■ミスに漬け込んだ天敵に完敗
FC東京にとって浦和は天敵。2020年こそシーズンダブルを達成したものの、その年以外での勝利は2013年までさかのぼる必要がある。FC東京にとっての浦和は相性としてはとても悪い相手である。
立ち上がりは共に様子見の様相が強かった。どちらのチームも今季はポゼッション型に取り組んでいるが、この試合では蹴るスピードは早めに。浦和はアンカーに岩尾が入り、伊藤とトップ下の小泉が3センターを形成するようないつもの陣形だったが、裏を狙うパスを使うタイミングはいつもよりも早かった。
FC東京は青木が負傷欠場の影響からかフォーメーションからダイレクト志向が垣間見えた。4-4-2でSHに渡邉と松木。中盤はアンカーシステムではなく梶浦と東が並ぶ2CHを採用した。よってこちらは前4枚にダイレクトに当てる形。前線のポジションはシームレスで松木が内側に入ったり、レアンドロがサイドに流れたりなど自由度が高かった。
どちらのチームも攻撃には苦しんだ。浦和は前線に運べる機会を時たま作ることができるが、松尾、モーベルク、大久保の3人はボールを持つと中央に突っ込んでいってしまい、守備ブロックの網に引っかかってしまう。20分の小泉→大久保のパスのように、大外やPAの脇のスペースに抜け出すことができればチャンスになるのだが、そうした狙いは稀。したがって、やたらとシュートブロックに引っかかる攻撃が目についた。
FC東京も序盤は長いボールからカウンターの好機を得てはいたが、シンプルにカウンターアタックが上手じゃない。特にレアンドロがボールを持っているときは他の選手が戸惑い気味で、どうなるか様子を見ているような感じ。これでは動き出しを望むべくもない。
両チームとも攻撃が停滞する中で先制点を奪ったのは浦和。20分過ぎからやたらと保持でつなぐ志向を強めたFC東京のミスからボールを奪い、ショートカウンターを発動。梶浦のバックパスをかっさらった松尾からモーベルクへのラストパスが決まり先制する。より中盤からのプレスの動員に積極的だった浦和にご褒美が入った形ともいえるかもしれない。
ビハインドで後半を迎えたFC東京。4-3-3にシステムを変更し、プレスの積極性を高めていくことで浦和にプレッシャーをかけていく。しかしながらプレスで来た方が浦和はやりやすかったかもしれない。相手が穴を空けたスペースにスムーズにつなぐ浦和を前にFC東京が躍動。徐々に陣形は間延びしていく。
前半、浦和がやたらとシュートブロックに合っていた中央も徐々にFC東京はケアが難しくなる。2点目の伊藤のミドルが決まったシーンはFC東京の中央の守備が手薄になっている裏返しともいえるだろう。
カウンター局面が増えた浦和において後半輝きを増したのがモーベルク。自ら持ち運ぶことができるのはもちろん、止まって味方を追い越す動きを使うのもお手の物。3点目は彼を追い越した江坂を起点とした得点であった。
プレスが空転したFC東京はその後も反撃のきっかけを見出すことが出来ず。ディエゴ・オリベイラが下がった後はさらにその状況が顕著に。中盤がつなげない状態でボックスストライカーの山下が登場しても機能しないのは当然である。
試合はそのまま3-0で浦和の勝利。FC東京の指針転換により生まれた隙を見逃さず、一気に畳みかけての完勝に成功した。
試合結果
2022.7.10
J1 第21節
浦和レッズ 3-0 FC東京
埼玉スタジアム2002
【得点者】
浦和:31‘ ダヴィド・モーベルク, 50’ 伊藤敦樹, 70‘ 大久保智明
主審:清水勇人