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「スタイルキープに立ちはだかる2つの懸念」~2022.12.26 プレミアリーグ 第17節 アーセナル×ウェストハム プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第17節
2022.12.26
アーセナル(1位/12勝1分1敗/勝ち点37/得点33 失点11)
×
ウェストハム(16位/4勝2分9敗/勝ち点14/得点12 失点17)
@エミレーツ・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去5年の対戦でアーセナルの9勝、ウェストハムの1勝、引き分けが2つ。

アーセナルホームでの対戦成績

 過去10戦でアーセナルの9勝、ウェストハムの1勝。

Head-to-head from BBC sport

  • アーセナルは直近28試合のプレミアのウェストハム戦で2敗しかしていない(W21,D5)。
  • ウェストハムは2-0で勝利した15-16シーズンの開幕戦を除き、直近12試合のうち11試合のアーセナルとのアウェイゲームに敗れている。
  • ボクシングデーでの対戦は3回目。過去2回はアーセナルホームの1998年とウェストハムホームの2013年でいずれもアーセナルが勝利している。
https://www.bbc.com/sport/football/64022710

スカッド情報

Arsenal

・軽微な負傷を抱えるオレクサンドル・ジンチェンコと冨安健洋の復帰をアーセナルは望んでいる。
・エミール・スミス・ロウにはフィットの可能性があるが、膝を負傷したガブリエウ・ジェズスは欠場。リース・ネルソンも負傷欠場。

Westham

・足首の問題を抱えているジャンルカ・スカマッカとふくらはぎに問題を抱えているマイケル・アントニオには欠場の可能性。
・W杯で負傷と病気を抱えていたナイーフ・アゲルドは当日判断。

Match facts from BBC sport

Arsenal

  • 勝てばクラブレコードである開幕からの7戦連続ホームゲームでの勝利に並ぶ。昨季からだとホームのリーグ戦は9連勝中。
  • 1987年にノッティンガム・フォレストに敗れて以来、ホームのボクシングデーでの試合は13試合負けなし。現在は10連勝中。
  • 2007年以来初めてクリスマスを首位で迎える。しかし、この状況から直近5回いずれもリーグタイトルを逃している。
  • クリスマスに2位に5ポイント以上をつけてプレミア優勝を逃したチームは95-96のニューカッスルのみ。
  • 開幕から全ての試合で得点を挙げている唯一のチームであり、失点数もリーグ最小タイ。
  • ボーンマス相手に1-1で引き分けたミケル・アルテタ就任初戦からちょうど3年。
  • エディ・エンケティアは直近10試合の先発した公式戦で10ゴール。
https://www.bbc.com/sport/football/64022710

Westham

  • 18-19シーズンの開幕戦以降、初めてのリーグ戦4連敗の危機。
  • 2022年においてアウェイで11敗しており、12敗した2013年以来最も悪い数字。
  • 今季の7試合のアウェイでのリーグ戦で1勝、3得点しかできていない。
  • 負ければ開幕16試合で10敗となり06-07シーズン以降最悪の数字。
  • 直近8年で唯一のボクシングデーの勝利は2016年に4-1で勝利したスウォンジー戦。
  • デビット・モイーズは公式戦のアウェイでのアーセナル戦に17敗しており、他のどの相手よりも負けている。
https://www.bbc.com/sport/football/64022710

予想スタメン

展望

ウェストハム停滞の要因は?

 中断明けのアーセナルの初戦の相手はウェストハムである。2年連続で上位に進出しながらも、今季はここまで16位と苦しんでいる。W杯によってさまざまな要素はリセットされている可能性もあるが、中断前の振る舞いを中心に今季のウェストハムを見ていこう。

 そもそも、なぜウェストハムがここ数シーズン健闘していたかというとセンターラインの充実が大きな要因である。強固なブロック守備と鋭いカウンターを両立できていたからこそ、ウェストハムは安定した成績を残せていたのである。

 ウェストハムが良くない時は4-4-2のブロックが冗長に縦にダラっと間延びするのだが、今年に入って明らかにそうした間延びをする試合が増えた。ソリッドな守備を維持できないのがまずは今季の不調の理由の1つである。

 では、コンパクトなブロックを維持できない理由はどこにあるか。真っ先に思い付くのは猫の目のように毎週メンバーが入れ替わる最終ラインである。オグボンナはいつまで経ってもリーグ戦の序列争いに食い込む様子はないし、モロッコ代表を見る限り期待できるアゲルトもここまで出番がない上にワールドカップでの負傷で離脱している。

 実質、CBはズマとドーソンの2枚のみ。だが、今節もズマの出場が危ぶまれるようにこの2人とて稼働率は盤石ではない。本来はSBのクレスウェル、コーファル、ジョンソンなどは5バック、4バック問わずCBに駆り出されている状況だ。ここまでほぼCB起用になっているケーラーも「こんなはずじゃなかった」と思っていたとしても不思議ではない。

 攻撃面では前線の個々の不調が目立つ。特に深刻なのはボーウェンである。特にフィニッシュにおける淡白さは昨シーズンとはまるで別人。ヒットマンのようにゴール前で待ち構えていて、淡々とゴールに押し込んでいく昨シーズンの姿は見る影もない。以前は加熱していたワールドカップ待望論がいつの間にか消え失せてしまうほどのパフォーマンスである。本人としてはここからを反撃のシーズンにしたいはずである。

 CFはアントニオからスカマッカにシフトチェンジした。アントニオはスカマッカと併用する形で左サイドを軸に裏抜けによる陣地回復とクロスによるチャンスメイクに徹している。これは起用法による変化というよりも、昨シーズン終盤の1トップで起用されていた時代からこうしたプレーにシフトチェンジしていった印象である。

 よって、アントニオのプレー傾向をチーム側がプレー傾向で調整したという方が正しい。センターラインに縛り、プレーを矯正するのではなく、起用法を変えることでチームがアジャストしたということだろう。

 CFを務めるスカマッカは正確なポストとコントロールを武器にするタイプでアントニオとはだいぶ毛色が違う。押し込まれている状況を打開するような要素はあまり持ち合わせていないし、サイドで起用されるアントニオも以前ほどの凄みを感じない状況なので、スカマッカは今季のような状況には割を食っている感じがある。

 離脱中のコルネも含めてトータルで見れば選手は揃っている。陣地回復をスカマッカがしなくてもカバーは十分できるだろう。アントニオだけでなくパケタ、ボーウェン、ランシーニと2列目は多士済々。ベンラーマはそもそも好調である。

 アーセナル戦においてはスカマッカ、アントニオが不在の可能性があるという難しい状況。多くの選手が不在の中、再スタートをどのメンバーで迎えるのかは非常に興味深い。

後半戦のポイントはどこに?

 ウェストハムの復調のキーが2列目のコンディション向上とDFラインのメンバー固定にあるのならば、アーセナルの好調維持のキーポイントはどこにあるのか。ピッチ上の最も重要な要素は即時奪回におけるクオリティを維持できるかどうかである。アーセナルが前半戦に首位を快走できたのは、この部分でリーグトップクラスの破壊力を見せることが出来たからというのが大きい。

 中期的(1~2月)にこの要素に懸念点を持たらすのは当然ジェズスの離脱である。多少、ゴールを奪うという点において物足りなさがあったとしても、今のアーセナルにジェズスが不可欠であることはアーセナルファンであるか否かに関わらず一致した見解だろう。

 このゴール数でもそうした評価を勝ち取れるのはゴールに絡まないところへの貢献度が高いからである。とりわけ非保持の局面においての貢献は光るものがある。プレスの先導役としての能力はピカイチで、トーマスやサリバなどが高い位置から強気で守備が出来たのは、トップの守備により相手の攻めるサイドを限定することができたからだ。

 彼の不在をどのように補うかはアーセナルにとっては大事な要素。エンケティアは当然プレータイムは増えるだろうが、年末年始の過密日程と5枠ある交代を踏まえれば、いくつかのオプションはテストされるべきだろう。

 マルティネッリはCF候補の1人ではあるが、彼がいなくなる場合は大外の幅取り役兼ターゲットマンを失うことになる。前進の手段が消えるという部分は憂慮しなければならない。CFをマルティネッリが務める問題点よりも、WGにマルティネッリがいない懸念の方が際立つ。スミス・ロウのCFも試される可能性はある。自分の意見を言わせてもらえれば、味方を加速させるよりも自分がスピードに乗る方がいいプレーができるタイプであり、全く向いているとは思わないのだけど、試される可能性はあるだろう。

 ジェズス以外は大きな怪我をしておらず、肉体的に大きな負荷がかかったプレイヤーは比較的少ない。負傷を抱えながら臨んだ冨安とレギュラーとしてベスト8までプレーしたサカに懸念があるくらいだ労。スミス・ロウの復帰も含めて戦力は整っている。

 そうしたチームにおいて、スタイルを維持するための長期的な懸念は過密日程である。3月以降はELとの並行でコンペティションを戦うことになる。即時奪回からのショートカウンターを繰り返すという負荷の高いスタンスは週2での継続が可能なのか?という点だ。ELの厳しさはここからが本番。ターンオーバーはよりシビアになる。CL組と比べると、ここまで負荷が少なかったのはより積極的にターンオーバーを活用できたからだ。同じメンバーを長い時間使うのならば、基本的には日程面でEL組の方が負荷は高い。

 そうした中でエネルギーを使うスタイルをどのように持続可能にしていくかはアーセナルにとって大きな課題になる。少ないスカッドでペースの維持は出来るのか?1~2月にうまくいけばいくほど懸念は大きくなるというジレンマを抱えることになる。

 2年前はリーグとELの両立に完全に失敗したアルテタ。2年前とは異なる立場で迎える冬になったが、あの年と突きつけられる課題は同じ。欧州との両にらみでのマネジメントを克服できるかも今季のアーセナルの行く末を占う要素になるだろう。

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