■3バックのドイツの狙いは
この試合のドイツは3バックを採用。イングランドの4-4-2に立ち向かうこととなった。
基本的には保持で仕掛けを見せたのはフォーメーションを変えてきたドイツだった。ドイツの攻めの方針として大きいところは2列目にライン間で前を向いてもらうことであることは間違いない。前節のイタリア戦ではサネとグナブリーの両SHがこの役割をこなしていたが、この試合でもムジアラが執拗にライン間を狙っていた。
だけども、この試合のドイツの3バック化はそれ以外のボールの動かし方を作ることに目的があったように思う。その中心になるのは左のCBに入ったシュロッターベック。フライブルク→ドルトムントへの移籍が発表されたレフティーは配球力が自慢の様子。この若いCBをビルドアップで活用することが3バック採用の意義の1つだろう。
左サイドから無理なくイングランドの1stプレスラインを越えるシュロッターベック。イングランドからすると、彼をマークするためには右のSHに入ったサカが出ていくのが自然な感じもするが、ドイツは同サイドのWBであるラウム(確か、こちらも代表初出場)が高い位置を取るため、迷いなくシュロッターベックを捕まえに行くことができない。
よって、ここを見るのはCHにフィリップスに代わって入ったベリンガム。しかし、背後を空ければ間のムジアラが受けるスペースが空いてしまう。というわけでイングランドはここでも解決策を見出すことが出来ず。
逆にシュロッターベックはとてもイキイキしていた。大外のラウムはもちろん、その1つ奥には裏を取ることができるハフェルツもいる。そして対角のパスも蹴ることができる。自在だった。
時には右のWBのホフマンも逆サイドまで顔を出すことも。左に比べると右は仕上げのサイドだ。時に定点攻撃にこだわりすぎてシステマティックさに傾倒しすぎていると批判されていたレーヴ政権と比べると、ハフェルツやホフマンのような動的な要素はアクセントになっているように見える。
守備においてはドイツは4-4-2を採用。右のWBであるホフマンはSHに留まることで、イングランドの組み立てにかみ合わせる形を作る。
イングランドの保持は縦に速く進むやり方の方があっているように見えた。4分のスターリングのポストからのつなぎのように、前方のタメに対して後ろからどんどん追い越していく選手が出てくるやり方がこのイングランドにはベターなように見えた。
2列目は得点力もあるし、CHも前のタメに合わせて抜け出すのは得意である。先述の4分の場面でケインのポストに抜け出したのはライスであった。
その一方で、ドイツを押し込む定点攻撃になると一気にパターンが単調になる。WGへのサポートのやり方が確立されておらず、大外からサカとスターリングがカットインしてシュートに持って行くくらいしか型がなかった。右のサカからの攻撃はある程度は形にはなっていたが、得点の脅威を与えられるところまで行っていたかは微妙なところである。
大まかには試合はその調子で進んでいた。そして後半に先制点を奪ったのはドイツ。右サイドからキミッヒがボールを持ったところで、ハーフスペースを抜け出したホフマンにラストパス。大外を走ったクロスターマンが影のMVPだろう。イングランドはこの動きでだいぶ外に引っ張られた。
ドイツはここからメンバー交代で攻勢を強める。ただし、ライン間を大事にする流れは変わっていない。ライン間を仕留めるムジアラに代わってヴェルナーが入るのならば、ミュラーがライン間の仕事を増やすというように、役割をこまめに調整している。
イングランドは終始ボールをどこに追い込みたいかがわかりにくい守備だった。しいて言えばSHが絞ったポジションを取ってセカンドボールを拾う形をつくってはいたが、なかなかチャンスを作れない。
ケインは周りにプレスを促していたが、ドイツはそれをあざ笑うかのように裏に抜けるボールをポンポン繰り出していた。トップをヴェルナー、サイドをハフェルツにしたのはこうした陣地回復の手段を残していたからだろう。
しかし、イングランドは土壇場で追いつく。グリーリッシュが入った左サイドから押し込む糸口を見つけると、やや偶発的なボールの流れからシュロッターベックがケインを倒してPK献上。これを仕留めてイングランドは同点に。
内容もスコアもギリギリのところで踏みとどまったイングランドがドイツから勝ち点3を取り上げて見せた。
試合結果
2022.6.7
UEFAネーションズリーグ
グループA3 第2節
ドイツ 1-1 イングランド
アリアンツ・アレナ
【得点者】
GER:50′ ホフマン
ENG:88′(PK) ケイン
主審:デル・セーロ・グランデ