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「Catch up Premier League」~Match week 18~ 2022.12.30-2023.1.1

目次

ウェストハム【16位】×ブレントフォード【10位】

完勝に影を落とす懸念

 18節のオープニングを飾るのはウェストハム×ブレントフォード。年末年始の3連戦は全てブレントフォードからその節が始まる時間割になっている。

 どちらのチームもフォーメーションは3バックを採用。前節のアーセナル戦とややテイストを変えてきたのはウェストハムの方である。トップのスカマッカとリンクする選手を増やすためか、1トップ+2シャドーのコンビネーションを使いやすい3バックをモイーズは選択した。

 実際、ウェストハムの攻撃のルートもスカマッカを生かしたもの。彼のポストから同サイドで前を向く選手を作り、細かいパス交換を繰り返していく。ロングボールを軸とした前節とは異なるテイスト。保持の時間もウェストハムの方が長い状態で試合は推移していくことになった。

 一方のブレントフォードはトニーとムベウモへのロングボールを軸に。左サイドに流れていくFWにボールを当てるという方向性は前節と一緒。やり方を変えてきたウェストハムと対照的なアプローチでこの試合に臨むこととなった。ややテイストを変えてきたのはむしろ非保持の方。プレッシングを強力に行っていた前節とは異なり、迎え撃つ形でウェストハムの保持を受けるシーンが多かった。

 ボールを持つ時間が長かったのはウェストハムの方だが、先制したのはブレントフォード。イェンセンのロングスローからゴールを奪う。ノアゴールのシュートは一度はファビアンスキにセーブされたが、トニーが押し込んで先制ゴールを決め切った。

 先制するとブレントフォードはより重心を下げながら対応するようになる。ウェストハムはブロック攻略にシフトするようになる。しかしながら決め手がない状況で打開策が見つからず。停滞した状況をこじ開けるのに苦労するのはウェストハムのあるあるである。

 即時奪回ができないのもウェストハムの弱みである。高い位置からボールを奪う際に陣形が間延びしてしまい、中盤が広がってしまうという状況が発生する。これでは圧力をかけての波状攻撃を生み出すことはできない。

 ボールを持たれてもそこまで危険な状況を作り出されなかったブレントフォードは前半終了間際にロングカウンターを成功させる。トニーのポストから抜け出したダ・シルバのゴールで前半のうちに突き放すことに成功する。ウェストハムは2失点目を軽いスローインミスから相手ボールにされており、流れごと持っていかれたような前半であった。

 後半、トランジッションからボーウェンがファウルを奪取したウェストハム。入りはそこまで悪くないものだった。しかしながら、少し時間が経てばボールを持てるけども敵陣での決め手がない状況に逆戻り。縦に速い攻撃でブレントフォードに反撃を受けるところまで前半と同じである。

 2トップに移行し、パワープレーにシフトするウェストハムだが、撤退したブレントフォードを前になす術なし。ラヤのファインセーブは前後半合わせて何本かあったものの、最後まで打開することができなかった。

 ほぼ完璧な勝利を決めたブレントフォードだが、終盤のトニーの負傷だけが気がかり。短くはない離脱になるであろうエースの負傷はチームの勝利に暗い影を落とすものとなった。

ひとこと

 今のチームの状況を端的に表すスコア。ウェストハムはパケタをCH起用をテストしているが、今のところブレイクスルーになっていない。

試合結果

2022.12.30
プレミアリーグ 第18節
ウェストハム 0-2 ブレントフォード
ロンドン・スタジアム
【得点者】
BRE:18′ トニー, 43′ ダ・シルバ
主審:ダレン・イングランド

リバプール【6位】×レスター【13位】

煙の立たない逆転勝利

 前節の出来で言えばホームのリバプールの勝利を阻むものは何もないかのように思えた。しかしながら、この日のレスターの立ち上がりはメリハリがはっきりついており、リバプールに食ってかかるものとしてしっかりと準備ができていたように思える。

 まず、変わったのはフォーメーション。中盤の三角形の配置を2CHに変更。これにより、リバプールのストロングサイドである右サイドにスマレが素早くスライドができるように。相手のトライアングルに食いつきやすくなる人員の配置でリバプールの強みを抑えにかかる。

 ボールを奪ったらレスターは素早く左サイドから裏を狙っていく。デューズバリー=ホール、バーンズが裏に抜ける形はいつもレスターが狙っている形ではあるが、ティーレマンスがおらず、バックラインのビルドアップの信頼度が高くない状況では普段以上に縦に速い選択をしていた。

 そして2回目の裏抜けのトライでレスターは結果を出す。大きくレスターの左サイドに偏ったリバプールのバックラインはロングボールの落としを拾い、中盤からドリブルで飛び出していたデューズバリー=ホールを捕まえることができず。ロバートソンが逆に動いてしまい、ファン・ダイクとの間がぽっかりと空いてしまった。独走したデューズバリー=ホールはアリソンとの1対1を制して先制点を奪うことに成功する。

 ストロングサイドを封じ、カウンターも鋭い。バックラインのバタバタ感はあるものの、ほぼゲームプラン通りと言っていいだろう。レスターの強気のバックラインへのプレスに対してはチアゴを落とすといういつものやり方で対応していたが、右サイドを封じられるとかなりリバプールは手詰まりに。中盤は強引な縦パスでカウンターを誘発。時間をもらえた左サイドではロバートソンがクロス、ドリブルともに不調で、アタッキングサードにおける結果を出すことができなかった。

 そうした中で同点ゴールを奪えたのはリバプールにとっては幸運。右サイドからのクロスはGKのウォードが処理すればなんて事のないボールだったが、これをニアのファエスが強引に触りにいってしまいオウンゴールに。リバプールは煙の立たないところから追いつくことに成功する。

 さらにファエスの受難は続く。左サイドから抜け出したヌニェスが放ったループはポストに跳ね返り、ファエスに当たってゴールにすっぽり。まさかの前半で2つのオウンゴールを犯してしまったファエス。うまく進んでいたレスターのプランは前半のうちに思いもよらない形での逆転で台無しになってしまう。

 後半、リバプールはプレスの強化を実施。高い位置からのプレスに力をいれて強度の部分でレスターを飲み込む。レスターのバックラインのバタバタは増長されることとなり、リバプールには追加点のチャンスがやってくることに。しかし、サラーやヘンダーソン、ヌニェスは決定機をことごとく決めることができない。

 レスターは左サイドを軸にカウンターで反撃。押し込んだ後もデューズバリー=ホールが内外を移動しながら暴れ回るなど、なかなかの好機を演出する。ティーレマンス投入以降はさらに右サイドでもサイドアタックが良質なものに。徐々にリバプールに牙を剥いていく。

 しかし、レスターの攻撃のメインを担っていたロングボールはリバプールのバックラインの体を投げ出して守備に阻まれる。時間経過とともにバーンズやヴァーディあたりには疲労を感じたが、選手的にも交代回数的にも控え選手を入れる余裕はなかった。

 終盤は落ち着いて受けることができたリバプールが前半のリードを守りきり逆転勝利を達成。再開後のプレミアを連勝でスタートした。

ひとこと

 連勝も立ち上がりを見るとバックラインを軸に不安が残る出来であるリバプール。アタッカーのフィニッシュワークのフィーリングを含め、もう少しパフォーマンス的には要求したい。

試合結果

2022.12.30
プレミアリーグ 第18節
リバプール 2-1 レスター
アンフィールド
【得点者】
LIV:38′ 45′ ファエス(OG)
LEI:4′ デューズバリー=ホール
主審:クレイグ・ポーソン

ウォルバーハンプトン【18位】×マンチェスター・ユナイテッド【5位】

通用しない相手へのプランB

 前節の劇的な勝利で最下位を脱出したウルブス。ロペテギのホームデビュー戦となる今節はマンチェスター・ユナイテッドを迎えての試合となっている。

 互いにボール保持のやり方を模索する立ち上がりとなった序盤戦。どちらのチームも高い位置からプレッシングをかけていく意識が強く、相手の保持を咎める流れとなっていた。

 前半により明確に保持で打開ができていたのはウルブスの方。バックラインは広がりながら相手のFW陣を引き付けていく。ユナイテッドは人を捕まえる形でビルドアップを阻害していくが、ウルブズがGKを積極的にビルドアップに絡めていたり、アンカーのネベスが最終ラインに落ちる動きをするなどユナイテッドのマンツーを乱す要素を持っていた。

 ウルブスのボール保持はむしろユナイテッドが人についてくることを利用しているものだった。前線の動きから中央のユナイテッドの選手をどかし、空いた中央のスペースに入り込む。この形を繰り返すことでウルブスはバイタルを中心にチャンスを迎えていた。

 ユナイテッドの非保持はマンツーにおける決まり事が曖昧だった。相手が動くときにどこまでついていくかが個人によって異なり、マークを捨ててまで深追いする選手もいれば、DFラインが出ていったスペースを埋める中盤の選手がいたりなど、人によってばらつきがある。ウルブスにとってはマンツーの意識のばらつきは活用できるものである。大きな展開でズレを作り、中央にパスを差し込んで前進する形をよりうまくつくれていたウルブスだった。

 一方のユナイテッドの保持はウルブスのプレスをずらす前に蹴り切ってしまっていた。ウルブスもハイプレスを早々に引き上げて4-4-2気味のブロックになっていたため、ユナイテッドが保持でギャップを生かすという形にはならなかった。優位なのはウルブスではあったが、バックラインの守備はシュートブロックが間に合っており、ユナイテッドは最後の砦をきっちり守ることができている。

 ユナイテッドがそうした中でもサイドでの優位を見出すことができていた。右サイドのアントニーを使った押し下げから、ウルブス陣内に入り込む機会もちらほら。前半終了間際にはアントニーとマルシャルがそれぞれ決定機を迎えることができていた。

 迎えた後半はユナイテッドがハイプレスベース で巻き返す。ウルブスは後半には運動量が低下。大きな展開は減っていき、ハーフタイムに投入されたアダマ・トラオレ頼みの前進が増えていく。

 逆にユナイテッドは押し込みながらチャンスを作る形が増えていく。右のアントニーに加えて、左サイドに投入されたラッシュフォードを使った両翼の攻撃からウルブス陣内でのプレータイムが増加。明らかに後半はペースを取り戻す。そして、決め手になったのはラッシュフォード。左サイドからのカットインで強引にウルブス陣内をこじ開けてみせた。

 ウルブスは5-4-1からロングカウンターという前節と同じプランでの連勝を狙っていたが、ラッシュフォードのシュートも防げず、得点機会も作れない。アイト=ヌーリが抜け出しかけるような前節と似たような場面はあったものの、最終的にユナイテッドの守備陣に咎められていた。エバートンには通用してもユナイテッドには通用しないということだろう。

 終盤はセットプレーからチャンスを迎えたウルブスだったが、なんとか凌いだユナイテッド。ウルブスはロペテギのホーム開幕戦を勝利で飾ることができなかった。

ひとこと

 前節と同じプランを敷いてきたウルブスだけど、現状ではこれしかないのかなと思う。わかりやすく言えば、Aプランが90分持たないから仕方なくプランBを使いながら90分を持たせている感がある。特に終盤の過ごし方に能動的に脅威を突きつけるプランが欲しい。

試合結果

2022.12.31
プレミアリーグ 第18節
ウォルバーハンプトン 0-1 マンチェスター・ユナイテッド
モリニュー・スタジアム
【得点者】
Man Utd:76′ ラッシュフォード
主審:ロベルト・ジョーンズ

マンチェスター・シティ【2位】×エバートン【17位】

ワンチャンスでエティハドから勝ち点持ち帰りに成功

 立ち上がり、ハーランドがあわや負傷か?というマンチェスター・シティファンが青ざめるシーンから開幕したこの試合。特に問題はなかったようで何よりである。エバートンの布陣が5-4-1であることからもわかるように、両チームともシティがボールを持ち、エバートンがボールを持たれるという状況を許容してスタートする。

 シティのボール保持のスタンスはここ数試合と同じ。SBであるリコ・ルイスがロドリのパートナーとしてインサイドに絞り、後方のブロックが3-2型になることで相手の守備ブロックを内側に集約。外にスペースを作りながら大外の前進ルートを確保することができていた。

 エバートンはそのシティの前進の姿勢に対して、前の5枚の守備ブロックを同サイドにスライドさせることで閉じ込める方向性で対抗する。エバートンはちっとも前進することはできていなかったが、非保持で抵抗しシティをそれなりにてなずけることはできていた。

 それでも解決策を見つけるのがシティである。24分には先制ゴールをゲット。デ・ブライネとベルナルドの2人から逆サイドに展開し、右の大外からマフレズがラインを下げつつエリア内に侵入。ハーランドのゴールをお膳立てしてみせた。

 エバートンは前進の機会こそ少ないものの、シティのプレスに屈してとっとと蹴り出すような姿勢を見せてはいなかった。むしろ、シティの前プレ隊を惹きつけつつライン間にボールを差し込みながらイウォビ、グレイあたりから前進のチャンスを掴むことができていた。シティに一度持たれると毎回撤退させられるところまでは押し込まれるのだが、ボールを奪い返した後はシティのプレスを回避することができていた。

 後半も前半と陸続きの内容である。ボールを持つシティに対して、エバートンがなんとか隙を見つける流れで試合は進んでいく。大きな展開で薄いサイドを作り、裏へとボールを送るという形も使いながらシティはより一層エバートンゴールに攻め込むことができていた。

 それだけにエバートンの同点ゴールは青天の霹靂だった。ロドリのパスミスからカウンターで出ていくグレイ。アカンジに捕まりかけていたが、マイコレンコのオーバーラップで注意を分散させたところで前を向くことに成功する。ここからのミドルで同点ゴールをゲット。わずかなチャンスから追いつくことに成功した。

 勝ち越しが必要となったシティはアップテンポにすることでより直線的にゴールに迫っていく。この方針のおかげでエバートンもカウンターを打つ機会を得ることができた。ただ、ゴールに迫っていくのはシティの方が圧倒的に多い。左右からクロスを上げ続けてあわやという決定機を作り出していく。だが、こういう展開にうってつけのピックフォードとシティの決定力不足でネットを揺らすことができない。展開が激しくなるにつれて接触で試合が止まる頻度が多くなったのもテンポが出ない一因である。

 結局試合はそのまま終了。ワンチャンスをものにしたエバートンがエティハドから勝ち点を持ち帰ることに成功した。

ひとこと

 直線的な攻撃を増やすことで決定機を増やすことはできてはいるけども、ハイプレスからの畳み掛けが見られなくなってしまっているのはシティの気になるところ。エバートンの保持を阻害することができていれば、前半から複数得点が視野に入ったと思うのだが。

試合結果

2022.12.31
プレミアリーグ 第18節
マンチェスター・シティ 1-1 エバートン
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:24′ ハーランド
EVE:64′ グレイ
主審:アンディ・マドレー

フラム【9位】×サウサンプトン【20位】

セットプレー劇場を制したのは

 ニューカッスル、ブレントフォードほどインパクトがある試合はないものの、フラムのここまでの今シーズンもセンセーショナルなもの。残留争いは遠く後方であり、むしろCL出場権の方が勝ち点差だけで言えば近い状況である。

その残留争いの一番後ろに沈んでいるのがサウサンプトン。混戦でありまだ勝ち点差は離されてはいないものの、連敗を重ねている。監督が変わっても苦しい戦いになっている。

 そんなセインツはこの試合では5-4-1を選択。後ろに重たい陣形でブロックを組むことを選んだ。よってフラムはボールを持ちながら解決策を探すことになる。バックラインがゆったりとボールを持つ展開は苦手とはしていないが、セインツの後方のブロックは非常にコンパクト。受け手をなかなか解放できず効果的に前進ができない。まずは降りる動きを軸に糸口を探るフラムにとって、この日のセインツのブロックの組み方は非常に相性が悪かった。

 中央が窮屈なフラムは左にペレイラ、右にH.リードを流す形でのトライアングル形成でチャンス構築を狙う。だが、これもタイトなセインツのバックラインをこじ開けるっためのきっかけにはならない。

 セインツの保持はロングボールが軸。長いボールを使う前進は明らかに相手に捕まってはいたが、捕まっていたとてパワーでなんとかする!というのがセインツの流儀。馬力でなんとかグイグイと前進し、ゴールに向かっていく勢いを出すことができていた。

 敵陣まで運ぶことができればセットプレーのチャンスもある。ウォード=プラウズという狙ってもよし、合わせてもよしのキッカーの存在はとりあえず敵陣の深い位置まで運ぶ!という方針を肯定してくれる。

 しかし、セットプレーから先制点を奪ったのはフラムの方だった。CKの流れからペレイラが放ったミドルは相手に当たってゴールにすっぽり収まる。この1点でフラムが前半リードでハーフタイムを迎える。

 迎えた後半にペースを握ったのはサウサンプトン。前半はボールをとっとと蹴っていたが、フラムのプレスが噛み合って蹴らされていたわけではないので、方針を変えればゆったりとボールをつなぐことができるようになっていた。サイドから相手を引き出し、中央の空いたスペースにボールを入れる形を作りながら敵陣に進んでいく。

 同点ゴールはこちらもFKから。先に挙げた形でフラムのファウルを誘ったセインツはウォード=プラウズのゴールで追いつくことに成功する。直後も決定機が続くなど、後半は完全に主導権を握る形になる。

 フラムは対角のフィードをジェームズに預けながら打開を狙うが、この形からゴールに迫ることができずに苦戦。交代選手を使えど、ペースを引き戻せない状況が続く。

 だが、決勝点はそんな流れとは逆。セットプレーから追加点を奪ったのはフラム。終盤に貴重なリードを奪うことに成功する。最後のミトロビッチのPKが決まらなかったのはご愛嬌。得点全てがセットプレー絡みで決まった試合を制したのは、快進撃を続けるフラムだった。

ひとこと

 セインツとしてはセットプレーで負けてしまうのは屈辱だろう。バックラインの対人も強く、プレースキッカーが優秀という自分たちの土俵で相手にしてやられたのはいかにも流れが悪いチームという感じである。

試合結果

2022.12.31
プレミアリーグ 第18節
フラム 2-1 サウサンプトン
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:32′ ウォード=プラウズ(OG), 88′ パリーニャ
SOU:56′ ウォード=プラウズ
主審:グラハム・スコット

ボーンマス【14位】×クリスタル・パレス【11位】

ポゼッションを増やせども

 ボーンマスは中断明けから明確に5-3-2に変更したようである。ビリングはIHに配置する形である。後方の重たい形でのブロックはパレスの強いところに枚数を割ける形になっている。パレスのWGには2枚体制でサイドに囲い込むように守ることが多く、サイドからの打開を封じていた。

 ボール保持においては4バック変形。ケリーとセネシがGKを挟むように立ち、外から前進を狙っていく。パレスはザハがたった1人でバックラインへのプレス隊を行っていたため、かなりボーンマスの保持には余裕が出ていた。試合のほとんどはボーンマスのボール保持で進む。

 だが、ボールをもてても主導権は握れず。少しでもアバウトさが出てくればクリスタル・パレスに咎められるし、大外からなんとかする突破力があるわけでもない。さらにはビリングが負傷交代と踏んだり蹴ったりなボーンマスの前半だった。

 前進に苦しんでいるボーンマスに対して、クリスタル・パレスはカウンターからシュートを重ねていく。早い攻撃はファウル奪取に繋がり、セットプレーからチャンスを生むという好循環で、シュートすらないボーンマスを尻目にチャンスを積み重ねていく。

 そして、先制したのはセットプレーから。コーナーからアイェウのゴールでネットを揺らし前に出ることに成功する。36分に決めた追加点もセットプレーから。CKからマイナスのボールを受けたエゼがバイタルからミドルシュートを放って2点目を得る。

 ビハインドを背負ってしまったボーンマスは後半に巻き返しを狙う。前半に比べれば、中央に縦パスを入れる頻度が高まり、細かいコンビネーションからサイドに展開することで深さを作ることができていた。しかし、シュートに向かう手段がないのは相変わらず。押し込めるようになってもチャンスの構築の頻度は増えないままである。

 15分くらい押し込まれながら何もできなかったパレスだが、徐々にロングボールから前進ができるように。セットプレーからコツコツチャンスを積み重ねていく形で地味ながらもボーンマスを脅かす。

 結局、後半もゴールに近かったのはパレスの方。カウンターからの決定機から試合を決める3点目をいつ決めてもおかしくなかった。セットプレーから危なげなく逃げ切りを決めたパレスが年内ラストゲームを勝利で飾った。

ひとこと

 ボーンマスのビハインドになった時の攻め手の少なさは気になるところ。パレスはじっくりと受けきりながらアタッカーの特性を活かす方向性に無理なく舵を切ることができていた。

試合結果

2022.12.31
プレミアリーグ 第18節
ボーンマス 0-2 クリスタル・パレス
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
CRY:19′ アイェウ, 36′ エゼ
主審:アンドレ・マリナー

ニューカッスル【3位】×リーズ【15位】

ストライカーの決定力不足が響く手痛いドロー

 CL出場権獲得が徐々に現実味を帯びている目標となりつつあるニューカッスル。なかなかポイントを落とさない上位陣についていくためにも負けられない試合が続く。今節の対戦相手はタフな試合になりやすいリーズ。過密日程には有り難くない相手である。

 試合は事前の想定通りにタフな流れになる。特にタイトだったのは中盤のマーク。互いにフリーにしてなるものか!と言わんばかりの潰し合いでほとんどフリーで受ける余裕がある選手がいなかった。よって、保持側の狙いどころとなるのは前線の選手たち。サイドに流れながら起点になるウッドとロドリゴを目指しながら長いボールを蹴り込むケースが増えていく。

 中盤がタイト。よってロングボールが増える。というマッチポンプのような状況になっていた両チーム。中盤のタイトなマークな着火剤となり、試合のテンポがどんどん上がっていくという状況になりつつあった。

 試合のテンポが落ち着くとボールを持つ機会が増えてきたのはニューカッスル。CBが広がりながら対面のWGを引きつけ、高い位置を取るSBからラインの裏を狙っていく動きでゴールに迫っていく。どちらにしてもタイトな中盤を避ける方針は全く同じである。

 前進の仕方自体はリーズも同じような狙いになっている。SBから背後を狙っていくスタンス。だが、裏抜けの精度の部分とセットプレーの脅威はニューカッスルの方が上。隙あらばシェアですら、裏抜けで爆走していたくらいである。どちらがゴールに近いか?という話になれば、おそらくホームのニューカッスルという展開で試合は流れていく。メリエの仕事は時間の経過とともに徐々に増えていった。リーズは左サイドからのニョントのカットインを軸に攻めていくことができていたが、ゴールを奪うまでの決め手にはならない。

 後半も前半と陸続きの展開である。ボールを持ちながら攻め込むことができていたのはニューカッスルの方。後半の狙い目になっていたのは右サイドのアルミロンのマッチアップ。ニューカッスルがこちらのサイドを狙い撃ちにしてきたため、対面のストライクは非常にタフな状況になった。

 それでもこの日のニューカッスルはストライカーが決め切ることができない。ウッドをはじめとするエリア内の選手たちがことごとくフィニッシュの局面を決められず、先制点まで手が届かない状況が続く。悪くなる天気とゴールマウスに立ちはだかるメリエの存在もニューカッスルにとっては厄介だったと言えるだろう。

 状況を好転させるところまではいかなかったが、なんとか凌ぎ切ったリーズ。ニューカッスル相手に虎の子の勝ち点1を守り切ることに成功した。

ひとこと

 引き分けは痛いけども、似たスタイルできっちり内容で上回ってくるニューカッスルの底力を感じる内容だった。

試合結果

2022.12.31
プレミアリーグ 第18節
ニューカッスル 0-0 リーズ
セント・ジェームズ・パーク
主審:シモン・フーパー

ブライトン【7位】×アーセナル【1位】

2点差と3点差の狭間で

レビューはこちら。

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 電光石火での先制点を決めたのはアーセナル。ランプティのドリブルの持ち上がりをトーマスが咎めると、左サイドへの大きな展開を受けたマルティネッリから逆サイドへのクロス。ファーで待ち受けていたサカの下にボールが転がり、先制ゴールを決める。

 ブライトンとしてはボールの失い方が悪かったせいでややバタバタしてしまった感が否めない。この場面では最終ラインの受ける枚数が少なく、フリーの選手を作られてしまった。それ以降の時間を見ると、ブライトンの守備ブロックはかなりアーセナル相手に粘ることができていたため、この立ち上がりの入りは悔やまれる。特にランプティはマルティネッリへの対応が安定していたため、立ち上がりのドリブルでのミスは後悔が残ったかもしれない。

 先制点を決めて以降のアーセナルがそこまでプレッシングに行かなかったこともあり、ブライトンの保持の時間がない状態で推移する。ボールを持つことを許されたブライトンだが、ライン間へのパスが安定しないのが懸念。縦パスをアーセナルに咎められてしまい、ボールを前に進めることができない。

 たまにライン間でボールを受けた際には裏の三笘にボールを送ることで相手のゴールに迫っていくが、裏へのボールはアーセナルのDF陣がなんとか対応。ボールを持てることはなかったアーセナルだが、前半の試合運びは上々。スコア的にはウーデゴールの前半終了間際の追加点も相まって100点満点だったと言えるだろう。

 後半も早々に得点を決めるアーセナル。カウンター気味の状況からピッチを右から左に横断し、マルティネッリが打ち込んだシュートをエンケティアが押し込んで3点目。マルティネッリの縦に進んでのカットインは前節のゴールシーンと同じである。

 これで勝負は決まったように思えたのだが、それを変えたのが三笘薫。左サイドからの攻め上がりを増やしたグロスの助けを借りて、エリア内に入り込む頻度を増やしていく。追撃弾を決めたのも三笘。日本代表の冨安を出し抜くゴールで右隅にゴールを押し込んで反撃の狼煙を上げる。

 しかし、ウーデゴールの素晴らしいスルーパスからマルティネッリが4点目を取るアーセナルも一方的な展開を許さない。今度こそ決着をつけることができたと思ったアーセナルだが、ファーガソンにサリバの対応ミスを出し抜かれ再び2点差に迫られる。

 2点差と3点差のせめぎ合いが続く流れに待ったをかけたのはまたしても三笘。左サイドからのカットインから再びネットを揺らすが、これはギリギリオフサイド。救われたアーセナルは2点差をキープ。このリードを維持しての逃げ切りに成功した。

ひとこと

 レベルの高い好ゲーム。保持でなんとかする手段を持っているチーム同士の対戦はとても面白い。

試合結果

2022.12.31
プレミアリーグ 第18節
ブライトン 2-4 アーセナル
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:65′ 三笘薫, 77′ ファーガソン
ARS:2′ サカ, 39′ ウーデゴール, 47′ エンケティア, 71′ マルティネッリ
主審:アンソニー・テイラー

トッテナム【4位】×アストンビラ【12位】

ジリジリした展開を動かしたミス

 前節、上位陣で唯一引き分けになってしまったトッテナム。暫定では4位をユナイテッドにとって変わられており、この試合で勝ち点を落とせばCL出場圏外に転落してしまうことになってしまう。普段以上に勝ち点を落とせない一戦である。

 立ち上がりは互いに隙あらばプレスにいくが、あまりハマりは良かったとは言えない。トッテナムはケインが同サイドに追いやりながらプレスのスイッチを模索するが、オルセンを活用するビラのビルドアップに対してなかなか同サイドに攻撃を制限しきることができない。どちらのチームも互いのフォーメーションの噛み合わせの悪さのところから前進していった。

 ただし、中盤より後方のプレッシングの出足は前節よりも良好。特にタンガンガに代わってスタメンに名を連ねたロメロの潰しは効いていた。よって、前節よりは前線のプレスはハマらないながらも、相手に主導権を持っていかれずに済んだと言えるだろう。

 だからこそ、トッテナムのバックラインの警告を次々にもらった振る舞いは余計。前半のうちにCB3人が全員イエローカード持ちというスペイン戦の日本みたいな状態になっていた。

 アストンビラもプレスに行っていたが、こちらは中盤のケアを放置したためほとんど実効性がないものに。よって、すぐさま撤退に切り替え。アストンビラはトッテナムと比べてもより低い位置でブロックを組むことを優先する形になった。

 したがって、試合はトッテナムのボール保持を主体として進むことになる。非保持では撤退上等のアストンビラはトッテナムのWBについていく形でSHが下がる形で対応する。下がってOKという判断をしたアストンビラはカウンターの厚みがなかなか出ない状況に苦しむ。彼らのチャンスはワトキンスの一発の抜け出しなど、フィニッシュまでが見える裏抜けになることが多かった。

 アストンビラの撤退守備のフェーズで目立っていたのはカマラ。サイドからの攻め込みに対してのカバーリングが見事。保持においてもボールの落ち付け所として機能しておりとてもよく効いていた。逆にトッテナムは保持で打開の策を見出すことができない。ソンの降りる動きとケインの出所がバレてしまうワンツーの2つはどちらも十分な武器とはならず、クルゼフスキ不在が重くのしかかる展開に。

 スコアレスで迎えた後半、いい入りをしたのはホームのトッテナムの方だ。CBがワイドから持ち上がり攻撃参加。プレッシングが機能しての即時奪回とアストンビラのゴールに迫っていく。

 しかし、それを台無しにしてしまったのが悪い流れからの失点だ。ビラはミドルシュートから先制点をゲット。このミドルの処理をロリスがミスし、こぼれ球に真っ先に詰めたワトキンスが根性で繋ぎ、最後はブエンディアが仕留める。トッテナムは前節と同じく、後半の頭の不要なミスから失点をするという展開に。これで公式戦は10試合連続で先制点を献上していることになるようだ。

 前節のトッテナムはここから取り返したが、この日はジリ貧。ロングカウンターからのチャンスがないこともなかったが、つなぎの精度が悪く、ビラのDFラインの裏をかくことができない。バックラインを5バックに増員し、安定感を増したビラを打開するのに十分な攻撃を見せることができなかった。

 すると、アストンビラは追加点を決める。ケインの降りる動きを咎めたところからカウンターで反撃。マッギンのラストパスを抜け出して合わせたルイスが仕留める。試合を決める2点目を許したトッテナムはこれで終戦。5枚の交代枠こそ使い切ったものの、ここまでほぼ使わなかった選手だらけでは望みをつなぐのは難しい。逆転勝利が多いトッテナムだが、この日の彼らにはビラを跳ね返す力は残っていなかった。

ひとこと

 これだけジリジリした展開において先制点は超重要。それだけに後半の早い時間にミスで失点したトッテナムは自分の首を締めるような試合運びだった。

試合結果

2023.1.1
プレミアリーグ 第18節
トッテナム 0-2 アストンビラ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
AVL:50′ ブエンディア, 73′ ルイス
主審:ジョン・ブルックス

ノッティンガム・フォレスト【19位】×チェルシー【8位】

幸運の先制点に襲いかかる理詰めの反撃

 リーグ再開直後からマンチェスター・ユナイテッド、チェルシーと難敵との連戦となるノッティンガム・フォレスト。力のある相手ではあるが、上にも下にもチームが詰まっている分、なんとか頑張りたいところである。

 当然、試合はチェルシーがボールを持ってスタートする。ライン間を閉じて、コンパクトなミドルブロック守備を敷くスタイルはもはやフォレストのトレードマークと言っていいだろう。バックラインにはボールを持たせることを許容したため、チェルシーのボール保持はクリバリとシウバが持っている時間が一番長い状況だった。

 前進ルートはざっくりと2つ。1つは中央からのルート。ジョルジーニョの脇にマウント、ザカリアなどの人を下ろしての中央開拓。降りる選手を変えながら遊びを持たせているのが特徴である。もう1つは大外を使ったルート。フォレストの守備の中央の堅さを加味すると、メインはこちらになる。クリバリを軸にフィードを飛ばし、大外から攻撃の形を作る。

 サイドからの崩しはクロスが主体。前節は右サイドからのクロスが多かったチェルシーだったが、今節は左の方がやや多かった。球持ちのいいプリシッチのサポートにククレジャやマウントがいる左サイドには、ハフェルツが流れるシーンがいつもより増えていたのが印象的。普段は右に流れる彼が左にいることが多いということは崩しの狙い目なのだろう。

 フォレストの攻撃は非常にシンプルなもの。3トップがロングカウンターでチェルシーのバックラインにスピード勝負を挑む格好である。特にワイドのアウォニイとジョンソンの2人を軸にチェルシーのSBの背後からカウンターを狙っていく形を作っていく。

 抜け出しは序盤にジョンソンが惜しい形を作り、アウォニイも有効打を放ってはいたが、試合の時計の針が進むとともにトーンダウン。チェルシーはスピードに乗る前にサイドに人を動員しながら潰し、早めの手打ちでフォレストのチャンスを未然に防ぐようになる。

 先制点を決めたのはチェルシー。左サイドからのクロスをインサイドで対応したボリーのキックが跳ね返ってポストに直撃。このポストからのこぼれが目の前に転がってきたスターリングが先制点をゲット。チャンスの少ない前半だったが、チェルシーが幸運を味方につけて前半のうちに先制する。

 後半、素晴らしい入りを見せたのはフォレスト。前半は縦に急いで3トップにお任せ!というスタンス一辺倒だったが、ポゼッションからバックラインを引き出し、裏を狙う前に一つ工程を挟むことでより前線のスピードを効果的に使っていた。

 ただ、フォレストのボトルネックになっていたのは抜け出した後の判断。折り返したいところで直接シュートに言ってしまうジョンソンや自分より体勢のいい選手を差し置いて強引に打ち切ってしまうアウォニイなど、もう一工夫欲しい選手が多い。逆にジョンソンにインサイドのコースを切りながらシュートに誘導したチアゴ・シウバの対応は素晴らしかった。

 しかしながら、攻めてリズムが出てくるとフォレストのアタッキングサードでの判断は徐々に改善していく。攻撃的なSBの特性も生きるようになり、高い位置で人数をかけて攻められるようになる。後半の立ち上がりはマウントのキャリーなどでプレス回避もできていたチェルシーだが、中盤で選手が捕まるようになると、いよいよ試合はフォレストが一方的に攻める展開に。

 修正が手早いポッターの手打ちまでなんとか我慢したかったチェルシーだが、コバチッチの投入直後に失点。セットプレーからオーリエが飛び込んで同点ゴールを手にする。チェルシーはわずかに修正が間に合わなかった印象だ。

 以降も攻め続けたのはフォレストの方。チェルシーは前線のテコ入れから4-2-3-1にシフトチェンジするが、コバチッチを軸に落ち着かせることが精一杯で攻めに打って出るところまではいけない。逆にフォレストはイケイケのうちに逆転まで持っていきたかったところだった。

 幸運な先制点を理詰めの反撃から守りきれなかったチェルシー。手痛い敗北で4位のユナイテッドとの勝ち点差は7に開いた。

ひとこと

 トータルで見ると引き分けはとても妥当。手打ちが遅かったことと、効果的でなかったことはポッターらしくなく、気になる部分である。フォレストはベテラン勢の不在が課題だったけど、オーリエのこの試合の出来はプレミア経験者を補強した意味をきっちり提示できたように思えた。

試合結果

2023.1.1
プレミアリーグ 第18節
ノッティンガム・フォレスト 1-1 チェルシー
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:63′ オーリエ
CHE:16′ スターリング
主審:ピーター・バンクス

今節のベストイレブン

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