■最小限で最大の結果
6-0というスコアを知らなければ、この試合がこんなに得点が入るとは思えない立ち上がりだった。両チームともスローリーな展開で相手のバックラインがボールを持っているときはまずプレッシングにはいかない。それに加えて両チームともバックラインからショートパスをつなぐ展開になっていたため、攻守の切り替えが少ない立ち上がりだった。
それゆえ、一刺しの重みが試合の流れをグッと変えうる展開である。別格だったのは大迫。右サイドからのクロスをあっさり決めて、早々に先手を奪うとポストからのキープで相手を押し下げることで追加点を奪う。
ロティーナ体制になって以降は人数をかけたサイドの崩しが多かったのが神戸の印象だったが、この試合はあまりそうした動きはなかった。どことなく省エネというか、過酷な日程面を考慮してなのか、ピッチを広く使って相手を動かすというよりは、スイッチを入れたら少ない手数で崩し切る意識が強かった。
その手段となっていたのが大迫のポストプレーや空中戦の強さ、あるいはWGのスピードである。郷家、汰木の2人のWGはサイドからの抜け出しでそれぞれ得点をゲット。大外から相手をあっさり置き去りにしたり、斜めに入り込んでシュートまで持ち込んだりとあらゆるパターンでゴールに迫っていたのが印象的だった。
そういう意味ではロティーナサッカーの浸透度を図るといった側面においてはあまり参考にならない試合かもしれない。もっともそれは仕方ない部分だと思うけど。前節は休養だったチェンライに比べれば日程は詰まっているし、環境自体も過酷。毎試合、全てを出し切るのはさすがにしんどいだろう。抑えるところを抑えて勝てるのならばそれに越したことはない。
チェンライにとっては中途半端なラインの高さの設定ゆえにWGのスピード勝負に引きずり込まれた感じだろう。ボールホルダーにプレスをかけにくい状況においては神戸が裏を狙うのは当然。チェンライが狭く守った中央を経由せずとも神戸は大量得点を重ねることが出来た。
後半はテンポを上げて意地を見せたいチェンライだったが、神戸はそっちが撃ち合うなら付き合うよ?というスタンス。交代選手が入った5点差リードの状況からイキイキとプレスをかけ出すという状況はこれまでのサッカー観戦歴の中でもあまりお目にかからない珍しい状況だった。
リンコンの抜け出しと大崎のミドルで追加点を奪った神戸が完勝。省エネかつ大量得点という最小限で最大の結果を得ることに成功した。
試合結果
2022.4.22
AFC Champions League グループステージ
第3節
ヴィッセル神戸 6-0 チェンライ・ユナイテッド
ブリーラム・シティ・スタジアム
【得点者】
神戸:6′ 大迫勇也, 25′ 38′ 汰木康也,32′ 郷家友太, 58′ リンコン, 74′ 大崎玲央
主審:モハメド・ハッサン