つようになっていく。宮市や脇坂のように狭いスペースでも活躍できる選手たちもブロック攻略には重要だが、大外から抉ったり早い段階でクロスを入れたりなど少々のアクセントになるような動きもこの日の日本のレパートリーにはなかった。
したがって、選手交代によって宮市や脇坂が下がると、狭いスペースを打開するための手法はむしろ削られていった印象だった。クロスへの強さを見せる町野の投入や大外に張れる相馬などがいることを踏まえれば、終盤はもう少しクロス攻勢に出てもいいはず。日本の選手がやたら被って決定機を生かせない場面は目についたが、裏を返せば中国の選手が競り合えていない証拠でもある。
よって、ハイクロスはもっと積極的に導入しても良かったように思えたが、特に大外にポイントを作ってクロス主体で壊していこう!という動きはなし。結局日本は最後まで中国のゴールを破ることが出来なかった。
試合結果
2022.7.24
E-1フットボールチャンピオンシップ 第2戦
日本 0-0 中国
豊田スタジアム
主審:ニボン・ガミニ