■ミッション失敗の諦めのつく決勝点
第2節も残り2試合。だが、ここまで連勝のチームはただ1つ。連勝を決める可能性を残した3チームのうち、トリ前で登場するのはブラジル。ゴリゴリの優勝候補としての貫禄を見せつけた彼らが2節目に戦うのは初戦を勝利ししたスイス。こちらも勝てば連勝で突破を決めることができる。
試合は非常に手堅い展開になった。ボールを持つ機会が多いのはブラジルの方。バックライン+アンカーの組み立てにIHが時折降りるというオーソドックスな形で試合を組み立てる。なお、右のSBにはミリトンというゴリゴリのCBが入ったが、左のサンドロとはそこまで高さを変えておらず、明確に3枚のCBでビルドアップ!といったようなことは見られなかった。
スイスの非保持のスタンスは明快。ブラジルのCBは完全に放置。優先事項はコンパクトな陣形の維持で、裏へのパスは全て根性でついていく形である。ライン間で前を向かせることは御法度であり、この部分はブラジルにはほとんど許さなかった。
というわけでブラジルの組み立ての鍵になるのはCB。マルキーニョスがボールを持ちながら左サイドを押し上げて組み立てを行っていく。ヴィニシウスの対面相手が1枚になるような形を作ることができればうまくいくが、その状況を作り出すことができない。
右サイドにおいてはハーフスペースの裏抜けを狙っていたが、これも折り返しのクロスを入れる前にカット。前半唯一の決定機だった右サイドからのクロスをヴィニシウスがヘッドしたシーンは守護神ゾマーが立ちはだかりシャットアウトする。
スイスの色気がなかったのはボール保持でも同じである。トランジッション局面で何度か中央で縦に早く進める局面を迎えていたが、彼らの優先事項は一度ボールを落ち着かせること。下手にボールを失って、ピンチを迎えることは避けなければならない。ドローは彼らにとっては悪くない結果。それでいて、ブラジルの前線のチェイシングをいなせるくらいのポゼッションスキルがあるのだから、相手からするとスイスは厄介極まりない。
後半、ブラジルはロドリゴを投入。パケタに比べるとさらに攻撃的なタレントを置くことに。保持では4-3-3をキープしつつ、非保持は4-4-2に移行する。スイスのスタンスは前半と同じ。エンボロを前に残して9人でブロックを組んで手堅く試合を進める。
4-2-3-1になり、ブラジルの前プレの脅威が減った分、スイスは前に進む機会が増えた後半の立ち上がり。サンドロの裏をとった右サイドからの侵攻はこの試合最大のチャンス。しかし、これをブラジルの守備陣がきっちり引っ掛けて凌ぐと、以降はブラジルのペースに再び傾いていく。
徐々に中央への縦パスが増えていたブラジルの攻撃。スイスは段々と中央を開けていくシーンが増えていくようになる。リシャルリソン、ロドリゴとポスト役が増えたのはスイスにとって厄介。中央の縦パス→サイドへの展開→フィニッシュという流れもこれまで以上にスムーズになる。
ヴィニシウスがネットを揺らしたシーンもややアクシデンタルではあったが、中央を破られた結果、大外のケアの枚数が足りなくなった形。スイスからすると0-0をキープしたいのだから、アクシデンタルなことが起きていること自体がありがたくない。
するといよいよその時がやってくる。サイドからヴィニシウスがドリブルから横パスを仕掛けるとここからワンタッチを2連発。ロドリゴのポストとカゼミーロのフィニッシュはあまりにスピーディー。スイスからすると気づいたらネットが揺れていた状態だったのではないだろうか。
静的に試合を運びつつ、最後にはこじ開けられてしまったスイス。ドローで最終節を有利に迎えたかったスイスだが、その願いは叶わず。しかし、まぁあれだけのスキルのブラジルの決勝点をまざまざと見せつけられた諦めもつくのかもしれない。
試合結果
2022.11.28
FIFA World Cup QATAR 2022
Group G 第2節
ブラジル 1-0 スイス
スタジアム974
【得点者】
BRA:83′ カゼミーロ
主審:イヴァン・バートン