■迫力不足を補うハイプレスで逃げ切り
スペインのスタンスはボール保持傾倒で一貫している。そのため、スペインの試合はまずは非保持側がどのようなアプローチを仕掛けるか、そしてその非保持側の手に応じて、スペインがどのようにボールを動かしていくか?が見どころになる。
この試合のスイスのスタンスは外切りだった。WGが内側にパスを誘導し、スリーセンターのところボールを奪い取っていく。外にボールを出させないように制限し、狭くエリアを限定する。
スペインはこのスイスの狭く守るアプローチに対して反抗する形を採用。よって、スイスに守るエリアを広げるためのパスワークを行う。端的に言えば大外を使ったパスワークをすることである。
具体的な案としては背中でパスコースを切っているWGの頭を越えるようなボールをSBに送る。もしくはIHが移動して大外にパスコースを作るなど。まずは外にルートを作り、そこを経由点として相手を押し下げるアプローチを仕掛けていた。
大外を取るとここからはハーフスペースへの裏抜けでアタック。ただ、スイスはこれに対しては無理なく対応。大外→ハーフスペース裏の流れに最低限対応することはスペインと対峙する上での足切りラインのように思える。
ハーフスペースアタックを封じられるとエリア内に入り込む術が見えてこないスペイン。やや単調なハイクロスではスイスの牙城は崩せない。PAに入っていく迫力の部分はやや足りないが、それを補うのはハイプレスである。
そして先制点はそのハイプレスから。フェラン・トーレスの追い回しでキュマルトのパスをカットすると、ボールを受けて体の強さを見せたのはマルコス・ジョレンテ。相手を剥がすとサラビアにラストパスを送り先手を奪う。スペインのハイプレスが炸裂し、貴重なリードを奪う。スイスとしてはスリーセンターが見事にバイタルを締める守備を続けていただけに手痛い失点であった。
スイスは長いボールを差し込みつつ、敵陣深くまで押し込んだ際には右サイドのシャキリが左サイドに出張するなど、オーバーロード気味に手数をかけるボール保持で相手を揺さぶっていく。後半にはプレスも強化。降りるエンボロがボールを受けて、自ら運んでいくパターンを作るなど徐々に反撃の機運を見せる。左サイドのツバーとリカルド・ロドリゲスは交代するまではスペインを押し込める槍になっていた。
撤退気味になるとやや気圧され気味なスペイン。後半はハイプレスが止まったことでだいぶピンチに。長いボールの対応にも怪しさがあり、ウナイ・シモンがゴールマウスを空けての飛び出しに微妙に間に合わなかったり、エリック・ガルシアが空振りで大ピンチになったりなどかなり危険な状況もあった。
最終盤にはむしろスペインを攻め立てまくっていたスイス。同点になっていてもおかしくない展開だったが、水際で意地を見せたスペインが前半の先制点で逃げ切り勝利を挙げることとなった。
試合結果
2022.6.9
UEFAネーションズリーグ
グループA2 第3節
スイス 0-1 スペイン
スタッド・ドゥ・ジュネーブ
【得点者】
ESP:13′ サラビア
主審:セルダル・ゴズビュク